『ロビン・フッド』:1991、アメリカ

今から800年前、英国のリチャード国王は十字軍を率いて東へと遠征した。トルコからキリスト教の聖地を奪回することが目的だった。だが、国王が留守にしている内に、ノッティンガム総督が政権掌握を企んでいた。彼はロックスリー卿に悪魔崇拝者の濡れ衣を着せて処刑し、城を焼き討ちにして領地を取り上げてしまった。
ロックスリー卿の息子ロビンは十字軍に参加し、イスラエルで捕虜となった。だが、異教徒であるムーア人のアジームと共に脱出し、故郷へと戻って来た。ロビンはロックスリー卿の従弟ガイ・ギズボーンの一味が少年を追い詰める現場に遭遇し、退散させる。ロックスリー卿の執事ダンカンに会ったロビンは、故郷で起きた事実を知る。
ロビンは国王の従妹で幼馴染みのマリアンに会い、彼女の兄ピーターの死を告げる。そしてロビンは、ピーターにマリアンを守ると約束したと話す。そこへギズボーン達が現れたため、ロビンはアジームとダンカンと共に、シャーウッドの森へ逃げ込んだ。
森に入ったロビン達は、そこに隠れ住んでいるリトル・ジョンやウィル達と出会う。ロビンは共に戦おうと告げるが、ウィルは強く反発した。それでも、ロビンは森の住人達と協力することになった。彼らは貴族から金を奪い、貧しい農民に分け与えた。
ロビンの人気が高まる中で、ノッティンガム総督は苛立ちを募らせていた。そんな中、彼はお抱え占い師のモーティアナから、国王の一族と結婚することを勧められる。そこでノッティンガム総督は、部下に命じてマリアンを誘拐させ、妻にしようとする。
ノッティンガム総督はケルト人と手を組み、シャーウッドの森を襲った。ロビン達の集落は炎に包まれ、大半の者達は殺されるか、あるいは捕獲された。逃げ延びたロビンと少数の仲間達は、ノッティンガム総督を倒すために戦いを挑むのであった…。

監督はケヴィン・レイノルズ、原案はペン・デンシャム、脚本はペン・デンシャム&ジョン・ワトソン、製作はジョン・ワトソン&ペン・デンシャム&リチャード・バートン・ルイス、共同製作はマイケル・J・ケイガン、製作総指揮はジェームズ・G・ロビンソン&デヴィッド・ニックセイ&ゲイリー・バーバー、製作監修はスチュアート・ベアード、撮影はダグラス・ミルサム、編集はピーター・ボイル、美術はジョン・グレイマーク、衣装はジョン・ブルームフィールド、音楽はマイケル・ケイメン、主題歌はブライアン・アダムス。
主演はケヴィン・コスナー、共演はモーガン・フリーマン、メアリー・エリザベス・マストラントニオ、クリスチャン・スレイター、アラン・リックマン、ジェラルディン・マクイーワン、マイケル・マクシェイン、ブライアン・ブレスド、マイケル・ウィンコット、ニック・ブリンブル、スー・ドルエ、ダニエル・ニューマン、ダニエル・ピーコック、ウォルター・スパロー、ハロルド・イノセント他。


イギリスの古い説話に登場する英雄、ロビン・フッドの活躍を描いた作品。
ロビンをケヴィン・コスナー、アジームをモーガン・フリーマン、マリアンをメアリー・エリザベス・マストラントニオ、ウィルをクリスチャン・スレイター、ノッティンガム総督をアラン・リックマンが演じている。
アンクレジットだが、ショーン・コネリーが国王を演じている。

前述したように、ロビン・フッドはイギリスの英雄である。
だが、演じているのは、おそらく“英雄になりたい症候群”を患っていると思われるアメリカ人、ケヴィン・コスナーである。
いや、それどころではない。
この映画、『ドキッ!アメリカ人だらけのイギリス劇』なのだ。
さすがハリウッド、国の違いなんか簡単に乗り越えてみせる。

ロビンと言えばタイツというイメージがあるが、この映画の彼はタイツを履いていない。
ケヴィン・コスナーがタイツ姿を嫌がったらしいが、タイツを履かないロビン・フッドというのも、ハリウッド的ということか。
ハリウッド的なバランス感覚が強く働いたのか、黒人のアジームを主要キャラクターとして登場させるというコトもやっている。

イギリスの話だからといって、例えばケヴィン・コスナーがイギリス人っぽく見せているかというと、そんなことは無い。
むしろ、どこを切っても陽気なアメリカ人である。
どうせアメリカ映画なのだから装っても無理だと考えて、開き直っているのかもしれない。

基本的には明朗快活、単純明快な映画に仕上がっている。
ロビンは完全無欠のヒーローではなく、マヌケなところも多いキャラクターとして描かれている。
人間臭いロビン・フッド像を描き出そうとしたのだろうか。
それにしても、かなりバカっぽく見える。
ロビンがマリアンにキンタマを蹴られて痛がるシーン。
望遠レンズを覗いたロビンが、敵が近くにいると思い込んで慌てるシーン。
ロビンが臭いので、マリアンから「風呂に入って」と言われるシーン。
などなど、コミカルの発信源は、ロビンであることが多い。

ロビンのせいでリトル・ジョンの村が焼き討ちに遭っている辺りは、ちっともヒーローらしくない。
自分の復讐心のために周囲の面々を巻き添えにするなんて、単なる迷惑なヤローである。
そのくせ、やたら偉そうな態度は崩さず、リーダーになると言い張る。

アラン・リックマンの役作りは、かなり滑稽である。
オーバーアクションでコミカルな悪役を演じている。
怒りを抑え切れずに味方の兵士を何度も殴り付けるシーンなどは、怖いというよリ可笑しい。
ロビンと戦っている最中にマリアンにキスして、火の付いたローソクを押し付ける辺りもバカだ。
また、モーティアナも、かなりコミカルになっている。

激しい戦いが繰り返されるとか、ノッティンガム総督の攻撃がエスカレートしていくとか、そういうハードな展開は無い。
むしろ中盤では、ノンビリとした雰囲気が漂っている。
シャーウッドの森でのロビン達の生活風景は、どこか牧歌的ですらある。
どうやらこの映画、児童文学として広まったことを意識してか、オコチャマ向けに作られているようだ。
緊迫感のあるドラマではなく、安心して見られる話がある。
オコチャマには、スリルよりリラックスということか。
かなりユーモラスな味付けがしてあるのも、おそらくオコチャマ向けということを意識してのことなのだろう。

終盤になると、それまで大して目立たなかったウィルがロビンの弟だと判明し、しかも簡単に和解する。
かなり唐突だ。
コミカルな娯楽活劇だと思っていたら、残酷なシーンが出て来たり、ロビンが悩んだりする描写もある。
大人の観客にも受けることを意識したのか。
でも、安心マークのファミリー映画なのか、違うのか、どっち付かずになっている。


第12回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低主演男優賞[ケヴィン・コスナー]
受賞:最低新人賞[エリザベス・バークレー]
受賞:最低オリジナル歌曲賞受賞「Walk Into The Wind」

ノミネート:最低助演男優賞[クリスチャン・スレイター]
<*『モブスターズ/青春の群像』『ロビン・フッド』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会