『トランスフォーマー/ロストエイジ』:2014、アメリカ&中国

白亜紀の地球に飛来した宇宙船団が恐竜を攻撃し、次々に金属生命体へと変化させた。そして現代、地質学者のダーシー・トリルは北極の発掘現場を訪れ、金属化した恐竜の化石を確認して興奮した。テキサス。修理解体工で発明家のケイド・イェーガーは友人のルーカス・フラナリーと共に閉鎖された映画館を訪れ、落札したプロジェクターを購入する。古いトラックを見つけた彼は、それも引き取ることにした。娘のテッサは、家計が苦しい中で父がトラックを持ち帰ったので呆れ果てた。
ケイドは妻を亡くし、一人娘のテッサを育てている。テッサを大学に通わせる資金を得るため、彼はトラックの部品を売却しようと考えていた。自宅は支払いの遅れで差し押さえられる寸前となっており、不動産屋は購入希望者を案内する。ケイドは威嚇して追い払うが、父が電気を盗んでいたことを知ったテッサは声を荒らげた。自分が家を出たら誰が世話をするのかと、彼女は不安を抱く。ケイドは必ず役立つ発明をすると約束し、テッサは父の言葉を信じることにした。
シカゴでの戦いから5年が経過し、人間はオートボットとの和平条約を一方的に破棄した。CIA高官のハロルド・アティンジャーは、全てのトランスフォーマーを壊滅させようと目論んでいた。彼の指示を受けた反トランスフォーマー組織「墓場の風」は、ミシガン湖の船に潜んでいたラチェットを発見した。ラチェットが逃亡を諦めて姿を見せると、ジェームズ・サヴォイ指揮官たちは激しい攻撃を浴びせた。賞金稼ぎのロックダウンは、全てのトランスフォーマーに隠れるよう指示したオプティマス・プライムの居場所を吐くよう要求した。ラチェットが拒否すると、ロックダウンはスパークを抜き取って始末した。
トラックを調べていたケイドはトランスフォーマーだと気付き、テッサとルーカスに教えた。ルーカスは「政府に通報しないと。本当にエイリアンなら懸賞金が貰える。生け捕りなら10万ドルだ」と言い、テッサも賛同する。しかしケイドは「金が貰える保証は無い」と反対し、発明家としてトランスフォーマーの仕組みを知りたいという考えを口にした。刺さっていたミサイルをケイドが抜き取ると、直後にトランスフォーマーが動き出した。それはオプティマスであり、激しい損傷を負っていた。
ケイドが力になることを持ち掛けると、オプティマスは「仲間に危機が迫っている。急いで行かなければ」と口にした。人間の待ち伏せを受けて罠に掛かったオプティマスは、「仲間のオートボットなら修理できる」と言う。しかし遠くへ行ける状態ではなく、ケイドは「俺が直す」と約束した。彼はルーカスに、必要な部品を買って来るよう指示した。しかし彼は賞金目当てで政府に密告し、墓場の風がケイドの家へ乗り込んだ。
サヴォイがテッサの頭に銃口を突き付けて脅しを掛けたため、オプティマスは納屋から姿を現した。オプティマスは敵を攻撃し、ケイドに「逃げろ、殺されるぞ」と叫んだ。テッサの恋人であるレーシングドライバーのシェーン・ダイソンが車で駆け付け、ケイドたちに乗り込むよう指示した。敵の追跡を受けた一行は車を損傷し、オプティマスに乗り換えようとする。そこへロックダウンが手榴弾を投げ込み、逃げ遅れたルーカスが死亡した。
ケイドたちとオプティマスに乗り込み、その場から逃走した。オプティマスは砂漠へ彼らを連れて行き、オートボットのバンブルビーやハウンド、ドリフト、クロスヘアーズと会わせる。オプティマスが「人間とロックダウンが手を組む理由を知りたい」と言うと、ケイドは「理由は分からないが、黒幕なら知ってる」と告げる。彼は無人機の撮影した映像を見て、政府と契約しているロボット企業「KSI」が暗躍していることを突き止めていた。
破壊されたオートボットの残骸は、シカゴのKSI本社に運び込まれている。しかしオートボットが潜入することは難しく、ケイドは「力になろう」と申し入れた。ケイドたちはオートボットに乗ってシカゴヘ移動し、必要な物資を揃えた。同じ頃、KSIのジョシュア・ジョイス社長は部下のダーシーと会っていた。ダーシーは北極で発見した金属の化石に関する危険性を語るが、ジュシュアは耳を貸そうとしなかった。彼は可変金属“トランスフォーミウム”を発見し、技術開発主任のギル・ウェンブリーたちに研究させていた。
