『アナコンダ2』:2004、アメリカ

ニューヨーク。バイロン&ミッチェル社の共同経営者ゴードンとジャック、それに仲間のサムは、ウェクセルホール社から投資の打ち切りを迫られていた。ゴードンは万能薬を開発すると説明してきたが、これまで何の成果も得られていないからだ。するとゴードン達は自信ありげに、ある花のことを話し始めた。それはボルネオの奥地に咲くブラッド・オーキッドという花だ。不死の蘭と呼ばれるブラッド・オーキッドが咲くのは7年に一度、半年間だけだ。
ジャックは、サンプルとして持ち帰ったブラッド・オーキッドを研究し、そこに含まれる化学成分に人の分裂限界を高める効能があるという結果が出たと説明した。つまり、人間の寿命を延ばすことが出来るということだ。だが、サンプルは分析に使ってしまい、臨床実験が出来ない。しかも、あと2週間でブラッド・オーキッドは散ってしまうのだ。ウェクセルホール社の科学者ゲイルは彼らの主張を一笑に付すが、CEOは強い関心を示し、ボルネオへ飛ぶよう指示した。
ジャック、ゴードン、サム、そしてゲイルの4人は、ボルネオに到着した。だが、手配にミスがあり、上流へ向かう船がチャーターできなくなってしまった。雨季に入っているため、現地の人々は3週間後にならないと船を出さないというのだ。そんな中、一向は船を貸してくれるという男ジンスーンに会いに行く。ジンスーンとは現地での呼び名で、その正体はジョンソンというアメリカ人だった。ジョンソンから5万ドルという法外な報酬を吹っ掛けられたジャック達だが、仕方なく応じた。
ジョンソンと助手トランが操るブラッディー・マリー号は、かなりのオンボロ船だった。ゲイルが呼び寄せたコンピュータ技術者コール、ジャックの教え子である医師ダグラスが船着き場で合流した。不死の蘭が散るまでの期限は、あと1週間となっていた。ゲイルは、ジョンソンが飼っている猿のコングを発見して慌てた。ゲイルは携帯電話を掛けている最中、誤って川に転落した。他の面々が笑う中、水中から巨大なワニが出現する。ジョンソンは川に飛び込み、ナイフでワニを退治してゲイルを救った。
激しい雨で水かさが増し、ジョンソンは引き返すべきだと考えてジャックに危険な状況を説明した。しかしジャックは同意せず、他の者には内緒で自腹の5万ドルを支払うと約束し、先へ進むようジョンソンに要求した。やがてブラッディー・マリー号は、何本もの流木が漂う場所に辿り着いた。スクリューにトラブルが生じて空回りし、自由を失った船は滝に転落する。船は大破し、川に投げ出された一行は何とか岸に辿り着いた。しかし食料は失われ、わずかな荷物しか残らなかった。
ジョンソンは近くにいる友人リヴィングストンに連絡を入れ、助けを求めた。一行はリヴィングストンの船へ向かうため、ジャングルを歩き始めた。一行が歩いて川を渡っていた時、最後尾にいたダグラスが巨大なアナコンダに襲われた。あっという間にダグラスを飲み込んだアナコンダを目撃し、残った面々は急いで逃亡した。ジョンソンは一行に、「あれだけ巨大なら縄張りも大きいだろうから、しばらくは遭遇しないだろう。今は消化中だから、その間は動けない」と説明した。
すぐに帰ろうと考えるゲイルやコールに対し、ジャックやゴードンは計画の続行を主張した。とにかく船に向かい、その後の行動は乗ってから話し合うことになった。ジョンソンはジャックに、自分は蘭の場所まで行くのをやめると告げた。サムはジョンソンと話して、ジャックが危険を知りながら独断で先へ進むよう要求していたことを知った。だが、リヴィングストンの船はアナコンダに襲撃され、爆発炎上した。その場に辿り着いたジョンソンたちは、崩壊した船を呆然と見つめた。
一行は近くの村へ行き、助けを求めようと考えた。その道中、一行はリヴィングストンの無残な死体を発見する。ジョンソンは一行に、「消化している間、奴らは無力だ。しかし攻撃を受ければ、食べ物を吐き出して反撃してくる」「ダグラスの時とは別のアナコンダに襲われたのだろう。もし交尾期なら、通常は縄張りにいるオスが繁殖期のメスを求めて集まる」と説明した。村に辿り着くと、そこは無人で、アナコンダの死骸が放置されていた。危機を察知した村人達は、既に逃げ出していたのだ。
ジョンソンたちは、家屋の材木を利用してイカダを作ることにした。ジャックはブラッド・オーキッドを発見し、その作用でアナコンダが巨大化したのだと確信する。それはブラッド・オーキッドの咲いている場所が、すぐ近くであること意味していた。ジャックはイカダで行こうと主張するが、今回は誰も同意しなかった。だが、ジャックは諦めていなかった。
イカダが完成して出発準備が進む中、ゴードンはジャックが隠し持っていた衛星電話を発見した。ジャックは助けを求める連絡を誰かが入れることで、計画が中止になることを恐れたのだ。ジャックは毒グモを放ち、ゴードンを動けなくした。ゴードンはアナコンダに襲われ、慌てて駆け付けたジョンソン達は家屋に火を放った。その間にジャックは、イカダを奪って姿を消してしまった…。

