『トワイライト・サーガ／ブレイキング・ドーン Part 2』：2012、アメリカ
ヴァンパイアとして目を覚ましたベラを、エドワードは優しく抱き寄せた。レネズミと会いたがるベラに、エドワードは「まず渇きを 満たすために狩りをしなきゃ」と告げる。エドワードはベラを森へ連れて行き、鹿を標的にする。だが、ロック・クライミングをしている 男が出血するのを目にしたベラは我慢できなくなり、彼がいる崖へと走る。しかしエドワードが制止すると、すぐにベラは崖を離れた。 ２人が家に戻ると、ロザリーがベラにレネズミを抱かせた。
エドワードはベラに、レネズミが自分の記憶を映像として他人に伝える能力を持っていることを教えた。ジェイコブがレネズミに刻印した ことを知ったベラは、激怒して殴り掛かった。ジェイコブは粘り強く事情を説明し、理解してもらおうとする。カレン一族の面々は、 エドワードとベラに一夜を過ごすための家をプレゼントした。２人はそこで情事にふけり、翌朝になってカレン一族の元へ戻った。ベラは 父のチャーリーから何度も電話が掛かっていることを知らされ、顔を強張らせて「明日、話すわ」と告げる。
ジェイコブはカレン一族がベラの安全のために引っ越すことを聞き、心穏やかではいられなかった。彼はベラとエドワードに、チャーリー に人狼の姿を見せる考えを明かす。ベラたちは反対するが、既にジェイコブはチャーリーをカレン邸へ呼んでおり、もうすぐ到着すること になっていた。ベラはチャーリーにヴァンパイアであることを隠すため、コンタクトレンズを入れる。さらに彼女はカーライルたちから、 ヴァンパイアであることを隠して行動するためのアドバイスを受ける。ジェイコブが人狼であることを知ったチャーリーが到着し、 エドワードたちはベラと２人きりにする。チャーリーは詳しい事情を知ろうとするが、ベラが「知らない方がいい」と言うと、それ以上は 追及しなかった。
エドワードはレネズミを連れて来て、チャーリーに見せた。穏やかな日々が続く中、レネズミは異様なスピードで成長していった。そんな レネズミの姿を目撃したデナーリ一族の親戚イリーナは、ヴォルトゥーリ一族の元へ赴いた。イリーナはヴォルトゥーリ一族の長である アロに、レネズミが掟で禁じられている不滅の子だと報告した。アリスはヴォルトゥーリ一族が来ることを予知し、エドワードはイリーナ がレネズミを不滅の子と誤解したのだと確信する。不滅の子は力を抑制できず、一人で村を破壊することさえ出来た。ヴォルトゥーリ一族 はヴァンパイアの秘密を守るため、不滅の子と家族を始末してきた。
レネズミはベラはヴァンパイアになる前に産まれているため、不滅の子ではない。しかしアロはイリーナの報告が証拠として充分だと考え 、カレン一族を滅ぼそうとしていた。ヴォルトゥーリ一族に真実を分かってもらうため、エドワードはカーライルに世界中の友人を集める よう依頼する。戦いに参加してもらうのではなく、証人になってもらうことで、ヴォルトゥーリ一族に話を聞いてもらえるかもしれないと 考えたのだ。アリスとジャスパーは証人を集めるため、手紙を残して姿を消した。
ベラ、エドワード、ジェイコブはレネズミを車に乗せ、イリーナを除くデナーリ一族の元へ赴いた。ターニャはレネズミに頬を触られ、 彼女が不滅の子ではないことを知った。カーライルとエズミはエジプトへ飛び、友人のアムーンに協力を要請する。アムーンは困惑するが 、彼の息子であるベンジャミンは前向きな態度を示した。アムーンたちだけでなく、アマゾンに住むセナとザフリーナも協力者に加わった 。カーライルはアイルランドから友人のギャレットを連れ帰り、レネズミのことを理解してもらった。ロザリーとエメットは遊牧民の ピーターとシャーロットを連れて来た。
17人の協力者が集まり、カヘライルとエズミは最後の証人としてアリステアを連れ帰った。18人の協力者は、それぞれの特殊能力を持って いた。ベラは自分にシールドの能力があることを知った。招待を受けていないウラジミールとステファンが、フォークスの森にやって来た 。彼らはヴォルトゥーリ一族に敵対心を抱いていたが、カーライルは「我々は戦うつもりはない」と告げる。するとウラジミールと ステファンは、「まだ彼が耳を傾けるとでも思っているのか」と冷笑した。