ジョシュアはダーシーに、人造トランスフォーマーの開発現場を見せた。KSIはオートボットのブレインズを拘束し、残骸の解析を強要していた。ジョシュアはメガトロンの頭部を政府から貰い受けて解析し、試作品のガルヴァトロンを開発していた。ケイドはIDを偽造し、バンブルビーに乗ってショーンと共にKSI本社へ潜入した。人造トランスフォーマーのスティンガーが展示されている場所に入ると、バンブルビーは広告で自分が比較されていることに苛立ちを示した。
ケイドは外へ出るようショーンに指示し、建物の奥へと向かった。ジョシュアは訪ねて来たアティンジャーに、「シードは手に入るのか」と尋ねる。アティンジャーは「オプティマス・プライムが発見できればな」と答えた後、「問題が起きた。民間人が無人機をハッキングし、君の関与がバレたかもしれない」と述べた。もっとトランスフォーミウムが必要だ。エイリアンの賞金稼ぎに言え。私はこの契約に社運を懸けている。そっちが持ち掛けた話だ。アンタには巨額の報酬を渡した。革命を起こすんだろ。シードを調達してくれないと困る」と苦言を呈した。
ラボに潜入したケイドは、ラチェットの頭部が溶かされている現場を目撃した。ケイドが映像を折るくと、オプティマスたちは激昂した。ケイドは潜入を気付かれ、慌てて逃げ出そうとするが捕まった。アティンジャーはケイドを脅し、オプティマスの居場所を教えるよう要求した。そこへオートボットたちが乗り込み、施設を破壊する。ジョシュアはオプティマスに、「我々は革新的な研究を進め、お前たちを作ることが出来る。もうお前たちは必要ない」と言い放った。オプティマスはブレインズを救出し、その場を去った。
アティンジャーは「ここからはCIAの仕事だ」と言い、応戦するようジョシュアに命じた。ジョシュアはガルヴァトロンとスティンガーを起動させ、オートボットを追跡させる。しかしガルヴァトロンは本部の操作に従わず、勝手に行動して市民に犠牲が出た。ジョシュアは動揺するが、アティンジャーは「人類の自由のためなら、犠牲も止むを得ない」と述べた。オプティマスがガルヴァトロンと戦っていると、ロックダウンが現れて不意打ちを浴びせた。ロックダウンの存在を知らされていなかったKSIの面々が驚いていると、アティンジャーは「秘密兵器だ。ガルヴァトロンは退却させろ」と述べた。
ロックダウンは損傷して動けなくなったオプティマスに歩み寄り、「お前は作られたんだ。我々の主人である創造主の元へ戻れ」と告げた。彼はオプティマスを宇宙船で捕獲し、助けようとして車に乗り込んでいたテッサも一緒に拉致された。ロックダウンは宇宙船を監獄として利用しており、オプティマスを拘束した。車ごと廃棄されそうになったテッサは逃げ出し、ロックダフンが墓場の風に「シード」と呼ばれる装置を引き渡す現場を目撃した。
ケイドやオートボットたちは宇宙船に乗り込み、テッサとオプティマスを救出した。ジョシュアは施設の全てを中国の研究所へ移送すると決め、部下のスー・ユエミンに「試作機は向こうで改良する」と述べた。ブレインズはケイドに、メガトロンがガルヴァトロンの体を使って復活したこと、KSIを騙してシードを手に入れようと目論んでいることを教えた。オプティマスはシードについて、「有機生命体を金属生命体に変化させる装置であり、大昔に創造主は地球の生物を滅ぼして自分たちを作った」と説明した。
ブレインズは「ガルヴァトロンが創造主と同じことを企んでいる。大都市で爆発させ、大勢の人間を殺す」と話し、オプティマスは「爆発で溶けた金属を使って軍隊を作り、人間を絶滅させるだろう」と付け加えた。ケイドはジョシュアの居場所を突き止めて電話を掛け、「アンタの試作機は正常じゃない。ガルヴァトロンがシードを狙ってる」と警告した。ケイドやオートボットたちはシードを奪還して地球を守るため、ジョシュアたちのいる中国へ向かった…。

