『奥さまは魔女』:2005、アメリカ

魔女のイザベル・ビグローが、ハリウッドにやって来た。彼女は早速、魔法を使って家を借り、車を手に入れる。買い物に出掛けると、 父親のナイジェルが現れた。ナイジェルは離婚して以来、魔法を使って何人もの女をモノにしてきた。しかしイザベルは魔法を使わず、 自分を必要としてくれる男性と恋をしたいと考えている。「普通の人になりたいの」とイザベルが口にすると。ナイジェルは「普通は魔 女になりたがるものだ」と説得する。イザベルは「指を鳴らすだけで何でも出来る生活は飽き飽き」と言いながら、ダイナーの朝食を 食べるために指を鳴らして時計を戻した。
一方、主演映画がコケて落ち目の俳優ジャック・ワイアットは、エージェントのリッチーに不安を吐露する。リッチーから「今度のテレビ シリーズは絶対にヒットするいい人になるな、嫌な奴になれ」と言われ、ジャックはプロデューサーのラリーとスチュに会う。今回、彼は リメイク版『奥さまは魔女』のダーリン役をオファーされたのだ。脇役であることに文句を言うリッチーの横で、ジャックは「サマンサと 2人で主役だよ。周囲も強力なメンバーを揃えてもらいたい」と述べた。
旧シリーズの視聴者だったジャックは、特に好きだったアーサー叔父さんについて楽しそうに話す。リッチーはジャックを連れ出し、 「弱腰すぎるぞ。強力なメンバーなんて邪魔なだけだ」と注意した。話し合いの場に戻ったジャックは、サマンサ候補の女優リストを 丸めて投げ捨て、強気な態度で「僕の引き立て役になるような全くの新人を使うんだ」とラリーたちに告げた。さらに彼は、トレーラー 3台やメイクアップのチームも用意しろと要求した。
イザベルは魔法を使わずに生活しようとするが、上手くいかないことばかりだった。そこで彼女は、すぐに魔法を使った。彼女がテレビを 付けると、司会者が「貴方は実社会に参加していないがために自信が無い。だったら何か仕事に就くことです」と語っていた。サマンサ役 のオーディションが開かれ、ジャックやラリーたちは大勢の女優をチェックする。だが、旧シリーズのエリザベス・モンゴメリーのように 、鼻をピクピクさせられる女優は見つからなかった。
ブック・スープ・カフェに立ち寄ったジャックは、イザベルと遭遇した。イザベルが鼻をピクピクさせる動きを見たジャックは、彼女に声 を掛けて「テレビ番組に出ないか」とスカウトした。イザベルは断るが、「君が必要だ」と言われてウットリする。彼女がオーディション で鼻ピクピクを見せると、スタッフ全員が拍手した。演技テストに移ると、ジャックは「僕は君に恋をする、君が魔女でも構わない」と 告げる。それはドラマの設定として言っただけなのだが、イザベルは自分が本当に告白されていると思い込んで喜んだ。
ジャックはイザベルに、「台本無しで、アドリブで会話をしてみよう」と持ち掛けた。何しろイザベルは本物なので、魔女に対する質問に スラスラと答える。「君が番組に出れば、僕たちは永遠にパートナーになるんだ。結婚して」とジャックに言われたイザベルは、本当の 求婚だと信じて「イエス」と答えた。親に旧シリーズを番組を見せてもらえなかった彼女は、帰宅して初めて番組を視聴した。そこへ、 隣人のマリア・ケリーが、留守中に預かった荷物を届けに来た。イザベルが『奥さまは魔女』のリメイク版に出ると聞き、彼女は「ファン だったの」と興奮した。
番組制作会見が開かれ、ホスト役を務めるジャックが大勢のマスコミの前にイザベルを登場させた。続いて、エンドラ叔母さんを演じる アイリス・スミッソンが登場した。その夜のテレビ番組では、ジャックの映画がコケたことや、別居中の妻のシーラが次の彼氏と交際して いることなどに触れており、まるで好意的な取り上げられ方ではなかった。ジャックはリッチーに電話を掛け、「なんでこんな仕事を 受けたんだ」と愚痴った。
撮影が開始されると、ジャックはテイク1だけで撮影を終わらせ、エンドラは監督の指示に全く従わなかった。イザベラは全くセリフが 無いまま、そのシーンの撮影が終わった。休憩に入ったイザベラは、ジャックとリッチーが「彼女は引き立て役だ」と話しているのを耳に してしまう。腹を立ててトレーラーへ戻ったイザベラに、見学に来ていたマリアと番組スタッフのニーナが同情する。イザベラは「彼を 傷付けてやりたいけど、心のどこかで彼が今も気になってる」と吐露した。
