『バレンタインデー』:2010、アメリカ

2月14日、ロサンゼルス。ラジオからはDJロミオ・ミッドナイトの声が聞こえてくる。いつもは真夜中の担当だが、バレンタイン・デー なので、特別に朝から24時間体制で放送を担当するのだ。ローズウッド通りの花屋「シエナ・ブーケ」のオーナーを務めるリードは、 ベッドの隣で眠っている同棲中の恋人モーリーを起こし、指輪を渡してプロポーズした。モーリーが受け入れてくれたので、リードは 大喜びした。彼は親友のジュリアに電話を掛けた後、花屋の店員アルフォンソと落ち合って仕事に出掛ける。
KVLAニュースのスタジオでは、アンカーウーマンのシェリーが番組を進行している。スポーツジャーナリストのケルヴィンはディレクター のスーザンに、「スポーツジャーナリストにも生活ネタをやらせるのか」と文句を言う。スーザンは「貴方は2番手なのよ。大きな試合が 無い日は他のネタもやってもらう」と言う。ケルヴィンは「貴方にとってバレンタインデーとは」という街角インタビューを指示される。 バレンタインデーなど大嫌いなケルヴィンだが、命令には従わざるを得なかった。
リードは花市場へ買い付けに行き、友人のサイモン・ファムにモーリーへのプレゼントを相談する。サイモンは彼に箱を渡し、「完璧な 瞬間までは開けるな」とアドバイスした。市場ではケルヴィンがサイモンにインタビューする。サイモンの答えが要領を得なかったので、 リードがフォローに入る。ジュリアは医師ハリソンと交際しており、幸せ一杯だ。サンフランシスコへ出張に行くハリソンから今夜の予定 を問われ、「あるけど気が乗らないの」と彼女は答える。独身の友人カーラが毎年開いている、恒例のバレンタインデー大嫌いディナーが あるのだという。
ジェイソンがベッドで目を覚ますと、一夜を共にしたリズが写真を撮っていた。キスを交わした後、リズは「もうこんな時間」と慌てて 着替えて出掛ける。彼女は少しバイクで走ってから電話を受け、「貴方のことを思ってたわ。ルームメイトが戻ったら3Pでもしましょ」 と誰かに話す。老夫婦のエドガーとエステルは、今でもプレゼントを互いに贈りあうほど仲がいい。一緒に暮らす孫のエディソンを見た エステルは、「あの子には辛い日ね。毎年、母親と手作りのカードを作ってた」と漏らす。エディソンはエドガーに「朝食はどうする」と 訊かれ、「食べられない。恋の病なんだ」と告げた。
ジュリアはリードからの留守電メッセージを聞いた後、エレベーターに乗り込む。一緒になった高校生のフェリシアは、恋人のウィリーに 貰った大きなクマのヌイグルミを抱えていた。ロサンゼルス行きの飛行機の中では、ホールデンとケイトが隣同士で眠っていた。シエナ・ ブーケに赴いたジュリアは、リードからプロホーズの返事がイエスだったと聞いて祝福した。ジュリアは自分の恋人のことを彼に話す。 彼氏が出張だと聞いたリードは、「追い掛けていって驚かせたら?」と勧めた。ジュリアから電話を受けたハリソンは「空港に到着した ところだ」と言うが、それは嘘だった。彼は妻のバメラと娘のオリヴィアが待つ邸宅へ戻ったところだった。
ホールデンとケイトは目を覚ました。ホールデンはケイトに話し掛け、彼女が11ヶ月ぶりに1日だけロスへ帰省すると知る。「恋人のため に一日だけ戻るなんて、ロマンティックだ」と彼は口にした。モーリーがシエナ・ブーケに来たので、リードは「未来のリード夫人だ」と 店員たちに紹介する。リードはモーリーから「みんなに知られると色々とうるさいから、まだ婚約のことは内緒にしておいた方がいいと 思うの」と提案され、それを承諾した。
エドガーはエディソンを車に乗せて走らせる。恋わずらいの経験を訊かれたエドガーは、若き女優に恋をした過去の出来事を語り、それが エステルだと明かす。エドウィンはシエナ・ブーケに入り、リードに「赤いバラ12本とカードを学校一の美女に。ファルコン・クレスト 小学校に届けてほしい」と注文した。郵便係の勤務に就いたジェイソンは、同僚に「昨夜は最高だったのに、朝になったら彼女はすぐに 去った」と相談する。その日がバレンタインデーだと聞かされた彼は、デートに誘わなかったのが原因ではないかと考える。
リズはモニカの代理として、スポーツ・マネージメント会社ACMの社長ポーラの秘書を務めることになった。ポーラはマネージメントして いるプロ選手のことで困っていることを漏らした。テレビのニュースでは、NFL選手のジョーン・ジャクソンの進退について報じられて いる。35歳になるショーンの契約は満了するため、引退も囁かれている。ニュースを見たショーンはパブリシストであるグレアPR社の カーラに電話を掛け、マスコミ対応を依頼して「1時間後にエージェントと会合だ」と告げた。バレンタインデー大嫌いディナーのサイト をチェックしたカーラは、現時点での参加希望者が0名なのでショックを受けた。
高校生のグレースは女性教師から勉強会を開きたいと言われるが、「放課後は子守りのバイト。昼休みは彼と初めてのセックスをするの」 と説明する。グレースは親友のフェリシアに、グレースの恋人アレックスは親友ウィリーに、それぞれ相談する。ジョーンはカーラを伴い 、ポーラとの会合に出席した。ポーラから「チームは契約を更新しないと言っている」と告げられたショーンは、「そろそろ潮時かな。 結婚もしたいし子供も欲しい」と引退を考える。だが、ポーラは「アメフトと両立できるわ」と現役続行を促した。
ホールデンとケイトは、ゲームに興じて盛り上がる。ケイトは彼の心理を分析し、恋愛に対して何か問題を抱えていることを指摘した。 エディソンのクラスでは、担任教師のジュリアがバレンタインデーについての授業を行う。シエナ・ブーケにハリソンが現れ、リードに 「特別な女性2人に、内密でブーケを作ってほしい」と注文した。配達先の住所を見たリードは、彼がジュリアの恋人で、パメラという妻 がいることを知る。アレックスは両親が外出しているグレースの家へ、彼女より先に到着する。寝室の準備を整え、裸でギターを演奏して いると、グレースの母親が帰宅した。アレックスは慌てて「ショーの練習中なんです」と取り繕った。