監督はドワイト・リトル、原案はハンス・バウアー&ジム・キャッシュ&ジャック・エップスJr.、脚本はジョン・クラフリン&ダニエル・ゼルマン&マイケル・マイナー&エド・ニューマイヤー、製作はヴァーナ・ハラー、製作総指揮はジャコバス・ローズ、撮影はスティーヴン・F・ウィンドン、編集はマーカス・ダーシー&マーク・ワーナー、美術はブライス・パーリン、衣装はテリー・ライアン、音楽はネリダ・タイソン=チュウ。
出演はジョニー・メスナー、ケイディー・ストリックランド、マシュー・マースデン、モーリス・チェスナット、ユージン・バード、サリー・リチャードソン=ホイットフィールド、ニコラス・ゴンザレス、カール・ユーン、デニス・アーント、アンディー・アンダーソン、ニコラス・ホープ、ピーター・カーティン、コーア・ドー、アイレティー、アンドレ・タンジュン。


1997年の映画『アナコンダ』の続編。
ただし「巨大なアナコンダが人間を襲う」という設定を受け継いでいるだけで、物語もキャラも前作とは何の関連性も無い。スタッフ&キャストも、製作のヴァーナ・ハラー以外は総入れ替え。
っていうか、1作目の出来映えからして、なぜ続編を作ろうと思ったのかと首を傾げたくなる。ヴァーナ・ハラーのセンスはどうなっているんだろうか。

ジョンソンをジョニー・メスナー、サムをケイディー・ストリックランド、ジャックをマシュー・マースデン、ゴードンをモーリス・チェスナット、コールをユージン・バード、ゲイルをサリー・リチャードソン=ホイットフィールド、ダグラスをニコラス・ゴンザレス、トランをカール・ユーンが演じている。
前作に比べて、出演者のランクはグッと下がっている。

そもそも「ジャングル奥地へ行って花を採取する」というミッションならば、科学者グループだけで行くというのは不可解だ。その場で研究・実験をするわけではないのだから、花を発見した時に、それが本物だということが分かり、扱いを知っている専門家として、科学者は2人ぐらいいれば充分だろう。
後はサバイバルのプロやジャングルに詳しい連中を揃えた方が適している。

ドワイト・リトル監督は、モンスター・パニック映画の何たるを、これっぽっちも分かっていない。
いや、そもそも脚本の方向性に大きな過ちがあって、なぜかサバイバル・アドベンチャー映画のような作りになっているんだが、職人監督であるドワイト・リトルは、それを本来の『アナコンダ2』としてあるべき姿に修正しようとせず、シナリオに沿った演出で仕上げてしまった。

原題が「Anacondas」と複数形になっているのだから、前作では1匹しか出てこなかったアナコンダが、今回は何匹も登場して人々を襲撃するのだろうと期待した。
ところが、確かに複数のアナコンダは存在している設定だが、2匹以上が同時に襲ってくる場面は全く無い。
そもそも、「何匹ものアナコンダ」という映像自体、終盤までお預けだ。
しかも、ようやく「アナコンダの群れがいる沼地」に到着しても、そいつらが一斉に襲ってくることは無い。
律儀に一匹しか襲ってこないのだ。

『アナコンダ』の続編として作られたのであれば、この作品の肝心要の部分は「いかに巨大アナコンダの脅威をアピールするか」、あるいは「いかに巨大アナコンダを暴れさせるか」ということであるべきだ。
ところが、前述したように複数が襲ってくることは無い。しかも、前作より1匹ごとのパワーが明らかに落ちており、あっさり退治される。
なぜかモンスターから動物へと舵を切っている。
1匹だと弱いから数で勝負ということなのかというと、前述したように1匹ずつしか襲ってこないわけだから、どうしようもない。

低予算でアナコンダに多くの金を掛けられないということなら、アナコンダの姿を見せるのは勿体ぶって、「もうすぐ襲ってくるぞ、来るぞ」という脅しを掛けていくという、『ジョーズ』のような手口もあるだろう。
だが、この映画では「来るぞ」「何かがいるぞ」という脅しを掛ける意識も弱い。
しかも、最初の「来るぞ」「何かがいるぞ」というポイントで登場するのはワニなんだぜ。
なぜアナコンダじゃないんだよ。
そんなトコでワニに寄り道してんじゃねえよ。

その後も、「増水で船の舵が壊れて滝壺に飲み込まれる」というところでサスペンスを演出しているが、アナコンダと全く関係が無いぞ。
既にアナコンダが登場しており、逃げようとする途中でそういうトラブルが発生するなら分かる。でも、まだアナコンダが登場していない段階で、そんな無関係なところにサスペンスを作るというのは、余計な道草以外の何物でも無い。
川を歩いて渡る場面で、ようやく一行はアナコンダと遭遇する。だが、ダグラスが飲み込まれると、すぐに次のシーンへ移ってしまう。「アナコンダが追って来る、逃げ切れるのか」というところでのスリルを全く使おうとしない淡白さだ。
その後は、大きなヒルに血を吸われたり、毒グモに襲われたりという展開があるが、それよりアナコンダに集中しようぜ。

頼りになる現地住民として登場したはずのジョンソンは、ワニを倒し勇敢さをアピールしたかと思ったら、その後は大して役に立たない。
ヒロインのサムは凡庸なキャラに留まり、特にお色気サービスをすることも無い。
どんどん悪役になっていくジャックは、終盤に入るとジョンソンたちに殺意を向け、「人間対アナコンダ」という戦いの図式を露骨に妨害する。
しかし前作のジョン・ボイトに比べれば、そのキレキレぶりは遥かにランクが落ちる。


第25回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低リメイク・続編賞

 

*ポンコツ映画愛護協会