エドワードは協力者たちの前で、「僕は家族を守り、生き抜くために、戦う意思がある」と宣言する。ジェイコブの「みんなで戦おう」と いう呼び掛けに、他の面々も大半が賛同した。一方、アロたちはカーライルが接触したタシロの元に現れた。護衛のアレックが力を使って 追い詰めると、タシロは「カーライルの味方になったわけじゃない。貴方に楯突くつもりはない」と釈明する。アロはタシロに触れて カーライルの意思を読み取った後、彼を始末した。
ベラは他のみんなをシールドで守る能力を会得するため、訓練することにした。エドワードが協力すると、ベラはあっという間に能力の 使い方をマスターした。アリスの残したメモを改めて確認したベラは、彼女の意図に気付いた。翌日、ベラはレネズミをチャーリーに 預けた後、車で街に出た。彼女は電話で連絡を取ったアリスとジャスパーの知人、ジェンクスという男と会う。ジェンクスから渡された 封筒の中にはジェイコブとレネズミのパスポートが入っていた。動揺したベラがベラが「私とエドワードも一緒かと思っていた」と言うと 、ジェンクスは「ジャスパーは２人だけだと言っていました」と告げた。
ベラはチャーリーに釣り旅行をプレゼントし、戦いから遠ざけた。彼女たちは準備を整え、ヴォルトゥーリ一族を待ち受けた。カーライル はアロに、話し合いによる解決を求めた。アロはエドワードを呼び寄せて手に触れ、レネズミに会わせるよう要求した。レネズミに頬を 触れられたアロは、彼女が半人間の新種であり、不滅の子ではないことを知る。罪を問われた密告者のイリーナは、「責任は取ります」と 覚悟を決めた。カイウスとマーカスが彼女を始末し、激怒して襲い掛かろうとするターニャをエドワードが説き伏せた。
しかしアロは新種が秘めている脅威の可能性を示唆し、始末すべきだという考えを述べた。そこへアリスがジャスパーと共に現れ、「あの 子が我々にとって無害だという証拠がある」と主張する。アリスはアロに自分の予知した映像を見せるが、何があろうと彼が絶対に決断を 変えないことを見抜いた。アリスはアロを蹴り飛ばし、ヴォルトゥーリ一族に取り押さえられる。カーライルが「彼女を離せ」と駆け出す が、アロに惨殺される。それをきっかけにして、ベラたちとヴォルトゥーリ一族の全面戦争が開始される…。監督はビル・コンドン、原作はステファニー・メイヤー、脚本はメリッサ・ローゼンバーグ、製作はウィク・ゴッドフリー＆カレン・ ローゼンフェルト＆ステファニー・メイヤー、共同製作はビル・バナーマン、製作総指揮はマーティー・ボーウェン＆グレッグ・ ムーラディアン＆マーク・モーガン＆ガイ・オゼアリー、撮影はギレルモ・ナヴァロ、編集はヴァージニア・カッツ＆イアン・スレイター 、美術はリチャード・シャーマン、衣装はマイケル・ウィルキンソン、視覚効果監修はテリー・ウィンデル、音楽はカーター・バーウェル 、音楽監修はアレクサンドラ・パットサヴァス。
出演はクリステン・スチュワート、ロバート・パティンソン、テイラー・ロートナー、ダコタ・ファニング、マイケル・シーン、ビリー・ バーク、ピーター・ファシネリ、エリザベス・リーサー、ケラン・ラッツ、ニッキー・リード、ジャクソン・ラスボーン、アシュリー・ グリーン、マッケンジー・フォイ、ジュリア・ジョーンズ、ブーブー・スチュワート、リー・ペイス、クリスチャン・カマルゴ、ミア・ マエストロ、ケイシー・ラボウ、マギー・グレイス、マイアンナ・バーリング、ジョー・アンダーソン、オマー・メトワリー、ラミ・ マレック、グーリー・ワインバーグ、ノエル・フィッシャー他。
ステファニー・メイヤーの小説を基にした『トワイライト・サーガ』シリーズの第５作にして完結編。
原作小説『トワイライト』シリーズの第４巻を原作とする２部構成の後篇。
監督は前作に引き続いてビル・コンドン。ベラ役のクリステン・スチュワート、エドワード役の ロバート・パティンソン、ジェイコブ役のテイラー・ロートナー、チャーリー役のビリー・バーク、カーライル役のピーター・ファシネリ 、エズミ役のエリザベス・リーサー、エメット役のケラン・ラッツ、ロザリー役のニッキー・リード、ジャスパー役のジャクソン・ ラスボーン、アリス役のアシュリー・グリーンは、１作目からの出演者。
