『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』:2003、アメリカ
ナタリー・クック、ディラン・サンダース、アレックス・マンデイは、大富豪チャーリー・タウンゼントの探偵事務所に所属するエンジェル達だ。3人は声しか知らないチャーリーから指令を受け、世界中を飛び回る。今回、3人はモンゴル北部へ飛び、連邦法執行局の局長レイ・カーターを救出した。しかし、カーターは指輪を盗まれたとエンジェル達に告げた。
アメリカでは、司法長官のベイリーが何者かに襲撃され、指輪を奪われた。一方、帰国したエンジェル達は、引越し作業に励んでいた。ナタリーが恋人ピートと同棲することになり、ディランとアレックスも手伝っているのだ。アレックスとは冷却期間中の恋人ジェイソンも、そこへやって来た。俳優のジェイソンは、ヒット映画の続編「マックス・エキサイト2」の撮影中だ。エンジェル達は呼び出しを受け、探偵事務所へ向かった。事務所では、かつての上司ボスレーの義弟ジミー・ボスレーが待っていた。
チャーリーから連絡が入り、エンジェル達は指令を聞く。今回の任務は、FBI長官ロジャー・ウィクソンからの依頼だ。カーターとベイリーが持っていた指輪が、2つとも奪われた。指輪にはFBIの証人保護プログラムの情報を示す暗号が隠されており、2つを合わせると解読できるようになっているのだ。そして保護プログラムで守られていた証人の1人アラン・コールフィールドが、自宅で死体となって発見されているという。
エンジェル達は、コールフィールドの自宅へ向かった。警官は食べ物をノドに詰まらせた窒息死だと言うが、エンジェル達は他殺だと確信した。現場を調べた結果、彼女達はヒザに傷のあるサーファーが犯人だと推理する。アレックスが自宅に戻ると、父が来ていた。そこにナタリーとディランも来るが、父には病院で働いているとウソをついているアレックスは、慌てて誤魔化した。
エンジェル達は犯人を探すため、ビーチへと向かった。ディランとアレックスは店の売り子に変装し、ナタリーは水着で浜へ出る。そこでナタリーは、かつてエンジェルだった大先輩のマディソンと遭遇した。2人の様子を見たディランとアレックスは、ナタリーが最初に引退するだろうと考える。ディランは、他のメンバーとトリオを組む自分の姿を想像した。
エンジェル達はヒザに傷のあるランディー・エマーズというサーファーを発見し、彼がダート・クロスの会場へ行くことを知る。さらに彼女達はランディーの所持品を調べ、レオという名前のメモを見つけた。ダート・クロス会場へ向かった3人は、ライオンのマーク付きのヘルメットを被ったレーサーを発見し、ランディーが競技中に彼を殺すつもりだと察知した。
エンジェル達はレースに参加し、ランディーの行動を阻止しようとする。そこへ、かつてエンジェル達と敵対したヤセ男が現れ、ランディーを殺して逃亡した。狙われたレーサーのマックスは、保護プログラムで守られていた証人の1人だった。そしてナタリーとアレックスは、ディランも証人保護プログラム下で守られていたことを知る。
ディランは以前、シーマスという男と付き合っていた。しかしアイリッシュ・マフィアのシーマスが殺人を犯す現場を目撃し、警察に通報したのだった。シーマスは連邦刑務所に収容されていたが、何者かの手回しで出所した。シーマスの一味が犯人だと確信したエンジェル達は、マックスの身を守るため、ボスレーの母に彼を預けることにした。
エンジェル達は、ヤセ男が残したペンダントから、彼が修道院の施設にいたことを知った。3人は修道院へ行ってヤセ男の過去を聞き、彼がマックスを守っていたことを知った。エンジェル達はサンペドロ港へ行ってシーマス一味の貨物船に潜入し、指輪を取り戻した。しかしシーマスは生きており、仲間に迷惑が掛かると考えたディランは置手紙を残して姿を消してしまう・・・。監督はマックG、原案はジョン・オーガスト、脚本はジョン・オーガスト&コーマック・ウィバーリー&マリアンヌ・ウィバーリー、製作はレナード・ゴールドバーグ&ドリュー・バリモア&ナンシー・ジュヴォネン、製作総指揮はジェンノ・トッピング&パトリック・クローリー、撮影はラッセル・カーペンター、編集はウェイン・ワーマン、美術はJ・マイケル・リヴァ、衣装はジョセフ・G・ルイジ、視覚効果監修はマーク・ステットソン、音楽はエドワード・シェアマー、音楽監修はジョン・フーリハン。
