『カウガール・ブルース』:1993、アメリカ

ヴァージニア州の郊外の町で生まれたシシー・ハンクショーは、生まれ付き人一倍大きな親指を持っていた。成長したシシーは、その指を使ってヒッチハイクを続けるようになった。29歳となった彼女は定住する場所を持たず、アメリカ全土を移動していた。
ある日、シシーの私書箱に手紙が届いた。手紙の送り主は、彼女が1965年から1970年まで女性用品のCMモデルを務めていたヨニヤム社のオーナー、カウンテスだった。カウンテスの手紙には、シシーに会わせたい男性がいることが書かれていた。
シシーはマンハッタンに向かい、カウンテスに会った。カウンテスはシシーに、写真をやめて水彩画を始めたことを告げる。カウンテスが紹介したい男というのは、その水彩画の先生で、純粋のインディアンであるジュリアンのことだった。だが、ジュリアンはシシーに会った途端、あまりの緊張で喘息の発作を起こしてしまう。
カウンテスはシシーに、エステを目的とするラバー・ローズ牧場を所有していること、その牧場が絶滅寸前のシロヅルの生息地にあることを告げた。そしてカウンテスは、ラバー・ローズ牧場でスプレーのCMモデルをしてほしいとシシーに依頼した。
カウンテスは、牧場で働いているカウガール達と、山に住んでいる聖なる男のチンクには近付かないように警告し、シシーを送り出した。ラバー・ローズ牧場に向かったシシーは、牧場の管理人エイドリアンの出迎えを受けた。エイドリアンはシシーに、カウガール達の勝手な行動が。牧場のイメージを台無しにしていると語った。
ラバー・ローズ牧場に到着したシシーは、カウガールのリーダー格ボナンザ・ジェリービーンと会った。カウガールの間では、デビーとデロレスが意見の相違から対立しているらしい。やがてシシーは、ジェリービーンと互いに惹かれ合うようになった。
カウガールはカウンテスと対立し、牧場を渡すよう要求した。ジェリービーンは強引にカウンテス達を追い出し、牧場を占拠する。カウンテスへの恩義とジェリービーンへの愛の間で混乱したシシーは牧場を飛び出し、山で出会ったチンクと一夜を共にする…。

監督&脚本&製作総指揮はガス・ヴァン・サントJr.、原作はトム・ロビンス、製作はローリー・パーカー、製作協力はメアリー・アン・マリノ、撮影はジョン・キャンベル&エリック・アラン・エドワーズ、編集はガス・ヴァン・サントJr.&カーティス・クレイトン、美術はミッシー・スチュワート、衣装はベアトリス・アルナ・パスツォール、音楽はk・d・ラング&ベン・ミンク。
主演はユマ・サーマン、共演はロレイン・ブラッコ、ノリユキ・“パット”・モリタ、アンジー・ディキンソン、キアヌ・リーヴス、ジョン・ハート、レイン・フェニックス、ロザンヌ・アーノルド、エド・ベグリー・Jr.、クリスピン・グローヴァー、ヘザー・グラハム、バック・ヘンリー、キャロル・ケイン、ウド・キアー、ヴィクトリア・ウィリアムズ、ショーン・ヤング、グレイス・ザブリスキー他。


カウンター・カルチャーの代表的作品と称されたトム・ロビンスの小説を映画化した作品。シシーをユマ・サーマン、デロレスをロレイン・ブラッコ、チンクをノリユキ・“パット”・モリタ、エイドリアンをアンジー・ディキンソン、カウンテスをジョン・ハートが演じている。
ジュリアン役のキアヌ・リーヴスは、わずかな出演時間で退場。ジェリービーン役のレイン・フェニックスは、リヴァー・フェニックスの妹でホアキンの姉。カウガールの1人としてヘザー・グラハム、ジュリアンの友人としてショーン・ヤングが出演している。
ナレーションを担当しているのは、原作者のトム・ロビンス。他に作家のケン・キージーがシシーの父親役で、作家ウィリアム・バロウズが本人役で顔を見せている。
また、アンクレジットだがリヴァー・フェニックスが出演しており、この作品は彼に捧げられている。

ガス・ヴァン・サントという人は、『ドラッグストア・カウボーイ』にしろ『マイ・プライベート・アイダホ』にしろ、メリハリを付けてテンポ良く進めるということに興味を示さなかった監督だ。
そして、この作品においても、やはり平坦にストーリーを進めていく。
そして、ヘンテコリンな設定や、ヘンテコリンなキャラクターの存在が、その単調ぶりを際立たせることになった。
珍奇な話を淡々と、しかも饒舌に語られても、気持ちが入り込めずに退屈に感じてしまうだけだ。
ナレーションの多さも、退屈を助長する。

もっとカメラワークや演技にしても、風変わりであることを強調した方がいいのではないかと思うのだが、ヘンな話であるにも関わらず、ヘンであることを抑えようとしているように見受けられる。
それは「スカす」というのとは、似ているようで全く違う。
漫才に例えるならば、この作品はボケに対してツッコミを入れないのではなく、ボケを潰しているような演出になっているのだ。
ヘンな部分を強調して、それを当たり前のように見せるのではなく、ヘンな部分そのものを抑え込もうとしているのだ。

ハッタリの思い切りが足りないから、不条理な話に付いていけない。意味不明な行動や不可思議な展開の連続に、どんどん気持ちが引いていくばかりだ。
そこを問答無用で突破するほどの、強引なパワーもデタラメなエナジーも全く感じられない。
「行き当たりばったりであることは神聖だ」というのが監督のメッセージらしいが、実際、ストーリーはメチャクチャだ。
ほとんど奇抜なハッタリだけで勝負しているような作品なのだから、グイグイと引っ張っていかないとキツイのに、勢いが無いのはキツイ。


第15回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演女優賞[ユマ・サーマン]
ノミネート:最低助演女優賞[ショーン・ヤング]

 

*ポンコツ映画愛護協会