監督はマイケル・ベイ、脚本はアーレン・クルーガー、製作はロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ&トム・デサント&ドン・マーフィー&イアン・ブライス、共同製作はアレグラ・クレッグ&マシュー・コーハン&K・C・ホーデンフィールド&マイケル・ケース、製作協力はリーガン・リスカス、製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ&マイケル・ベイ&ブライアン・ゴールドナー&マーク・ヴァーラディアン、撮影はアミール・モクリ、美術はジェフリー・ビークロフト、編集はウィリアム・ゴールデンバーグ&ロジャー・バートン&ポール・ルベル、衣装監修はリサ・ロヴァース、視覚効果監修スコット・ファーラー、音楽はスティーヴ・ジャブロンスキー、追加音楽はイマジン・ドラゴンズ。
出演はマーク・ウォールバーグ、スタンリー・トゥッチ、ケルシー・グラマー、ニコラ・ペルツ、ジャック・レイナー、ソフィア・マイルズ、リー・ビンビン、タイタス・ウェリヴァー、T・J・ミラー、ジェームズ・バックマン、トーマス・レノン、チャールズ・パーネル、エリカ・フォン、マイク・コリンズ、ハン・グン(韓庚)、ゾウ・シミン(鄒市明)、リチャード・リール、パトリック・ブリストウ、クレオ・キング、カルヴィン・ウィマー、グレン・キーオ、デヴィッド・ミッドサンダー、リチャード・ガリオン、ニック・ホースト他。
声の出演はピーター・カレン、フランク・ウェルカー、ジョン・グッドマン、渡辺謙、ロバート・フォックスワース、ジョン・ディマジオ、マーク・ライアン、レノ・ウィルソン。


ハズブロの玩具をベースにしたシリーズ第4作。
監督は1作目から一貫してマイケル・ベイが担当。
脚本は2作目と3作目に引き続いてアーレン・クルーガーが担当している。
3部作で完結するはずだったのに「まだ稼げる」ってことで続行が決定し、キャストは一新された。

ケイドをマーク・ウォールバーグ、ジョシュアをスタンリー・トゥッチ、アティンジャーをケルシー・グラマー、テッサをニコラ・ペルツ、シェーンをジャック・レイナー、ダーシーをソフィア・マイルズ、スーをリー・ビンビン、サヴォイをタイタス・ウェリヴァー、ルーカスをT・J・ミラーが演じている。
声優陣の方は、オプティマス役のピーター・カレン、ラチェット役のロバート・フォックスワース、ブレインズ役のレノ・ウィルソンだけが、前3部作と同じキャラクターでの続投。
そもそも登場するオートボットとディセプティコンも大半が入れ替わっているので、おのずと声優陣も続投組が少なくなるのだ。
前作でショックウェーブ役だったフランク・ウェルカーが、今回はガルバトロンを担当している。
他に、ハウンドの声をジョン・グッドマン、ドリフトを渡辺謙、クロスヘアーズをジョン・ディマジオ、ロックダウンをマーク・ライアンが担当している。

トランスフォームの映像はゴチャゴチャしまくっていて、何がどのように変形しているのかサッパリ分からない。
しかし、これは1作目から始まっていることで、今さら言っても仕方が無い。監督が変われば改善がみられるかもしれないが、マイケル・ベイが1作目から続投しているんだから仕方が無い。
ただし今回は、そんなことが全く気にならないぐらい、他の部分のドイヒー度数が格段にアップしている。
監督だけじゃなく脚本家も2作目からの続投なので、そりゃあ急に質が向上する方がおかしいけど、現状維持も出来ていない。シリーズ作品では良くあることだが、回を重ねるごとに、どんどん劣化している。