ジェーン役のダコタ・ファニングは２作目と３作目、アロ役のマイケル・シーンは２作目と４作目に続いての登場。レネズミ役の マッケンジー・フォイは前作から、リア役のジュリア・ジョーンズとセス役のブーブー・スチュワートは３作目からの登場。エリエザル役 のクリスチャン・カマーゴ、カルメン役のミア・マエストロ、ケイト役のケイシー・ラボウ、イリーナ役のマギー・グレイス、ターニャ役 のマイアンナ・バーニングは前作からの登場。ギャレット役のリー・ペイス、アリステア役のジョー・アンダーソン、アムーン役のオマー ・メトワリー、ベンジャミン役のラミ・マレック、ステファン役のグーリー・ワインバーグ、ウラジミール役のノエル・フィッシャーは、 本作品で初登場。前作までは人間的に全く成長しないベラを中心とする恋愛劇が描かれ、腐れビッチな彼女が２人の男の気持ちを弄ぶ様子が描かれた。
だが、前作でベラがエドワードと結婚して出産し、ジェイコブがベラの娘であるレネズミに刻印するという都合の良すぎる展開を用意した ことで、ようやく三角関係にハッキリとした終止符が打たれた。
レネズミは産まれたばかりなので、ジェイコブは極度のロリコンってことになってしまうのだが、そこは「レネズミの成長は異様に早い」 ってことでクリアしようとしている。
ただ、異様に早く成長しても、まだ幼女は幼女なので、ロリコンの枠から脱却することは出来ていないが。
あと、「異様なスピードで成長する」ってのを映像で表現するためにＣＧで赤ん坊の首を挿げ替えているので、レネズミは別の意味で異様 な感じになっている。人間的に全く成長しなかったベラは、とうとう前作のラストで人間であることを放棄し、ヴァンパイアになってしまった。
そして彼女はヴァンパイアになった途端、異様に強くなる。
これまではエドワードとジェイコブの気持ちを弄び、男たちに守ってもらっていたベラだが、今回はカレン一族の誰よりも強くなる。
のっけから、彼女が猛スピードで走ったり、険しい崖を軽々と登ったりする様子が描かれるが、何となく滑稽に見えてしまう。
まあ「たぶん製作サイドが予期していないであろう箇所が喜劇に見える」ってのは今回に始まったことじゃなくて、１作目から見られた 現象ではあるんだけどね。もう恋愛劇には決着が付いたので、今度は戦いの方を収める作業をやらなくてはいけない。
これまではアクションとしての盛り上がりに欠け、前作なんてクライマックスのバトルが始まったかと思ったらキラユーテ族が引き 下がってしまうという有り様たった。
徹底して「夢見る女子に捧げる恋愛劇」を描いて来たシリーズだが、さすがに今回は、それだけでは済まない。
「やらなきゃシリーズが終わらない」という仕方のない事情もあって、最終作に至り、ようやくアクションの方向へ本格的に舵を切ろうと する。ただし、砂糖菓子に甘味料をドバドバと浴びせたぐらい甘ったるいシリーズであるトワイライト・サーガなので、そう簡単に活劇を見せる ことはやらない。
最初は前作と同様、ベラとエドワードのラブラブな様子を描く。
前作でベッドシーンは描いたんだから、もう今回は必要が無いだろうと思うのだが、またベッドシーンが用意されている。
「ホントに今回で終わる気があるのか」と思ってしまうぐらい、対立の構図に決着を付けようという雰囲気は漂って来ない。たぶん、「話を終わらせるために後半はアクションをやるけど、仕方なくやるだけで、夢見る乙女のための少女漫画チック映画だから、 ホントはそっちを重視したいのよ。だから乙女の皆さんには、前半部分で満足してもらいましょう」ってことなんだろう。
ただ、恋愛劇はいいとして、エメットと腕相撲をやるとか、そんなことでノンビリと時間を費やしている暇があったら、さっさと緊迫感を 盛り上げて、アクション映画に突入した方がいいんじゃないかとは思うぞ。
いや、これが最後まで恋愛劇として突っ走るなら、それはそれで構わんよ。ただ、まだ放置されたままの状態になっているエピソードや キャラクターが色々と残っているわけで、それだけはキッチリとケリを付けておかなくてはいけない。
で、そういうことを考えたら、前半でそんなに時間を無駄遣いしている余裕は無いはずなのよね。ところが、「ヴォルトゥーリ一族が襲って来る」ってのは前半の内に分かっているのに、実際に戦いが始まるまでには相当の間隔が空いて いる。なかなか戦いの火蓋は切って落とされない。