「サマンサならどうする?」と問い掛けたイザベラは、どうすべきか決めて撮影に戻った。彼女は魔法を使い、ジャックに変なセリフを 話させたり、彼に飛び付くはずの犬を自分に飛び込ませたりした。買い物に出掛けたイザベラの前にナイジェルが現れ、「エンドラのこと が気になっている。実に美しい」と告げた。イザベラは「やめてよ、かき回さないで。アイリスとは関わらないで」と注意した。
その夜、イザベラがテレビのインタビュー番組を見ていると、ジャックが「イザベラは大したことが無いと思うけど。あの鼻ピクピクも、 僕がアドバイスしたんだ」など平気で喋っていた。腹を立てたイザベラの元に、マリアとニーナがやって来た。2人は「彼を番組から降板 させましょう」と言っていると、イザベラの叔母クララが現れた。イザベラは「あの仕事は辞めて、別の仕事をするわ」と漏らす。それが ジャックのせいだと知ったクララは、「私が呪いを掛けてやるわ」と口にした。
クララはニーナたちにも協力させ、呪いの儀式を行った。発射された煙は、眠っているジャックの元へ飛んで行った。煙を吸い込んだ彼は 、イザベルに夢中になった。翌朝、撮影所に現れた彼は、番組の好感度調査でイザベルが99パーセント、自分は32パーセントと知っても、 「大事なのはイザベルだ」と気にしない。イザが撮影所に来ると、彼は大喜びした。本読みでも、彼はじっとイザベルばかり見つめ、彼女 の出番を増やすべきだと主張した。
イザベルは困惑してクララに電話を掛けるが、出なかった。彼女がアイリスと話しているとナイジェルがやって来た。彼はイザベルの注意 を完全に無視し、アイリスを口説く。ジャックがイザベルの元に現れ、強引にディナーの約束を取り付ける。帰宅したイザベルは、クララ に「魔法を解いて」と頼む。しかしクララは「解き方なんて分からないわよ。貴方が本気になれば、きっと呪いを解くことも出来るわ」と 言い、魔法でテレポートしてしまった。
イザベルは「デートになんか行かないわ」と言いながらも、入浴して服を着替え、ジャックを待ち受ける。ジャックがプレゼントを持って やって来ると、彼女はウットリしてしまう。ディナーに出掛けたイザベルは楽しい時間を過ごし、家まで送ってもらう。しかし、それが 魔法による偽りの愛だと思い出し、時間を止める。そして彼女は時間を逆回転させ、クララが魔法を使わなかった状態に戻した。つまり、 イザベルがインタビュー番組を見ていた時刻に戻し、クララが来ないようにしたのだ。
翌朝、撮影所に現れたジャックは、好感度調査の結果を知り、ショックで泣き出した。彼は「一言も喋ってないのに、なんでイザベルの 評価が高いんだ」と喚き、スタッフに文句を言いまくる。そこにイザベルが現れ、「貴方は最低よ。自分勝手のエゴイストで、私を騙した 。貴方が気にしているのは自分のことだけ。視聴者が気に入らないのは当然よ」と言い放った。リッチーに「クビだ」と言われた彼女は、 「私の方から辞めてやるわ」とスタジオを出て行った。
ジャックはイザベルを追い掛け、「君は正直だった。実に素晴らしかった。今までのことは悪かったよ」と詫びた。汗だくのジャックを 素敵だと感じたイザベルは、また出演してほしいという依頼を受け入れた。そしてイザベラは、ジャックとデートしてキスを交わし、本当 のカップルになった。彼女が浮かれていると、撮影所にシーラがやって来た。シーラはイザベルに嫌味を吐いてから、ジャックに近寄って 色目を使う。若い彼氏と別れたシーラが金目当てで迫って来たと確信したジャックは、相手にしなかった。イザベルは魔法を使い、シーラ に「貴方との離婚届にサインして、あの家も出て行くわ」と言わせた。
シーラの宣言に大喜びしたジャックは、番組関係者を招いてホーム・パーティーを開いた。ナイジェルも参加し、アイリスとダンスを踊る 。挨拶に立ったジャックが「この番組はみんなのおかげで成り立ってる。特にイザベル。僕に対して、決して偽りを言わない女性だ」と 誉めたので、イザベルは複雑な気持ちになった。彼女が正体を明かそうと考えると、ナイジェルは「せっかくの関係がダメになるぞ」と 反対する。しかしイザベルの決意は変わらなかった。
イザベルはジャックに「私は魔女なの」と告白するが、ジョークだと思われてしまう。そこでイザベルは幾つかの魔法を使うが、ジャック は手品だと解釈した。イライラしたイザベルは、パーティー会場を立ち去ろうとする。ジャックはワケが分からず、後を追った。そこで イザベルは、魔法を使って彼に空を飛ばせた。ようやく本当の魔女だと理解したジャックは、「あっちへ行け、近くに寄るな」と絶叫した 。彼はイザベルを怖がり、追い払おうとする。イザベルは腹を立て、番組を降板して彼の前から姿を消した…。

