『AVP2 エイリアンズVS. プレデター』:2007、アメリカ

スカー・プレデターの体内に寄生していたチェストバスターは、そこから飛び出してプレデリアンへと成長した。プレデリアンは宇宙船に いたプレデターたちを次々に殺害した。宇宙船が森に墜落する様子を、ハンティングに来ていたバディーとサムの親子が目撃した。2人は 急いで逃げ出そうとするが、宇宙船から飛び出したフェイス・ハガーに襲われた。エイリアンを始末するため、プレデターの星で信号を キャッチしたザ・クリーナーは地球へ向かって出発する。
服役期間を終えてガニソン郡クレステッド・ビュートの町に戻った窃盗の常習犯ダラスを、友人であるエディー・モラレス保安官が待って いた。エディーはダラスをパトカーに乗せ、優しく言葉を掛けた。宅配ピザ屋で働くダラスの弟リッキーは、ウォータークレスト1427に ピザを届けるよう店長から指示され、「あそこは、ちょっと」と尻込みするが、「仕事だぞ」と強い口調で命じられる。保安官助手のレイ が下水道ジャンクションを捜索していると、浮浪者のハリーが出て来た。彼の愛犬がくわえてきたのは、プレデターの腕だった。
リッキーが尻込みしたウォータークレスト1427には、片思いの相手であるジェシーが住んでいた。リッキーがピザを届けると、ジェシーの 家には彼女のボーイフレンドであるデイルや仲間のマーク、ニックたちがいた。デイルたちはリッキーを馬鹿にして暴力を振るい、鍵を 下水溝に投げ込んだ。モラレスは林道でバディーの車が放置されているのを発見した。バディーとサムが意識を取り戻すと、その腹部を 突き破ってチェスト・バスターが出現した。
陸軍隊員のケリー・オブライエンか久々に自宅へ戻り、夫ティムと娘のモリーが出迎えた。ケリーはモリーへの土産として暗視ゴーグルを 渡す。リッキーが家に戻ると、ダラスがいた。リッキーがバットを持って仕返しに行こうとするのを止めたダラスは、鍵を探しに行こうと 持ち掛けた。下水道の入り口にいたハリーと仲間は、フェイス・ハガーに襲われた。死体を発見した浮浪者仲間の女性も、エイリアンの 襲撃を受けて死亡した。
森に降り立ったザ・クリーナーは、宇宙船と仲間の死体を発見した。彼はプレデリアンの存在を知った後、宇宙船を爆破して消滅させた。 その夜、ダラスとリッキーは下水道に入り、鍵を見つけて外に出た。保安官事務所の面々がバディーとサムを捜索していると、バディーの 妻ダーシーがやって来た。バディーたちが見つからないので、モラレスは翌朝に再会することを決める。ザ・クリーナーはバディーとサム の死体を溶かして消滅させる。それを目撃したレイは、捕まって殺された。
翌朝、ダラスが食堂で食事を取っていると、モラレスがやって来た。ウェイトレスをしているキャリーは、夫のレイがまだ戻っていない ことをモラレスに話す。捜索に向かったモラレスは、逆さ吊りにされて皮を剥がれたレイの死体を発見する。リッキーはジェシーから、 「今夜10時、学校のプールで泳ぎましょうよ」と誘われる。下水道に入ったザ・クリーナーはエイリアンの群れを発見し、始末しようと する。しかしプレデリアンは手強く、地上へ飛び出した。ザ・クリーナーは後を追う。
閉店後の食堂にいた調理人のリッチーとキャリーは、エイリアンに襲われた。ダラスがバーで飲んでいるとモラレスが現れ、レイが殺害 されていたことを語る。下水道でガス爆発があったという知らせを受けたモラレスに、ダラスは「手伝おう」と同行を申し出た。発電所の 所員がエイリアンに襲われ、そこにザ・クリーナーがやって来た。リッキーとジェシーはプールに忍び込み、キスを交わす。そこへデイル 、マーク、ニックが来て、リッキーをプールに沈めようとする。
プレデリアンとプレデターの激しい戦いによって発電所が爆発し、町は停電になった。プールにはエイリアンが現れ、マークが殺される。 残りの面々は慌てて窓から脱出するが、逃げ遅れたニックが餌食になった。暗視ゴーグルで外を眺めたモリーはエイリアンを発見し、悲鳴 を聞いたケリーとティムが駆け付ける。モリーは怪物がいたと訴えるが、全く信じてもらえない。しかし家に突入してきたエイリアンが ティムを惨殺したため、ケリーはモリーを連れて逃げ出した。
原発事故の知らせを受けたモラレスは、ダラスと共に駆け付けた。モラレスは指令室に連絡を入れ、応援を要請する。そこへリッキーたち が来て、ダラスたちに「化け物に襲われてマークが殺された」と訴える。ダラスとモラレスが様子を見に行くと、プールの水が抜かれて おり、死体は見当たらなかった。しかしプールもロッカールームも血だらけになっていた。モラレスは指令室に連絡を取るが応答が無く、 ダラスは危険を察知した。2人はリッキーたちをパトカーに乗せ、現場を離れた。
キャリーを迎えに行ったダーシーは、彼女の死体からチェスト・バスターが這い出そうとしている様子を目撃し、慌てて逃げ出した。墓地 にやって来たケリーとモリーは、拳銃を持つカールという男から「こっちだ」と手招きされる。しかし「奴を殺してやる」と喚いて立ち 上がったカールがプレデターに惨殺され、ケリーたちは逃げ出した。ダラスたちが乗ったパトカーの前にダーシーが飛び出して来たので、 モラレスは停車する。ダーシーは「キャリーの内臓が無くなって死んでた」と泣きながら話した。
ダラスはモラレスに「大勢が殺されてる。武器が必要だ」と言い、銃砲店の鍵を開けた。彼らは店に入り、ライフルと弾丸を手に入れた。 スティーヴンス大佐によって派遣された州軍が町に到着するが、エイリアンによって皆殺しにされた。銃砲店にケリーとモリーが来たので 、ダラスが招き入れる。エイリアンは病院で妊婦を襲い、口から卵を産み付ける。銃砲店にもエイリアンが現れるが、背後から忍び寄った プレデターによって始末される。ダラスたちは逃げ出すが、別行動を取ったデイルはエイリアンに捕まった。そのエイリアンはプレデター に射殺されるが、デイルは強酸性の血液を顔に浴びて死んだ…。

