『子連れじゃダメかしら?』:2014、アメリカ

ローレンはレストラン「フーターズ」のトイレに入り、ベビーシッターのトレイシーに電話で「離婚して最初のデートなのに、とんでもない男だわ」と愚痴る。自宅では次男のタイラーはTシャツに火を付けて振り回し、長男のブレンダンが消火器を噴射していた。ローレンのデート相手であるジムは、彼女が不満を抱いていることに全く気付いていない。彼はローレンと目も会わせずにテレビを見るが、親しげなウェイトレスたちには視線を向けて話した。
スポーツ用品店の店長を務めるジムは20年ぶりのデートで、クローゼット整理の仕事をしているローレンは高校生以来だ。2人とも大学生の頃に結婚しているが、ローレンは離婚、ジムは妻が癌で死んだために独り身となった。翌日、ローレンは同僚のジェンにデートの不満を漏らして「タイラーの友達の母親から紹介された。会う度にジムのことを褒めていたの」と話す。ディックという恋人と交際中のジェンは、彼女に整理を頼まれたクローゼットの服を渡して「浮気される女から寝たくなる女に変身よ」と告げる。
服を着替えたローレンは、「もっと努力すべきだった」と言って泣き出した。「貴方は悪くない。浮気したマークがクズだった」とジェンは告げるが、ローレン「何も知らない子供たちは復縁を望んでる」と漏らした。一方、ジムは店員のダグに「まるで興味が持てなかった」とローレンへの悪印象を語った。「もうデートはいい。子供たちと過ごす」と彼は言うが、長女のヒラリーは春休みに庭でキャンプばかりすることへの不満を漏らす。
男っぽい見た目のヒラリーは店の客から性別を間違えられ、不愉快な気分になる。次女のエスプンは見えないママと話すことが多く、部屋に閉じ篭もっている。三女のルーは、顔や体にシールを貼りまくって遊ぶことにハマッている。タイラーが出場するリトルリーグの試合にマークは「必ず行く」と約束していたが、当日に現れなかった。電話で抗議したローレンは、「会議が長引いた。どうしろと言うんだ」と話すマークに苛立った。いつものように三振したタイラーは感情が抑制できず、バットを投げて喚き散らした。
その夜、散らかったブレンダンの部屋を片付けていたローレンは隠してあったエロ本を発見し、衝動的に破り捨ててしまう。我に返った彼女は、同じ雑誌を買いに出掛ける。一方、ジムはヒラリーから、「個人的な用事で車を借りたい」と告げられる。「まだ一人じゃ運転できないだろ」とジムは言うが、「生理が来たの」と聞かされたので生理用品を買いに行く。同じ店でジムはローレンを発見し、事情を知る。「どの雑誌か分からない」と彼女が口にするので、ジムは破り捨てたページを見て『スナッパー』だと言い当てる。
ジムはローレンに「助け合おう」と言い、自分がエロ本をレジへ持って行くので代わりにタンポンを買ってほしいと提案した。ところが彼はレジの店員から「今夜はお楽しみね」と言われると「それは彼女の息子用だ」とバラしたので、ローレンは呆れ果てた。店を出た後、2人は互いに嫌味を浴びせ合った。翌朝、ローレンは子供たちに、「パパは出張だから、春休みは一緒に出掛けられないの」と説明する。ローレンは代わりの計画を準備するが、子供たちは「どうせボウリングとモールでしょ」と不満げだった。
そこへジムが現れ、入れ替わったまま持ち帰ったクレジットカードをローレンに差し出した。彼はネットで検索し、ローレンの家を突き止めたのだプレンダンとタイラーはママとデートしたというだけでジムを嫌っており、悪態をついて2階の部屋に行く。ジムとローレンが話しているとジェンが現れ、「ディックは5人の子持ちだった。アフリカ旅行で親睦を深めてほしいって。もう別れる」と語った。話を聞いていたジムは、ディックがスポーツ用品店のオーナーだと教える。
ジェンが予定をキャンセルしたことを聞いたジムはローレンの家を出ると、ディックに電話を掛けてアフリカ旅行を安く譲ってもらう。一方、ローレンもジェンに頼んで、アフリカ旅行を譲ってもらった。アフリカのホテルに到着したローレンと子供たちは、ジムが娘たちを連れて来ているのを目にした。ジムもローレンに気付き、家族同士で言い争いになる。そこへガイドのムファナが現れて、一行を部屋に案内する。子持ちの新婚夫婦用の「ファミリームーン」というプランだったため、一行は同じ部屋で宿泊することになった。
寝室に入ったローレンは、ディックがジェンにプロポーズするつもりだと知った。ロビーへ移動した一行は、ツアー客であるエディーと再婚相手のジンジャーに出会った。エディーの連れ子であるジェイクを見たヒラリーは、一目惚れしてしまった。ジェイクは6歳の頃に継母としてやって来たジンジャーに、不快感を抱いていた。ショーの歌手であるニケンズはバックコーラスを引き連れ、ツアー客たちに用意したイベントの数々を説明した。
ルーはローレンに懐き、ジムはタイラーと一緒にガチョウのロデオで楽しむ。ローレンは「息子を殺す気?」とジムを責めるが、タイラーは満足そうな様子を見せた。ローレンはヒラリーがジェイクに恋していると気付き、髪型を変えさせるためにサロンへ誘う。彼女が「お金は私が払うわ。ウチは息子だけだし、私も嬉しいの」と言うと、ヒラリーは喜んだ。サロンへ向かう途中でヒラリーと会話を交わしたローレンは、ジムの死んだ妻がフーターズの店長だったことを知った。
その夜、髪型とメイクを変えてドレスアップしたヒラリーが会食の場に姿を見せると、ジェイクは心を撃ち抜かれた。ローレンは笑顔になるが、ジムは「俺の娘を勝手に変身させた」と責める。「あの子は女らしさを求めてた」とローレンは反発するが、互いの子供時代に触れて笑い合い、ジムの方から謝罪する。「タイラーのことも悪かった」と彼が言うと、ローレンは「私が過保護だった」と口にした。次の日、双方の家族は同じジープでサファリ・ツアーに出掛け、ジムはジェイクがヒラリーをデートに誘うと渋々ながらも承諾した。その夜、ジムとローレンは成り行きでカップル・マッサージ教室を受講する羽目になってしまう。互いの体をマッサージしていると、ジムとローレンは楽しい気持ちになった…。

