『マスク2』:2005、アメリカ

エッジ・シティーの博物館。ニューマン博士が入場者に向かい、展示物の説明を行っている。展示物の中には、木製のマスクがあった。それは、北欧神話の神オーディンの末息子ロキが落としたとされている物だ。そのマスクを着けた人間は、ロキと同じ能力が得られるという言い伝えがある。ニューマンは、ロキが出来の悪い厄介者だと扱き下ろした。
実は、入場者の中には、落としたマスクを探しに来たロキが混じっていた。ニューマンの言葉に激怒したロキは、緑の顔を持つ恐ろしい姿に変貌した。ロキはマスクを奪うが、それは偽物だった。怒りの収まらないロキは、ニューマンの顔をスライスして奪い取った。同じ頃、エッジ・シティーの南西430キロに位置するフリンジ・シティーでは、一匹の犬が川でロキのマスクを見つけていた。
マスクを見つけた犬オーティスの飼い主は、アニメ制作会社の社員ティムだった。彼はアパレル会社の取締役を務めるトーニャと2人で暮らしている。2人はティムの姉クレアと夫クリスの家へ遊びに行き、子作りを勧められた。トーニャは今すぐにでも欲しいのだが、ティムは子沢山の姉夫婦の生活に触れてウンザリしており、子供が欲しい気持ちに全くなれない。
ティムはオーティスが拾ってきたマスクを見つけるが、特に気にすることもなく放置しておいた。彼は自分で番組を作る夢を抱いているが、現在は着ぐるみ姿になるような下働きに甘んじている。ティムは同僚ホルヘに促され、食堂で見つけたモス社長に思い切って話し掛けた。ティムは自分のアイデアを見てもらうが、「キラメキが無い」と淡白に評されてしまった。
ティムの会社では、ハロウィン・パーティーが催されることになった。仮装アイテムが見つからずに困ったティムは、仕方なくオーティスの拾ったマスクを持って出掛けた。会場に到着してマスクを着けたテイムは、そのパワーでハイテンションな緑の怪物に大変身した。会場では嫌味な社員チャドが盛り上げようとするが、大ブーイングを浴びた。そこへティムが登場し、歌と踊りで会場をホットにした。その勢いで自宅に戻ったティムは、トーニャのベッドに潜り込んで関係を持った。
翌朝、ティムはマスクが外れた状態で目を覚ました。出勤した彼はモスに呼ばれ、緑の怪物をアニメ化しようと言われる。番組制作部に異動するよう指示されたティムは、帰宅してマスクを探すが見つからない。オーティスがどこかへ隠してしまったのだ。そこへトーニャが戻り、妊娠したことを告げた。9ヶ月後、トーニャは男児を出産し、ティムはアルヴィーと名付けた。
ロキはオーディンからマスクの息子が誕生したことを聞かされ、捜索を開始した。彼は病院に潜入し、女性職員の体を拝借して産まれた赤ん坊のデータを入手した。一方、ティムとトーニャはアルヴィーを可愛がっていたが、マスクの能力を持っていることには全く気付いていなかった。そんな中、トーニャが1週間の出張に行くことになり、ティムはアルヴィーの世話を任された。テレビ局へのプレゼンが近いため、ティムは自宅で仕事をしながらアルヴィーの面倒を見ることになった。
ロキは様々な姿に変装し、赤ん坊のいる家を回るが、なかなかマスクの息子は見つからない。ティムはアルヴィーにテレビを見せて、仕事に没頭した。オーティスは埋めてあったマスクを掘り起こし、それを着けて変身した。オーティスはティムとトーニャがアルヴィーばかり可愛がるので、嫉妬心を募らせていた。そこでオーティスは、アルヴィーを始末しようと企んだ。
翌日、アルヴィーはティムの目の前で、テレビで見たカートゥーンのように激しく暴れ回った。驚いたティムは隣人ベティーに助けを求めるが、話を信じてもらえない。オーティスはアルヴィーを攻撃するが、返り討ちに遭った。ティムの家を訪れたロキは、アルヴィーがマスクの息子だと知った。ロキはマスクのありかを吐くようティムに要求するが、シラを切られたため攻撃しようとする。しかし状況を把握していないオーディンの怒りによってパワーを奪われ、アルヴィーにやっつけられてしまった。
深夜、ロキはティムの家に潜入し、呪文を唱えてオーディンを召喚した。ロキはマスクの息子を発見したことを説明し、マスクを探すために能力を戻すよう頼んだ。オーディンは1時間だけと限定して、ロキに能力を戻した。ロキはティムにマスクを持って来るよう要求し、人質としてアルヴィーを連れ去った。ティムは帰宅したトーニャに手短に事情を説明し、アルヴィー奪還へ向かう…。

