『クリフハンガー』:1993、アメリカ&イタリア&フランス
ロッキー山脈。山岳レスキュー隊のゲイブ・ウォーカーは、登山に行って足を脱臼した仲間ハル・タッカーと彼の恋人サラの救出に出動した。ヘリを操縦する恋人ジェシーと隊長フランクの指示を受けながら、ゲイブはワイヤーをセットした。先にハルがワイヤーを伝ってヘリに辿り着き、続いてサラの番になった。しかし途中でハーネスが外れ、サラは宙吊りになってしまう。ゲイブは救出に向かい、サラの腕を掴んだ。しかしサラの手袋が滑って脱げてしまい、彼女は谷底へと落ちた。
8か月後。コロラド州デンバーの財務省造幣局では、国際銀行決済のための1億ドルが入った3個のトランクを輸送する準備が進んでいた。飛行機はサンフランシスコへ向かうことになっている。輸送を担当する職員トラヴァースの元に、高官のライトがFBI捜査官マセソンを連れて来た。マサセンがサンフランシスコへ転勤することになったため、特別に同乗させてほしいということだった。
しばらくロッキーを離れていたゲイブが、久しぶりに戻ってきた。彼は知り合いの青年エヴァンとブレットと遭遇し、「山でダイビングをするから一緒に行かないか」と誘われる。しかし、あの事故から全く山に登っていないゲイブは断った。彼はジェシーの元へ赴いた。彼女はゲイブが戻ってきたのだと考えるが、そうではなかった。ゲイブは「ここでは暮らせない。一緒に来て欲しい」と持ち掛ける。しかしジェシーは「私はここを離れない」と拒んだ。
離陸した専用機の中にいたマセソンは、小型ジェット機が追って来るのを目にした。彼はトラヴァースがハイジャックを企んでいると確信し、銃を構えた。トラヴァースはマセソンと財務省の職員2名に銃弾を浴びせた。トラヴァースの仲間である操縦士は副操縦士を射殺した。小型ジェット機には国際的な犯罪者クエイルンと恋人のクリステル、手下のカイネットやデルマーたちが乗っており、トラヴァースと操縦士は彼らの仲間だったのだ。
一味はケーブルを専用機に繋ぎ、トラヴァースは爆弾をセットした。トラヴァースがケーブルで小型ジェット機に移動し、続いて操縦士が1億ドルの入ったトランクを運ぼうとする。しかし、まだ生きていたマセソンが銃を乱射し、パイロットは墜落した。マセソンの銃撃によって、小型ジェット機の給油口に穴が開いた。専用機は爆発し、ケーブルに吊り下げられていたトランクは雪深いロッキー山中へと落下した。給油口をやられた小型ジェット機は雪山に不時着し、飛行不能となった。
クリステルは無線を使い、遭難を装って山岳レスキュー隊に助けを求めた。ヘリコプターが出動できる状況ではないため、ハルが一人で救助へ向かった。ジェシーはゲイブの元へ行って事情を説明し、ハルの救助活動を手伝うよう求めた。しかしゲイブは「あいつは喜ばない。それに、俺はもう救助隊員じゃないし、長く山に登っていないから感覚が鈍っている」と断った。ゲイブがロッキーを去ろうとすると、ジェシーは「ここで勇気を出さなかったら、ずっと悔やみ続けることになるわよ」と告げた。
専用機墜落の知らせを受けたライトの元へ、FBI捜査官のヘイズとマイケルズがやって来た。彼らは、マセスンが機密調査ために専用機に乗り込んだことを明かした。FBIは専用機の紙幣が狙われているという情報を掴み、内部犯行の可能性が高いと考えたのだ。ライトは「運んでいる紙幣は通常では使えない」と言うが、ヘイズたちはクエイルンの資料を見せ、「彼なら紙幣を監禁できる国際的コネクションを持っている」と説明した。
ハルが雪山を登っていると、ゲイブが姿を見せた。しかしハルは「お前のせいでサラは死んだ。今すぐに下山しろ」と罵った。ゲイブは「救助が終わったら下りるさ」と言い、ハルと共に遭難者の元へ向かう。待ち受けていたクエイルンたちは、2人に銃を向けた。彼らはトラヴァースが持っている探知機を使ってトランクの位置を掴み、そこへ案内するようゲイブとハルに要求した。