監督はノーラ・エフロン、TVシリーズ創作はソル・サックス、脚本はノーラ・エフロン&デリア・エフロン、製作はダグラス・ウィック &ルーシー・フィッシャー&ペニー・マーシャル&ノーラ・エフロン、製作協力はダイアン・ドレイヤー&メアリー・パット・ウォルシュ 、製作総指揮はジェームズ・W・ スコッチドープル、スティーヴン・H・バーマン、ボビー・コーエン、撮影はジョン・リンドレー、編集はティア・ノーラン、美術は ニール・スピサック、衣装はメアリー・ゾフレス、音楽はジョージ・フェントン、音楽監修はニック・メイヤーズ。
出演はニコール・キッドマン、ウィル・フェレル、シャーリー・マクレーン、マイケル・ケイン、スティーヴ・カレル、ジェイソン・ シュワルツマン、クリスティン・チェノウェス、ヘザー・バーンズ、ジム・ターナー、スティーヴン・コルバート、デヴィッド・アラン・ グリア、マイケル・バダルッコ、キャロル・シェリー、 ケイティー・フィネラン、ジェームズ・リプトン、コナン・オブライエン、エイミー・セダリス、リチャード・カインド、ケン・ キャンベル、P.J.バーン、キャロル・アンドロスキー他。


1964年から1972年までアメリカのABCで放送された同名TVドラマをモチーフにした作品。
純然たるリメイクではなく、TVドラマのリメイク版に出演することになった男女を描くという形になっている。
監督は『めぐり逢えたら』『ユー・ガット・メール』のノーラ・エフロン。
イザベルをニコール・キッドマン、ジャックをウィル・フェレル、アイリスをシャーリー・マクレーン、ナイジェルをマイケル ・ケイン、リッチーをジェイソン・シュワルツマン、マリアをクリスティン・チェノウェス、ニーナをヘザー・バーンズ、ラリーをジム・ ターナー、スチュをスティーヴン・コルバートが演じている。

最初にイザベルが魔法を使うシーンに、ファンタジーが足りない。
家を見つけた彼女が魔法を使うと、「貸家」とか「本日オープン」とか「家具付き」とか「保証人不要」と書かれた札がパタパタと次々に 吊り下がっていくという形なので、あまり「魔法らしさ」が強くない。
そこは、もっと見栄えのする魔法を使うべきでしょ。どうして、そんな地味な魔法にしたのか。
彼女が魔女であり、ファンタジーの存在であることは、もっとハッキリとアピールすべきでしょ。

次の魔法も、「車庫の扉を少し開いて戻し、次に開いたら車が入っている」という見せ方で、やはり「魔法を使いました」という表現と して弱い。
そこは、何も無い場所に瞬時に車が出現するという表現にした方が、いかにも魔法っぽいでしょうに。
もしかすると、そういうVFXを使うような予算が無かったのか。予算的に厳しい映画だったのか。
とにかく、魔法を使う度に、魔法であることを目立たせないような表現になっているんだよな。

っていうか、すぐ後にナイジェルが出て来て事情説明までしちゃうんだったら、「魔法の国で暮らしていたイザベルが、魔法で男女関係 まで作れてしまうことにウンザリし、家を出て一人暮らしを始める」という流れで描いた方が良かったんじゃないのか。
そっちの方が、「魔法の国の箱入り娘が人間の世界に引っ越してきた」というのが分かりやすいでしょ。
そこも予算的な問題で、「魔法の国」を描くことが出来なかったのだろうか。
邪推だけど、どうも予算の問題が見え隠れするんだよな、色々と。