監督はフランク・コラチ、脚本はイヴァン・メンシェル&クレア・セラ、製作はマイク・カーツ&アダム・サンドラー&ジャック・ジャラプト、共同製作はケヴィン・グラディー&エイミー・キーン&ブライアン・ブルックス、、製作総指揮はバリー・ベルナルディー&ジョシー・ローゼン&ティム・ハーリヒー&アレン・コヴァート&スティーヴ・コーレン&ジェームズ・パッカー&スティーヴン・ムニューチン、撮影はジュリオ・マカット、美術はペリー・アンデリン・ブレイク、編集はトム・コステイン、衣装はクリスティーン・ワダ、音楽はルパート・グレッグソン=ウィリアムズ、音楽監修はケヴィン・グラディー&ブルックス・アーサー。
出演はアダム・サンドラー、ドリュー・バリモア、ケヴィン・ニーロン、テリー・クルーズ、ウェンディー・マクレンドン=コーヴィー、ベラ・ソーン、ジョエル・マクヘイル、アブドゥライエ・ヌゴム、ジェシカ・ロウ、ブラクストン・ベッカム、エマ・ファーマン、アリヴィア・アリン・リンド、カイル・レッド・シルヴァーステイン、ザック・ヘンリー、シャキール・オニール、ダン・パトリック、ジャクリーン・サンドラー、サニー・サンドラー、セイディー・サンドラー、ジュディス・サンドラー、アレクシス・アークエット、キャスリン・ケイン、スーザン・イェーグリー他。


アダム・サンドラーとドリュー・バリモアが『ウェディング・シンガー』『50回目のファースト・キス』に続いて3度目の共演を果たした作品。
監督はアダム・サンドラーの大学時代からの親友で、『ウェディング・シンガー』『ウォーターボーイ』『もしも昨日が選べたら』に続いて4度目のタッグとなるフランク・コラチ。脚本はTVシリーズ『22世紀ファミリー 〜フィルにおまかせ〜』『ジョナス』のイヴァン・メンシェルと、TV映画『Doin' It Yourself』のクレア・セラによる共同。
ジムをアダム・サンドラー、ローレンをドリュー・バリモア、エディーをケヴィン・ニーロン、ニケンズをテリー・クルーズ、ジェンをウェンディー・マクレンドン=コーヴィー、ヒラリーをベラ・ソーン、マークをジョエル・マクヘイルが演じている。
コンビニで女性店員に「僕はトムだ」と何度も言う客を演じているのはアレン・コヴァートで、これは『50回目のファースト・キス』の時と同じキャラクターという設定だ。ジムがタイラーにバッティングを教える時に投手を務める男はクリケット選手のデール・ステインで、ジムやヒラリーとバスケットをする父親はティム・ハーリヒーだ。