監督はローレンス・ガターマン、脚本はランス・カゼイ、製作はエリカ・ハギンズ&スコット・クルーフ、製作総指揮はボー・マークス&マイク・リチャードソン&トビー・エメリッヒ&ケント・オルターマン&ミシェル・ワイス、撮影はグレッグ・ガーディナー、編集は
マルコム・キャンベル&デブラ・ニール・フィッシャー、美術はレスリー・ディリー、衣装はメアリー・E・ヴォクト、視覚効果監修はジェームズ・E・プライス、音楽はランディー・エデルマン、音楽製作総指揮はボニー・グリーンバーグ。
出演はジェイミー・ケネディー、アラン・カミング、ボブ・ホスキンス、トレイラー・ハワード、スティーヴン・ライト、カル・ペン、リアム・ファルコナー、ライアン・ファルコナー、ベン・スタイン、マグダ・ズバンスキー、ライアン・ジョンソン、サンディー・ウィントン、レベッカ・マッシー、ヴィクトリア・セイン、ジェリー・マイナー、ホリー・オースティン他。


1994の映画『マスク』の続編。
ただし「木製マスクを着けると特殊能力を持つハイテンションな緑の怪物に変身する」という設定を受け継いだだけで、物語としての繋がりは全く無い。
また、スタッフは製作総指揮のマイク・リチャードソン以外は異なっており、出演者もニューマン博士役のベン・スタインが続投している以外は入れ替わっている。
ティムをジェイミー・ケネディー、ロキをアラン・カミング、オーティスをボブ・ホスキンス、トーニャをトレイラー・ハワード、モスをスティーヴン・ライト、ホルヘをカル・ペン、ベティーをマグダ・ズバンスキー、チャドをライアン・ジョンソンが演じている。息子のアルヴィー役は、双子のリアム・ファルコナーとライアン・ファルコナーが2人で担当している。

犬が拾ってきた木製マスクを、パーティーの仮装に使うという展開は無理がある。
ティムが9ヶ月間もロクなアイデアを出さずに、普通に制作部で仕事をしていられるのかという疑問は沸く。
仕事のあるティムに赤ん坊の世話を任せず、ナニーを雇えばいいんじゃないのかと思ったりもする。
ティムにアルヴィーを押し付けて出張するトーニャが、身勝手な女にしか見えないという問題はある。
子供嫌いの未熟な男が父性に目覚めて精神的に成長するというドラマも全く描けていない。

だが、そんなのは取るに足らないことだと思えるほど、脚本がボロボロだ。
そして監督には、ストーリーテリングやドラマ演出のセンスが全く無い。
そもそも前作の主演俳優ジム・キャリー抜きで続編を作ろうとした時点で、もう負けが決まっているのよ。
あの映画の面白さは、そりゃあカートゥーンの実写版みたいなVFXもあったけど、それとジム・キャリーのクドい顔芸が見事にフィットしたからだ。ジェイミー・ケネディーでは明らかに役者不足だ。しかも監督も違うんだから、もはや続編とは呼べない。
『Mask 2』じゃなく『Son of the Mask』としているのは「純然たる続編じゃありません」という言い訳かもしれんが、どっちにしてもダメなモンはダメよ。

日本での配給を担当したギャガは、タッキー&翼の「仮面」を吹き替え版のエンディングテーマにしたり、ココリコとベッキーを声優にしたりしていたが(ココリコ田中がティム、遠藤がロキ、ベッキーがトーニャ)、そんなのは何の意味も無い。
っていうか逆効果だろ、特に吹き替えに関しては。
つまらない映画でも吹き替え一つで面白さをアップせさることは可能なのに(『Mr.BOO!』シリーズが良い例だ)、逆につまらなさをプラスするような愚行をやらかすとは。
まあ、ギャガらしいと言えば、らしいけど。

まず冒頭、博物館にいるロキが緑の怪物に変身するというところからして失敗だと感じた。
「マスクを着けた普通の人間が怪物に変身」というシーンの前に、異形の存在を見せちゃったらダメでしょうが。そんなことをしたら、マスクによる変身の効果が薄れるでしょうに。
ロキは普通の人間の姿のままでいいのよ。
出来ることなら、それ以降もロキは変身させない方がいいぐらいだ。