イザベルは持っていたカードを魔法でクレジットカードに変化させ、「魔法を使うのはこれが最後よ。普通の人になりたいの」と父に言う 。
だが、その後も、何の迷いもなく魔法を使いまくる。
全く使うなとは言わないけどさ、なるべく使わないように努力するとか、使おうかどうか迷うとか、そういうのがあってもいいんじゃ ないの。
そうじゃないなら、「魔法はこれが最後」とか「普通の人になりたいの」とか言わせた意味が無い。
ひょっとすると、「そう言いながらすぐ魔法を使う」というトコでギャグをやろうとしているのかもしれんけど、笑いには繋がって いないし。

当時38歳だったニコール・キッドマンの年齢は、この映画にとってネックになっている。
「アラフォーだけど、世間知らずの箱入り娘」というキャラだと、そこの部分が、映画としての“仕掛け”になってしまう。
実際には、そこを活用しようとは全くしていないけど、その要素が邪魔なのだ。
それなら魔女というキャラ設定を削って、「アラフォーなのに世間知らずのお嬢様と、落ち目の俳優の恋愛劇」ということで、1本の企画 になっちゃうでしょ。

オリジナルへのリスペクトがあるのはいいけど、ジャックがイザベルの鼻の動きを見て、それだけでサマンサ役に決めてしまうのは、 そりゃ無いわ。
その前にイザベルはテレビ番組の司会者の「何か仕事に就くべき」という言葉を聞いているんだから、例えば彼女が内容も良く分からない ままオーディションを受けて、何か素っ頓狂なことを言ったりやったりするけど、それが魔女っぽいということで合格になるとかさ。少なく とも、たまたまカフェで会ったジャックが鼻の動きで抜擢する形よりは、まだスムーズじゃないかと。
イザベルの鼻ピクピクを見たスタッフ全員が拍手で大喜びってのも、無理があるでしょ。演技力じゃなくて、そこだけでいいのかよ。
むしろ、例えば「スタッフの大半は演技力の面で懸念を示すけど、変わり者のプロデューサーや監督だけが気に入ってゴリ押しする」とか 、そういう形の方がいいんじゃないの。
あるいは、その後のアドリブ演技では全員がイザベルの喋りに感嘆するんだから、そこで初めて納得するということでもいいでしょ。

ダーリン役のジャックを嫌な奴にしてあるのは、オリジナル版との差別化という狙いもあったんだろうか。
だとしても、それがプラスに作用しているとは、到底思えない。
イザベルが「ジャックはホントにダメな男だから」という理由で彼に惚れるというのはいいとしても、ジャックって「優しくてお人好し だけどドジばかり」とか、そういう「母性本能をくすぐるタイプ」じゃないんだよね。

ジャックが自分を引き立て役で抜擢したと知ったイザベルがトレーラーからスタジオに戻る際、彼女はニーナとマリアの前で堂々と魔法を 使う。
だけど、ニーナたちのリアクションは全く描かれないし、そこから2人が「イザベルは本物の魔女なのでは」と疑ったり探ったりと いう展開も無い。
「怒ったイザベル」というトコで盛り上げたいがために、魔法で扉を開けさせたり、炎を上げさせたりしているんだけど、それなら誰も 彼女を見ていない状況でやらせればいいのに。

イザベルは魔法を使ってジャックに変なセリフばかりを話させるが、それが魔法だというのは分かりにくい。
いや、分からないわけじゃないけどさ、どうして、そんな地味で分かりにくい魔法なのよ。もっとハッキリと「今、魔法を使いました」と いうのも示すべきだし。それこそテレビ版みたいに、魔法を使う時には効果音を入れるとか。
耳に触れた後、ジャックが変なセリフを喋るというのでは、かなり地味で分かりにくいでしょ。
色んな役を演じるウィル・フェレルの芸を見せようという狙いがあったのかもしれんけど。
犬が全くジャックに飛び付かないとか、そういうのも、やはり魔法であることを目立たせないような表現になっているんだよな。

劇中劇の撮影シーンは、ホントにただ撮影シーンを描いているだけなので、劇中劇にしている意味をほとんど感じない。
それに、イザベルがジャックに腹を立てて悪戯をするとか、そういうシーンも「めんどくさいなあ」としか感じない。
劇中劇にするにしても、「イザベルは最初からジャックに惚れていて、そんな彼女にジャックも惹かれていく。イザベルは魔女だとバレ ないように必死で隠すけど、とうとうバレてしまって」という流れでいいんじゃないのか。

イザベルを利用しているだけの嫌な奴だったジャックが、魔法で彼女を好きになるという展開は、絶対にやっちゃダメでしょうに。
そんで、イザベルも腹を立てていたのに、すぐにウットリして楽しくディナーに出掛けちゃうし。
そうなると、もはや「ジャックが嫌な奴なので腹を立てて云々」という展開の意味が無くなってしまうでしょ。
例えば「イザベルがジャックに惚れていると知ったクララが、お節介を焼いて彼に恋の魔法を掛ける」ということでもいいでしょ。
もちろん、それは「ジャックが嫌な性格ではなく、イザベルを騙していない」という前提条件付きでのことだが。

