『エンドレス・ラブ』:1981、アメリカ

ジェイド・バターフィールドとデヴィッド・アクセルロッドは恋人同士で、互いの両親も公認の仲だった。デヴィッドは父のアーサーと母のローズと暮らし、ジェイドは父のヒューと母のアン、兄のキース、弟のサミーと暮らしていた。デヴィッドは友人であるキースの紹介で、ジェイドと知り合っていた。バターフィールド家でパーティーが開かれ、招待を受けたデヴィッドはタキシード姿で参加した。ジェイドとデヴィッドはワインを取りに倉庫へ行き、キスを交わした。
キースの友人であるスーザンがバンドと共に来たので、ヒューたちは楽器を運んだ。その間にジェイドは父の書斎へデヴィッドを連れ込み、2人きりになった。そこへキースが来て「父さんの書斎へ他人を入れるな」と注意すると、ジェイドは「彼は家族の一員よ」と反発した。スーザンがバンドを従えて歌を披露し、ジェイドはデヴィッドと体を寄せ合って聴いた。パーティーが終わって他の招待客が帰っても、デヴィッドは最後まで留まった。彼が居間の暖炉を勝手に付けると、ヒューは「暖炉の火を付けるのは私の仕事だ」と述べた。
ヒューから家に帰るよう促されたデヴィッドは、「暖炉の火が消えたら」と答えた。アンとヒューが2階の寝室に入ると、デヴィッドは立ち去るフリをして居間に残った。そこへジェイドが行き、2人はセックスした。アンは2人を目撃するが何も注意せず、そのまま寝室に戻った。後日、デヴィッドはキースと狩猟に出掛け、「祖父の建てた家が放置されてる。いつか僕が建て直す」と告げられる。デヴィッドが「ここで朝を迎えたいな。家族全員で」と言うと、キースは「妹と寝て家族気取りか」と嫌味っぽく述べた。
アンとヒューが映画鑑賞から帰宅すると、デヴィッドがジェイドの部屋に上がり込んでいた。ヒューは2人の様子を見て、セックスしたと悟った。ジェイドはデヴィッドに、「パパにバレた。でも、ここは私の部屋。文句は言わせない」と話した。アンはヒューから「アンの部屋にデヴィッドがいた。2人とも裸だった」と動揺した様子で告げられ、「大騒ぎすることじゃないわ。以前からよ」と落ち着き払った態度を示した。彼女は「デヴィッドは私たちが寝るまで隠れていて、明け方になると急いで帰る。可愛いじゃない」と夫に教え、微笑を浮かべた。
ヒューが「どうすればいい?」と困惑の表情で漏らすと、アンは「貴方は子供たちに言って来た。セックスはオープンにと。その通りになっただけよ。愛を自由に表現してるのよ」と語る。「部屋に忍び込むなんて」とヒューが告げると、彼女は「2人は悪いことをしていると思ってない」と言う。「あの男は娘にふさわしくない。「ジェイドは15歳だぞ」というヒューの言葉に、アンは「喜んであげるべきよ。誰でも通る道だわ」と説いた。
翌日のテストに向けて勉強していたデヴィッドだが、アンのことが気になった。彼はアンの部屋に忍び込み、そのままセックスに及んだ。翌朝になると、デヴィッドは急いでバターフィールド家を去った。ヒューはアンが睡眠薬を使おうとしているのを見て、慌てて奪い取った。アンが「眠れないの」と吐露すると、ヒューは「あいつのせいだ」と声を荒らげた。アンが「飲ませてあげて」と頼むと、彼は「医者として許すわけにはいかない」と拒否した。