出演はキャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リュー、デミ・ムーア、バーニー・マック、クリスピン・グローヴァー、ジャスティン・セロー、ロバート・パトリック、ロドリゴ・サントロ、シャイア・ラブーフ、マット・ルブランク、ルーク・ウィルソン、
ジョン・クリーズ、ジャネット・デュボワ、ロバート・フォースター、キャリー・フィッシャー、アンドリュー・ウィルソン、エリック・ボゴシアン、ピンク、イヴ、ベラ・カロリー、リッキー・カーマイケル、クリス・ゴッセラー、ケアリー・ハート、ジェレミー・マクグラス他。
1970年代の人気TVシリーズを基にした映画『チャーリーズ・エンジェル』の続編。
ナタリー役のキャメロン・ディアス、ディラン役のドリュー・バリモア、アレックス役のルーシー・リュー、ヤセ男役のクリスピン・グローヴァー、ジェイソン役のマット・ルブランク、ピート役のルーク・ウィルソン、チャーリー(声のみ)役のジョン・フォーサイスは、前作からの続投。
マディソンをデミ・ムーア、ボスレーをバーニー・マック、シーマスをジャスティン・セロー、カーターをロバート・パトリック、ランディをロドリゴ・サントロ、マックスをシャイア・ラブーフ、アレックスの父をジョン・クリーズ、ボスレーの母をジャネット・デュボワ、ウィクソンをロバート・フォースターが演じている。さらに、修道院長役でキャリー・フィッシャー、コールフィールド家の警官役でアンドリュー・ウィルソン、コールフィールド役でエリック・ボゴシアン、モトクロスのスターター役でピンクが出演しており、ラッパーのイヴ(ディランが将来のエンジェルを想像するシーン)、コマネチを指導した体操コーチのベラ・カロリー(アレックスの経歴紹介VTR)、モトクロス・レーサーのリッキー・カーマイケル、クリス・ゴッセラー、ケアリー・ハート、ジェレミー・マクグラスがそれぞれ本人役で出演している。
アンクレジットで出演している数名の俳優がいる。登場順で紹介すると、ベイリー長官役がブルース・ウィリス。ディランが想像する将来のエンジェルの双子がオルセン姉妹。そして姿を消したディランを励ますのがジャクリーン・スミス。TVシリーズと同じくケリー・ギャレット役での出演だ。この映画を見る時に大切なことは、深く考えないことだ。
仮に頭の中に幾つもの「?」が浮かんだとしても、すぐに「!」と置き換えるように心掛けよう。向こうがオツム空っぽのキャラクター、オツム空っぽの話を用意して、オツム空っぽで見てくれという姿勢で作っているのだから、それに応じて我々はオツム空っぽで見るべきなのだ。
キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューといったハリウッドのトップ女優達が、何の迷いも無く、頭のてっぺんから足のつま先までパッパラパーに徹している姿は何とも清々しい。
『クイック&デッド』で主人公なのに1人だけバカ映画だと気付いていなかったシャロン・ストーンには、爪の垢を煎じて飲んでもらいたいぐらいだ。久しぶりの映画出演となったデミ・ムーアだが、自分の売りが何なのか良く理解している。彼女は本作に向けて、改造ボディーにさらなる改造を施している。
「アタシは芝居じゃなくてボディーが売りなのよ」という、その姿勢は素晴らしい。そのボディーを見せ付けるため、キャメロン・ディアスの白ビキニに対抗して黒ビキニでビーチに登場するのも素晴らしい。