オープニングでは創造主が恐竜を金属生命体(ダイナボット)に進化させた様子が描かれ、その化石が現代の北極で発見される。
そういう映像からスタートするのであれば、「オートボットがダイナボットに立ち向かう」、もしくは「オートボットとダイナボットが手を組んでディセプティコンと戦う」ってのがメインの物語になるべきだろう。
ところが、この映画におけるダイナボットは「いてもいなくても、どっちでもいい」という存在に過ぎない。
終盤にはオプティマスがダイナボットを手懐けて戦いに協力させる展開があるが、「それだけなのかよ」と言いたくなる。

ただし、では今回のメインとなる物語は何なのかと問われると、それが良く分からない。
そもそも、オプティマスたちが何のために戦っているのかさえ、サッパリ分からないのである。
もちろん最終的には「人類を守るため」ってことになるんだけど、そもそもは「人間のために戦ったのに裏切られた。もう人間は信用しない」というスタンスなのだ。
だったら、心境が変化するドラマが必要なはずなのに、それが見当たらない。
一方で、人間ドラマの方も相変わらずテキトーでペラペラだし。

「ロボット・バトルさえあれば他に何も要らない」という開き直りの意識は前作でも感じられたことだけど、それなら「だからシナリオは出来る限りシンプルで分かりやすく」ということに繋がってもおかしくないはずだ。
ところが、なぜか無駄にゴチャゴチャしていて、むしろ観客がロボット・バトルに集中することを妨害している。
例えば、最初に化石の発見があった後、テキサスにいるケイドの様子と、アッティンジャーたちの様子が並行して描かれる。これが物語に厚みや広がりをもたらしているなら何の問題も無いが、やたらとゴチャゴチャして分かりにくくしているだけ。
少なくとも悪党の連中は一枚岩にしておけばいいものを、「CIAのアティンジャーがトランスフォーマー殲滅を企てていて、墓場の風が実動部隊として働いていて、墓場の風はアティンジャーの直属組織じゃなくてKSIの傘下に入るような形で、だけどアティンジャーの計略をKSIは何も知らされておらず、ジョシュアたちが途中で寝返ることによって墓場の風に追われる立場に変化して」と、すんげえゴチャゴチャしているのよね。
その複雑な相関関係や立場の変化は、ちっとも映画の面白さに繋がっていない。

前半の構図からすると、倒すべき敵はアティンジャーの一味だったはずだ。
しかし後半に入ると敵は「ガルヴァトロンの一味」に移行してしまい、アティンジャーは「どうでもいい悪党」に成り下がる。
しかも、最後はアティンジャーの一味と完全に分離したロックダウンが敵になるし、もうグチャグチャなのである。
ジョシュアの鞍替えに関しては、「そこまでの悪事を考えると、善玉として見るのは無理だぞ」と言いたくなる。寝返るにしても、そこまでの罪を考えれば「誰かを助けて命を落とす」ってことで退場しなきゃ腑に落ちんぞ。

プロダクト・プレイスメント(作品内広告)ってのは、最近の映画には付き物と言ってもいい。
特に大作映画では多くの製作費が必要なので、おのずと重視されることになる。
プロダクト・プレイスメントってのは決して悪い物ではないが、見せ方を間違えると映画そのものが残念な印象になってしまう。
例えば、「窮地を脱した主人公の目の前に都合良く自販機が置いてあり、ペプシ・コーラを飲んで一服する」といった、不自然極まりない光景が生まれてしまうわけだ。