ヒューはジェイドに、「家族が迷惑してる。デヴィッドを家に入れるな」と命じる。ジェイドが「嫌よ。もう子供じゃないわ」と反発すると、彼は「あいつは身勝手だ。お前を大事にしない。出入りは禁止だ」と通告した。デヴィッドが訪問すると、ヒューは「しばらく娘には会うな。勉強が遅れて不眠症になってる」と告げる。30日間の面会禁止を指示されたデヴィッドは「一方的だ」と腹を立て、拒否する姿勢を示した。そこへアンが来て、ヒューにデヴィッドの説得役を任せるよう頼んだ。
アンはデヴィッドに、「ヒューを恨まないで。冷静になってもらいたいのよ」と話す。「貴方たちは夢中になりすぎた」と彼女が言うと、デヴィッドは「僕たちの付き合いは子供の遊びじゃない。真剣なんだ」と告げる。アンは「30日ぐらい、あっという間よ。貴方は卒業試験、アンは学年末試験。何も変わらないわ。貴方は家族の一員よ」と諭すが、デヴィッドは納得できなかった。彼は友人のスチュアートから、「俺なら彼女の家を放火する」と告げられる。友人のビリーは、「俺は8歳の時にやったことがある。濡れた新聞紙に火を付けた。僕が第一発見者で、ヒーロー扱いだ」と得意げに語った。
デヴィッドはバターフィールド家のパーティーでキースの友人がジェイドと親しそうにしている様子を見て、激しい嫉妬心を抱いた。深夜、バターフィールド家の面々が寝静まった後、彼はポーチに置いてあった新聞紙の束に火を付けた。風が吹いて屋敷に火が燃え広がると、彼は慌てて消そうとする。しかし火の勢いは止まらず、デヴィッドは玄関のドアを壊して突入した。そこへジェイドとアンが来たので、彼は裏口から逃げるよう指示した。
デヴィッドは2階から降りて来たキースに怒りを向けられ、「出て行け」と突き飛ばされた。ヒューは意識を失って倒れているデヴィッドを見つけ、屋敷から運び出した。屋敷は全焼し、デヴィッドは第二級放火罪で起訴された。通常なら最短でも禁錮刑20年になる罪だが、判事は専門医の鑑定と家族の証言を考慮し、5年の保護観察処分を下した。判事はデヴィッドに対し、病院での治療を受けること、他人に危害を加えないと担当医が判断するまで入院することを義務付けた。
精神科病院に入院したデヴィッドは、患者であるレナードたちの様子を見て頭がおかしくなりそうだった。彼はジェイドに何度も手紙を書くが、返事は来なかった。入院生活が2年に及ぶ中、デヴィッドは見舞いに来たローズに「早く出たい」と訴えた。彼は両親の仲が良好ではないと気付いており、「子供が病院に送られて家族が崩壊する。良くある話だ」と語る。ローズは「私たちのことは貴方と関係ない」と告げ、息子に優しい言葉を掛けた。
デヴィッドは両親が病院に来た時も、やはり早く出すよう訴えた。「このままじゃ殺される。もう2年も我慢した。お願いだから出して」という懇願を受けたアーサーは担当のミラーに掛け合い、退院の許可を貰った。彼はバターフィールド一家が東部へ引っ越したことを息子に教え、「もうジェイドの心はお前から離れてる」と告げる。しかしデヴィッドは「手紙が届かなかったからだ」と言い、「彼女を解放してやれ」という父の言葉に「嫌だ。絶対に諦めない」と反発した。
アーサーは6週間前からローズと別居して他の女性と暮らしていることを明かし、「また出会いがあるさ」とデヴィッドを諭した。ヒューはミラーの元へ乗り込み、「なぜあいつを出した?あいつの本性を分かってない」と抗議した。ミラーが「終身刑にすれば満足ですか」と静かに告げると、彼は「あいつが家族に近付いたら黙っちゃいないぞ」と通告した。デヴィッドはヒューと別れたアンの家を訪ね、住所録を盗み見てジェイドの居場所を突き止めた…。

