『エイリアンVS. プレデター』:2004、アメリカ&カナダ&ドイツ&チェコ&イギリス

1904年10月10日、南極大陸。レイザーバック・ポイント南極捕鯨基地の職員達が、正体不明の何者かに襲撃された。2004年10月3日、ウェイランド社の低軌道衛星が、南極大陸にある正体不明の熱源を探知した。ネブラスカ州シルヴァーリーフのウェイランド社衛星追跡施設に、そのデータが届いた。昨日は無かった熱源が、急に発生したのだ。
ネパールのローラ峠。険しい崖を登頂していた環境工学者レックスは、ウェイランド社の社長秘書マックスからの電話を受けた。社長のウェイランドが資金提供を申し出ており、会いたがっているという。マックスは電話を掛けただけでなく、ローラ峠までヘリで迎えに来た。メキシコのテオティワカン。考古学教授セバスチャンは助手トーマスと共に遺跡を発掘していたが、支援者ファンから他に委託すると宣告された、資金調達が必要となったセバスチャンの元にマックスが現われ、援助を申し出た。
南極大陸ロス棚氷の上空を飛ぶヘリの中で、レックスは自分と同じくウェイランドに呼ばれた科学工学者ミラーと出会った。レックス達のヘリは、ウェイランド社の砕氷船ハイパー丸に到着した。船には、セバスチャンとトーマスも来ていた。他にクイン率いる採掘チーム、ウェイランド社のヴァーヘイデンやコナーズ、ルソーやストーン達が集まっていた。
一行の前にウェイランドが現われ、南極大陸の氷の下600メートルでピラミッドが発見されたことを告げた。そのピラミッドは、エジプト、メキシコ、カンボジアの3つの文明の要素を全て併せ持っていた。衛星が捉えた熱源はピラミッドの中にあるが、その正体は不明だ。ウェイランドはピラミッドを探索するため、レックス達を集めたのだ。
レックスはガイド役を求められるが、訓練が必要だと主張した。しかしウェイランドは「他の人間に先を越されては困る」と、今すぐに出発することを譲らない。一度は依頼を断ろうとしたレックスだが、結局は引き受けることにした。ピラミッドがあるのは、1904年に一夜で全員が消滅し、見捨てられた捕鯨基地の真下だ。捕鯨基地に到着した一行は、そこにベースキャンプを設置した。
すぐに一行は、30度の角度で正確に掘られた大きな穴を発見した。その穴は、ピラミッドまで到達している。だが、昨日の同じ時刻には無かったものだ。わずか一日の間に、何者かが穴を開けたのだ。一行は、その穴を降りてピラミッドへ向かうことにした。レックスは、ウェイランドに死期が迫っており、生きた証を残すために今回の計画を急いでいたことを知った。
穴を降りたレックス達は、そびえ立つピラミッドを目にした。ピラミッドに入った時、その最深部では侵入者を察知し、エイリアン・クイーンが活動を開始した。同じ頃、ベースキャンプに残ったクルーは、宇宙から飛来した3匹のプレデターに襲撃されていた。ピラミッドの中を進んだレックス達は、生贄の間で石灰化した古い生物の死骸を発見した。大きなサソリのようだが、寒い場所にサソリは生息していない。それがエイリアンの死骸だということに、もちろんレックス達は気付かない。
ルソーやトーマスら数名を生贄の間に残し、レックス達は下の階へと進んだ。生贄の間の真下の部屋で、彼女達は石棺を発見した。石棺にはダイアルが付いており、日付をセットできるようになっていた。ダイアルを見たセバスチャンは、1904年に石棺が開けられていると見抜いた。彼がダイアルを今日の日付に合わせると、石棺が開いた。その中には、見慣れぬ道具が3つ入っていた。
ひとまずベースキャンプに戻るべきだとレックスが主張し、ウェイランドは道具を持ち帰るようマックス達に指示した。道具を石棺から持ち上げた途端、部屋の壁が動いて扉が閉じられた。一方、生贄の間ではエイリアンのチェストバスターが出現し、ルソー達を全滅させた。レックス達は、入り口への道を探し始め、セバスチャンは壁に記された古代文字を読み解いた。それによると、見慣れぬ道具は、先祖が神と崇めた存在の持つ武器だった。
レックス達の前にプレデターが現れ、ストーンが殺された。そんな中、またピラミッドの壁が動き始め、一行は分断されてしまった。穴に落ちたコナーズは、エイリアンに襲われた。ミラーとヴァーヘイデンは、迷路に閉じ込められた。レックス、セバスチャン、マックス、ウェイランドの4人は、入り口を探す。セバスチャンは、壁が10分置きに動くことを見抜いた。ヴァーヘイデンとミラーは、次々にエイリアンの襲撃を受けた。
レックス達はプレデターに襲われ、マックスが命を落とした。そこへエイリアンが現われ、2匹のプレデターを殺害した。その戦いの間に逃げ出したレックス達だが、残ったプレデターが追い掛けてきた。動けないと覚悟を決めたウェイランドが立ち向かうが、あえなく命を落とした。レックスとセバスチャンは、動き出した壁の向こう側へと必死に逃げた。
プレデターの行動と壁の古代文字を読み解き、セバスチャンは状況を把握した。セバスチャンは、プレデターが成人になるための儀式としてエイリアン狩りを行っており、だから最初は武器を持っていなかったのだと確信した。そして彼は、プレデターが遥か昔から何度か地球に飛来して人々に神と崇められたこと、エイリアンを増殖させるために人間が生贄とされたことを読み解いた。レックスは、武器をプレデターに渡せば無事に脱出できるのではないかと考える…。

