『PLANET OF THE APES 猿の惑星』:2001、アメリカ

2029年、合衆国空軍の宇宙探査基地オベロン号から、知能強化型チンパンジーのペリクリーズを乗せた偵察ポッドが磁気嵐の観測へと向かった。だが、観測中にポッドは消息を絶ってしまう。宇宙飛行士レオ・デヴィッドソンは司令官の命令に背き、偵察ポッドで救出に向かう。だが、彼も磁気嵐に巻き込まれ、未知の惑星へと墜落する。
レオが墜落したのは、知性を持った猿が支配する惑星だった。猿のトップに立つのがセード将軍で、人間は奴隷やペットとして扱われていた。猿に捕まったレオは奴隷商人リンボーに売られそうになり、人間に優しい女性学者アリに助けてもらった。
リオはデイナと父カルービら少数の人間を引き連れ、牢から逃亡した。レオから協力を求められたアリも同行することになり、彼女の執事クラルも従った。レオはポッドの墜落現場で発信機を見つけ、オベロン号が星に着陸していることを知る。
レオやアリ達は、オベロン号の反応がある禁断の地へと急ぐ。その途中、セードの腹心アター達に発見されるが、何とか追跡を振り切った。やがてレオ達は禁断の地へと辿り着くが、そこで見つけたのは砂に埋もれて老朽化したオベロン号だった。
オベロン号の航海記録を調べたレオは、驚くべき事実を知った。レオは磁気嵐に飲み込まれ、未来へと飛ばされた。それは、レオの救出に向かったオベロン号が磁気嵐で墜落してから、数千年が経過した未来だった。オベロン号で飼育されていた猿達は、やがて人間に反乱を起こした。その猿が、セード将軍らの先祖なのだ…。
を伴なって逃亡し、リンボーも連行する。アリも付いていくことになり、彼女の執事クラルも同行する。レオ達は秘密トンネルを通り、オベロン号の墜落現場へ向かう。彼らはセードの腹心アター達に追跡されるが、何とか逃亡する。やがてレオ達は禁断の地へと足を踏み入れ、オベロン号を発見する…。

監督はティム・バートン、原作はピエール・ブール、脚本はウィリアム・ブロイルズJr.&ローレンス・コナー&マーク・ローゼンタール、製作はリチャード・D・ザナック、製作協力はロス・ファンガー&カッテルリ・フローエンフェルダー、製作総指揮はラルフ・ウィンター、撮影はフィリップ・ルースロ、編集はクリス・レベンゾン&ジョエル・ネグロン、美術はリック・ハインリクス、衣装はコリーン・キャンプ&ドナ・オニール、特殊メイクアップ効果はリック・ベイカー、音楽はダニー・エルフマン。
出演はマーク・ウォールバーグ、ティム・ロス、ヘレナ・ボナム=カーター、マイケル・クラーク・ダンカン、クリス・クリストファーソン、エステラ・ウォーレン、ポール・ジアマッティー、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、デヴィッド・ワーナー、エリック・エヴァリ、ルーク・エバール、エヴァン・デクスター・パーク、グレン・シャディックス、クリス・エリス、アン・ラムゼイ、アンドレア・グラノ他。


1968年の『猿の惑星』を基にして、リメイクではなく“リ・イマジネーション(再創造)”として作られた映画。レオをマーク・ウォールバーグ、セードをティム・ロス、アリをヘレナ・ボナム=カーター、アターをマイケル・クラーク・ダンカンが演じている。
他に、カルービをクリス・クリストファーソン、デイナをエステラ・ウォーレン、リンボーをポール・ジアマッティー、クラルをケイリー=ヒロユキ・タガワが演じている。また、『猿の惑星』でノヴァを演じたリンダ・ハリソンがカゴに入った人間役で、テイラーを演じたチャールトン・ヘストンがセードの父親役で出演している。

オリジナル版『猿の惑星』には、人間への皮肉や文明批判が込められていた。しかし、ティム・バートンが監督になった時点で、そんなモノを盛り込むことは望んでいない。この映画に望むのは、ティム・バートンらしさであり、彼らしい遊び心だ。
キャスティングには、遊び心が感じられる。出演者の中で最も猿っぽい顔のマーク・ウォルバーグが人間の役というのが、まずニヤリ。猿の中で唯一の銃所有者が全米ライフル協会会長のチャールトン・ヘストンという配役も、またニヤリとさせてくれる。