監督はフランコ・ゼフィレッリ、原作はスコット・スペンサー、脚本はジュディス・ラスコー、製作はダイソン・ラヴェル、製作総指揮はキース・バリッシュ、撮影はデヴィッド・ワトキン、美術はエド・ウィットステイン、編集はマイケル・J・シェリダン、衣装はクリスティー・ジー、音楽はジョナサン・チューニック、テーマ曲『Endless Love』歌唱はダイアナ・ロス&ライオネル・リッチー。
出演はブルック・シールズ、マーティン・ヒューイット、シャーリー・ナイト、ドン・マレー、リチャード・カイリー、ペネロープ・ミルフォード、ベアトリス・ストレイト、ジミー・スペイダー(ジェームズ・スペイダー)、アイアン・ジーリング、ロバート・ムーア、ジャン・マイナー、セイラム・ルドウィグ、レオン・B・スティーヴンス、ヴィダ・ライト、ジェフ・マーカス、パトリック・テイラー、ジェイミー・バーンスタイン、トム・クルーズ、ジェフリー・B・ヴァーセル、ジェイミー・ガーツ、マリア・トッド、ダグラス・アラン=マン他。


スコット・スペンサーの同名小説を基にした作品。
監督は『ロミオとジュリエット』『チャンプ』のフランコ・ゼフィレッリ。
脚本は『ドッグ・ソルジャー』のジュディス・ラスコー。
ジェイドをブルック・シールズ、デヴィッドをマーティン・ヒューイット、アンをシャーリー・ナイト、ヒューをドン・マレー、アーサーをリチャード・カイリー、離婚したヒューの恋人のイングリッドをペネロープ・ミルフォード、ローズをベアトリス・ストレイトが演じている。
キース役のジミー・スペイダー(ジェームズ・スペイダー)は、これがデビュー2作目。サミー役のアイアン・ジーリングとビリー役のトム・クルーズは、これがデビュー作。

ブルック・シールズは生後11ヶ月からモデル活動を開始し、10歳の頃にはヌード写真も撮影している。
今なら完全にアウトだが、1970年代には少女のヌード撮影が普通に行われ、当たり前のように発表されていた。
ともかくブルック・シールズは10歳になる前からアメリカで大人気のモデルになったわけだが、そうなると映画業界も放っておかない。
1977年には『アリス・スイート・アリス』で役者デビューし、1978年の『プリティ・ベビー』では娼婦を演じて注目を集めた。

その後も映画界からのオファーが絶えることは無く、1979年には『ピンボールの青春』と『裸足の天使』で主演を務めた。
1980年の『青い珊瑚礁』と本作品でも主演を務め、映画もヒットした。
この頃になると、ブルック・シールズはアメリカだけでなく世界中で人気スターとなっていた。
日本でも、外国人美女の代表格のような扱いを受けていた。
当時の日本で人気だった「外国人美女」と言えば、ブルック・シールズ、ファラ・フォーセット、ソフィー・マルソーといった辺りかな。

そんなブルック・シールズの相手役を務めたマーティン・ヒューイットは、これが映画デビュー作。
映画はヒットしたし、大人気だったブルック・シールズの相手役なので、きっと本人は「ここから一気にスター街道か」と期待したんじゃないかな。
しかし実際には人気がブレイクすることも無く、その後もパッとしない役者人生が続いた。
そもそも、本作品はヒットはしたものの、決して映画としての評価が高かったわけではない。むしろ酷評の嵐だったのだ。

どうやら「真っ直ぐで純粋な愛の物語」「一途で美しい青春模様」として描こうとしているようだが、あまりにも無理があり過ぎるだろ。
そもそもデヴィッドがバターフィールド家へ勝手に上がり込み、夜中まで潜んでおいてジェイドと何度もセックスを繰り返している時点で、もう無理だわ。
それをジェイドの両親に容認してもらっているだけでも、充分すぎるぐらい甘やかされていると言っていい。
まあ、そこでのアンとヒューの寛容すぎる対応が間違っていたってことになるんだけどね。そのせいでジェイドもデヴィッドも付け上がり、調子に乗ってしまうわけで。
結果的には、「最初からもっと厳しくしておくべきだった」ってことになる。

