『キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争』:2010、アメリカ&オーストラリア

ドイツ北部の人工衛星基地。部屋に入ろうとした所員のフリードリッヒは、可愛い子犬を見つけた。彼が子犬を部屋に入れると、飼い犬の レックスが激しく吠えた。フリードリッヒはレックスを叱り付け、部屋の外に出す。フリードリッヒが部屋に戻ろうとすると、ドアに鍵が 掛かっていた。レックスが窓から部屋を覗くと、子犬は機密書類を写真に収めていた。子犬はレックスに気付くとニヤリと笑い、皮を 脱いだ。それは子犬ではなく、犯罪猫のキティー・ガロアだった。キティーが逃亡した後、犬のスパイ組織「DOG」の諜報部員である レックスは、本部のルー長官に連絡を入れた。
カリフォルニア州サンフランシスコ。中古車店を経営するカリートが急に暴れ出し、事務所に人質を閉じ込めて爆弾を仕掛けた。刑事の シェーンと相棒であるジャーマンシェパードのディッグスは、現場に急行した。ディッグスはシェーンの指示を無視し、勝手に飛び出して カリートの臀部に噛み付いた。起爆スイッチが作動して事務所は大爆発を起こすが、幸いにも人質は逃げ出した後だった。その様子を モニターで見ていたルーは、DOG特別捜査官のブッチに「彼は素質がある」と言い、ディッグスをスカウトするよう指示した。
シェーンは上司のフレミングから、何度も問題を起こしているディッグスを施設に戻すよう指示される。シェーンは反対するが、命令は 覆らなかった。ケージに入れられたディッグスの前にブッチが現れ、組織の諜報部員としてスカウトする。最初は全く相手にしなかった ディッグスだが、猫嫌いの彼は「猫と戦う組織だ」と聞かされ、途端に意欲を示した。ブッチは彼を本部へ連れて行き、ラボの主任である ピークに会わせた。
ブッチとディッグスは諜報部員のサムに案内され、ルーの部屋に赴いた。ルーはディッグスに、傍受したキティーの通信映像を見せた。 キティーは全ての猫に対し、「2日後に犬を発狂させる音波を発射する。人間たちは犬を始末し、私が世界の支配者になる」と語っていた 。ルーはディッグスに、キティーが手下のポウズを連れてドイツに出没したこと、衛星の情報を盗んだこと、ポウズがハトのシェイマスを 狙ったことを話す。ルーは「シェイマスだけがキティーの手掛かりを握っている」と言い、捜索を命じた。
キティーは2ヶ月前から、遊園地に出演している手品師、マジシャン・チャックのトレーラーハウスを住処にしていた。彼女はポウズと 通信し、「シェイマスは私の計画を潰す情報を握っている。一刻も早く見つけ出せ」と指令を下す。ディッグスとブッチはコイトタワーに シェイマスが飛んで行ったという情報を掴み、深夜に忍び込む。2匹はシェイマスを見つけるが、そこに猫のキャサリンが来て引き渡しを 要求した。ディッグスたちが揉めている間に、シェイマスは飛び去った。キャサリンたちはメカを使って空を飛び、シェイマスを追う。 ディッグスとブッチはシェイマスに追い付き、キャサリンを網で捕獲した。
ディッグスたちはキャサリンがキティーの手下だと思っていたが、彼女は猫のスパイ組織「MEOWS」の諜報部員だった。そしてキャサリン は、キティーを倒すために行動しているのだという。キティーは1年前まで、MEOWSの一員だった。しかし任務遂行中に番犬に追われ、 脱毛クリームのタンクに落下した。全身の毛が抜けた彼女は仲間からバカにされ、飼い主に家を追い出された。それがきっかけで、 キティーは人間と犬に対する復讐心を燃やすようになったのだという。
キャサリンは手を組むべきだと訴えるが、猫嫌いのディッグスは反発する。しかしブッチはキャサリンをDOGの本部へ連れ帰った。ルーは MEOWSの長官であるタブ・レーゼンビーと通信する。互いに相手への反感はあったが、キティーの計画実行までに時間が無いため、協力 することになった。ディッグスはシェイマスの何気無い一言で、キティーが住んでいた家の場所を知り、ブッチに報告した。キャサリン、 ディッグス、ブッチ、シェイマスは、その家へ赴いた。そこには老女が一人で暮らしており、彼女の飼っている何匹もの猫たちがマタタビ で気持ち良くなっていた。
キャサリンたちはポウズを発見し、キティーに関する情報を吐くよう脅しを掛けた。ポウズは「キティーは最近、先端技術を幾つも盗んで いる。自分は仲介役で、先端技術を伝書鳩に渡すだけ」と語った。キャサリンたちはアルカトラズ刑務所に赴き、高度な知能を持つ囚人の ミスター・ティンクルズからキティーに関する情報を聞き出そうとする。だが、ティンクルズはキャサリンたちを冷静に分析した後、「猫 の目は全てを物語る」と謎めいた言葉を告げただけだった。
囚人のドッグ・キラーは、キャサリンたちが刑務所へ来たことをキティーに報告した。キティーはスコットランド出身の暗殺者、アンガス とダンカンのマクドゥーガル兄弟を雇うことにした。キャサリンたちは船で帰る途中、兄弟に襲撃された。キャサリンたちに捕まった アンガスは、シェイマスに向かって「ニッキーから設計図を預かっただろ。お前は終わりだ」と告げる。だが、シェイマスは全く身に覚え の無いことだった。
ブッチはさらに詳しく尋問しようとするが、ディッグスの不用意な行動でアンガスに逃げられてしまう。ブッチは激怒し、「もう我慢の 限界だ。お前はクビだ」とディッグスに通告した。マクドゥーガル兄弟との戦いでディッグスに助けられたキャサリンは、姪たちと一緒に 暮らすチャイナタウンの家へ彼を連れ帰る。本部から連絡が来たので、彼女はディッグスを連れて行く。タブは2匹に、キティーが通信 している映像を見せた。キティーの目を拡大すると、そこにはマジシャン・チャックの姿が写っていた。
キティーとディッグスはキティーの居場所を突き止め、遊園地へ赴いた。2匹はチャックのテントを探るが、キティーとポウズによって 捕まってしまう。一方、ブッチはシェイマスの住処を調べ、巨大アンテナの設計図を発見した。キティーは衛星放送を使い、犬を狂わせる 音波を世界に発信しようと目論んでいたのだ。ニッキーが住処に設計図を隠したため、シェイマスは命を狙われたのだ。ブッチは本部から キャサリンとディッグスが捕まったという知らせを受け、救出のために遊園地へ向かう…。