リズは秘書として待機している間、テレフォン・セックスのバイトをしている。ジェイソンには内緒なので、彼が来ると急いで電話を切る 。ジェイソンは「バレンタインデーだって忘れてた。今夜、ディナーはどう」と誘う。ショーンは運転中の不注意で、配達に行く途中 だったアルフォンソの車にぶつけてしまう。アルフォンソは相手がショーンだと知り、帽子にサインしてもらう。ショーンは彼と話した後 、カーラに電話して「どうするか決めたよ」と告げる。アルフォンソは走り出すが、車のドアが壊れていたため、エディソンの注文した ブーケが落ちて台無しになってしまった。
リードはジュリアに本当のことを伝えるかどうか迷った挙句、授業をしている彼女にカードとブーケを届けた。彼はジュリアを教室の外に 連れ出し、「飛行機には乗るな」と止める。だが、ジュリアは「彼が入り込むことで、私たちの関係が変わると思ったのね。でも私たちは ずっと親友よ」と述べて教室へ戻る。授業の後、エディソンは迎えに来た子守りのグレースに、「注文したブーケが届かなかった。力を 貸して」と頼む。グレースは「いいけど、その前にサッカーよ」と車を発進させる。
リードが自宅に戻ると、外出しているはずのモーリーがいた。しかも彼女は、荷物をまとめていた。モーリーは「ごめんなさい。貴方とは 結婚できない。キャリアは捨てられない」と詫びる。リードは落胆するが、平静を装って部屋を後にする。アルフォンソは「別れたんだろ 。そんな予感がしてた。モーリーとは合わない」と彼に告げた。リードはジュリアを止めるため、空港へ向かう。彼が大型荷物の受付係に 「彼女を止めないと。太陽のような子が傷付くのを見ていられない」と訴えると、チケットをプレゼントしてもらえた。
リードはジュリアを見つけ、「ハリソンは結婚してる。今も奥さんと一緒に暮らしてる」と言うが、信じてもらえない。「僕とモーリーは 合う?正直に言って」と彼が質問すると、ジュリアは「合わない」と答える。リードは「僕も同じことを言ってる。みんな分かってたのに 誰も言ってくれなかったからショックを受けた。同じ思いをさせたくない」と説くが、ジュリアは飛行機に乗ることを選んだ。
サッカーの試合前、エディソンはクラスメイトのインド人少女レイニーと会話を交わす。レイニーは「今夜はママの店の手伝いがあるの。 バレンタインデーが嫌いな人たちのパーティーが」と言う。エディソンは他の子供たちの母親が来ているのを見て、寂しい気持ちになった 。ショーンが緊急会見を開くという情報を知ったケルヴィンは、助手のグレッグに取材を任せてカーラのオフィスへ行く。すると彼女は すっかり元気を失っており、「確かめたいの、私がバレンタインデーに孤独な唯一の人間なのか」と話す。ヒステリックに喚き散らす彼女 を、ケルヴィンは抱き締めて落ち着かせた。
グレースはエドガーとエステルに、アレックスとの初めてのセックス計画が失敗に終わったことを語る。「話してみたらバカみたいね。 死ぬまで彼とだけ寝るわけじゃないし。そんな頭のおかしい人がいる?」と彼女が言うと、エドガーは「我々ぐらいかな」と口にした。 だが、エステルは微妙な表情を見せる。エドウィンはエドガーたちの目を盗んで家を抜け出した。それに気付いたグレースは、慌てて後を 追う。エステルはエドガーに、かつて長く離れていた時期、エドガーの仕事の相棒だった男と浮気していたことを打ち明ける。
ホールデンはケイトに、「最近、別れたんだ」と明かす。ケイトは「あの乗務員、貴方に気がありそうよ」と教える。実際、その乗務員は 何度もホールデンの方を見ていた。ジュリアはハリソンの勤務する病院へ赴くが、彼は不在だった。彼女は看護婦に質問し、ハリソンが妻 と結婚15周年を祝ったばかりだと知る。別の看護婦は、ジュリアに「ビストロ・ガーデンで6時の予約」と教えた。ショーンは記者会見を 開き、自分がゲイだとカミング・アウトして「引退はしない。プレーは続行する」と補足した。
ジュリアはビストロ・ガーデンへ行き、テーブル担当としてハリソン夫妻の元へ赴いた。動揺するハリソンの前で、ジュリアはデタラメな 料理の説明を並べ立て、パメラが浮気に気付くようにして仕向けて立ち去った。レイニーの母が営むインド料理店では、カーラが主催する パーティーの準備が進められていた。ジェイソンはビバリー・ウィルシャー・ホテルのレストランでリズとデートする。リズはテレフォン ・セックスの電話が入ったので、店の外へ出る。
飛行機を降りたホールデンは、迎えに来た運転手のレドモンドと会う。ケイトに声を掛けると、「バスは時間がかかるし、タクシーは長蛇 の列レンタカーを当たるわ」と彼女は言う。ホールデンは「僕の車を使うといい。彼と少しでも長く過ごすといい」とケイトに勧めた。 リズを捜してホテルの外に出たジェイソンは、テレフォン・セックス中の彼女を見て困惑する。リズは平然とした態度で、「私は副業で テレフォン・セックスしてるの。学資ローンを払わないといけないし、お金が無いから」と語る。
ハリウッド墓地での映画上映会に、ジェイソンは一人でやって来た。当日券を求める行列の中には、一人で来たエドガーの姿があった。 当日券が売り切れてしまい、エドガーが困っていると、ジェイソンがリズの分のチケットを譲った。エドウィンはシエナ・ブーケを訪れ、 リードに「僕の注文した花束が欲しい」と告げる。リードはサイモンから貰った箱を差し出し、エドウィンを配達先まで送ることにする。 バレンタインデー大嫌いディナーの会場には、ジュリアを始めとする孤独な女たちが次々にやって来る…。

