『アナコンダ』:1997、アメリカ

ブラジルのアマゾンに撮影隊がやって来た。ドキュメンタリー映画作家のテリー、人類学者ケイル、カメラマンのダニー、録音技師ゲアリー、マネージャー役のデニス、リポーターのウォーレン、そして現地人ガイドのマテオ。
一行の目的は、、“霧の民”と呼ばれる幻の部族、シリシャマ族を撮影すること。船に乗ってアマゾンの奥地へ入った撮影隊は、船が乗り上げて立ち往生していたサローンという男を助ける。サローンは蛇の捕獲を仕事にしている男だった。
サローンがシリシャマ族と会ったことを聞き、一行は彼の案内でシリシャマ族の集落へと向かう。しかしサローンの示した場所は既に水かさが上昇しており、シリシャマ族が別の場所に移動したと考えたケイルは船の進路を変えるようマテオに指示する。
だが、スクリューに引っ掛かったロープを取り外そうと川に潜ったケイルは、毒蜂に刺されて意識不明の重体に陥ってしまう。一刻も早く彼を病院に連れていくため、一行はサローンの指示した近道を通ることにした。しかし、それはサローンの策略だった。
サローンは巨大なアナコンダを捕獲する計画を立てており、そのために撮影隊をアナコンダの棲息する地帯に向かわせたのだ。やがてサローンにおびき寄せられたアナコンダが襲いかかってきた。一行は否応無しに、アナコンダと対決することになる…。

監督はルイス・ロッサ、脚本はハンス・バウアー&ジム・キャッシュ&ジャック・エップスJr.、製作はヴァーナ・ハラー&レナード・ラビノウィッツ&キャロル・リトル、製作総指揮はスーザン・ラスキン、共同製作はボウ・マークス、撮影はビル・バトラー、編集はマイケル・R・ミラー、美術はカーク・M・ペトルチェッリ、アニマトロニクス効果はウォルト・コンティ、視覚効果はジョン・ネルソン、音楽はランディ・エデルマン。
出演はジェニファー・ロペス、アイス・キューブ、ジョン・ヴォイト、エリック・ストルツ、ジョナサン・ハイド、オーウェン・ウィルソン、カリ・ウーラー、ヴィンセント・カステラノス、ダニー・トレホ他。


非常に分かり易い動物パニック映画。ま、動物じゃなくて蛇だけど。アナコンダが登場するまでの時間を、どうやって引っ張るのかと注目したのだが、特に工夫は無いようだ。
ビデオで見るのなら、始めの30分は早送りでOK。特にストーリー展開が分からなくなるようなことも無いし。

登場した時から怪しい匂いを撒き散らすサローンや、愛の世界に浸ろうとするテリー&ケイル、なぜか深夜のジャングルでセックスを始めようとするバカップルのゲアリー&デニス。そんなこんながありまして、1時間ほど経過した頃にアナコンダ登場。
たぶん、笑う場面ではない。

「巨大な蛇が出てくるってことは、俳優が作り物の蛇を自分で体に巻き付けて、苦しいという芝居をするんだろうなあ」と思っていたら、まさにその通り。
いつの時代の映画だっけ、これって。進歩した部分といえば、作り物がCGになってるだけ。

アナコンダの表現にはCGとアニマトロニクスの両方が使われているが、CGのアナコンダは動きがバカすぎて合成の安っぽさを感じてしまう。むしろ、昔ながらの「作り物」の蛇の方が好印象。
ま、どちらも怖くないというのは問題ではあるけれど。

登場するアナコンダは10メートルを超えており、確かに巨大ということになるのだろうが、なぜかそれほど巨大という感じがしなかった。いっそ「あり得ないだろ」とツッコミを入れられるぐらい巨大にした方が面白かったのかも。

シナリオはツッコミ所が満載。例えば、サローンが撮影隊を巻き込むのが既に不自然。サローンは「アナコンダ捕獲に相棒が必要だ」って言うけど、だったら1人で充分なわけだから、ガイドだけ連れていけばいいんじゃないの。他の連中は邪魔でしょ。

ゲアリーがサローンに洗脳されるのも不自然。ケイルは一刻も早く病院に連れていかないとヤバイ状況だったはずなのだが、なんか最後まで生きている。で、ゲアリーは仲間が死にそうなのにアナコンダ捕獲に夢中になっちゃうわけだ。仲間が死んでも構わないってことなんだろうな。

最初はリーダー的な存在としてストーリーを引っ張っていくのかと思われたケイルだが、毒蜂に刺されて映画からフェイド・アウト。ケイルを演じたエリック・ストルツ、ちょっとかわいそう。もっと彼に役目を与えてあげてちょうだいな。

撮影クルーが、見た目はともかく、中身にあまり個性が感じられない。キャラの描き分けを頑張ってはいるのだけれど、別に誰が演じても良かったんじゃないかと思ってしまう程度。アイス・キューブ演じるダニーなんか、見た目はミスターTなのに、中身はとっても普通の人。

で、前述のようにちっとも怖くないアナコンダだが、その代わりにジョン・ヴォイト演じるサローンが怖い。ケイルに毒蜂の罠を仕掛け、デニスを自分の足で絞め殺す。恐怖の対象がアナコンダではないというのは、映画としては間違ってるだろ。

ジョン・ヴォイトがアナコンダに飲み込まれるシーンは、アナコンダの体内からの映像で見せる。で、スッポリ飲み込まれたボイト先生、しばらくして吐き出される。胃液で溶けかかったヴォイト先生、ジェニファー・ロペス演じるテリーにウインクして御臨終。
まさに悪趣味全開ですな。

それにしても、最後まで撮影隊とサローンが争っているんだけれど、そんなことしてる場合かよ。アナコンダが襲って来ているんだから、とりあえず協力してアナコンダを倒さないとマズイだろうに。


第18回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ルイス・ロッサ]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演男優賞[ジョン・ヴォイト]
ノミネート:最低スクリーンカップル賞[ジョン・ヴォイト&アニマトロニクスによるアナコンダ]
ノミネート:最低新人賞[アニマトロニクスによるアナコンダ]


第20回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の助演男優】部門[ジョン・ヴォイト]
受賞:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい】部門[ジョン・ヴォイト]
<*『アナコンダ』『クロスゲージ』の2作での受賞>

 

*ポンコツ映画愛護協会