『ランボー ラスト・ブラッド』:2019、アメリカ

アリゾナ州ボウイ。巨大なハリケーンのテルマが襲来し、3人のハイカーが山で遭難した。天候が悪化して救難隊も避難を余儀なくされる中、ボランティアのジョン・ランボーは馬に乗って捜索を続行する。彼は川の下流で女性の遺体を発見し、周辺を調べた。森を進んだ彼は、遭難者のジミーとベッキーを見つけた。先程の遺体は、ジミーの妻だった。ランボーから死を伝えられたジミーは「捜しに行く」と言い、その場を離れた。ランボーは鉄砲水からベッキーを守り、麓まで連れ帰った。
ランボーは亡き父の牧場へ戻り、同居している家政婦のマリア・ベルトランと話す。翌朝、彼はマリアに、孫娘のガブリエラがいないことについて尋ねた。マリアはアントニアの所にいると告げ、彼女が大学へ進学することを話す。ランボーはトンネルへ行く時、ベトナム時代のことを思い出した。作業場で進学祝いのバターナイフを作っていると、ガブリエラが戻って来た。2人はトンネルを出て馬に乗り、会話を交わす。大学へ行く仲間のパーティーがあることを聞かされたランボーは、トンネルへ招待するよう促した。
ガブリエラが友人たちをトンネルに案内する時、ランボーは同行せずに家で待機した。ガブリエラは男友達と一緒にいる時、ジゼルから電話を受けた。友人たちが帰った後、ランボーがトンネルへ行くと、ガブリエラが「メキシコへ行かなきゃ。お父さんがいた。以前、ここにいた友達のジゼルが見つけてくれた」と話す。「なぜ出て行ったのか聞きたい」と彼女が言うと、ランボーは「クズだからだ」と告げる。「人は理由も無く悪いことなんかしない」とガブリエラが告げると、彼は「心が黒くなった男に良心など無い」と吐き捨て、大人になるまで待つよう諭した。
その日は受け入れたように見えたガブリエラだったが、翌朝になると、やはりメキシコへ行くと言い出した。マリアは「まだジゼルに連絡してたなんて。あれは悪い女だ」と声を荒らげ、ガブリエラの父のマヌエルが母に暴力を振るってランボーが止めてくれたことを話した。ガブリエラはアントニアの所へ行くと嘘をつき、車でメキシコへ向かった。彼女はジゼルを訪ね、マヌエルの家へ案内してもらう。自分たちを捨てた理由をガブリエラが質問すると、マヌエルは「お前と母さんと暮らすのが何の意味も無いと気付いたからだ。そして母さんは、欲しくも無い娘を残して死んだ。二度と来るな」と冷たく言い放った。
泣いて父の家を去ったガブリエラは、ジゼルに「来なければ良かった。もう帰る」と漏らす。ジゼルは「落ち着くまで待った方がいいわ。楽しいことして忘れよう」と告げ、彼女をクラブへ連れて行く。ガブリエラはエル・フラコという男にナンパされ、話している間にジゼルは姿を消した。フラコはガブリエラが目を離した隙に、酒に睡眠薬を混ぜた。翌日、売春斡旋業者のドン・ミゲルは、カルテルを率いるウーゴとヴィクトルのマルティネス兄弟を訪ねた。アメリカ進出を狙たウーゴは商談を始めるため、ヴィクトルに席を外すよう指示した。ヴィクトルが「俺は女の調達だけで商談は出来ないのか」と腹を立てると、ウーゴは「この取引はデカい金が動く。失敗できない」と言う。ヴィクトルは「勝手にしろ。俺は俺でやる」と憤慨し、その場を去った。
マリアはランボーに、ガブリエラがメキシコで失踪したことを告げる。ジゼルから電話があり、父親に会いに行ったまま戻らないと説明されたことをマリアは伝える。ランボーはマリアからマヌエルとジゼルの住所を聞き、メキシコへ向かう。同じ頃、ガブリエラは同じように拉致された女たちと共に監禁され、ヴィクトルの脅しを受けていた。ランボーはマヌエルの家へ行き、何も知らないと告げられる。彼はジゼルの家に行き、話を聞く。ジゼルは「クラブで友達と話していたら、ガブリエラがいなくなった」と説明するが、ランボーは彼女がガブリエラを売ったと見抜いた。
ランボーはジゼルを恫喝し、クラブヘ案内させる。彼はフラコについて教えさせ、ジゼルを店から立ち去らせる。そんなランボーの様子を、カルメンという女がカウンターから見ていた。フラコは若い女をナンパし、睡眠薬を入れた酒を飲ませて車へ連れて行く。ランボーは彼を殴り付け、女を追い払う。ランボーはフラコにガブリエラの写真を見せ、居場所を教えるよう迫った。フラコが「知らない」と言うと、ランボーは拷問を加えて脅しを掛けた。
フラコが観念したので、ランボーは車に乗せて案内を命じた。カルメンが尾行すると、フラコはランボーをアジトの建物まで連れて行く。ランボーは屋上にいると聞き、車を降りて少し離れ場所から観察する。カルテルの連中に気付かれた彼は逃げ出すが、すぐに包囲された。激しい暴行を受けたランボーは、ガブリエラの写真を見せて解放するよう要求する。ヴィクトルがランボーを始末しようとすると、ウーゴが制した。彼はランボーに、「この女は見せしめにする。お前のせいだ。お前は殺さない。ここに来たことを後悔させてやる」と言い放つ。ヴィクトルはウーゴから「こいつとあの女にお前の印を刻んでやれ」と言われ、ランボーの頬をナイフで十字に切り裂いた。
一味が去った後、近くの車から密かに様子を見ていたカルメンがランボーに歩み寄った。彼女はランボーを車に乗せ、自宅へ連れ帰った。ヴィクトルはウーゴに、「兄貴が奴を殺さなかった代わりに、あの女をくれ」と要求し、了承を得た。彼はガブリエラに麻薬を注射し、頬にナイフで傷を付けた。カルメンは医師を家に呼び、意識を失っているランボーを手当てしてもらった。ガブリエラは何度も麻薬を打たれ、売春宿で慰み者にされた。
ランボーが4日後に意識を取り戻すと、カルメンはフリーのジャーナリストだと自己紹介する。彼女はフレコを追っていたこと、2年前にマルティネス兄弟が妹を奪ったことを説明する。ランボーは彼女に売春宿の場所を教えてもらい、乗り込んで男たちを殴り倒す。彼は娼婦たちに逃げるよう告げるが、怖がって誰も従わなかった。ランボーはガブリエラを発見し、売春宿から連れ出した。ヴィクトルはウーゴに怒りをぶつけ、「俺の言う通りにしてもらうぜ」と言い放った。ガブリエラは車中で息を引き取り、ランボーは牧場に戻って埋葬した。彼はマリアに妹の家へ行くよう促し、牧場に幾つもの罠を仕掛けた…。