一つ目のトランクがある崖の下に到着した一味は、ゲイブにトランクを取って来るよう要求した。ゲイブがトランクを見つけた時、崖の下ではクエイルンが手下に「案内役は1人で充分だな。あいつが下りてきたら始末しろ」と命じた。それを聞いたハルは、ゲイブに「降りてくるな、殺されるぞ」と叫んだ。ゲイブは足に結ばれた紐を外し、逃げようとする。一味が銃撃すると、そのせいで雪崩が発生した。ゲイブは雪崩に巻き込まれ、トランクが開いて紙幣が散乱した。
ジェシーからハルの無線に連絡が入った。ハルはクエイルンに命じられ、「登山者はいなかった」と嘘の報告をした。ジェシーはフランクに頼み、ヘリで西の谷まで送ってもらうことにした。クエイルン一味はハルを連れて、2つ目のトランクがある場所を目指す。生きていたゲイブが小屋に辿り着くと、そこにはジェシーがいた。ゲイブはジェシーに事情を説明し、2人でハルを助けに向かった。ゲイブは2つ目のトランクを発見し、紙幣を抜き取った。
一味がトランクに辿り着くと、中には「取引するか?」と書かれた紙幣が1枚だけ残されていた。ゲイブは追って来た一味の1人ライアンを倒し、紙幣を燃やして暖を取った。翌朝、一味が歩いていると、何も知らないエヴァンとブレットがハルに呼び掛けた。ハルは慌てて「逃げろ」と叫ぶ。一味の銃弾を浴びてブレットは死亡するが、エヴァンはスカイダイビングで脱出した。
ゲイブとジェシーは望遠鏡で一味の姿を確認し、ハルが遠回りルートを選んでいることに気付いた。ゲイブたちはトランクのある場所に先回りするため、岩場の中を進んだ。ゲイブが岩場を抜けて地上に顔を出すと、一味の1人カイネットが待ち受けていた。銃撃されたゲイブは、岩場に滑り落ちた。追い掛けてきたカイネットの攻撃を受けて窮地に陥ったゲイブだが、何とか逆転して退治した。しかし一味は、ゲイブたちがいる岩場の真上に時限爆弾を仕掛けた…。監督はレニー・ハーリン、原案はジョン・ロング、映画原案はマイケル・フランス、脚本はマイケル・フランス&シルヴェスター・スタローン、製作はアラン・マーシャル&レニー・ハーリン、共同製作はジーン・パトリック・ヘイズ&ジェームズ・R・ザトロキン&デヴィッド・ロットマン、製作協力はトニー・ムナフォ&ジム・デヴィッドソン、製作総指揮はマリオ・カサール、共同製作総指揮はリンウッド・スピンクス、撮影はアレックス・トムソン、編集はフランク・J・ユリオステ、美術はジョン・ヴァローン、衣装はエレン・ミロジニック、音楽はトレヴァー・ジョーンズ。
主演はシルヴェスター・スタローン、共演はジョン・リスゴー、マイケル・ルーカー、ジャニン・ターナー、ラルフ・ウェイト、ポール・ウィンフィールド、レックス・リン、キャロライン・グッドオール、レオン、クレイグ・フェアブラス、グレゴリー・スコット・カミンズ、デニス・フォレスト、ミシェル・ジョイナー、マックス・パーリック、トレイ・ブロウネル、ザック・グレニア、ヴィトー・ルギニス、ドン・デイヴィス、スコット・ホクスビー、ジョン・フィン、ブルース・マッギル、ローズマリー・ダンスモア他。
『エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃』『ダイ・ハード2』のレニー・ハーリンが監督を務めた山岳アクション映画。
シルヴェスター・スタローンと共に脚本担当者として名前が表記されているマイケル・フランスは、これがデビュー作。
ゲイヴをスタローン、クエイルンをジョン・リスゴー、ハルをマイケル・ルーカー、ジェシーをジャニン・ターナー、トラヴァースをレックス・リン、クリステルをキャロライン・グッドオールが演じている。1976年の『ロッキー』でブレイクしたスタローンは、そこからアクション俳優として様々な映画で活躍していた。