さすがデミ姐さんである。「スケールの大きなハリウッド製お楽しみ会」としての方向性は、続編になっても揺らぐことは無い。冒頭、カーターを救出する作戦のバカさ加減からして、もうノリノリである。ディランがモンゴル男と飲み比べをして、ナタリーがロデオマシンでキャッキャッと騒いで男達の目を引き付けている間にアレックスがカーターを連れ出すという作戦なんだから、もうバカ丸出しである。
その冒頭のロデオでハシャぎまくるシーンもそうだが、とにかく「おバカに騒ぐ」というのがエンジェル達(特にナタリー)の持ち味だ。ハマーのビデオを見てナタリーが踊り、そこにディランとアレックスが加わって3人でノリノリで踊る。トレジャー・チェスト・ダンサーになって、お店でエロく踊る。ハイテンションで踊りまくっているが、別にヤケクソになっているわけでもないし、コートニー・ラヴが憑依したわけでもない。エンジェル達のコスプレショーというセールスポイントは、前作からキッチリと踏襲している。その必要性が全く無くても、そんなことはお構い無しに、とにかく着替えまくる。エンジェル達が場所を移動すると、必ず着替えがセットで付いてくる。
というか、まずコスプレがあって、そのためにシーンを作っているんじゃないかと思えるぐらいだ。パロディーが色々と入っている。
例えばエンジェル達が溶接工に変装するシーンでは、『フラッシュダンス』の音楽が流れてくる。尼僧に化けるシーンでは、『サウンド・オブ・ミュージック』。ソファーをくぐるシーンは『雨に唄えば』のパロディー。ピートの母校の名が『グリース』のライデル高校という、小さいトコロにもネタは入っている。
それが面白いかどうかは、深く考えちゃいけない。
たっぷりと入っている下ネタについても同じことだ。エンジェル達は推理力に優れており、1のヒントで10の情報を言い当てるぐらいスゴいんだが、ちっとも知的に見えない辺りが素晴らしい。展開的にはスリリングになっていく場面でも、お気楽ムードでスリルのスの字も無い辺りも潔くてよろしい。
合成やワイヤーワークを露骨に見せてバカ風味を増している辺りも、潔くてよろしい。ダート・クロス場で弾き飛ばされたナタリーがレースに復帰する際にバイクごと宙返りをするなど、必要性を無視した過剰アクションも、バカ風味を増していてよろしい。どんな理由があろうとも、続編への出演を断ったビル・マーレイ(前作のボスレー役)には、猛省を促したい。コメディアンなのに、こんなに素晴らしいバカ映画への出演を断るとは何たることか。一般的な感覚で考えれば賢明な選択だろうが、そんなことではダメだ。
「私生活における元奥さんに殺される」という役を喜んで引き受けたブルース・ウィリスのバカ魂を見習えと言いたい。
あと、どうやらカンフー・アクションへの興味が薄れたらしい監督にも、猛省を促したい。
しかし最も猛省を促されるべきは、こんな映画を誉めている私だ。
第24回ゴールデン・ラズベリー賞
受賞:最低リメイク・続編賞
受賞:最低助演女優賞[デミ・ムーア]ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:映画とは名ばかりの最悪のモノ賞
ノミネート:最低主演女優賞[ドリュー・バリモア]
<*『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』『おまけつき新婚生活』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低主演女優賞[キャメロン・ディアス]
第26回スティンカーズ最悪映画賞
受賞:【最悪の演出センス】部門[マックG]
受賞:【最もでしゃばりな音楽】部門ノミネート:【最悪の主演女優】部門[ドリュー・バリモア]
<*『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』『おまけつき新婚生活』の2作でのノミネート>
ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門
ノミネート:【最悪の続編】部門
ノミネート:【チンケな“特別の”特殊効果】部門