監督はエイドリアン・グランバーグ、キャラクター創作はデヴィッド・モレル、原案はダン・ゴードン&シルヴェスター・スタローン、脚本はマシュー・シラルニック&シルヴェスター・スタローン、製作はアヴィ・ラーナー&ケヴィン・キング=テンプルトン&ヤリフ・ラーナー&レス・ウェルドン、製作総指揮はボアズ・デヴィッドソン&ジェフリー・グリーンスタイン&ジョナサン・ヤンガー&クリスタ・キャンベル&ラティ・グロブマン&アリエル・ヴロメン&ジェフ・ガム&マット・オトゥール&アンドレイ・ゲオルギエフ&リュウ・ロン&チャン・クン&アレン・ダム&タム・ジーウェン、共同製作総指揮はサミュエル・ハディダ&ヴィクター・ハディダ&イライジャ・ロング&ダメイン・ラドクリフ、撮影はブレンダン・ガルヴィン、美術はフランコ=ジャコモ・カーボーンルボーネ、編集はトッド・E・ミラー&カーステン・カーパネック、衣装はクリスティーナ・ソペナ、音楽はブライアン・タイラー。 主演はシルヴェスター・スタローン、共演はパス・ヴェガ、セルヒオ・ペリス=メンチェータ、オスカル・ハエナダ、アドリアナ・バラッザ、イヴェット・モンレアル、ジーニー・キム、ホアキン・コシオ、パスカシオ・ロペス、アレクサンドル・ディミトロフ、アーロン・コーエン、ニック・ウィットマン、ジェシカ・マドセン、ルイス・マンディロア、オーウェン・デイヴィス、ジェイミソン・アーカート、ブレイデン・ピンダー、フェネッサ・ピネダ、マルコ・デ・ラ・O、アルヴェロ・フローレス、ウルスラ・ムラヤマ、キャシー・プリード、アタナス・スレブレフ、リック・ジンゲール他。


