『コブラ』:1986、アメリカ

ロサンゼルスのスーパーで、銃を持った男が客を人質に取って立てこもった。警察は犯人の説得を諦め、1人の男を呼んだ。それはロサンゼルス市警の暴力刑事マリオン・コブレッティ、通称コブラ。彼はたった1人でスーパーにで潜入し、犯人を射殺する。
ロサンゼルスではナイト・スラッシャーと呼ばれる狂信的な集団が虐殺を繰り返していた。モデルをしているイングリッド・ヌードマンは彼らの顔を目撃してしまったことから、命を狙われる。彼女が収容された病院にもナイト・スラッシャーが現れ、殺そうとする。
コブラと相棒ゴンザレスはイングリッドを病院から安全な場所に移送しようとするが、その途中でナイト・スラッシャーの襲撃を受ける。どうやら警察内部に情報を漏らしている人物がいるようだ。コブラはイングリッドを市外へと逃がすことにしたが、またもナイト・スラッシャーが襲ってくる…。

監督はジョージ・P・コスマトス、原作はポーラ・ゴズリング、脚本はシルヴェスター・スタローン、製作はメナハム・ゴーラン&ヨーラム・グローバス、製作協力はトニー・ムナフォ、製作総指揮はジェームズ・D・ブルベイカー、撮影はリック・ワイト、編集はドン・ジマーマン&ジェームズ・サイモンズ、美術はビル・ケニー、衣装はトム・ブロンソン、音楽はシルヴェスター・リヴェイ。
主演はシルヴェスター・スタローン、共演はブリジット・ニールセン、レニー・サントーニ、アンドリュー・ロビンソン、リー・ガーリングトン、ジョン・ハーツフェルド、アート・ラフラー、ブライアン・トンプソン、デヴィッド・ラッシュ、マルコ・ロドリゲス、ロス・セント・フィリップ、ヴァル・エイヴァリー、ジョン・ホーク、ニック・アンゴッティー、ニーナ・アクセルロッド他。


潰しの利かないマッチョマッチョ男、スタローン先生のやっつけ仕事。
ポーラ・ゴズリングの小説『逃げるアヒル』をスタローンが脚本化。出来上がったシナリオは、原作とは全く関係の無い内容となった(だったらオリジナル作品としてやればいいのに)。
どうやら短時間で仕上げたらしい脚本に、当時のテメエのスケを登場させるという公私混同っぷり。そして製作がゴーラン&グローバス。条件は揃っているのだから、これがポンコツ作品にならないわけがない。

スタローンがヒロインのイングリッド役に当時の奥さんを据えてしまったものだから、そこにキャスティングとしての大きな歪みが生まれている。
だってさ、見た目からして、いかにもキツそうな&強そうなブリジット・ニールセンが、ひたすら守られるだけの役を演じるってのは、無理がありすぎるでしょ。ちょっと怖いよ。

コブラはいつもマッチをくわえている。なぜかは不明。いつも革の手袋をはめていて、それを脱がずにピザを食う。食べにくいだろ(そういえば、食べるシーンの多い映画だ)。
スタイルにこだわるのは他に幾らだってあるし、それは別に構わないんだけど、中身が薄いもんだから、そこだけ浮いて見えちゃうのよね。

イングリッドが入院している病院にナイト・スラッシャーが現れた時、コブラは慌てて駆け付けようとする。でも、結局は何もしていない。
必死で逃げたイングリッドが非常ベルを押して大勢の人が現れたので、ナイト・スラッシャーは逃げて行く。コブラは犯人を目撃することさえ出来ていない。

マトモな奴はほとんど登場しない。クレイジーな連中のフェスティバル状態。
もちろん主人公コブラもイカれてる。
彼はルール無用の男。タイガーマスクの悪役レスラーみたいですな。
で、法で裁けない奴を始末する。
ま、スタローン版の“デス・ウィッシュ”シリーズみたいな作品なんですな、これは。

冒頭で登場するスーパー立てこもり男は、いきなり客ではなく野菜や果物に発砲する。で、警察に囲まれてから、客の1人を逃げさせて背後から射殺。
何がしたいんだか、さっぱり分からない。
で、「新世界を作る」とか言ってる。
その目的と彼の行動は、どう頑張っても結び付いてくれない。

ナイトスラッシャーの連中は、ハンマーや斧といった「音の出ない凶器」を使っているらしいけど、どう考えても音は出るだろ。実際、ハンマーや斧を使って車を壊したりしてる時に、思いっきり大きな音が出てるぞ。
なぜかナイトスラッシャーの連中、集会では両手に持った斧をみんなでガンガン鳴らしているのだが、その様子は完全にアホのお遊戯会だ。

で、ナイト・スラッシャーの連中は、最初は斧やハンマーを使っていたのに、そんな決まりなど全く無かったかのように、途中からは普通に銃を使い始める。
どうやら一貫性は無いらしい。
そんで、ナイト・スラッシャーの連中は、最初は素顔をさらして人殺しをしてたのに、イングリッドを襲う辺りからは、ストッキングなどを使って顔を隠そうとする。
やっぱり一貫性は無いらしい。

ナイト・スラッシャーの連中は、具体的な目標を持っていないらしい。「新世界を作る」というのが口癖なのだが、ただ無差別殺人をやってるだけ。
どうやら凶悪だけど、オツムは弱いようだ。絶対的なカリスマを持つリーダーもいないようだし、なぜ妙に連帯感が強いのか不思議なぐらいだ。

伏線を張ったり、意外な展開を用意したり、そういうことはスタローンの得意分野ではない。だから警察の内部情報を漏らしたのが誰かということも、早い段階でバレている。とっても内容が薄いので、途中でMTV風味の音楽&映像を使って時間を稼ぐ。
そして私は途方に暮れる。


第7回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演男優賞[シルヴェスター・スタローン]
ノミネート:最低主演女優賞[ブリジット・ニールセン=スタローン]
ノミネート:最低助演男優賞[ブライアン・トンプソン]
ノミネート:最低新人賞[ブライアン・トンプソン]

 

*ポンコツ映画愛護協会