だが、1980年代の後半に入ると、勢いに陰りが見え始めた。
代表作である『ロッキー』シリーズと『ランボー』シリーズは続いていたが、自ら脚本も兼ねた1988年の『ランボー3/怒りのアフガン』、1990年の『ロッキー5/最後のドラマ』は、いずれも芳しい結果を得られなかった。そんな中で、ライバルであったアーノルド・シュワルツェネッガーは1988年の『ツインズ』でコメディーに挑戦し、これがヒットしたことで新しい路線を開拓した。
スライが「それなら俺だって」という気持ちになったのも、分からないではない。
何しろ、アクション俳優としてブレイクする以前は、コメディー映画にも出演していたのだ。
そこで1991年に『オスカー』、翌年に『刑事ジョー/ママにお手あげ』という2本のコメディー映画に主演したが、完全に惨敗だった。「やっぱり俺にコメディーは向いていない」ということで再びアクション路線に目を向けたスライが、自ら脚本を書くほどの意気込みで取り組んだのが、この作品である。
そんなわけだから、スライが「俺はアクション俳優だ」ということを存分にアピールするための内容になっている。
それも、単に「アクションシーンで活躍する姿を見せる」というものではない。
シュワルツェネッガーが『コマンドー』や『ゴリラ』でやっていたような、「筋肉をアピールしよう」という意識が強い。冒頭、ゲイブが救助に失敗してサラが死ぬシーンが描かれる。 だが、彼女がピンチに陥るまでは、ゲイブもハルも軽妙なノリで余裕の面持ちでいる。
なので、そこから「サラが死んだことで2人の関係が険悪になる」という流れへ持って行くのがスムーズに思えない。
あと、ハルが危険な登山にサラを誘った上、自分は救助活動に関して何もしていないというのは、設定としてどうなのかと思うぞ。この救助シーンでは、サラはピンチに陥っても、すぐには転落しない。
ゲイブが助けに行って、腕を掴んでから落下する。
それはシナリオとして「そっちの方が面白いから」ということよりも、たぶんスタローンの「筋肉をアピールしたい」という意識が強く出ているのではないかと思う。
サラを片手で引き上げようとする時の、その上腕の筋肉が隆起しているところを見せたかったのではないか。ジェシーは戻ってきたゲイブに対して「辛いのは貴方だけじゃない、それでも逃げたりしなかったわ」と、冷たい態度で言う。ところが、彼を突き放すのかと思いきや、「貴方は全力を尽くしたじゃない。全ての責任を負う必要は無いわ」と擁護する。
どないやねん。だったら、もっと温かく励ませよ。芝居の付け方が変だぞ。
で、その後に「私は貴方の一番の理解者だと思ってた」という割には、「貴方と別れたとしても、ここを離れないわ」とゲイブの誘いを冷徹に拒絶する。キャラ造形が良く分からない。
っていうか、そもそもゲイブがジェシーを誘うために久々に戻ってきたという設定からして、どうなのかと。自分から戻らない方が良かったんじゃないか。クエイルンの一味は「飛行中の専用機をハイジャックし、小型ジェット機で接近してケーブルを繋ぎ、トラヴァースとパイロットに金の入ったトランクを運ばせる」という作戦を実行する。
だが、それって無駄にリスクが高くないかね。もうちょっと上手いやり方があると思うぞ。
あと、そのシークエンスで、トラヴァースを怪しんだマセスンがマシンガンを構えるのは変だろ。
普通、FBI捜査官が携帯しているのは拳銃だと思うんだが。わざわざマシンガンを持ち込んだのかよ。あと、そこでは小型ジェット機の連中が酸素マスクを着用しており、クエイルンの顔が良く分からないってのも痛い。顔が分からないどころか、誰が一味のボスなのかも良く分からない。