シリーズ第5作。
監督は『キック・オーバー』のエイドリアン・グランバーグ。
ランボー役のシルヴェスター・スタローン以外は、全員がシリーズ初登場。
カルメンをパス・ヴェガ、ウーゴをセルヒオ・ペリス=メンチェータ、ヴィクトルをオスカル・ハエナダ、マリアをアドリアナ・バラッザ、ガブリエラをイヴェット・モンレアル、マヌエルをホアキン・コシオ、フラコをパスカシオ・ロペス、ジゼルをフェネッサ・ピネダが演じている。

ガブリエラがジゼルの情報を信用し、マヌエルに会いたがるのは、バカにしか見えない。
そりゃあ、何も分かっていないからこそ、彼女は「ジゼルは親友」「父親は変わったはず」と主張しているのよ。
まだ父親が出て行った頃は幼かったから、本性を知らないのかもしれない。ジゼルはガブリエラの前だと、いい親友だったのかもしれない。
でも、「2人の本性に気付いていない」ってことも含めて、バカにしか思えないのよ。

ランボーやマリアに反対され、叱責されることで、余計に反発したくなるという部分もあるんだろう。それは理解できなくもない。でも、そこを理解した上で、それでもなお「アホだろ」と呆れてしまう。
ランボーやマリアは、ジゼルが悪女なのも、マヌエルがクズなのも、ちゃんと教えている。そんな2人の主張が全面的に正しいことを、こっちは確信できるのだ。実際、その通りだしね。
なので、ガブリエラが2人の説得に耳を貸さずにメキシコへ行ってしまうのは、あまりにも愚かしいと感じる。
あと、マヌエルにしろジゼルにしろ、そのクズっぷりに見合う報いも受けずに終わるので、なんかモヤッとするし。マヌエルに至っては、存在意義が皆無に等しいし。善玉でも悪玉でもいいから、こいつはもっと使わないとダメだろ。

ランボーはボランティアを終えて牧場へ戻った時、マリアに「救えなかった。戦場で仲間の命も」と呟く。トンネルを進む時、ベトナムの思い出を回想する。
そうやって、「今もランボーはベトナム戦争で受けた心の傷を引きずっている」ってことをアピールしているわけだ。
でも実際のところ、もはや「ランボー」シリーズである意味は皆無に等しくなっている。
無理に関連付けようとしているが、「無理やりだな」という印象を全く隠し切れていない。

マヌエルはガブリエラの訪問を受けて驚くが、「何年ぶりかな。大きくなって」と最初は歓迎する様子を見せている。娘への愛があるかのような態度を見せている。
ところが捨てた理由を質問された途端、冷酷な態度に変貌してクズ発言をする。
それは決して、「娘に自分のことを忘れさせるため、あえてクズを装った」ということではない。ホントにクズなのだ。
だったら、最初から分かりやすくクズ人間であることをアピールすればいいでしょ。途中で変化させる演出は、何の意味も無いだろ。

