『アクション・ジャクソン 大都会最前線』:1988、アメリカ
“アクション・ジャクソン”というニックネームを持つジャクソンは、デトロイト市警13分署の巡査部長。彼は2年前、自動車業界の大物ピーター・デラプレインの息子が起こした事件の捜査を担当した。その際に暴力を振るったことで彼は警部補から降格され、拳銃の所持も禁じられている。
全米自動車労連の幹部ストリンガーやグランサムが次々と殺害される事件が発生した。捜査を開始したジャクソンは、ストリンガーの情報収拾係トニーに接触。そしてデラプレインが自分と敵対関係にある幹部連中を殺しているという証言を得る。
ジャクソンはデラプレインの妻パトリスに近付き、デラプレインの事件への関与を匂わす不審な電話があったことを聞き出す。パトリスがジャクソンに電話の内容を話したと知ったデラプレインは、彼女を射殺。ジャクソンの自宅に死体を運び、ジャクソンが犯人のように見せ掛ける…。監督はクレイグ・R・バクスリー、脚本はロバート・リニュー、製作はジョエル・シルヴァー、製作協力はスティーヴ・ペリー、撮影はマシュー・F・レオネッティー、編集はマーク・ヘルフリッチ、美術はヴァージニア・ランドルフ、衣装はマリリン・ヴァンス=ストレイカー、音楽はハービー・ハンコック&マイケル・ケイメン。
出演はカール・ウェザース、クレイグ・T・ネルソン、ヴァニティー、シャロン・ストーン、トーマス・F・ウィルソン、ビル・デューク、ロバート・ダヴィ、ジャック・ティボー、ロジャー・アーロン・ブラウン、スタン・フォスター、メアリー・エレン・トレイナー、エド・オーロス、ロバート・マイナー、デヴィッド・グレン・エイズリー、デニス・ヘイデン、ブライアン・リビー、デヴィッド・エフロン、アロンゾ・ブラウン他。
カール・ウェザースが主人公ジャクソンを演じた作品。たぶん、若き頃のバート・レイノルズ主演作みたいな感じにしたかったんだろうという匂いのする映画だ。
デラプレインをクレイグ・T・ネルソン、彼の愛人シドニーをヴァニティー、彼の妻パトリスをシャロン・ストーンが演じている。序盤、警官が強盗にジャクソンの恐ろしさを語ったり、まるでサイボーグみたいだと表現したり、ジャクソンが強くて乱暴な男だということをセリフで説明しようとする。
しかし、実際にジャクソンが暴れるようなシーンは、なかなか出てこない。言葉でしつこく説明しても、ジャクソンが暴力刑事だということが伝わってこない。
それよりも、序盤で実際にジャクソンが暴れるシーンの一つも見せておけば、彼のキャラクター設定が一目で分かるというものだ。
例えば2年前のデラプレインの息子への暴力事件を、映像で見せておけばいい。いつまで経っても、アクションシーンが登場しない。
ようやく映画も折り返し地点かという辺りで、ジャクソンが暴走する車を追い掛けて飛び乗るというシーンが登場する。
しかし、あとは終盤に車でデラプレインの屋敷を走るシーンが目立つぐらい。
ちっとも“アクション”・ジャクソンとは思えない。
そのマッチョな体は飾りかと。銃の所持が禁じられているという設定だから、格闘アクションをたっぷり見せてくるのかと思いきや、終盤まではほとんどファイトシーンは無し。
終盤に来て、なぜかジャクソンとデラプレインが持っていた銃を置いて素手で戦うという、強引な形での格闘シーンが登場する。
しかし短い上に、迫力も無い。デラプレインに陥れられてパトリス殺害犯人に仕立て上げられたはずのジャクソンだが、警察に追い詰められる緊張感は全く感じない。
申し訳程度に、チンケな警官2人が顔を見せる程度だ。
後半はカール・ウェザースとヴァニティーとのチープなやり取りで引っ張ろうとしているようだが、それはムリがあるだろう。ニックネームの割には、ジャクソンの行動が普通。
事件は浅くて単純だし、低調なアクションを爆発の多さで誤魔化そうとする。
ノリの良さ、スリル、迫力などの要素は、たぶん編集段階で削ぎ落としたのだろう。
カール・ウェザースの体は引き締まっているかもしれないが、作品はユルユルだ。
第9回ゴールデン・ラズベリー賞
ノミネート:最低主演女優賞[ヴァニティー]