偽りの恋愛タイムはずっと続くわけじゃないけど、それでも、やはり「要らない」という印象は変わらない。
あと、その魔法の解き方が「時間を戻す」というのは、「急にデカい魔法を使っちゃうのね」という違和感が否めない。それって、 クライマックスで使うレベルの魔法なんじゃないかと。
魔法を解いた後、イザベルに叱られたジャックが急に「悪かった」と心を入れ替えるのも、すげえ違和感がある。
初めて女性から叱責されて、それが心に響いたということなんだろうけど、それを上手く表現できているとは思えないし、「M男」を下手 に表現しているようにしか見えない。

っていうか、撮影に関するあれこれが多すぎるけど、それよりロマコメを見せてくれよ。
ドラマの撮影は、それを盛り立てるための仕掛けであるべきだ。撮影を巡るドラマ自体が大きく扱われるのは、よろしくない。
そんなことで時間を使っていることもあって、叱責されたジャックが詫びた段階で、もう映画開始から65分ぐらい経過しているんだよね。
それは時間配分がマズいでしょ。
もう「イザベルの正体がジャックにバレそうになってアタフタ」という手順に入っていても良い時間帯なんじゃないのかと。

その段階では、まだ2人が惹かれ合っていないので、そこから「2人が実生活でも惹かれ合う」という手順を処理しなきゃいけない。
そう思っていたら、ジャックは詫びた途端、もう撮影を忘れて長いキスをするぐらいになっている。もうカップルになっちゃている 感じだ。
で、カップルになった後、魔女だとバレないようにアタフタするとか、そういう手順は全く無い。
なんか慌ただしいなあ。

イザベルが魔女だと知った時のジャックの反応は、ホントにサイテーだ。
完全にイザベルを化け物扱いして、追い払おうとしている。
そんな奴が後になって「行かないでくれ、君が好きだ」と態度を改めても、もう無理だよ。
彼がイザベルを追い払う時に抱えた負債は、簡単には取り戻せないぐらいに大きい。
前半でイザベルを敬遠し、後半の1時間ぐらいを「彼が反省して何とかイザベルとヨリを戻そうとする」という話に費やすぐらいのことを やれば、何とかなったかもしれないけど。
あと、ジャックが酷い態度を取ったのに、その後もイザベルが彼を忘れられないという様子を描いているが、それも納得しかねるなあ。

ジャックがイザベルを追い払った後、悩んでいる彼の前にアーサーが現れるという展開がある。
劇中では「ジャックが旧シリーズでファンだったアーサー」として登場するが、もちろんTVドラマ版でアーサーを演じていたポール・ リンドではなく、演じているのはスティーヴ・カレルだ。
で、本人じゃないんだから、それは上手い仕掛けだと思わない(っていうか本人が登場するのは無理だけど)。

その後、ジャックはアーサーに諭されてイザベルとヨリを戻そうと決めるんだけど、その展開はダメでしょ。
そこまでに何度も、アーサーがジャックにアドバイスするシーンが挿入されていたのならともかく、そこだけ急にアーサーが絡むんだ もんなあ。
ジャックが他人に背中を押されるという形にするとしても、背中を押す役目は、それまでに2人の関係に深く関与している人物である べきだ。
そりゃスティーヴ・カレルはポール・リンドに似ているから、そのままリメイク版を作っていたら、アーサー役はピッタリだと思うけどさ 。

(観賞日:2012年5月4日)


第26回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低スクリーンカップル賞[ウィル・フェレル&ニコール・キッドマン]

ノミネート:最低リメイク・続編賞
ノミネート:最低監督賞[ノーラ・エフロン]
ノミネート:最低主演男優賞[ウィル・フェレル]
<*『奥さまは魔女』『ペナルティ・パパ』の2作でのノミネート>


第28回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の演出センス】部門[ノーラ・エフロン]
ノミネート:【最悪の主演女優】部門[ニコール・キッドマン]
ノミネート:【最もでしゃばりな音楽】部門
ノミネート:【最悪のカップル】部門[ニコール・キッドマン&ウィル・フェレル]
ノミネート:【最悪の言葉づかい(女性)】部門[ニコール・キッドマン]
ノミネート:【最悪な“古典的”TVシリーズの復活】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会