ジゼルがマリアに電話して「ガブリエラがいなくなった」と伝えるのは、何のつもりなのかサッパリ分からない。
電話なんて掛けなければ、ガブリエラがメキシコへ来て失踪したこともランボーには伝わらなかったわけで。
そりゃあ、「メキシコへ行ったのでは」と推理して捜索に来ることは確実だけど、そうなっても無関係を装えばいいわけで。「マヌエルのことは教えたけど、彼女は来なかった」とでもシラを切ればいいわけで。
ジゼルの母親の形見である腕輪をランボーの前で堂々と付けているのもアホすぎるし。

ランボーはカルテルの連中に気付かれると、ゆっくりと歩いて去ろうとする。一味が付いて来ると、静かに拳銃を用意する。
なので、何か策があった上で離れた場所から監視していたのかと思ったら、あっさりと包囲されてリンチを受ける。
何度も修羅場をくぐり抜けて来た男のはずなのに、あまりにもアホすぎるだろ。今までの経験から何も学習していないのかと。
しかも、完全に詰んでいる状態なのにガブリエラの写真を見せて「彼女を解放しろ」とか言い出すし。そのせいでガブリエラが酷い目に遭わされるんだから、どんだけボンクラなのかと。それを悔やんで、怒りに燃えて行動しているけど、マッチポンプの下手さにも程があるだろ。
もうさ、ガブリエラを酷い目に遭わせるために、ランボーにバカすぎる行動を取らせているようにしか思えないんだよね。

ガブリエラがヤク漬けにされて輪姦されるという悲惨な目に遭うので、そこからランボーが見つけて連れ出しても「無事に連れ戻した」とは言えなくなっている。
救い出したところで全く救われない状況にまで落としているので、どうするのかと思っていたら、ガブリエラを死なせている。
どうせランボーがカルテルが壊滅させても、ガブリエラに明るい未来は待っていないので、彼女に死を迎えさせるのは理解できなくもない。ただ、そもそもガブリエラをそこまで酷い目に遭わせる必要があるのかと言いたくなる。
ランボーのせいで余計に酷い目に遭うとか、シナリオとしてイカれているとしか思えない。

諸々の問題をひとまずおいておくとして、復讐劇としては絶対にランボーがヴィクトルを始末するシーンを直接的に描くべきだろう。
でも実際には、そこを省略しているのだ。ランボーが部屋に侵入する様子だけで済ませ、そこから「首が切断された遺体が発見される」というトコまで飛んでいるのだ。
残酷描写を避けているわけではないのよ。その後には、ランボーが手下を次々に惨殺する様子を描いているし。そもそも、「首チョンパの遺体」ってのも充分に残酷な描写なんだし。
ランボーに襲われたヴィクトルが強がる様子なり、助命を嘆願する様子なり、何でもいいから彼の死に様は絶対に見せなきゃダメだろ。

もはやランボーがベトナム戦争で受けた心の傷とか、退役軍人としての設定とか、まるで無意味になっている。
もはやランボーは、ただのチャールズ・ブロンソンになっちゃってるのよ。『デス・ウィッシュ』シリーズみたいになっちゃってんのよ。
そしてクライマックスは、大人版の『ホーム・アローン』だ。
だったら、せめて最後は「復讐に燃えるランボーが一味を圧倒してギッタギッタにする」という展開にしてくれればいいものを、それなりに苦労しちゃうのよね。中途半端でヌルいなあ。

(観賞日:2022年1月1日)


第40回ゴールデン・ラズベリー賞(2019年)

受賞:最低序章&リメイク&盗作&続編賞
受賞:最も人命と公共財産に無関心な作品賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低主演男優賞[シルヴェスター・スタローン]
ノミネート:最低助演女優賞[ファネッサ・ピニーダ]
ノミネート:最低スクリーン・コンボ賞[シルヴェスター・スタローン&彼の無気力な怒り]
ノミネート:最低監督賞[エイドリアン・グランバーグ]
ノミネート:最低脚本賞

 

*ポンコツ映画愛護協会