監督はゲイリー・マーシャル、原案はキャサリン・ファゲイト&アビー・コーン&マーク・シルヴァースタイン、脚本はキャサリン・ ファゲイト、製作はマイク・カーツ&ウェイン・ライス、製作協力はヘザー・ホール&ラッセル・ホランダー&マーク・カウフマン、製作総指揮はトビー・エメリッヒ&サミュエル・J・ ブラウン&マイケル・ディスコ&ダイアナ・ポコーニイ&ジョシー・ローゼン、撮影はチャールズ・ミンスキー、編集はブルース・ グリーン、美術はアルバート・ブレナー、衣装はゲイリー・ジョーンズ、音楽はジョン・デブニー、音楽監修はジュリアンヌ・ジョーダン。
出演はジェシカ・アルバ、キャシー・ベイツ、ジェシカ・ビール、ブラッドリー・クーパー、エリック・デイン、パトリック・デンプシー 、ヘクター・エリゾンド、ジェイミー・フォックス、ジェニファー・ガーナー、トファー・グレイス、アン・ハサウェイ、カーター・ ジェンキンズ、アシュトン・カッチャー、クイーン・ラティファ、テイラー・ロートナー、ジョージ・ロペス、シャーリー・マクレーン、 エマ・ロバーツ、ジュリア・ロバーツ、ブライス・ロビンソン、テイラー・スウィフト他。