監督&脚本はポール・W・S・アンダーソン、"Alien" charactersはダン・オバノン&ロナルド・シャセット、"Predator" charactersはジム・トーマス&ジョン・トーマス、脚本はポール・W・S・アンダーソン&ダン・オバノン&ロナルド・シャセット、製作はゴードン・キャロル&ジョン・デイヴィス&デヴィッド・ガイラー&ウォルター・ヒル、製作総指揮はウィック・ゴッドフレイ&トーマス・M・ハメル&マイク・リチャードソン、撮影はデヴィッド・ジョンソン、編集はアレクサンダー・バーナー、美術はリチャード・ブリッグランド、衣装はマガリ・グイダスキ、音楽はハラルド・クローサー。
出演はサナ・レイサン、ラウル・ボヴァ、ランス・ヘンリクセン、ユエン・ブレムナー、コリン・サーモン、トミー・フラナガン、ジョセフ・ライ、アガサ・ドゥ・ラ・ブライユ、カーステン・ノルガード、サム・トラウトン、ペトル・ジャケル、パヴェル・ベヅェク、キーラン・ビュー、カーステン・ヴォイト、ヤン・パヴェル・フィリペンスキー、エイドリアン・ブーシェ、アンディー・ルーカス他。


タイトルが示す通り、『エイリアン』シリーズと『プレデター』シリーズのモンスターが登場する両シリーズの番外編。
監督&脚本は、『モータル・コンバット』『バイオハザード』のポール・W・S・アンダーソン。彼は『バイオハザードII アポカリプス』と『モータル・コンバット』第3作の監督を断って、この映画の監督&脚本に取り組んだらしい。
レックスをサナ・レイサン、セバスチャンをラウル・ボヴァ、ウェイランドをランス・ヘンリクセン、ミラーをユエン・ブレムナー、マックスをコリン・サーモン、ヴァーヘイデンをトミー・フラナガン、コナーズをジョセフ・ライ、ルソーをアガサ・ドゥ・ラ・ブライユが演じている。
プレデターの中の人は、2メートル16センチの長身男イアン・ワイト。

「エイリアンとプレデターの対決」というアイデアの発端は、『プレデター2』の1シーンにある。スタッフの遊び心で、プレデターの宇宙船に戦利品とエイリアンの頭蓋骨が飾られた。
ここから着想を得て、まず1989年にダークホース・コミックスから両モンスターが対決するコミックが発売され、さらに1993年にはコンピュータ・ゲーム、1994年には小説が作られた。
20世紀フォックスでも映画化の企画はあったが、なかなか実現には至らなかった。数十人の脚本家によるストーリーのアイデアが全て却下され、ようやく今回、実現の運びとなったわけだ。
でも、製作サイドが「これだ」と決めた脚本が、これなのかと思ってしまうけどね。
だったら今までの脚本は、よっぽどヒドいモノばかりだったんだろうな。

ポール・W・S・アンダーソンはオタク系の監督なので、両シリーズのファンに対する目配りはキッチリとやっている。
ウェイランド社の名は、『エイリアン』でノストロモ号を送り出した多国籍企業ウェイランド=ユタニ・コーポレーションから取っている。
また、社長のラスト・ネームはビショップであり、これはランス・ヘンリクセンが『エイリアン2』『エイリアン3』で演じたアンドロイドの名だ。
ウェイランド社長は『エイリアン』シリーズのビショップのように、ナイフを指の間に通す遊びを見せる。

「爆弾を終盤で使うなら最初に使えばいいだろ」と思ったり(っていうか爆弾を使った時点で儀式は失格じゃないのか)、「エイリアンが宿主に卵を産む習性を知り尽くしているはずのプレデターが仲間の死体を宇宙船に積み込むのはバカじゃないのか」と思ったりするが、まあポール・W・S・アンダーソンなので粗いのは仕方が無い。
あと、この人ってB級映画をそつなくB級レヴェルでまとめる力はあるけど、イマイチ弾けないんだよな。安全に行きたがるから、小さく収まってしまう。良くも悪くも、はみ出さない男だ。

