『フーズ・ザット・ガール』:1987、アメリカ
4年前に無実の罪で投獄されたニッキー・フィンが、ロックフォード刑務所から仮出所することになった。仮出所の条件は、刑務所を出たら真っ直ぐにバスターミナルへ向かい、故郷に帰ること。そして、2週間に1度は保護監察官に連絡を入れることだ。
一方、弁護士ラウデン・トロットは、上司サイモン・ワージントンの娘ウェンディとの結婚を明日に控えて、スケジュールが詰まっていた。モンゴメリー・ベルに届いた猫を引き取りに行き、結婚指輪を取りに行き、アパートの入居面接に行かねばならない。その上、彼はサイモンから、ニッキーをバスターミナルまで送る仕事を押し付けられてしまう。
刑務所に出向いたラウデンは、ウェンディの母から借りたロールスロイスにニッキーを乗せて、バスターミナルへ向かおうとする。だが、ニッキーは警官を騙してラウデンを病院に送り込み、その間に逃亡してしまう。ラウデンがニッキーを見つけると、彼女は銃を手に入れていた。ニッキーは、自分を陥れた犯人に対する復讐を考えていたのだ。
4年前、ニッキーは恋人ジョニーを殺した容疑で逮捕された。ラウルとベニーがジョニーを殺害し、ニッキーの車のトランクに死体を入れたためだ。ジョニーは殺される直前、ニッキーに貸し金庫の鍵を渡していた。そこにはラウル達を雇った黒幕を示す証拠が入っているはずだが、銀行の名前と貸し金庫の番号が分からない。
ラウデンは、ニッキーの行動に付き合わされることになった。ラウルとベニーを見つけたニッキーとラウデンは、銀行の名前と貸し金庫の番号を聞き出した。翌日、ニッキーは銀行で書類を手に入れ、ラウデンはウェンディとの結婚式に向かったのだが…。監督はジェームズ・フォーリー、原案はアンドリュー・スミス、脚本はアンドリュー・スミス&ケン・フィンクルマン、製作はロジリン・ヘラー&バーナード・ウィリアムズ、製作協力はアンドリュー・スミス、製作総指揮はピーター・グーバー&ジョン・ピータース&ロジャー・バーンバウム、撮影はヤン・デ・ボン、編集はペンブローク・ヘリング、美術はアイダ・ランドム、衣装はデボラ・リン・スコット、音楽はスティーヴン・ブレイ、追加音楽はパトリック・レナード。
主演はマドンナ、共演はグリフィン・ダン、ハヴィランド・モリス、ジョン・マクマーティン、ビビ・ベッシュ、サー・ジョン・ミルズ、コーティ・マンディー、ロバート・スワン、ドリュー・ピルズバリー、デニス・バークレイ、ジェームズ・ディーツ、セシリー・キャラン、カレン・エリース・ボールドウィン、キンバーリン・ブラウン、クリスタル・カーソン、エレイン・ウィルクス他。
歌手のマドンナが主演した作品。
ニッキーをマドンナ、ラウデンをグリフィン・ダン、ウェンディをハヴィランド・モリス、サイモンをジョン・マクマーティン、サイモンの妻をビビ・ベッシュ、モンゴメリーをサー・ジョン・ミルズ、ラウルをコーティ・マンディーが演じている。オープニングのアニメーションは、なかなかキャッチーでイイ感じだ。
しかも、ただのオープニング・アニメではなく、そこで4年前のニッキーが捕まるまでの経緯が描かれている。このアイデアは悪くない。
この映画で、このオープニングだけは悪くない。「マドンナ主演」ということが、製作の決まった段階で強く意識されていたのだろう。
ニッキーのキャラクターは「はすっぱで開けっぴろげでオツムが弱い不良娘」という、当時のマドンナのイメージを、そのまま使ったような設定になっている。ラウデンがニッキーに振り回されるという部分が、笑いの大きな軸になっている。
ラウデンの情けない様子を笑えるかどうかってのが、生命線だと思う。
でも、ダメ。
他の部分も含めて、ギャグシーンのテンポが悪い。
運び方も悪く、カメラワークも悪い。例えば、リアクションを撮るべきポイントで、全体を撮ったりする。
スパッと次のシーンに切り替わるべきポイントで、ダラッと流したりする。
誇張すべきポイントを、何の工夫もせず見せたりする。
勢いを付けて突っ走るべきポイントで、ノンビリと休憩を取ったりする。
金庫の鍵が次々に移動して宅配トラックに紛れ込むシークエンスなどは、ギャグとしても重要なポイントなのに、かなりギクシャクしている。
そこは、キーが移動していく様子を、1つ1つガッチリと見せるべきだろう。
そこをダラッと流してどうするの。中心に位置するのがマドンナだから、本来は「お飾り」として存在させておき、彼女に頼らずにギャグシーンを構築していくべきだろう。
だが、かなり彼女に頼ってしまう。
そのせいもあってか、キレが悪いったらありゃしない。
ビルのわずかな隙間を飛び越えるシーンで無駄にスローモーション映像を使うよりも、ギャグシーンの演出に頭を使って欲しい。バカっぽいキャラクターは大勢出てくるが、全く使い切れていない。
で、多くの脇役キャラクターを使いこなせていない一方で、いきなり登場して大きな役周りを任せられるチョイ役キャラクターが多すぎる。
ギャグは、もっと主要キャラに任せればいいのに。例えば、刑事コンビなどは、ただニッキーを尾行しているだけ。
ニッキーが刑事コンビを手玉に取るようなことは無い。
ニッキーが知らない内に、刑事コンビの邪魔をしているということも無い。
もっと刑事コンビを話に関わらせて、笑いを取りに行けばいいのに。ストーリーが、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。
行き当たりバッタリのような展開の連続。
エピソードとエピソードは、繋がることを忘れてしまったかのようだ。
ラウデンの私用とニッキーに付き合う行動は、完全にバラバラになっている。何をやろうとしているのか、向かっている方向も、どんどんボンヤリしてくる。
で、終盤に入り、蛇足としか思えないようなラウデンとサイモンのフェンシング対決。
なぜか、その周囲で楽しそうにウロウロするニッキー。
で、どんな流れがあったのかは不明だが、ニッキーとラウデンが結ばれてエンド。
なんじゃ、そりゃ。
第8回ゴールデン・ラズベリー賞
受賞:最低主演女優賞[マドンナ]
ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ジェームズ・フォーリー]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低オリジナル歌曲賞「El Coco Loco (So, So Bad)」
第10回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:最悪作品賞