『陪審員』:1996、アメリカ
女流彫刻家のアニー・レアードは、11歳の息子オリヴァーと2人で暮らすシングルマザー。ある時、彼女は殺人事件の陪審員を引き受けた。それは、マフィアのドンと幼い孫が殺害され、組織のボスであるボファーノが殺人罪で捕まった事件だった。
ボファーノ・ファミリーは無罪判決を勝ち取るため、殺し屋のティーチャーとエディを雇った。ティーチャーはアニーに近付き、ボファーノを無罪にしなければオリヴァーを殺すと脅迫する。そしてティーチャーとエディは、アニーの行動を監視するようになる。
陪審員は、12人中10人が有罪を主張した。アニーは他の陪審員を説得し、全員の意見を無罪へと変えさせた。裁判が終わった後、アニーは検事に脅迫の事実を明かそうとするが、それを知ったティーチャーは彼女の親友ジュリエットを殺害する…。監督はブライアン・ギブソン、原作はジョージ・ダウズ・グリーン、脚本はテッド・タリー、製作はアーウィン・ウィンクラー&ロブ・コーワン、製作総指揮はパトリック・マコーミック、撮影はジェイミー・アンダーソン、編集はロバート・レイタノ、美術はジャン・ロールフス、衣装はコリーン・アトウッド、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。
出演はデミ・ムーア、アレック・ボールドウィン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、アン・ヘッシュ、ジェームズ・ガンドルフィーニ、リンゼイ・クローズ、トニー・ロー・ビアンコ、マイケル・コンスタンティン、マット・クレイヴン、トッド・サスマン、マイケル・リスポリ、マシュー・コウルズ、ジュリー・ハルストン、フランク・アドニス、トム・シグノレリ、ルイザ・フエルタス他。
ジョージ・ダウズ・グリーンの小説を映画化した作品。
アニーをデミ・ムーア、ティーチャーをアレック・ボールドウィン、オリヴァーをジョセフ・ゴードン=レヴィット、ジュリエットをアン・ヘッシュ、エディをジェームズ・ガンドルフィーニが演じている。ティーチャーは最初、身分を偽ってアニーに接近するが、その時点で彼がワルだというのはバレバレだ。
しかも、どうせすぐに正体を明かすのだし、目的は脅迫なのだから、善人のフリをして近付く意味など無いような気もするが、気にしないことにしよう。そもそも、たった1人の陪審員を脅迫し、他の陪審員を説得させて無罪に持ち込むという作戦は、かなりギャンブル性が強い。
アニーにどれだけの弁論能力があるかは分からないのだし、評決不一致になれば、また最初からやり直しになってしまう。
アニーを従わせるために知り合いの男を殺害するぐらいなら、もっと確実に無罪に持ち込む方法として、検事や判事を脅迫するか、いっそ12人の陪審員全員を脅迫するというのはどうだろうかと考えてしまうが、あまり気にしないことにしよう。デミ・ムーアという人は、とてもパワフルな女性である。
彼女はパワフルな本質をアピールすることで、誰もが羨むようなハリウッドスターへの階段を着実に登っていった。
そんなパワフルなデミ・ムーアには、やはりパワフルなヒロインの役が良く似合う。この作品の主人公アニーは、デム・ムーアと同じくパワフルな女性だ。
「軽薄な気持ちで陪審員を引き受けた女が、有罪の人間を裁判で無罪にする」という行為が、なし崩し的に正当化されているが、そんな問題点も、パワーで捻じ伏せてしまう。
脅されて精神的に追い詰められた弱い女性を必死に装っていても、その態度、その表情からは、マグマのように燃えたぎるパワフルなエナジーが透けて見える。
彼女は憔悴したように見せつつパワーを溜め込み、それを放出する機会を伺っているのだ。アニーは強硬に無罪を主張し、そのパワフルな言動によって、ついには全員の意見を無罪へと導いてしまう。
だが、パワフルなアニーにとって、それだけでは物足りない。
彼女のパワフルさは、もはや法廷サスペンスの枠には収まりきらないのだ。喋るだけではパワーが有り余っているので、彼女は体を動かしたがる。
そう、アクションがやりたくてたまらないのだ。
終盤になると、彼女はパワフルな本質を存分にアピールする。
パワフルな彼女は法律の枠を飛び越え、勝手に決着を付けるのだ。
第17回ゴールデン・ラズベリー賞
受賞:最低主演女優賞[デミ・ムーア]
<*『陪審員』『素顔のままで』の2作での受賞>
第19回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:【最悪の主演女優】部門[デミ・ムーア]
<*『陪審員』『素顔のままで』の2作でのノミネート>