地球を舞台にしていることなどから考えて、『エイリアン』シリーズではなく『プレデター』シリーズ、それも『プレデター2』をベースにして、そこにエイリアンを放り込んだ作り方になっているようだ。
別タイトルを付けるなら、『プレデター3/遺跡と女とエイリアン』みたいな感じだね。
時代的には、『プレデター2』と『エイリアン』の間ということになる。
怪物対決というアイデアの出発点が『プレデター2』だったことを考えれば、そこをベースにするのは間違っていないのかもしれない。
ただ、『プレデター2』が決して出来の良い作品ではなかっただけに、疑問も残る。
『エイリアン』や『エイリアン2』は監督の個性が色濃く出ていたので、そこに手を付けることへの躊躇がポール・W・S・アンダーソンの中にあったのかな。

で、地球を舞台にしたのが、まず失敗の始まり。
地球を舞台にするために、「わざわざ地球に来て成人の儀式をやっていました、儀式の獲物であるエイリアンをピラミッドに運び込みました、繁殖させるために人間を生贄にしていました」という、ものすごく苦しさのある設定になっている。
そんな儀式、テメエらの星でやれって話だからね。
わざわざ地球でやる必然性が全く見当たらない。
大体、プレデターがエイリアンを狩りの対象にしているという設定になると、力の差があるってことになる。そこは「まだプレデターが成人していないし最初は武器も持っていない」ということでハンデを付けているんだが、今度は逆にプレデターがエイリアンにボロ負けしている。
で、それなのに1匹だけはニュータイプみたいに圧倒的に強い。もうパワーバランスの調整がメチャクチャだ。

プレデターにレックスとタッグを組ませるなんて、愚の骨頂だ。プレデターってのは、残忍で凶暴な孤高の戦士なのよ。簡単に人間の女と通じ合ってんじゃねえよと。まるで女に惚れたかのようにカップルになってんじゃねえよと。
「どちらが勝っても…人類に未来はない。」という日本公開時のキャッチコピーは大嘘。
プレデターが勝ったら人間に未来はあるじゃねえか。
その未来を作るために、レックスはプレデターに武器を渡してタッグを組むんでしょうに。

怪物バトルに人間を関わらせるにしても、そこは人間が一方的にどちらかに加担する形にすべきなのよ。エイリアンとプレデターは、勝手に戦うべきなのよ。
プレデターに人間味を持たせて、可愛くしてどうすんの。
そもそも、そこまでに大勢の仲間を殺してるんだぞ。
あとエイリアンの死骸から盾と槍を作ってレックスに渡すって、なんやねんと。どこかの密林の原住民じゃねえんだからさ。

エイリアンとプレデターが戦い始めるまでに、無駄に時間を使いすぎ。
どうせ死ぬためだけに配置された人間どもの遺跡探検なんて、どうだっていいのよ。
人間ドラマを描くことが出来るなら、「もっと人間に厚みを持たせるべきだ」と不満を抱くかもしれない。だけどポール・W・S・アンダーソンなんだから、そんなの無いに決まってるんだし。

ポール・W・S・アンダーソンは「『エイリアン』『エイリアン2』『プレデター』では、なかなかクリーチャーや戦闘場面が無かったことが効果を高めている」ということで、同じようなことをやったらしい。
だけど、それは大間違い。
『エイリアン』や『プレデター』は、観客にとって怪物が未知の存在だったから、それで良かったのよ。
でも、今回はエイリアンもプレデターも、その正体を知った上で見ている。だから、幾ら引っ張ったところで、登場した時のサプライズなんて無いのよ。
そもそも、これは「未知の生物に人間が次々と襲われる」というSFホラーではなく、怪物同士が戦うホラー・アクションなのよ。ピラミッドの壁が動いて迷路のようになるアトラクションをやったりしている暇があったら、エイリアンとプレデターの戦いを見せてくれと言いたくなる。

エイリアンとプレデターだけじゃなく、遺跡そのものが人間の敵として立ち塞がるなんて、明らかにピントがボヤけてるでしょ。そんなのいいから、怪物プロレスをケレン味たっぷりに見せなさいって。
終盤はレックスが加わった変則タッグマッチになるので、タイトルの通りマトモにエイリアンとプレデターがガチンコ対決するのは、中盤の1シーンだけになってるじゃん。

それにしても、遥か昔からエイリアンが地球にいたってことになると、『エイリアン』でリプリーが「こいつらを地球に行かせてはダメだ」と命懸けで頑張ったのは骨折り損だったというわけだな。
それはともかく、エイリアンとプレデターの対決映画が作られたからには、次はエイリアンを倒したシガニー・ウィーヴァーとプレデターを倒したアーノルド・シュワルツェネッガーが対決する映画を作るしかないな(いや、そんなことは無いと思うぞ)。


第25回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低リメイク・続編賞

 

*ポンコツ映画愛護協会