ケイドたちが宇宙船からテッサを救出した後の戦闘シーンでは、巻き込まれたビールのトラックが壊れる。この時、車から出て来た男と 話したケイドはトラックから転がり落ちたビールを手に取り、それを飲む。
「そんなことやってる場合かよ」と言いたくなるし、何の脈絡も無い不自然すぎるシーンだが、バドワイザーのビール「バドライト」の広告だ。
この映画は、かつて『ウェインズ・ワールド』のようなコメディー映画がギャグとしてやっていたことを、笑いを取るつもりではないのに、臆面も無く堂々とやっているのだ。
ちなみにケイドが男と話す際、その後ろにはグッドイヤーのトラックが停まっている。他にもアルマーニ、インディアンモーターサイクル、ヴィクトリアズ・シークレット、オレオ、キャデラック、グッチ、、コカコーラ、シボレー、スパルコ、トム・フォード、ナイキ、ミニ・クーパー、モービル、ランボルギーニ、レッドブル、ロールスロイスなど、多くの会社の広告が持ち込まれている。
このシリーズの上映時間が長いのは(今回は165分)、それだけの内容量があるわけではなく、入れなきゃいけない広告が多いからだ。

そんなわけで、これは誰がどう見たって間違いなくボンクラ三昧な映画だ。
それなのに、なんと全世界で10億ドルを上回る興行収入を叩き出した。
10億ドルという金額を聞いてもピンと来ないかもしれないが、ザックリ言っちゃうと「バカみたいな特大ヒット」ってことだ。
そういう結果を生み出した最大の要因は、中国市場を徹底的に重視したことにある。
かつてハリウッド映画が本国の次に日本を重視した時代があったが、今は中国が一番になっている。この映画に至っては、興行収入の約3割は中国での稼ぎだ。なんと本国であるアメリカよりも、中国における興行収入の方が上回っているのだ。

中国を意識しているのは本作品だけでなく、ハリウッド全体の傾向である。
『ゼロ・グラビティ』ではヒロインが中国の宇宙ステーション「天宮」へ向かい、中国の宇宙船「神舟」で地球へ帰還しようとした。
リメイク版の『ロボコップ』では、ロボコップの性能テストが実施される場所が中国の設定だった。
『アイアンマン3』は中国のDMGエンターテインメントが製作に参加しており、北京でも撮影が行われ、ファン・ビンビンとリー・シーユーの出演する中国だけの上映版が用意された。

中国は映画に対して封建的な部分が残されており、年間に公開できる海外映画の本数が限定されている。しかも、政府の許諾が得られない場合、その映画を公開することは出来ない。
そこで「中国で稼ぎたい」と考えるハリウッドの関係者は、中国の映画会社と手を組むようになった。そうすれば「中国との合作」ということで海外映画としての縛りから解放され、公開における障害が解消されるわけだ。前述した『アイアンマン3』も、その方法を使って中国でのヒットに結び付けた。
この作品も中国の「CHINA MOVIE CHANNEL」「Jiaflix Enterprises」という2つの会社と提携し、公開への道筋を容易にした。
さらには、多くの中国企業から出資してもらっているってのも重要なポイントだ。そうやって広告収入を得ることで、まだ公開される前の時点で一定の稼ぎが確保したわけだ。
また、プロダクト・プレイスメントの多さについては前述した通りだが、当然のことながら中国企業の広告も多く含まれている。

実を言うと、中国企業との関係は今回から始まったことではなく、既に前作でも大量のプロダクト・プレイスメントが行われていた。
登場するパソコンはレノボだったし、主人公とヒロインはMeters/bonweの「MTEE」Tシャツを着用していた。ケン・チョン(彼の起用も中国市場を意識してのことだ)は伊利という会社の低乳糖牛乳「舒化ミルク」を飲み、セリフにも商品名が入っていた。
それに対して一部の観客からは、批判的な意見も上がっていた。
だが、そんな前作にも増して、今回は「中国」の色が濃くなっているのだ。

ケイドがテキサスの砂漠を逃亡する途中で銀行のATMを利用する際、なぜか中国建設銀行のカードを使っている。
後半、中国での戦闘シーンでジョシュアがビルの屋上へ逃げ込むと、なぜか冷蔵庫が置いてある。中にはパックの牛乳が入っていて、ジョシュアが飲む。それは前作に引き続いての途上となる舒化ミルクの広告だ。
他にも、中国のジョシュアがケイドから電話を受けるシーンでは白酒メーカー「剣南春」の看板がデカデカと出ているし、飲料水の怡宝や広州汽車のブランドである広汽伝祺などのプロダクト・プレイスメントが持ち込まれている。
ちなみに食品メーカーの周黒鴨は、商品が2秒しか映らなかったので抗議したらしい。

