『ワイアット・アープ』:1994、アメリカ

南北戦争時代のアメリカ。農家の三男ワイアット・アープは、兵士として戦う長男ジェームズと次男ヴァージルに続こうとするが、弁護士の父ニコラスに引き止められる。やがて家族はカリフォルニアに移り住み、ワイアットは青年へと成長する。
ワイアットは法律の勉強をするために祖父のいるミズーリ州ラマーに行き、思いを寄せていたユリラに求婚して承諾を貰う。だが、妊娠したユリラが腸チフスで死んでしまう。ショックを受けたワイアットは酒に溺れ、アーカンソー州で馬を盗んで逮捕される。ニコラスに牢から出してもらったワイアットは死刑を避けるため、町から逃亡する。
数年後、ワイアットはエドとバットのマスターソン兄弟と共に、カンザス州でバッファローの皮を剥ぐ仕事で稼いでいた。しかしワイアットは仕事を辞めてウイチタへ向かい、酒場で暴れていた男を退治する。ワイアットは市長に認められ、保安官補に任命された。
やがてワイアットはダッジシティから引き抜かれ、兄のヴァージルと弟のモーガン、そしてマスターソン兄弟と共に保安官の仕事をすることになった。売春宿に出入りするようになったワイアットは、マティという娼婦と親しくなる。最初は兄弟や仲間達と上手く仕事をこなしていたワイアットだが、取り締まりが厳しすぎることを理由に解任される。
ダッジシティを離れたワイアットは、ドク・ホリディという男に出会う。歯医者だったドクは結核を患っており、今では酒浸りのギャンブラーとなっていた。ワイアットとドクは友情によって結ばれ、2人は協力してダッジシティで起きた争いを収める。
やがてワイアットはトゥームストーンの町に到着するが、そこはアイク・クラントンの率いる一味に支配されており、保安官のビーハンは買収されていた。保安官補に就任したワイアットはクラントン達に対決を挑まれ、仲間達と共にOKコラルへ向かう…。

監督はローレンス・カスダン、脚本はダン・ゴードン&ローレンス・カスダン、製作はジム・ウィルソン&ケヴィン・コスナー& ローレンス・カスダン、製作総指揮はジョン・スラン&ダン・ゴードン&チャールズ・オクン&マイケル・グリーロ、撮影はオーウェン・ ロイズマン、編集はキャロル・リトルトン、美術はアイダ・ランドム、衣装はコリーン・アトウッド、音楽はジェームズ・ニュートン・ ハワード。
出演はケヴィン・コスナー、デニス・クエイド、ジーン・ハックマン、デヴィッド・アンドリュース、リンデン・アシュビー、ジェフ・ フェイヒー、ジョアンナ・ゴーイング、マーク・ハーモン、マイケル・マドセン、キャサリン・オハラ、ビル・プルマン、イザベラ・ ロッセリーニ、トム・サイズモア、ジョベス・ウィリアムズ、メア・ウィニンガム、ジェームズ・ガモン、レックス・リン、ランドル・ メル、アダム・ボールドウィン、アナベス・ギッシュ、ルイス・スミス、イアン・ボーエン、ベティー・バックリー、アリソン・ エリオット、トッド・アレン、マッケンジー・アスティン、ジェームズ・カヴィーゼル、カレン・グラッスル、ジョン・デニス・ ジョンストン、ティア・レオーニ他。


伝説の英雄ワイアット・アープの生涯を描いた西部劇。
ワイアットをケヴィン・コスナー、ドクをデニス・クエイド、ニコラスをジーン・ハックマン、ヴァージルをマイケル・マドセン、ジェームズをデヴィッド・アンドリュース、モーガンをリンデン・アシュビーが演じている。

製作サイドとしては、英雄として扱われることの多いワイアット・アープを、新たなイメージで描きたかったのかもしれない。
「これが真実のワイアット・アープだ」というのを見せたかったのかもしれない。
その心意気を、全否定はしない。
ただ、その“新しいワイアット・アープ像”を描いたモノが、映画として面白くなるかどうかは、作る前に冷静に判断すべきだったと思われる。

まず、あまりに長すぎるってのが大きな欠点。
長くても起伏があったり内容が充実していたりすれば、苦痛に感じないはず。
しかし、アープの人生を忠実に描こうとしたためか、淡々と事実が並ぶだけで。
つまり、ただひたすら長いだけ。

アープの身に起きた出来事を、1つ1つ丁寧に描いている。
だが、何でもかんでも全て詰め込めばいいというモノではない。
デニス・クエイドが役作りのためにダイエットしたらしいが、どうやら彼よりも先に、映画のダイエットが必要だったようだ。

とにかく、この映画のアープは、どうしようもなく感情移入に向いていない。
自己中心的で、正義感ではなく銃を撃ちたいというだけ(としか思えない)で戦う奴だ。
この男に共感できる人は、よっぽど人間が出来ているか、よっぽど性格が歪んでいるか、何も考えていないかのいずれかだろう。

おそらくワイアット・アープを西部劇ヒーローとしての枠内ではなく、伝記映画の枠内で描こうとしたんだろうとは思う。
ただ、そうだとしても、製作サイドはワイアット・アープをどういう人物として捉えているのか、どのように見せたいのかが、サッパリ分からない。
だから、例えば「銃なんてずっと撃ちたくない」と言った直後に銃を撃つマネをするとか、1人の女に一途な純愛男かと思ったら女にだらしない男になるとか、アープの行動や言動に統一性が全く見られず、場面ごとにフラフラしてしまう。

せめてアクションシーンだけでも迫力があれば、それなりの救いになるのだろうが、これが主人公の性格と同じぐらい悪い。そもそもガンアクションが少ないし、その少ないガンアクションは、ほとんど「ただ撃ってるだけ」という感じなのよね。
本来なら見せ場になるべきOKコラルの決闘にしても、緊迫感に乏しく、ちっとも盛り上がらないままに終わってしまう。
で、その後も話は続くんだけど、ただ盛り下げる(というか盛り上がるような場面は一度も無いが)だけで、惰性だけで最後まで辿り着く。


第15回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低リメイク・続編賞
受賞:最低主演男優賞[ケヴィン・コスナー]

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ローレンス・カスダン]
ノミネート:最低スクリーンカップル賞[ケヴィン・コスナー&3人の妻達の誰か]

 

*ポンコツ映画愛護協会