監督はザ・ブラザーズ・ストラウス、「エイリアン」キャラクター創作はダン・オバノン&ロン・シャセット、「プレデター」 キャラクター創作はジム・トーマス&ジョン・トーマス、脚本はシェーン・サレルノ、製作はジョン・デイヴィス&デヴィッド・ガイラー &ウォルター・ヒル、製作総指揮はポール・ディーソン&ロビー・ブレナー、撮影はダニエル・C・パール、編集はダン・ジマーマン、 美術はアンドリュー・ネスコロムニー、衣装はアンガス・ストラティー、クリーチャー効果デザイン&創作はアレック・ギリス&トム・ ウッドラフJr.、オリジナル「エイリアン」クリーチャーデザインはH・R・ギーガー、音楽はブライアン・タイラー。
出演はスティーヴン・パスクール、レイコ・エイルスワース、ジョン・オーティス、ジョニー・ルイス、アリエル・ゲイド、クリステン・ ヘイガー、サム・トラメル、ロバート・ジョイ、デヴィッド・パートコー、トム・ウッドラフJr.、イアン・ワイト、 チェラー・ホースダル、ミーシャック・ピーターズ、マット・ウォード、マイケル・スカニック、デヴィッド・ホーンズビー、クリス・ ウィリアム・マーティン、ジェームズ・チャッター、フィル・バーラー、ケヴィン・ハーランド、ジーナ・ホールデン他。


2004年の映画『エイリアンVS. プレデター』の続編。
VFX製作会社“ハイドラックス”の経営者であるコリン&グレッグのストラウス兄弟が、初監督を務めている。
ダラスをスティーヴン・パスクール、ケリーをレイコ・エイルスワース、モラレスをジョン・オーティス、 リッキーをジョニー・ルイス、モリーをアリエル・ゲイド、ジェシーをクリステン・ヘイガー、ティムをサム・トラメル、スティーヴンス をロバート・ジョイ、デイルをデヴィッド・パートコーが演じている。

今回はエイリアンの一部をプレデリアンに変身させているんだけど、そういう設定にした意味って、全く無いよね。
プレデリアンになったからって、「他のエイリアンより手強い」というだけで、プレデターの要素が混じったことによる特徴が発揮されて いるわけではないし。
それよりも、町が停電になり、画面が暗い中でプレデターとプレデリアンが戦うシーンに入ると、「似たような見た目だから、どっちが どっちか分かりにくい」という難点が生じているし。

プレデター側がザ・クリーナーを1人送り込むだけってのは、その後の展開を考えると失敗でしょ。
だってさ、1人しかいないんだから、そいつが死んだ時点でプレデターとエイリアンの戦いは終了してしまうわけで。ってことは、ザ・ クリーナーが最後まで死なないという筋書きが分かっちゃうんだよね。
あと、プレデターって戦士のはずなんだけど、ただのモンスターになっているよね。それに、あまり頭も良さそうに見えないし。
それと、小瓶に入った液体を垂らして死体を溶かすという作業が、すげえ地味なんだよな。証拠を消し去る方法として、もうちょっと 見栄えのする方法は無かったのか。