監督はブラッド・ペイトン、キャラクター創作はジョン・レクア&グレン・フィカーラ、脚本はロン・J・フリードマン&スティーヴ・ ベンチック、製作はアンドリュー・ラザー&ポリー・ジョンセン、共同製作はミリ・ユーン、製作協力はデビー・ボッシ、製作総指揮は ブレント・オコナー&ブルース・バーマン、撮影はスティーヴン・ポスター、編集はジュリー・ロジャース、美術はラッセル・スミス、 衣装はティッシュ・モナハン、アニマトロニック効果監修はデイヴ・バークリー、視覚効果監修はランドール・スター、音楽は クリストファー・レナーツ、音楽監修はジュリアン・ジョーダン。
声の出演はクリスティーナ・アップルゲイト、マイケル・クラーク・ダンカン、ニール・パトリック・ハリス、ショーン・ヘイズ、 ジェームズ・マースデン、ベット・ミドラー、ロジャー・ムーア、ニック・ノルティー、ジョー・パントリアーノ、ウォレス・ショーン、 カット・ウィリアムズ、ポール・ロドリゲス、EG・デイリー、フィル・ラマー、マイケル・ビーティー、ジェフ・ベネット、グレイ・ デライズル、レン・モーガンティー、クリス・パーソン、バンパー・ロビンソン、リック・ワッサーマン、ロジャー・L・ジャクソン他。
出演はクリス・オドネル、ジャック・マクブレイヤー、フレッド・アーミセン、キーナン・シプカ、出演はマルコム・スチュワート、 ドーン・チュバイ、キース・ダラス、パスカル・ハットン、ベティー・フィリップス他。


2001年公開の映画『キャッツ&ドッグス』の続編。
9年後の続編って、また微妙な間隔だこと。
監督のブラッド・ペイトンは、これが初の長編作品。
キャサリンの声をクリスティーナ・アップルゲイト、サムをマイケル・クラーク・ダンカン、ルーをニール・パトリック・ ハリス、ティンクルズをショーン・ヘイズ、ディッグスをジェームズ・マースデン、キティーをベット・ミドラー、タブをロジャー・ ムーア、ブッチをニック・ノルティー、ピークをジョー・パントリアーノ、ティンクルズの子分キャリコをウォレス・ショーン、 シェイマスをカット・ウィリアムズが担当している。
前作から引き続いて登場するキャラクターは、ルー、ミスター・ティンクルズ、ブッチ、ピーク、キャリコ。ただし、ルーとブッチは声優 が交代している。
他に、シェーンをクリス・オドネル、チャックをジャック・マクブレイヤー、フリードリッヒをフレッド・アーミセンが演じている。