未だに「『プリティ・ウーマン』の」と紹介されることが多いゲイリー・マーシャルが監督を務めた作品。
ついでに言うと、『プリティ・ブライド』や『プリティ・プリンセス』や『プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング』や 『プリティ・ヘレン』のゲイリー・マーシャルが撮った作品ってことになる。
余計な情報だが、彼は『プリティー・リーグ』に出演していたりもする。

オープニング・クレジットでは、21名のキャストがアルファベット順で表記される。この21名が「主要キャスト」の扱いってことだ。
その順番で書いていくと、モーリー役がジェシカ・アルバ、スーザン役がキャシー・ベイツ、カーラ役がジェシカ・ビール、ホールデン役 がブラッドリー・クーパー、ショーン役がエリック・デイン、ハリソン役がパトリック・デンプシー、エドガー役がヘクター・エリゾンド 、ケルヴィン役がジェイミー・フォックス、ジュリア役がジェニファー・ガーナー。
さらに、ジェイソン役がトファー・グレイス、リズ役がアン・ハサウェイ、アレックス役がカーター・ジェンキンズ、リード役が アシュトン・カッチャー、ポーラ役がクイーン・ラティファ、ウィリー役がテイラー・ロートナー、アルフォンソ役がジョージ・ロペス、 エステル役がシャーリー・マクレーン、グレース役がエマ・ロバーツ、ケイト役がジュリア・ロバーツ、エディソン役がブライス・ ロビンソン、フェリシア役がテイラー・スウィフト。ここまでが21名だ。
アンクレジットだが、序盤のシーンでリードに激怒する運転手の役でジョー・マンテーニャが出演している。

粗筋を読んでもらえれば分かるだろうが、これは1つの恋愛劇を描いて行く作品ではなく、複数のカップルの物語を同時進行で描いて行く 群像劇だ。
前述したように21名が主要キャストの扱いではあるのだが、キャシー・ベイツとジョージ・ロペスは明らかに脇役だし、 ジェシカ・アルバとパトリック・デンプシーは恋愛劇から途中退場する。
そこは、用意されたエピソードの中で主役として扱われている男女だけに絞って表記した方がいいんじゃないか。

