『コレリ大尉のマンドリン』:2001、イギリス&フランス&アメリカ

1940年、イオニア海に浮かぶギリシャのケファロニア島。医師イアンニスの娘ペラギアは、漁師の恋人マンドラスから求婚された。イアンニスから「結婚は愛だ。持参金は出さない」と言われたペラギアは、強く抗議した。イアンニスはペラギアに、「もうすぐ戦争だ。結婚はその後だ」と告げた。イタリア軍がアルバニア国境を越えてギリシャに攻め入ろうとしており、島の男達は祖国を守るため戦いに参加することを決めた。マンドラスはペラギアに婚約指輪を渡し、出征した。
ペラギアは毎日のように手紙を書くが、マンドラスからの返事は来ないまま1年が過ぎた。アルバニアで敗北したヒトラーは報復としてアテネを爆撃し、ギリシャはドイツとイタリアによって分割されることになった。北部とサロニカ及びクレタ島はドイツ、他はイタリアが統括することになったが、最終権限はドイツが握っている。
ケファロニア島には、アントニオ・コレリ大尉率いるイタリア軍がやって来た。コレリは陽気な男で、マンドリンを背負って現われた。ペラギアの元には、傷付いたマンドラスが戻ってきた。マンドラスは敵への憎しみに満ちており、仲間のディミトリやスピロスと共にパルチザンに加わる決意を固めていた。
コレリはペラギアの前に現れて愛を訴え、マンドリンを弾いた。イアンニスは医薬品の補給と引き換えに、イタリア軍将校を宿泊させる命令を承諾した。やって来たのはコレリだった。コレリと仲間のカルロ達は浜辺で娼婦をはべらし、楽しそうに歌って過ごす。ドイツ軍のバルグ大佐の部下グンター大尉も、仲間に加わった。ペラギアは戻ってきたコレリに銃を向け、命懸けで戦った島の男達と比較して非難した。コレリは傷付けていたことを謝罪し、基地の宿舎に戻った。
コレリは島民との親睦を深めるため、ダンス・パーティーを開催した。グンターはコレリに頼んで、ペラギアの友人エレニを誘った。ペラギアはコレリに見せ付けるように、他のイタリア兵を誘って踊った。ある日、20年前のトルコ軍の機雷が砂浜に打ち上げられた。コレリは部隊を率いて爆破するが、怪我を負ってペラギアの手当てを受けた。
連合軍がイタリアに上陸したと聞いたイタリア兵は、国に帰れると大喜びする。信じられないといった態度を示すグンターに、コレリはイタリア兵の気質を語る。コレリは島民の前でマンドリンを演奏し、曲名を聞かれて「ペラギアの歌」と答えた。コレリは別の場所で改めてペラギアに愛を告げ、2人は肌を重ねた。
イアンニスはペラギアの気持ちを知り、マンドラスと彼の母ドロスーラに礼を尽くせと告げる。ペラギアがドロスーラの元へ行くと、パルチザンに参加しているマンドラスが戻ってきた。マンドラスはペラギアに対し、コレリと会わせるよう求めた。ムッソリーニが降伏したため、コレリ達は帰国できることになった。だが、ガンディン将軍から「バルグ大佐との合意事項で武器を全て引き渡すことになった」と聞かされ、強く反発する。
コレリはペラギアの案内で、マンドラスの元へ向かう。マンドラスはコレリに対し、ドイツ軍から祖国を守るために武器を渡してほしいと求められた。マンドラスはコレリに、「レフカダ島のイタリア兵は強制収容所に送られた。ドイツ人を信用するな」と告げる。コレリは目の前で複数のイタリア兵をドイツ軍に射殺され、パルチザンと共に戦うことを決める…。

監督はジョン・マッデン、原作はルイ・ド・ベルニエール、脚本はショーン・スロヴォ、製作はティム・ビーヴァン&エリック・フェルナー&マーク・ハッファム&ケヴィン・ローダー、共同製作はライザ・チェイシン&ジェーン・フレイザー&デブラ・ヘイワード、製作協力はスージー・タシオス、撮影はジョン・トール、編集はミック・オーズリー、美術はジム・クレイ、衣装はアレクサンドラ・バーン、音楽はスティーヴン・ウォーベック。
出演はニコラス・ケイジ、ペネロペ・クルス、ジョン・ハート、クリスチャン・ベイル、イレーネ・パパス、デヴィッド・モリッシー、パトリック・マラハイド、ピエロ・マッジオ、ヴィキ・マラガキ、ゲラシモス・スキアダレシス、アスパシア・クラリ、カテリナ・ディダスカルー、ジョアンナ=ダリア・アドラタス、アイラ・タヴラリデス他。


ルイ・ド・ベルニエールの同名小説を基にした作品。
コレリをニコラス・ケイジ、ペラギアをペネロペ・クルス、イアンニスをジョン・ハート、マンドラスをクリスチャン・ベイル、ドロスーラをイレーネ・パパス、グンターをデヴィッド・モリッシー、バルグをパトリック・マラハイドが演じている。
監督は『恋におちたシェイクスピア』のジョン・マッデン。