まず引っ掛かるのは、序盤の構成だ。
いきなりデートのシーンから入って、その後でジムとローレンが仕事をしている風景や家族を登場させる手順に移るってのは悪くない。
ただ、ローレンの方はデートの最中に家で暴れているブレンダンとタイラーを登場させている一方、ジムの方はデート翌日になってヒラリーが登場する。そのまま下の2人も登場させるのかと思いきや、再びブレンダンとタイラーが登場し、さらにマークが顔を見せる。その後に再びヒラリーが登場して、それからエスプンとルーが登場する。
これは、シーンの並びとしてもバランスとしても上手くない。もう少し整理した方がスッキリする。

ただし、その辺りは、それ以前の問題があると感じる。
それは「子供の数が多すぎる」ってことだ。
5人それぞれに特徴が用意されており、それなりに使われているので、まるで存在意義が無いとは言えない。しかし、充分に活用されているかというと、そうではない。やはり、5人ってのは厳しかったんじゃないか。
ほぼジム&ローレンと子供たちだけで物語を構築するなら、まだ何とかなったかもしれない。しかし、ジェンやマーク、おまけにエディーやジンジャーといった面々も絡んで来るわけで。
そうなると、おのずと子供たちを個別に機能させることは難しくなる。

最初にジムがローレンを『フーターズ』へ連れて行き、呆れられている。その後も彼は、レジで「エロ本は彼女の息子用だ」とバラしたり、娘の名前をESPNから取ったことを得意げに話したりして、ローレンの印象は悪くなる一方だ。
で、もちろん「最初は印象が悪かったけど、次第にローレンが彼の良さを知る」という筋書きになることは誰だって分かるだろう。それどころか、「実は死んだ妻がフーターズの店長だった」という真相さえ後半には明かされ、ちゃんとジムの好感度が上がる設計になっている(「死んだ妻の働いていた店に最初のデートで連れて行くセンスはどうなのか」という問題は、とりあえず置いておくとして)。
しかし考えてほしいんだが、どんなに後から「ジムにも色々と良いトコがある」ってのを見せてリカバリーしたところで、平気で裏切って「エロ本は彼女の息子用だ」とバラしたり、、娘の名前をESPNから取ったことを得意げに話したりしたことは、単純に呆れ果てるような事柄でしょ。
「実は深い理由があって、そんなに批判されるような行動では無かった」という形を取るわけでもないんだし。
それ以外でも、やたらとローレンやジェンに嫌味っぽい言葉を浴びせるなど、単純に「不愉快な奴」になっているのだ。

それでも、「最初は不愉快な奴だったけど、ローレンや彼女の子供たちと接している間に考えや性格が変化し、人間的に成長する」というドラマが用意されているのなら、序盤の印象が悪くても大丈夫だ。
むしろ、それが変化のための前フリになるから、最初の印象は最悪でも全く問題は無い。
ただしジムの場合、「3人の子持ち」という設定なので、それでは困るのだ。
「性格的に問題のある奴」ってことになると、「父親として問題のある奴」ってことになってしまうでしょ。
そうじゃなくて「ローレンは誤解しているけど、実際は優しくて良い父親」という形にならないとダメなのだ。ってことは、前半戦であろうと「ホントに嫌な奴」では困るのだ。

一方でローレンの方は、ジムが勝手に悪い印象を抱いているだけで、彼女がそれほど幻滅されるような言動を取っている様子は無いのだ。
つまり、「最初の内は、互いに相手の嫌な部分ばかり見えている」ということになっているべきなのに、実際は「一方的にジムだけが問題のある性格であることをアピールする」という形になっている。
ローレンの方は、ややヒステリックな部分はあるものの、ジムとイーブンで「どっちもどっち」という状態とは到底言えない。
そこはバランスが整っていないと感じる。