で、戦いが始まるまでに何をやっているのかというと、証人集めだ。
ただ、今さら大勢の新キャラを投入されても、邪魔な存在でしかない。誰が誰なのかも良く分からんし、存在感をアピールするだけの 時間的余裕も残されていない。
それぞれに特殊能力を持っているという設定だが、それが全て有効活用されるわけではない。そもそも、大半の連中の特殊能力に 関しては、説明も無いままだ。
これなら、まだベラとエドワードの恋愛劇で時間を費やした方が遥かに友好的ではないのかと。
恋愛劇が減った分、アクションが充実しているわけじゃないのよね。恋愛劇が減った代わりに用意されたのが、「新キャラを登場させて 何か色々とテキトーにやってるけど、結果としてはダラダラしているだけにしか見えない時間」なのよね。実のところ、もう戦いを起こさないままで終わろうとすれば、終われないわけではない。
カレン一族とキラユーテ族との関係は、全面的に仲良くなったわけじゃないけど、もうジェイコブがレネズミに刻印したので、手出し できない状態となっている。
デナーリ一族のイリーナはキラユーテ一族に恨みを抱いているけど、それはカレン一族に直接的に関係する対立の構図ではない。
ヴォルトゥーリ一族はカレン一族を警戒しているけど、特に問題が無ければ向こうから手出しして来ることは無い。
だから「レネズミが誕生した後、ベラとエドワードは幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし」でも、終われないわけではない。ただし、そうなると、わざわざ前作で登場させたデナーリ一族や、これまで意味ありげにチョロっとだけ出て来ていたヴォルトゥーリ一族 の存在は、いったい何だったのかということになってしまう。
ダコタ・ファニングを配役したジェーンだって、何もしないままで退場してしまうことになる（わざわざ配役を変更してブライス・ ダラス・ハワードを起用したヴィクトリアは、何の存在感も無いまま３作目で消えたけど）。
そういうことを考えると、やはりデナーリ一族やヴォルトゥーリ一族を絡めて今回の物語を構築しないと、納まりが悪い。
まあ、ある意味では、今までのシリーズの帳尻合わせみたいなモンだな、この最終作は。映画開始から70分以上が経過して、ようやくヴォルトゥーリ一族がベラたちの元へ現れる。
だが、到来したからと言って、すぐに戦いが始まるわけではない。しばらくの間、交渉の時間が続く。
残り30分ほどになって、ようやく全面戦争が開始される。
アクションシーンそのものも対しても魅力を感じないのだが（高揚感が皆無ってのは厳しい）、極め付けは、８分ほど経過してアロがベラ ＆エドワードに殺されたところで、「それは全てアリスがアロに見せていたイメージだった」というオチが待っていることだ。つまり、実際は全面戦争など勃発していないのだ。
前作の終盤と同様、激しい戦いが起きる前に、事態は解決に至ってしまうのだ。
いやあ、すごいね。そのアンチ・クライマックスは、並のセンスでは思い付かないよ。
さんざん引っ張って、ようやく全面戦争に突入すると思わせておいて、戦わずに終わっちゃうなんて、そんなストーリー展開、ワシなら 怖くて絶対にやらんわ。
それを平気でやれちゃうのって、すごい勇気だよ。いや、マジで。（観賞日：2013年5月27日）
第33回ゴールデン・ラズベリー賞
受賞：最低作品賞
受賞：最低主演女優賞［クリステン・スチュワート］
＜＊『スノーホワイト』『トワイライト・サーガ／ブレイキング・ドーン Part 2』の２作での受賞＞
受賞：最低助演男優賞［テイラー・ロートナー］
受賞：最低助演女優賞［アシュリー・グリーン］
受賞：最低スクリーン・アンサンブル賞［全キャスト］
受賞：最低監督賞［全キャスト］
受賞：最低スクリーン・アンサンブル賞［ビル・コンドン］
受賞：最低序章、リメイク、盗作、続編賞
受賞：最低スクリーン・カップル賞［マッケンジー・フォイ（レネズミ役）＆テイラー・ロートナー］ノミネート：最低主演男優賞［ロバート・パティンソン］
ノミネート：最低スクリーン・カップル賞［ロバート・パティンソン＆クリステン・スチュワート］
ノミネート：最低脚本賞