『ハーレム・ナイト』:1989、アメリカ

1918年、ハーレム。シュガー・レイは非合法で深夜営業のナイトクラブを経営していた。ギャンブルをしていた客がいきなりナイフを取り出して金を奪い取ろうとした時、たまたま店にきていた少年クイックがその客を銃殺した。身寄りの無いクイックを、レイは自分の家に引き取ることにした。
20年後、レイはクイックと共にナイトクラブを経営していた。繁盛する彼らの店に、トミー・スモールがドミニク・ラルーを連れて偵察にやって来た。トミーは大物マフィアであるバグジー・カルホーンの手下、ドミニクはカルホーンの愛人である。
カルホーンはレイ達のナイトクラブが繁盛していることを知り、警察のフィル・カントン巡査部長を差し向ける。カントンはレイ達を逮捕しない代わりに、店を潰されたくなければ売り上げ金の3分の2をカルホーンに渡せと脅迫してくる。
レイとクイックはカルホーンの言いなりになることを拒み、店を閉鎖することを覚悟する。その前に、店を潰してから別の生活が出来るくらいの大金を稼ごうと考えた。それもカルホーンを騙して金を手に入れようという考えだ。
もうすぐボクシングのヘビー級タイトルマッチがある。レイの知人で王者のジャック・ジェンキンスが白人のカーク・パトリックの挑戦を受ける。そこでレイ達はパトリックに大金を賭け、カルホーンに八百長が行われると思い込ませようという計画だ。
計画の準備が進行する中、クイックはドミニクに誘われて彼女と会っていた。ベッドに誘われたクイックだが、枕の下に拳銃が隠されているのを発見。ドミニクに殺されそうになったクイックは、逆に彼女を撃ち殺してしまう…。

監督&脚本&製作総指揮はエディ・マーフィー、製作はロバート・D・ワックス&マーク・リプスキー、撮影はウディ・オーメンズ、音楽はハービー・ハンコック。
主演はエディ・マーフィー、共演はリチャード・プライヤー、レッド・フォックス、ダニー・アイエロ、マイケル・ラーナー他。


エディ・マーフィーが15歳の時から抱いていた構想を、監督・脚本・製作総指揮・主演の4役兼任で映画化した。
オシャレな音楽、オシャレな衣装、銃撃戦、爆破シーン、カーチェイス、アクション、トリック、ギャグ、あらゆる要素を含んだ作品だが、いかんせん面白くない。

とにかくスピード感が全く無く、話がノロい。最初から最後までモタモタしてノッペリした展開。なかなか話が前に進まない上に、それを助けるはずのマシンガントークは不発。無駄話をしないエディ・マーフィーなんて、タコの入っていないタコ焼きみたいなモンですぜ。

大事な部分の説明をバッサリと省略するので、話の流れにスムーズに入っていけない。配置した幾つかのエピソードが最後に集約されるようなことも無い。エピソードのつなぎ方も稚拙でツギハギだらけだし、演出にも粗さが目立つ。

それなりに笑わせようとしているようだが、全く笑えない。人が死ぬ場面でのギャグも多いが、全く笑えない。しかもギャグの場面で「ここで笑いなさい」というような音楽が入るので、ますます笑えない。
エディはトークではなくコント的な笑いを作りたかったようだが、モッチャリしたコントでは笑えない。

カルホーンの驚異の見せ方が下手なので、レイやクイックが追い込まれていく緊張感も無い。だから、そこから逆襲していく際の爽快感も薄い。ボクシングの試合でカルホーンをギャフンと言わせる計画なのだが、この計画が非常に分かりにくい。
せめて後半は「ボクシングの試合で儲ける」という展開だけに絞ってくれれば、もう少し惹き付けられたのかもしれないが、全く無関係のエピソードと交互しながら描かれるので、流れが分かりにくい。しかも、その方法が3流のコントみたいに見えるし。

逆襲のやり方がスマートじゃないんだよな。家屋を爆破して、そこにいるカルホーン一味を殺すってのは違うよなあ。もっとスマートでオシャレな方法じゃないと、スカッとしないですぜ。人を爆殺して喜んでいるエディってのは好きになれんぞ。

せっかく大先輩のコメディアンであるリチャード・プライヤーと仕事をしたエディだが、2人でタッグを組んで活躍するような場面はほとんど無し。コンビとしての面白さを全く生かせず。
この映画で最も面白いのは、数秒だけ映る、マラカスを持ってニヤニヤしながら踊る太っちょのオッサンですな。


第10回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低脚本賞

ノミネート:最低監督賞[エディ・マーフィー]


第12回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:最悪作品賞

 

*ポンコツ映画愛護協会