ジムとローレンは互いの子供たちを連れてアフリカ旅行へ行くことになるのだが、そこは強引極まりない。
ディックとジェンは別々に旅行の権利を譲っているのだが、その時点でジムにしろローレンにしろ、「相手側の権利はどうなっているのか」を気にしないのは変だ。権利を得たのは片方の分だけなんだから。
っていうか、旅行に行く時点で、ツアー会社の方から色々と訊かれて気付くだろ。
あと、たまたまディックが5人の子持ちだったから、ジムとローレンの子供が合計5人で数が合っているけど、すんげえ分かりやすい御都合主義だな。
もちろんコメディー映画だから、ある程度の強引さは笑いによって乗り越えることが出来るだろう。しかし、この映画は、それほどのパワーを持っていない。

ただし実のところ、それよりも大きな問題がある。
それは、「そもそもアフリカを舞台にしたことがどうなのよ」ってことだ。
アフリカ旅行へ出掛けると、「異国の地」ってのが、ものすごく大きな要素になる。だが、それが効果的だとは思えないのだ。
これが「第一印象の悪かったジムとローレンが結び付くまでの恋愛劇」というだけなら、それを盛り上げる飾りとしてのアフリカ旅行ってのは有りだったかもしれない。
しかし、「ジムとローレンが距離を縮め、互いの子供たちとの距離を縮め、互いの子供たち同士も距離を縮め、7人が仲良くなる」という全ての作業を消化する上では、むしろ余計な要素になっていると感じるのだ。そうやって「非日常の世界」に身を置かせるよりも、日常生活の中での交流を描いた方が得策だと思うのだ。

アフリカに舞台が移動すると、前述したエディー&ジンジャーの他に、ジェイク、ムファナ、ニケンズといった面々が絡んで来る。
それたけでなく、役名の無いツアー客たちも、やたらと自己主張を示してくる。
そんな中、ジムとローレンと子供たちが次第に仲良くなっていくドラマが、お世辞にも充実しているとは言えない。
それなのに、急にルーが「ローレンとおしっこに行きたい」と言い出して手を繋ぐシーンが到来したりするので、「いつの間に懐いたのか」と首をかしげてしまう。

タイラーはママとデートしたジムを嫌っていたのに、一緒にガチョウのロデオを楽しんで仲良くなっている。
ブレンダンとシグプンも、いつの間にか仲良くなっている。
「最初はジムとローレンだけでなく、それぞれの子供たちさえ対立していたのに、全員が次第に仲良くなっていく」というドラマを描くために、「アフリカ旅行で一緒に過ごす羽目になってしまう」という筋書きを用意したんじゃないのか。
そこをキッチリと描くのなら、「アフリカ旅行で一緒に泊まる羽目になる」という部分の強引さも甘受できたかもしれんけど、肝心なトコを大雑把に片付けてしまうもんだから、どうにもならない。

アフリカに渡ってから登場する面々の内、ジェイクは「ヒラリーが彼を意識して女っぽく振る舞おうとする」というトコロで深く関与して来る。
ヒラリーの恋愛にローレンが協力する展開があるので、肝心な「ジムとローレンがカップルになる」という部分を邪魔しているわけではない。
ただ、そこまで手を広げるのはいいが、肝心な「ジムとローレンの恋愛劇」が遅々として進行しないのは本末転倒だ。
だから、「次第に距離が縮まって」とか「幾つかの出来事を経て」という手順を踏んでいないのに、慌てて収支を合わせる形で「ジムとローレンが互いに好意を抱いてキスの雰囲気になって」という展開を用意してしまう。

それと、そもそも何度も男と間違えられているヒラリーだけど、そこまで男っぽくは見えないのよね。むしろ、ローレンがメイクアップする前から、普通に女子として可愛く見えたわけで。
それに「彼女がメイクアップした途端にガラリと態度を変えるジェイク」ってのは、あまり好感の持てない奴に感じるし。
あと、もちろん最終的にジムとローレンがくっ付いてハッピーエンドになるんだけど、ヒラリーとバンクーバーに住むジェイクは遠距離になっちゃうわけだから、あんまり長続きしないようにも思えるけどね。
まあ、そんなのは他の部分で露呈している問題に比べれば、屁でもないことなんだけどさ。

(観賞日:2016年5月5日)


第35回ゴールデン・ラズベリー賞(2014年)

ノミネート:最低主演男優賞[アダム・サンドラー]
ノミネート:最低主演女優賞[ドリュー・バリモア]
ノミネート:最低助演男優賞[シャキール・オニール]

 

*ポンコツ映画愛護協会