『ワイルド・ワイルド・ウエスト』:1999、アメリカ

1869年、ウエストバージニア州モーガン。連邦国軍のジェームズ・ウエスト大尉は、各分野の優秀な科学者を次々に誘拐しているマグラス将軍を捕まえようとしていた。しかし、同じくマグラスを捕まえようとしていた連邦捜査官アーティマス・モーガンと鉢合わせして揉めている間に、まんまと彼に逃げられてしまった。
グラント大統領はウエストとモーガンを呼び出し、2人にコンビを組んで捜査に当たるよう指示する。仕方なく行動を共にすることになったウエストとモーガンは、ニューオーリンズで行われる仮装パーティーの会場に潜入した。
ウエストはアーリス・ラヴレス博士と出会い、彼が事件の黒幕だと知る。一方、モーガンは父のエスコバー博士を探しに来て捕まっていたリタを救い出す。ウエストとモーガンは、リタの情報からユタに向かうが、その途中でラヴレスが襲い掛かってくる…。

監督はバリー・ソネンフェルド、原案はジム・トーマス&ジョン・トーマス、脚本はS・S・ウィルソン&ブレント・マドック& ジェフリー・プライス&ピーター・S・シーマン、製作はジョン・ピーターズ&バリー・ソネンフェルド、共同製作はグレアム・プレイス &ダグ・ローデイト、製作協力はネリー・カイル・タネンバウム&クリス・ソルド、製作総指揮はビル・トッドマンJr.&ジョエル・サイモン&キム・リマスターズ&トレイシー・グレイザー& バリー・ジョセフソン、撮影はミヒャエル・バルハウス、編集はジム・ミラー、美術はボー・ウェルチ、衣装はデボラ・L・スコット 、視覚効果監修はエリック・ブレヴィグ、音楽はエルマー・バーンスタイン、主題歌歌唱はウィル・スミス。
出演はウィル・スミス、ケヴィン・クライン、ケネス・ブラナー、サルマ・ハエック、テッド・レヴィン、M・エメット・ウォルシュ、 バイ・リン、ロドニー・A・グラント、ガーセル・ボーヴァイス、ミュゼッタ・ヴァンダー、ソフィア・エン、フレデリック・ヴァン ・ダー・ウォル、マイク・マクゴーヒー、ジェリー・ウィリス、バック・テイラー、E・J・キャラハン、デブラ・クリストファーソ ン他。


1960年代の人気TVシリーズを、『メン・イン・ブラック』の監督&主演コンビによって映画化した作品。
ウエストをウィル・スミス、モーガンと大統領をケヴィン・クライン、ラヴレスをケネス・ブラナー、リタをサルマ・ハエック、マグラスをテッド・レヴィンが演じている。

エルマー・バーンスタインの優れたスコアと、多くの発明品によって作り上げられた荒唐無稽の世界。
せっかく装置と衣装と音楽がバカ西部劇の世界観を見事に作り上げているのに、どうしようもなくシナリオと演出がヘボだった。

登場シーンを見る限り、ツッコミのウエストとボケのモーガン、マジなウエストとふざけたモーガンという色分けがあるはずだが、それがキッチリと確立されていない。役割分担が曖昧なため、場面ごとにリアクションの形がコロコロと変わってしまう。

黒人と白人のコントラスト、利口とバカとコントラスト、マジメとお調子者のコントラスト、肉体派と頭脳派のコントラスト。
ウエストとモーガンを描き分けるポイントは幾らだってあるはずなのに、同じような行動や反応を取らせたりする。別々に行動している時間が無意味に長くて、コンビネーションの面白さを活用することも無い。

前述したようにゴードンがボケのはずだが、ウエストもツッコミというより「自分では気付いていないバカ」になっている。しかし、その気付いていないバカっぷりを笑いに結び付けることが出来ておらず、単なる愚か者に終わっている。

せっかくケネス・ブラナーに珍妙な悪役を演じさせているのに、その意外なキャスティングを有効に生かさず、ただ見た目だけを滑稽にしただけに終わっている。ヒロインのはずのリタは、いつの間にか存在感が完全に消滅している。
発明品の使い方が勿体無くて、例えば意外な時に意外な方法で使われるようなことは無く、展開の中で軽く流されるように浪費されていく。ただ単に、たくさんの発明品を数多く並べてみたというだけになってしまい、その印象が弱くなっている。

下ネタや差別ギャグが前半で少しだけ見られるが、すぐに消えてしまう。もっと徹底的に悪趣味な笑いを追及すれば、それはそれでOKなのだが、とにかく中途半端。モーガンの変装癖も、扱いが中途半端。
あと、クラインの1人2役も、あまり意味が無い。

おバカな作品なのに、なぜか黒人差別の問題や南北戦争での犠牲者の話を、シリアスなテイストで持ち込んでしまう。そういう問題を絶対に持ち込むなとは言わないが、シリアスな雰囲気を作って作品のムードを台無しにする理由は全く無い。
マグラスが死ぬシーンもマジに見せるが、そこはグロテスクでも構わないから笑いを入れて見せるべき。どうしてそんなトコロでマジになるのか、と思うような場面で、この映画は急にマジになってしまう。
なぜ徹底的にバカを貫き通せなかったのか。


第20回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低作品賞
受賞:最低監督賞[バリー・ソネンフェルド]
受賞:最低脚本賞受賞
受賞:最低スクリーンカップル賞[ケヴィン・クライン&ウィル・スミス]
受賞:最低オリジナル歌曲賞受賞「Wild Wild West」

ノミネート:最低主演男優賞[ケヴィン・クライン]
ノミネート:最低助演男優賞[ケネス・ブラナー]
ノミネート:最低助演女優賞[娼婦を演じたケヴィン・クライン]


第22回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の作品】部門
受賞:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門
受賞:【最も痛々しくて笑えないコメディー】部門
受賞:【最悪なTV番組の映画化】部門

ノミネート:【最悪の演出センス】部門[バリー・ソネンフェルド]
ノミネート:【最悪の男優】部門[ケヴィン・クライン]

ノミネート:【最大の期待外れ(誇大な宣伝に応えない作品)】部門
ノミネート:【最悪のカップル】部門[ウィル・スミス&ケヴィン・クライン]
ノミネート:【チンケな“特別の”特殊効果】部門
ノミネート:【最悪の歌曲・歌唱】部門「Wild Wild West」[ウィル・スミス]

 

*ポンコツ映画愛護協会