ザ・クリーナーがレイを殺した後、皮を剥いで逆さ吊りにしている意味が分からん。
アンタは証拠隠滅のために送り込まれたはずでしょ。それなのに、「殺人を犯しました」という証拠を残しただけでなく、それを誇示する ような飾り付けを施すのは理解しかねる。
何かの儀式として死体を飾るのなら分かるけど、そうじゃないわけだし。
あと、過失とは言え、「敵意を示していない」「女子である」ということで通常は攻撃対象から外れるジェシーを死なせちゃってる のよね。
それはダメでしょ。

人間たちの様子が描かれるシーンに入ると、見事にダラダラとした空気が流れる。
「そんなの要らない」と言いたくなる。
エイリアンとプレデターの戦いがメインだから、基本的に人間たちは無関係だ。でも人間が関わらないと観客を引き付けることが難しい だろうってことで、画面に登場させるのは、間違った考えとは思わない。
ただ、やはり基本的には「エイリアンとプレデターの戦いを見せる」という意識でいいと思うんだよね。
だから人間を登場させるにしても、「巻き込まれた犠牲者」ということでいいと思うんだよね。

これを怪獣映画として考えると、実は「序盤で主要キャラを紹介し、人間関係を軽く見せておく」ってのは、決して間違っているわけでは ないんだよね。
そういう作業をやっておいて、「そこに怪獣が現れて町や人々を襲う。人々は逃げ惑い、そして怪獣を倒す方法を考えて立ち向かう」と いう展開へ移っていくというのは、怪獣映画では良くあるパターンだ(基本的には災害映画と同じだ)。
ただ、この映画の場合、その手のパターンを使うべき怪獣映画とは、ちょっと種類が違うんだよね。
この映画では、人間は怪獣と戦う主役ではなくて、エイリアンとプレデターの戦いに用意された添え物に過ぎない。

最初の内、人間たちは何が起きているのか、犯人が誰なのかを全く知らない。
エイリアンやプレデターを目撃した奴が始末されるシーンや、彼らが残した物を発見するシーンなどを散りばめて、「やがてエイリアンや プレデターを目撃した連中が退治するために立ち上がる」という流れにしている。
それは通常の怪獣映画であればセオリー通りだし、何の問題も無いんだけど、この作品の場合は事情が違っていて、観客は最初から敵が エイリアンとプレデターであることも、その目的も(エイリアンは繁殖、ザ・クリーナーはエイリアンの抹殺)、全て分かっているん だよね。
だから、そんな作業に時間を割いて丁寧に描かれても、余計な道草を食っているかのように思えてしまう。

まあ、そもそもエイリアンとプレデターの戦いという企画の段階で、シナリオ作りが難しいという問題はある。
だけど、そこはハッキリと割り切って、人間ドラマなんかバッサリと削り落とし、90分程度の上映時間で、ノンストップでバイオレンス・ ホラー・アクションを見せるという考えでも良かったんじゃないかな。
それに、どうせ人間ドラマなんて薄っぺらいし、それが物語に影響も与えないし、後にも上手く繋がらないし。
ぶっちゃけ、リッキーがジェシーに惚れていようが、デイルたちにイジメを受けていようが、どうでもいいんだよな、そんなこと。

ダラスが窃盗の常習犯だったというのは、「銃砲店の鍵を開ける」というシーンのためだけに用意されている設定で、それ以外では全く 活用されていない。
そんな設定が無くても、銃砲店にはドアを壊して入ればいいだけだ。
ケリーが軍人というのも、ヘリコプターを操縦させるために用意されている設定に過ぎない。
彼女は幼い娘を連れているが、娘を助けるために戦うという展開があるわけでもないから、その設定も大した意味は無い。

終盤になって、ダラスたちが戦いながら脱出を目指すという展開に入っていく。
だけど、人間がモンスター(基本的にはエイリアン)と戦い始めると、プレデターが邪魔になっちゃうんだよな。
「三つ巴の戦い」という構図にしたことで、戦いに厚みが生じたり、面白味が生じたりしているわけではない。
人間を戦いの主役グループとして扱うのなら、単純に「人間VS. エイリアン軍団」という構図にしてしまった方が、分かりやすくて スッキリする。

(観賞日:2013年5月14日)


第28回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低序章・続編賞
ノミネート:ホラー映画というには申し訳程度の最低のシロモノ賞

 

*ポンコツ映画愛護協会