中国での観客動員を増やす目的で、主要キャストにはリー・ビンビンを起用している。
他にも、スーパージュニアの元メンバーである韓庚(ハンギョン)、プロボクサーの鄒市明(ゾウ・シミン)、俳優の巫剛(ウー・ガン)、呂良偉(レイ・ロイ)、王敏徳(マイケル・ウォン)、紀培慧(ジー・ペイホイ)、リン・ ボーホン(林柏宏)らが出演している。
ただし、ほとんどの人物はモブ扱いだ。
この内、韓庚はロックダウンの宇宙船が香港へ襲来する現場に車ごと巻き込まれる数秒の出番がある。
鄒市明に関しては、エレベーターでジョシュアやスーと遭遇し、「墓場の風」の連中を倒すのに協力する役割が与えられている。それだけで出番が終わるので、ものすごく不自然な登場人物と化している。

中国人を起用したり、中国企業の広告を出したりするだけではなく、もちろん中国でのロケーションも行われている。
アメリカのテキサスからスタートした映画は、後半に入ると舞台を中国へと移動させる。
それは必然性があってのことではなく、「まず中国ありき」で脚本が書かれているのだ。
「ガルヴァトロンに不具合が出て、アメリカにいると色々とバレてマズいから中国へ移って改良する」という理由でKSIが中国へ移動し、それをケイドたちが追い掛けるという次第だ。

ジョシュアたちが中国で最初に行くのは北京で、そこに研究所があるという設定だ。
ところが、なぜかケイドからの電話を受ける時には、広州へ移動している。
一応、「シードを受け取る」という理由はあるのだが、研究所に来てもらえば済むことだ。だが、前述した広告の件があるので、そのシーンを用意したってことだ。
その次に香港へ移動するのも、表向きは「アティンジャーを裏切ったジョシュアたちがシードを運んで逃走する」という理由があるが、もちろん本当はスポンサー関連の事情だ。

そんな香港での戦いが勃発すると、ガルヴァトロンに乗っている宇宙船を撃墜されたオプティマス、ドリフト、クロスヘアーズは重慶へと落下する。
念のために繰り返すと、香港で撃墜されたのに、重慶へ落ちるのだ。
そしてオプティマスたちはダイナボットに乗り、地上を走って、すぐに香港へ戻る。
ものすごく距離が離れているので、普通なら有り得ない。しかしスポンサー企業の都合で、どうしても重慶を登場させる必要があったのだ。
脈絡や話の流れなんかは、全く気にしていない。とにかく、中国のスポンサーと観客さえ喜べば、それでいいのである(ただし、ここはさすがに批判を浴びたらしい)。

良い映画、面白い映画を作ろうという志が無くても、そして実際に中身がポンコツであっても、巧みな営業戦略を立てて確実に実行すればヒット作を生み出せるのだということを、この映画の製作陣は見事に立証してみせた。
中身の良し悪しを問わずにヒット作を生み出す力があるのだから、ある意味では凄いことである。
ただし、「凄い」ってのは素直な気持ちで言えるけど、これっぽっちも尊敬は出来ない。
っていうか、こいつらクソだわ。

(観賞日:2016年2月26日)


第35回ゴールデン・ラズベリー賞(2014年)

受賞:最低監督賞[マイケル・ベイ]
受賞:最低助演男優賞[ケルシー・グラマー]
<*『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』『オズ めざせ!エメラルドの国へ』『ベガス流 ヴァージンロードへの道』『トランスフォーマー/ロストエイジ』の4作での受賞>

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低リメイク&盗作&続編賞
ノミネート:最低助演女優賞[ニコラ・ペルツ]
ノミネート:最低スクリーン・コンボ賞[任意の2組のロボットか俳優(あるいはロボット俳優)]


2014年度 HIHOはくさいアワード:第8位

 

*ポンコツ映画愛護協会