全体として007シリーズのパロディーになっており、まず主題歌が流れて来るオープニング・クレジットの作りが、明らかに007の テイスト。
キティー・ガロアの名前は、『007/ゴールドフィンガー』のプッシー・ガロアから取っている。
キティーがネズミを抱いているのは、007シリーズで何度も登場したブロフェルドがペルシャ猫を抱いていたのを模倣している。
タブの声優は三代目ジェームズ・ボンドのロジャー・ムーアで、タブ・レーゼンビーという役名は二代目ジェームズ・ボンドのジョージ・ レーゼンビーから。
それ以外に、ティンクルズが『ティンクルズ』のレクター博士を真似ているなど、他の映画のネタも幾つか盛り込まれている。

冒頭、キティーは犬の皮を被って変装しているのだが、「じゃあ猫だったら可愛がってもらえないのか」と言いたくなってしまう。
まあキティーは毛が全て抜けてしまっているので、気持ち悪がられてしまう可能性が高いだろうけど。
っていうか、フリードリッヒが犬を飼っているので、だから犬に化けたという設定ではあるんだろう。
ただ、「愛玩動物が実は二足歩行も出来ちゃう凶悪犯」というギャップだけで充分であり、「実は犬に化けた猫だった」というのは、それ こそ余計な被り物のように思えてしまうんだよな。

ルーは中古車店でのディッグスの映像を見て、「彼には諜報部員の素質がある」と口にする。
だが、どこを見て素質があると感じたのか、それがサッパリ分からない。
「勇敢で危険に動じない」と評しているけど、命令に従わずに軽率な行動を取っている奴にしか見えない。
「身勝手でミスばかりやらかしているが、彼にしか無い特殊な能力を持っている」とか、そういう設定があるわけでもないしね。

それと、ディッグスはブッチたちが猫と戦っていると知った途端にノリノリでスカウトを受け入れるんだけど、そこまでに彼の猫嫌いと いう設定のアピールが弱すぎる。
ルーがモニターを見ているシーンで、ディッグスが猫の人形に噛み付いている様子がチラッと写るけど、それだけでは弱い。中古車店の シーンで、猫嫌いが原因でディッグスが失敗をやらかしてしまったという形にでもすれば、一石二鳥じゃないかと思うんだけど。
それと、先にルーがディッグスをスカウトを決めるシーンを見せて、それからディッグスの元へブッチが現れる流れにするという構成が、 あまり上手くない。それより、いきなりディッグスの前にブッチが床下から登場し、「実は犬のスパイ組織があって云々」と話し、本部へ 連れて行ってルーに会わせるという流れの方がいいんじゃないかと。
そのためには冒頭シーンでも、キティーのスパイ活動だけを見せて、レックスが実は諜報部員だというのは見せない方がいいし。

ディッグスは犬のスパイ組織のことを聞かされても、まるで戸惑ったりせず、反発することも無く、すぐに馴染んでいる。訓練を積んで 少しずつ順応していくといった行程も無い。
勝手な行動を何度も取るが、その度に叱責を受けたり、それに反発したりという掛け合いがあるわけではなく、船のバトルの後で、ブッチ が怒ってクビを宣告するだけ。
そこ以外は、ディッグスのヘマでピンチになっても、結果的には上手く事が運ぶ。
だからといって、「ミスしたのに上手く行った」というのが笑いになっているわけでもない。
色んな事が薄味で、どんどん先へ進んでいく。
それはテンポが小気味よいというのではなく、メリハリに欠けていて浅薄なだけだ。

前作で「犬は善玉、猫は悪玉」という明確な区別をしたことへの反省なのか、今回は猫のキャラクターを善玉サイドにも配置している。
とは言っても、やはり猫が悪玉という図式は変わらない。
それと、今回は犬と猫が協力するのだが、そういう設定にした効果が、あまり感じられない。
まず犬と一緒に行動する猫が1匹だけってのが物足りないし。
っていうか、犬の方も2匹しかいないけど。

老女の家でピンチに陥った時、ディッグスがキャサリンに反発して作戦遂行を拒否したせいで、さらに窮地へ追い込まれる。
しかし偶然にも老女がドアを開けてくれたおかげで、無事に助かる。
それによって、そこでの揉め事はうやむやになる。
キャサリンが「さっきのアレは云々」と怒ることも無い。
それ以外でも、ディッグスとキャサリンが反目しているという関係性は、そんなに膨らまない。
っていうか、そもそも反目しているのはディッグスだけで、キャサリンはそんなに気にしていないが。

ディッグスとキャサリンが、犬の長所、猫の長所を自慢したり、逆に相手の短所を指摘したりするといった掛け合いは無い。
犬ならではの特技を、猫ならではの特技を使って活躍するとか、それぞれの特技や特徴を上手く組み合わせて敵を倒すとか、そういっ たことも無い。
「犬と猫が協力する」という設定のところで思考が止まっているような感じだ。
でも、それだと面白さは生まれないんじゃないかと。

(観賞日:2013年7月17日)


第31回ゴールデン・ラズベリー賞(2010年)

ノミネート:最低3-D乱用目潰し映画賞

 

*ポンコツ映画愛護協会