とは言え、さすがにバターフィールド夫妻も、ここまでジェイドもデヴィッドが聞き分けの無いボンクラだとは思っていなかったんだろう。
特にデヴィッドの常軌を逸したイカレっぷりは、まるで想定していなかったんだろう。
デヴィッドは「まだ若くて未熟だから」という「若さゆえの過ち」で許せるレベルを遥かに超越して、どうしようもないクズ野郎になるのだ。
周囲の迷惑を考えず、ジェイドへの気遣いも皆無で、「自分が望むことは全て叶えられるべき」という感覚なのだ。
「ジェイドのことが好きなんだから、そのためなら何をしても構わない」と信じているのだ。

ここまで同情の余地が皆無のサイテー男として描くのなら、どこかのタイミングで「自分の愚かしさに気付いて改心する」という展開があったり、あるいは最後に「気付いた時には遅かった」みたいな結末が用意されたりするのかと思った。
しかし、デヴィッドは最後まで何も変わらず、「自分は何も間違っていない」という揺るぎない精神の持ち主なのだ。
つまり、この映画は、そんなデヴィッドを「愛のために真っ直ぐに生きる愛すべき男」と捉えているのだ。
いや、クソだろ、こんな男。
簡単に言葉にすべきではないと分かった上で、それでも「死ねばいいのに」と言いたくなるぐらいのクソだぞ。

デヴィッドが友人から放火の話を聞かされた時点で容易に想像できるが、ホントに彼はバターフィールド家に放火する。
火が燃え広がると慌てて消そうとしたりジェイドたちを避難させたりするけど、それで情状酌量の余地が生じることなんて皆無だ。
火を付けた時点で、完全にアウトだからね。
そもそも「燃え広がったから慌てて消そうとする」って、どういうことなんだよ。
火を付けたら燃え広がるのは当然であって、「そんなことになるとは思わなかった」ってのは全く言い訳にならんぞ。

しかも、さすがに屋敷を全焼させて一家を殺しそうになったんだから反省や改心があるのかと思ったら、そんなことは全く無いのだ。
入院にしても、デヴィッドの犯罪に比べれば遥かに軽い処分だから、「頭がおかしくなりそうだから早く出して」と訴えられても同情心は全く湧かないし。
むしろ、「甘えたこと言ってんじゃねえぞ」と言いたくなるし。その後の展開を見た限り、判事のヌルすぎる判断が間違いだったってことになるし。
あと、なぜミラーがデヴィッドの退院を許可するのかもサッパリ分からんし。
デヴィッドの言動を見ていたら、どう考えたってシャバに出したらヤバい奴でしょうに。

実際、デヴィッドは退院した途端にアンの元へ飛び、ジェイドの居場所を突き止めて会いに行くのだ。保護観察処分中で会っちゃダメなはずなのに、そんなことはお構い無しなのだ。
完全にストーカーでしょ。
そんでデヴィッドを見つけたヒューが追い掛けて車にひかれ、命を落とす。
目の前でヒューが死んでデヴィッドはショックを受けるが、それで罪悪感を覚えて少しは自制するのかというと、そんなことは無い。ジェイドと会って、セックスするのだ。
どんだけクズなんだよ。

事故現場にデヴィッドがいたことを知ったキースは「お前のせいで父が死んだ」と責めるが、その通りだと感じる。
しかもデヴィッドは、その事実を打ち明けずにジェイドとセックスし、一緒にシカゴへ行こうとする。面の皮が厚いにも程があるだろ。どうしようもなく性根が腐り切っているだろ。
こいつの場合、「あれは事故だった」と擁護する気持ちは全く起きないぞ。
しかもデヴィッドはジェイドに真相がバレると、「あれは事故だった」と言い訳するだけで全く罪の意識を見せないんだぜ。
最後までドイヒーじゃねえか。

(観賞日:2023年12月16日)


第2回ゴールデン・ラズベリー賞(1981年)

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[フランコ・ゼフィレッリ]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演女優賞[ブルック・シールズ]
ノミネート:最低助演女優賞[シャーリー・ナイト]
ノミネート:最低新人賞[マーティン・ヒューイット]

 

*ポンコツ映画愛護協会