登場する面々は、揃って英語を話している。
しかも御丁寧に、訛りのある英語を喋っている。
英語圏で製作された作品だから、当然と言えば当然なのかもしれない。
ただ、「違う文化、違う文明を持った人々が、言葉が通じない中で“心”で通じ合うようになっていく」という部分が見えてこそ、「敵対関係だった人々が親睦を深める」ということの意味が強く伝わるような気がするが。

マンドラスが出征した後、あっという間に夏から冬へと季節は移り、ペラギアが100通目の手紙を書いている。展開がえらく慌ただしい。だから、次々に死亡者の通知が来る中、ずっとマンドラスからの便りが来ないのでペラギアが不安でたまらないことを描写したいようだが、ピンと来ない。展開の慌ただしさは、その後も持続している。
戻ってきたマンドラスがペラギアから「なぜ返事をくれなかったのか」と問われて「俺は字が読めない」と答えるが、今さらそんなことを言うなよ。出発前に手紙を書くと約束していたんだから、その時に言えよ。っていうか、お前ら長く付き合っていたんだろうに。ペラギアにしても、マンドラスが文盲だってことを今まで知らなかったのかよ。

イタリアの将軍がドイツ軍に武器を引き渡すと行った時、兵士の1人が「戦争で武器を捨てるなど男のすることではない」と強く抗議するが、お前ら今まで浜辺で娼婦をはべらせて歌っていただけじゃねえか。そこで強く反発されても、それまでに1シーンたりとも「兵士としての生き様、戦う男の誇り」を見せていないんだから、説得力ゼロだ。
コレリ達は、「普段はノンビリしていても、いざという時には勇敢でたくましいところを見せる」ということが全く無いまま、パルチザンに協力する展開へと進んでいく。で、あっさりとドイツ軍の捕虜になり、いざという時の強さが全く無いことが判明する。心優しき兵士達じゃなくて、ただのヘタレだったのね。

どうやら原作は、かなりのボリュームがある小説のようだ。それをかいつまんで、かいつまんで、131分の枠に収めた際に、無理が生じてしまったのだろう。恋愛と戦争の絡ませ方、そこのバランス配分という部分に最も弊害が出ているように思える。さらに困ったことには、タイトルにまでなっているのに、マンドリンの存在価値が全く見出せない。
ペラギアはコレリが来た時に嫌悪しているような態度だったが、彼がマンドリンを演奏すると、もう心を打たれたかのような表情になっている。親睦会でペラギアはコレリを避けるようにして別の兵士と踊るが、それってもう完全に惹かれている証拠だよな。
その一方で、マンドラスが戻ってきた段階でペラギアの彼に対する愛を感じない。ペラギア、コレリ、マンドラスという3人の恋愛模様が浅いこと、浅いこと。
そもそも、コレリという男が薄いし。

ペラギアがコレリと完全に相思相愛状態になった後も、マンドラスは戦いに気持ちが集中しているので、そこでの三角関係は成立しない。ペラギアはコレリが来る前からマンドラスに対する気持ちが無くなっているので、彼女が2人の男の間で揺れ動く、葛藤するようなことも無い。何の問題も無く、スムーズに別の男に乗り換えることが出来ている。
終盤、ドイツ軍とパルチザンの激しい戦いが繰り広げられる中で、もう恋愛なんて完全にどうでも良くなっている。いっそコレリとマンドラスの反目から和解、そして友情を深めていくというドラマをメインに据えた方がいいんじゃないかと思えるぐらいだ。そこまでのペラギアとコレリの恋愛劇は薄っぺらいんだし。
ペラギアを巡る三角関係の中でコレリとマンドラスが友情を育んでいく展開にすることも出来るけど、前述したように三角関係は全く成立していないからね。

コレリがカルロの自己犠牲によって生き残り(ここも2人の絆を巡るドラマが充実していないから今一つ盛り上がらない)、そこで話はエンディングへ向かうのかと思いきや、タイムワープで1947年に移る。
そこがエピローグになるのかと思ったら、さらに1953年に時間が飛んで、島が大地震に襲われる下りが入り、その後、ようやくエンディング。
2つのタイムワープは要らないなあ。
しかも御丁寧なことに、この映画は島でドイツ軍に処刑されたイタリア人兵士だけでなく、その地震で犠牲となった島民にも捧げられている。
だけどさ、この映画において、地震のシーンって本筋とは何の関係も無いし、明らかに蛇足なのよね。捧げる言葉を最後に記すために、無理な逆算で蛇足のシーンを入れたのかと邪推したくなるぐらい不要だと思うぞ。


第22回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低主演女優[ペネロペ・クルス]
<*『ブロウ』『コレリ大尉のマンドリン』『バニラ・スカイ』の3作でのノミネート>


第24回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演女優】部門[ペネロペ・クルス]
<*『ブロウ』『コレリ大尉のマンドリン』『バニラ・スカイ』の3作でのノミネート>
ノミネート:【最悪のスクリーン・カップル】部門[ペネロペ・クルス&ニコラス・ケイジかトム・クルーズかジョニー・デップ]
<*『ブロウ』『コレリ大尉のマンドリン』『バニラ・スカイ』の3作でのノミネート>

ノミネート:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい(男性)】部門[ニコラス・ケイジ]

 

*ポンコツ映画愛護協会