ティム・バートンは『ビートルジュース』や『バットマン』など、これまでの監督作の中で「異形の者」に対する愛情を示してきた。この映画で「異形の者」といえば、もちろん知性を持った猿である。だから人間の登場人物よりも、猿に愛情が注がれている。
オリジナル版の猿達は、「見た目は猿だが中身は完全に人間」という状態だった。しかし、この映画の猿は「猿の外見をした人間」ではなく、あくまでも「猿が進化して人間的な生活をするようになった」という存在として描かれる。だから、すぐに飛んだり跳ねたりするし、キーキーと言ったりもする。動きの端々に、猿らしさを見せている。

ティム・バートンの興味は、猿を猿らしく描くこととヴィジュアル・イメージ、この2点に集中している。だから、猿だけは文句無しに素晴らしい。これはティム・バートンではなくリック・ベイカーの仕事になってくるが、猿の特殊メイクは見事である。
「猿の見た目」という部分を除くと、他は手抜き状態だ。ひょっとするとティム・バートンは、シナリオの出来映えの悪さゆえに、マトモに演出する意欲が失せてしまったのではないか。オリジナル版とは違う作品を作ろうというプレッシャーに押し潰されたのか、“リ・イマジネーション(再創造)”という言葉に負けたのか、とにかく雑なのだ。

反抗的な態度を示すレオに、アリが興味を示して調べようとすることは無い。いきなりアクションの連続に入っていくため、アリが危険を侵してレオを助けるという行為に説得力が無い。しかし、そこだけの問題ではなく、この映画には全体を通して説得力など無い。説得力が無いから、アクションの連続で観客に考える暇を与えないよう心掛ける。
禁断の地と呼ばれる場所であろうが、猿達は特に恐れることも無く平然と入っていく。レオ達のグループには裏切り者、密告者になっても不思議ではないキャラクターもいるが、ただの同行者というだけの扱いに終わらせている。とにかく、さっさと先に進みたくて仕方が無いらしく、使えそうな要素でもバッサバッサと切り捨てていく。

ティム・バートン監督が猿に愛情を注いでいると前述したが、なんと彼は人間と猿のロマンスまで発生させようとする。アリはレオに惹かれ、デイナとの間に恋の鞘当てが生じるのだ。しかも、デイナよりも猿であるアリの方が扱いが上になっている。なるほど、何しろマーク・ウォルバーグは猿顔なので、猿とのロマンスでも大して違和感は無い。
この映画で最も興味を惹くのは、そのレオとアリのロマンスである。そこを突っ込んで描けば面白くなったような気もするが、うやむやのままに葬られる。アクションSF大作というカテゴリーで製作されているので、そこに話を絞るわけにはいかなかったのだろう。

たぶんティム・バートンは、これをジョークの強いテイストで包み込み、その中で人間と猿のロマンスを軸にした作品として描きたかったのだ。しかし製作者サイドの意向で思ったような映画作りが出来ず、だから適当に投げ出してしまったのだろう。
だから、これは「ティム・バートンが珍しく雇われ監督になっている映画」、ということになるのではないだろうか。そういう意味での価値が、この映画にはある。
と幾ら書いたところで、そんなのは何のフォローにもなっていないわけだが。


第22回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低リメイク・続編賞
受賞:最低助演男優賞[チャールトン・ヘストン]
<*『キャッツ&ドッグス』『PLANET OF THE APES 猿の惑星』『フォルテ』の3作での受賞>
受賞:最低助演女優賞[エステラ・ウォーレン]
<*『ドリヴン』『PLANET OF THE APES 猿の惑星』の2作での受賞>


第24回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の演出センス】部門[ティム・バートン]
ノミネート:【最悪の助演女優】部門[エステラ・ウォーレン]
<*『ドリヴン』『PLANET OF THE APES 猿の惑星』の2作でのノミネート>
ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会