『ロッキー4 炎の友情』:1985、アメリカ

ソ連のアマチュアボクシングの王者イワン・ドラゴが、水泳の金メダリストである夫人ルドミラやコーチと共にアメリカを訪れた。科学的なトレーニングを積んでいるドラゴは、プロに転向してアメリカで試合を行う意思を表明する。
ドラゴのインタヴューをTVで見た元チャンピオンのアポロ・クリードは、親友ロッキー・バルボアに連絡を入れる。既に引退して5年が経過していたアポロだが、現役にカムバックしてエキシビジョンマッチでドラゴと戦うことを決意した。
だが、ドラゴの強烈なパンチを何発も浴びたアポロは、そのまま息を引き取った。ロッキーはドラゴと戦うことを決意し、12月25日にロシアで試合が行われることになった。ロシアに乗り込んでトレーニングを積んだロッキーは、ドラゴとの戦いに挑む…。

監督&脚本はシルヴェスター・スタローン、製作はアーウィン・ウィンクラー&ロバート・チャトフ、製作総指揮はジェームズ・D・ブルベイカー&アーサー・チョバニアン、撮影はビル・バトラー、編集はジョン・W・ウィーラー&ドン・ジマーマン、美術はビル・ケネディ、衣装はトム・ブロンソン、音楽はヴィンス・ディコーラ。
出演はシルヴェスター・スタローン、タリア・シャイア、バート・ヤング、カール・ウェザース、ブリジット・ニールセン、ドルフ・ラングレン、トニー・バートン、マイケル・パタキ、スチュ・ネイハン、R・J・アダムス、アル・バンデイロ、ドミニク・バルト、ダニアル・ブラウン、ジェームズ・ブラウン、ローズ・メアリー・カンポス、ジャック・カーペンター、マーク・デ・アレッサンドロ他。


かつて無名の三流ボクサーだったロッキー・バルボワは、着実に成功への階段を駆け上がっていった。イタリアの種馬だった男は、いつの間にか誰もが認めるビッグネームになった。彼はアメリカのヒーローとなり、地位も名誉も手に入れた。

もはや、アメリカ国内にロッキーの敵はいない。
となれば、新たな敵はアメリカの外から探さねばならない。
となれば、当時のアメリカの敵は、やはりソ連である。
“アメリカ対ソ連”という図式を用意すれば、アメリカの観客は間違い無く好意的に受け入れてくれるはずだ。そのように考えたとしても、何の不思議も無い。

最初はブーイングを浴びせていたソ連の観客が、途中からロッキーに声援を送るようになるというウソ臭さ爆発の展開まで作った。
それによって、単純に敵を倒すより、アメリカがソ連より優れているという優越感を遥かに強く印象付けることが出来るはずだった。

悠々自適の生活を送ってハングリー精神を失っていたロッキーを、再びリングに立たせるために、引退していたアポロをドラゴに殺されるために引っ張り出して来た。
そして「友情のため」という口実を作り、ロッキーをリングに立たせた。

特に深い意味も無く回想シーンを入れてみた。
そこに音楽を被せたMTV風の演出で時間稼ぎをしてみた。
トレーニング風景も同じように、MTV風の演出で長く時間を使ってみた。
キャラクター描写やドラマが弱っちい分、そんな感じでカバーしようと試みた。

だが、ロッキー・バルボワは大きな勘違いをしていた。
かつて人々は、恵まれない環境にある無名の三流ボクサーが、恵まれた立場にあるチャンピオンへと果敢に挑む姿勢に心を打たれたのである。
アメリカン・ドリームを体現する男の姿に、心を動かされたのである。

ヒーローの称号を得た代わりに、そのスピリットを捨て去ったロッキーが、果たして心を打つドラマの主人公となれるのだろうか。
「みんな変われるんだ」などと説教臭いメッセージを延々と語ってしまうような男に、果たして大勢の観客を感動させることが出来るのだろうか。

薄っぺらいドラマをMTV風に誤魔化そうとしても、無理だった。
ちょっと手を伸ばせば届くような底の浅さは、誤魔化しきれなかった。
金にまみれて鋭さを失った闘争本能を、どれだけ音楽によってコーティングしてみても、既に錆び付いていることは隠し切れなかったのである。


第6回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低監督賞[シルヴェスター・スタローン]
受賞:最低主演男優賞[シルヴェスター・スタローン]
<*『ランボー 怒りの脱出』『ロッキー4 炎の友情』の2作での受賞>
受賞:最低助演女優賞[ブリジット・ニールセン=スタローン]
受賞:最低新人賞[ブリジット・ニールセン=スタローン]
<*『レッドソニア』『ロッキー4 炎の友情』の2作での受賞>
受賞:音楽賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低助演男優賞[バート・ヤング]
ノミネート:最低助演女優賞[タリア・シャイア]

 

*ポンコツ映画愛護協会