最初はクリステルとトラヴァースが主導的立場なのかと思ってしまったぞ。
それと、普通はFBIが乗り込んだら、一味も警戒したり、作戦の延期を考えたりしそうなものだが、お構い無しなのね。
っていうかマセソンも、FBI捜査官というだけで警戒されることは予期できるし、1人じゃなく複数名で同乗した方が良かったんじゃないの。ハルが一人で救助に向かうと、ジェシーはゲイブに「彼一人じゃ無理よ」と助けを求める。
だけど、今まではずっとハル、ジェシー、フランクの3人体制でやって来たんだろ。他にメンバーはいないようだし。
ってことは、これまでだって、ヘリが出動できないような状況の時は、フランクが一人で救助に行っていたんじゃないのか。そこは設定としておかしいでしょ。
「いつものメンバーが怪我や病気など何らかの理由で急に出動できなくなった」という事情でも用意されていれば、違和感を抱かなかったかもしれんが。1つ目のトランクの場所に辿り着いた一味は、ゲイブに取りに行かせる。
で、そこでハルが「雪崩が起きそうだ、気を付けろ」と言うと、一味は「お前は何も言うな」と命じる。
おいおい、アドバイスもしちゃダメなのかよ。
あと、「サラが死んだ一件でハルがゲイブに強い憎しみを抱いている」「ゲイブはサラのことで責任を感じている」という設定は、その辺りで完全に無意味になっている。クエイルン一味はゲイブに対し、「ピッケルなどの道具は何も使うな、上着も脱いでいけ」と要求する。つまり、シャツ一枚で、命綱も無しで、ボルダリングで登っていけということだ。
お前ら、本気でトランクを取ってきてほしいと思ってるのかよ。凍え死んだら元も子も無いだろうに。
ただ、それは彼らの責任ではなく、スライのせいだ。
「厳しい条件を課せられた中で、俺が筋肉をアピールしながら必死に崖を登って行く姿をアピールしたい」という戦略のために、そういう条件を突き付けさせているのだ。そういう戦略のために利用された悪党一味は、ものすげえボンクラな連中と化している。
その後、クエイルンは、まだゲイブが下りて来ていない内に「案内役は一人で充分だから、あいつが下りて来たら殺せ」と言う。
だからハルに聞かれてしまい、「逃げろ」と叫ばれる。
そもそも、そこで「案内役は1人で充分」と考えている時点で愚かだ。あと2つのトランクが残っているのに。小屋に辿り着いて上着をゲットしたゲイブは、探知機も持っていないのに、なぜか簡単に2つ目のトランクを発見する。
3つ目のトランクへ向かう岩場を通る時は、せっかくゲットした上着を脱いで、またシャツ1枚になって腕の筋肉をアピールする。
さらに先へ進むと、氷の張った冷たい水の中に転落して上半身裸になるが、それでも平気な顔をしている。
その直後、彼はクエイルンと無線で話すのだが、体の震えは全く無い。しかも、なぜか来ている服は半袖だ。それも、ラストのアクションで筋肉を見せるための戦略だ。終盤に入っても、悪党一味はゲイブのいないところで勝手に内輪揉めを繰り返している。
トラヴァースがクエイルンに銃を向けたり、クエイルンがクリステルを射殺したりというマヌケっぷりをさらけ出す。
一味の1人デルマーは、ハルを殺すために銃を向けておきながら、それを使わずに蹴ったり殴ったりして崖から突き落とそうとして、銃を奪われて崖下に落下するというアホっぷり。
ってなわけで、筋肉を見せたいマッチョな超人と、全く団結力の無いアホな悪党一味が、大雑把な戦いを繰り広げるアクション映画である。(観賞日:2010年10月30日)
第14回ゴールデン・ラズベリー賞(1993年)
ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低助演男優賞[ジョン・リスゴー]
ノミネート:最低助演女優賞[ジャニン・ターナー]