『マスク』では、普段は内気でおとなしい主人公が、マスクを着けるとハイテンションで弾けまくるというギャップが強調されていた。
ところが今回は、そのギャップの面白さを全く活用しようとしていない。その代わりに量と種類でカサ増しして観客を腹一杯にしようと目論んでいる。
つまり、マスクのパワーを持つキャラクターを増やしたのだ。
前作と同様に、マスクを着けた主人公がバックダンサーを引き連れて歌い踊るシーンがある。だが、そこには前作のような高揚感は全く無い。まず短い曲を次々に繋げていくメドレー方式にしたのが失敗で、そこは1曲を長く続けるべきだった。しかも曲と曲の繋がりも悪くて、ツギハギ状態になっている。また、カメラワークやカット割りもマズい。

ティムが制作部に異動したと同時にトーニャが妊娠し、そこから出産までに長い月日が経過することになる。そこは思い切り短縮してあるけれど、しかし間延びした印象になっていることは否めない。それに、その段階で話がバラついてしまう。
しかも、パワーを持った赤ん坊が誕生することによって、「マスクを着けた人物が変身」という根本の設定が台無しになってしまう。
おまけにマスクはオーティスが隠しており、ティムが変身することも無くなってしまう。
そしてオーディンが店主に憑依するとか、ロキが病院職員の姿を借りるとか、全くマスクとは無関係なところで非現実を見せてしまう。

もう話がバラバラだよ。
そもそもロキが変身する必要性ゼロだし、量を増やす場所を間違えている。完全にピントがズレている。ティムの精子をカートゥーン化して描写するのも、分かってないなあと感じる。
カートゥーン化すべきは、そんなところじゃない。マスクを着けた人物の周囲を飾り付け、その動きを誇張するためだけに限定すべきなのよ。

ティムがマスクで変身してから、次にオーティスがマスクを着けるまでに、かなりの間隔が空いている。しかも、オーティスが変身してハイテンションに暴れるのかと思ったら、その夜はアルヴィーを始末する想像を膨らませただけで終わってしまう。
そこは即座に襲撃しろよ。そんで次の日も、また改めて襲撃すればいいでしょうに。変身から襲撃までに間を空ける意味を教えてくれ。
最初にティムが変身して暴れるが、その流れは続かない。そこから能力を持つアルヴィーが暴れ回ってティムが翻弄される話、オーティスがアルヴィーを狙う話、ロキがマスクの息子を探す話と、話がバラバラになる。
色々なことに対して無節操に手を広げ、上手く処理することが出来なくなって失敗するという、ボンクラな二代目社長みたいな状態になっている。

しかもティムがアルヴィーに翻弄される話も、オーティスがアルヴィーを狙う話も、短時間で終了し、別の話に移っていく。
猫ひろしのネタのように、落ち着きが無く、とりとめも無い。
ロキが様々な変装をするという遊びも、散漫な印象を助長するだけ。
終盤になると、思い出したようにティムが2度目の変身。
終盤でようやく2度目の変身ということ自体が大間違いなのだが、さらには父性に負けて破天荒さが弱まってしまうという情けなさ。
VFXにも見るべきモノは無く、どうしようもない。


第26回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低リメイク・続編賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ローレンス・ガターマン]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演男優賞[ジェイミー・ケネディー]
ノミネート:最低助演男優賞[アラン・カミング]
ノミネート:最低助演男優賞[ボブ・ホスキンス]
ノミネート:最低スクリーンカップル賞[ジェイミー・ケネディー&彼との共演を強いられた任意の人物]


第28回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の主演男優】部門[ジェイミー・ケネディー]
受賞:【最もでしゃばりな音楽】部門
受賞:【最悪のカップル】部門[ジェイミー・ケネディー&彼との共演を強いられた任意の人物]
受賞:【最悪の続編】部門
受賞:【不愉快極まりないファミリー映画】部門

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最も痛々しくて笑えないコメディ】部門

ノミネート:【最悪の歌曲・歌唱】部門「Can't Take My Eyes Off You」(ジェイミー・ケネディー)
ノミネート:【最悪の言葉づかい(男性)】部門[カル・ペン]
ノミネート:【チンケな“特別の”特殊効果】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会