上述した出演者の名前を見ても分かるだろうが、かなり豪華な顔触れとなっている。「オールスター映画」みたいな感じだね。
かつては日本でも、多くのオールスター映画が作られた時代があった。五社協定(一時期は六社協定)があった時代だと、東映、大映、松竹、日活 、東宝の各社が正月と夏休みシーズンにはオールスター映画を上映するのが恒例だった。
例えば東映なら、片岡千恵蔵、市川右太衛門、大友柳太朗、中村錦之助、東千代之介、大川橋蔵といった、ピンで主役を取れる面々が一堂 に会した映画が作られていた。
映画会社がスターを専属契約で縛る五社協定が自然消滅した後の邦画界では、1970年代後半から1980年代前半に掛けて、角川春樹が多額の 宣伝費を投入してメディアミックスを展開し、豪華キャストを揃えた「角川映画」を何作も送り出した(『犬神家の一族』『人間の証明』 『野性の証明』『戦国自衛隊』『復活の日』など)。
同一会社の専属俳優を集めたわけではないが、その豪華な顔触れは、オールスター・キャストと言ってもいいだろう。

ただ、ここまで講釈を垂れておいて何だが、私が本作品を見てすぐに連想したのは、ロバート・アルトマンの『ザ・プレイヤー』から 『ショート・カッツ』『プレタポルテ』までの3本だ(特に後の2本)。
アルトマンは豪華キャストを揃えて撮った『ザ・プレイヤー』がヒットしたことで味を占めたのか、その後に出演者の顔触れに頼り まくった映画を2作連続で撮った。
「その2本の出演陣を豪華キャストと呼べるのか」というところでの疑問はあるかもしれんが、群像劇ということもあって、パッと思い 浮かんだのよね。

前置きが長くなったが、ようするに本作品は「豪華キャストの勢揃いをお楽しみ下さい」という映画であり、それ以上でも、それ以下でも ない。
「内容?ドラマ?何それ」ってな感じである(もちろん製作サイドは、そんなことを思っていないだろうけどね)。
1つ1つのエピソードは薄いし、キャラクターや人間関係の掘り下げも無い。
登場人物に関しては、「演じているのが有名スターだから、誰が誰かは分かるでしょ」ってな感じである。
仮にキャラの名前は覚えていなくても、俳優の顔で見分けることが出来るという次第だ。

125分の中で多くの恋愛劇を描くわけだから、それぞれのストーリーに割く時間は、当然のことながら短くなる。
ただ、この映画の欠点は(もう「欠点」って書いちゃったけど)、1つ1つの物語が薄いということではなく、それぞれを短編映画として 捉えた場合、ショート・ストーリーとしての魅力が不足していることにある。
その魅力とは、ロマンティックな魅力である。

この映画は、どう考えたってカップルをメインの観客層として想定したデート・ムービーである。
そうであるならば、これを見た観客、特に女性が「なんて素敵なカップルかしら。私もあんな恋がしてみたい」と思うような、そんな内容 に仕上げるのが望ましいのではないかと思う。
だが、この映画には、そういう憧れの感情を喚起するための要素が足りていない。

まず、最初に示されたカップルに待ち受けている展開が、ちっともロマンティックじゃない。
リードはモーリーにプロポーズしてOKを貰ったのに、「キャリアは捨てられない」と断られる。周囲の面々の「きっと別れる。合わない 」と思っていたことが現実になってしまう。
ジュリアの付き合っているハリソンは妻と娘がいて一緒に暮らしているのに、別れたと嘘をついている。で、ジュリアは事実を知る。 つまり、失恋する。
ハリソンは家庭の不和を予感させる形で退場し、モーリーもキャラとして使い捨てで終わる。

2組の高校生カップルの話は、何の盛り上がりも無いまま終わっている。
この2組に関しては「いなくても良かったんじゃないか」と思えるほど存在意義が薄い。
ショーンがゲイだとカミング・アウトするのは、意外性はあるけど、そこはカーラとカップルにしちゃった方がいいんじゃないのか。
ケルヴィンとカップルにするより、そっちの方がスムーズな流れに思える(それはケルヴィンだと人種が違うからとか、そういうことじゃ なくて、最初に提示された関係性から考えるとさ)。

