『ポストマン』:1997、アメリカ

2013年、大規模な戦争の果てに世界は荒廃し、秩序は完全に失われた。無政府状態となったアメリカでは、独裁的な指導者ベツレヘム将軍が凶悪な集団“ホルニスト”を率いて暴れ回り、生き残った人々から食料や物資を奪っていた。
ユタ州のソルト・フラッツに、安住の地セント・ローズを目指している旅役者の男が立ち寄っていた。そこへホルニストがやって来る。男はこっそり逃げようとするが発見され、徴兵される。シェークスピアと呼ばれるようになった男は、隙を見てホルニストから逃亡する。
偶然にも郵便配達夫の車を見つけた男は、白骨死体から制服と手紙の束を奪う。男は政府に派遣された郵便配達夫“ポストマン”に成り済ますことにした。公務員なら、食事と宿泊場所を得られるだろうと考えたのだ。そうして彼は、まんまとパインヴューという集落に入り込む。
民衆は手紙を運んできた彼を救世主のように崇めた。新政府が誕生したという男のデタラメな話も、民衆は信じ込んだ。男を尊敬する青年フォードが中心となり、郵便配達夫の集団が結成された。しかし、ベツレヘム将軍はポストマンを消し去ろうと動き始めていた…。

監督はケヴィン・コスナー、原作はデヴィッド・ブリン、脚本はエリック・ロス&ブライアン・ヘルゲランド、製作はケヴィン・コスナー&スティーヴ・ティッシュ&ジム・ウィルソン、撮影はスティーヴン・ウィンドン、編集はピーター・ボイル、美術はアイダ・ランドム、衣装はジョン・ブルームフィールド、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。
主演はケヴィン・コスナー、共演はウィル・パットン、ラレンツ・テイト、オリヴィア・ウィリアムズ、ジェームズ・ルッソ、ダニエル・フォン・バーゲン、トム・ペティ、スコット・ベアストウ、ジョヴァンニ・リビーシ、ロバータ・マックスウェル、ジョー・サントス、ロン・マクラーティ、ペギー・リプトン、ブライアン・アンソニー・ウィルソン、トッド・アレン、レックス・リン、ショーン・ヘイトシー、ライアン・ハースト、チャールズ・エステン他。


SF作家デヴィッド・ブリンの小説を映画化した作品。主演のケヴィン・コスナーが製作に携わり、監督も務めた作品。近未来を舞台にしているが、西部劇のような感じの作品である。コスナーの「アメリカの英雄になりたい病」が、見事に発揮された映画だ。
コスナーは長い尺の壮大な大河ロマンを作るのが好きみたいだが、少なくとも今作品に関しては無駄に時間を使いすぎ。例えばホルニストから主人公が逃亡する場面でも、半分の時間で処理できるはずだし、ダラダラしないためにもそうすべきである。

口からデマカセが都市伝説のように広がる中で真実になっていく展開、チンケな嘘つき男が英雄に祭り上げられていく展開は面白い。しかし、その中心に位置するポストマンがヘタレ男のままなので、周囲が盛り上がっても真ん中が沈んだままなのである。
ポストマンって、基本的にはデタラメな話をしているだけなのよね。攻撃されている町を放り出して逃げてしまったり、世話になった人々が殺されるのを隠れて見ていたり。で、ポイントに来ると、そこだけカッコ良く振る舞うという始末。なんとも卑怯な男だ。

ポストマンのキャラクターに全く魅力が無い。別に、最初の内は逃げ腰なのは構わない。だけど、次第に変化していくべきでしょ。英雄に仕立て上げられていく中で、強くなっていくべきでしょ。人間的な弱さがあるのは構わないが、人間的な成長が見えてこないぞ。キャラ設定もボンヤリしてるし。
大体、手紙を届けただけで、急に民衆から救世主呼ばわりされるという展開に合点がいかない。いったい何を救ったの?それに、ポストマンが手紙を届ける作業と、悪党集団を駆逐することとが、どうにも上手く結び付かないのよね。

最後がポストマンとベツレヘムの1対1の対決だというのも納得がいかない。ポストマンの功績が民衆を動かしたことにあるとすれば、最後も民衆の力で悪の集団を退治すべきではないのかい。最後になって、どうして急にポストマンという個人の力だけで解決してしまうのよ。

ホルニストはアメリカ全土を支配するほどの巨大な集団のはずなのだが、移動手段が馬なので、全土をケアするのは難しいだろう。地域ごとに支部を置いているわけでもないみたいだし。人数を見てもせいぜい100人程度だし、アメリカ全土の広さを考えると少なすぎるんじゃないか。
つまり、ホルニストは民衆を支配するほどの集団ではなく、凶悪な山賊レベルということだ。そして、ボスであるベツレヘムも、山賊の親分レベルにしか見えない。

ポストマンが少年の手紙を受け取るシーンが見せ場っぽく描かれており、しかも最後にその場面の銅像まで作られる(恥ずかしいオチだなあ)。ちなみに、その少年はケヴィン・コスナーの息子。他にも彼の2人の娘も出演している。やりたい放題ですな。
でも、そのシーンって奇妙なのよね。右側から馬に乗って走ってきた男が左側へ走り抜け、逆戻りして手紙を受け取って右側へ走り去る。それって来た道を戻ってるだろ。
大体、馬を全力疾走させて駆け抜けるように手紙を受け取るなんて失礼だぞ。ちゃんと馬から降りて手紙を受け取れよ。

今作品の世界では、なぜか『ユニバーサル・ソルジャー』がブーイングの対象になっている。それで思ったが、この作品の主役、ジャン=クロード・ヴァン・ダムにしたらどうよ。そんで監督はピーター・ハイアムズで。
そうしたら、「北斗の拳」みたいな作品になったかもよ。その方が面白そうっス。


第18回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低作品賞
受賞:最低監督賞[ケヴィン・コスナー]
受賞:最低脚本賞
受賞:最低主演男優賞[ケヴィン・コスナー]
受賞:最低オリジナル歌曲賞[『ポストマン』で使用された全ての歌曲]

第20回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:1990年代最低作品賞


第20回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の演出センス】部門[ケヴィン・コスナー]

 

*ポンコツ映画愛護協会