特に前半で感じることだが、1つ1つのシーンが短く、かなり慌ただしい。
それと、シーンとシーンの繋がりに無理を感じる箇所が多い。
例えば、モーリーにフラれて落胆したはずのリードは、その直後に「ジュリアを止めなきゃ」と彼女に電話したり、空港へ急いだりして いる。
プロポーズして一度はOKを貰った女から別れを告げられたばかりなのに、親友のことなんて考える余裕があるものだろうかと。
フラれた直後に別のことへ気持ちが行ってしまうから、失恋の痛手というのが全く感じられない。

リードの失恋を軽く処理してしまうぐらいなら、そんなのは最初から持ち込まなければいい。リードは恋人がいない設定にするか、あるい は冒頭で恋人にフラれるか、その程度にすればいい。
軽い処理で終わらせるにしては、モーリーとの関係を引っ張り過ぎだ。
もう始まってから1時間近く経過してるんだぜ。
そこまで引っ張って、求婚したのにフラれて、しかも、そこから新たな恋愛関係を作るんだぜ。

終盤、エディソンはジュリアに花束を渡す。つまり彼がブーケをプレゼントしたい相手は、ジュリアだったってことだ。
で、ジュリアが「レイニーに渡さなくていいの?彼女が貴方を好きなの知ってるの」と言い、エディソンは「ホントに?僕もそうだよ」と 口にして、花束をレイニーに渡すんだけど、そんなに惚れてる感じも無い。
っていうか、そんな手順は要らないんだよなあ。
もっと単純に、エディソンとレイニーの恋愛劇としての流れを作って、その中で素敵な出来事を用意すればいいのに。
なんで変な捻りを加えちゃうのかなあ。
この映画に必要な飾り付けって、そういうことじゃないでしょ。

エディソンに「好みが似てるとか、そういうことがきっかけで友情が恋に変わるのよ」と語っていたジュリアがリードへの恋心に気付くと いう流れも、かなり無理を感じる。
ついさっき失恋したばかりなのに、もう他の恋心に目覚めるのかと。
それはさ、リードにしろジュリアにしろ、「他の恋人と付き合っていたけど、一方で親友のことが気になっている」というのを見せて あれば成立するけど、そこの前振りが足りていない。
だから「異性の親友への恋心に気付く」というベタな展開なんだけど、ロマンティックに盛り上がらない。

ショーンとホールデンがカップルだというのが終盤になって明かされるが、「そこの組み合わせかよ」と言いたくなる。
そこはケイトとホールデンをくっつけろよ。そういう意外性は要らないの。
この映画は、カップルの組み合わせに関しては、ベタ中のベタでいいんだよ。
サプライズを用意すべきは、「カップルがくっつく、もしくは仲直りするための部分、つまりハッピー・サプライズなのよ。

終盤にケイトが息子であるエディソンの元へ戻っても、ハッピーな気持ちになれないんだよね。
そもそも、この映画に求められているハッピーエンドって、そういう類のモノじゃないでしょ。全て恋愛劇でまとめるべきでしょ。
最もロマンティックを感じさせてくれるのはエドガー&エステルのカップルの着地だけど、年老いたカップルが最もロマンティックって、 どうなのよ。
それに、その2人の「映画上映中に仲直りして観客の喝采を浴びる」というシーンへの流れも、物足りなさを感じるし。

(観賞日:2013年2月6日)


第31回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低主演男優賞[アシュトン・カッチャー]
<*『キス&キル』『バレンタインデー』の2作での受賞>
受賞:最低助演女優賞[ジェシカ・アルバ]
<*『キラー・インサイド・ミー』『ミート・ザ・ペアレンツ3』『マチェーテ』『バレンタインデー』の4作での受賞>

ノミネート:最低主演男優賞[テイラー・ロートナー]
<*『エクリプス/トワイライト・サーガ』『バレンタインデー』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低助演男優賞[ジョージ・ロペス]
<*『サーフィン ドッグ』『ダブル・ミッション』『バレンタインデー』の3作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会