『ブレアウィッチ2』:2000、アメリカ

1999年夏、映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の大ヒットを受け、舞台となったバーキッツヴィルの町には熱狂的なファンが押し寄せるようになった。町に住む青年のジェフは、映画に便乗したグッズを販売する店を出していた。彼は幼女誘拐の前科があり、1年前は精神病患者の施設に収容されていた。時が過ぎて同年11月15日、ジェフは警察署の取調室に連行されていた。彼は捜査官に、「車から血痕が出た」と告げられた。
遡って1999年11月12日、ジェフは「ブレア・ウィッチ・ハント」と称する2日間のツアーを企画し、魔女を自称するエリカ、霊能力を持つというキム、魔女伝説に関する本を執筆しているカップルのスティーヴンとトリステンを最初の客として車に乗せた。バーキッツヴィルの町を出発した一行は、途中の商店で物資を買い込んだ。ブレア・ウィッチの森に到着した一行は、荷物を持ってラスティン・パーの廃墟へ向かう。キムはトリステンが妊娠していること、スティーヴンは子供を欲しがっているが彼女は望んでいないことを見抜いた。
ラスティン・パーの廃墟は、ヘザーの撮影したビデオが発見された場所でもある。大木を見たジェフは「以前は無かったぞ」と驚いたが、スティーヴンは「臭い芝居だな」と笑った。「本当だ、リビングの真ん中に大木が生えているか?」とジェフは主張するが、エリカとトリステンも彼がツアーを盛り上げるために演技をしていると受け止めた。エリカはトリステンに、森に住む魔女のエリーと話す目的でツアーに参加したことを明かした。
その夜、一向は廃墟の近くにテントを張り、魔女や映画に関する会話に花を咲かせる。5人は酒を飲み、マリファナを吸い、焚き火を囲んで夜を過ごす。そこへ「ブレア・ウィッチ・ウォーク」というツアーの企画者2名と観光客3名が現れた。企画者たちは廃墟に宿泊する予定だったため、ジェフやエリカと言い争いになる。スティーヴンはコフィン・ロックのことを持ち出し、そこへ彼らを向かわせるよう芝居をした。ジェフたちもスティーヴンの演技に付き合い、一行を追い払うことに成功した。
翌朝、5人が目を覚ますと、スティーヴンとトリステンの原稿や研究資料が細かく切り刻まれ、ジェフのビデオカメラは壊されていた。「昨日のツアーの奴らの仕業だ」とジェフたちが怒っていると、先に起きて川へ出掛けていたエリカが戻って来た。キムが「幸いにもテープは無事。心の目で見える。あそこよ」と指差したのは、ヘザーのテープが発見された場所だった。ジェフが疑いながら石の下を探ると、そこには彼のビデオテープがあった。
トリステンが急な陣痛に襲われ、一行は慌てて病院へ向かう。しかし処置の甲斐なく、トリステンは流産した。車内で発見されたのはトリステンの血痕だった。ジェフの取り調べを担当したクレイヴンス保安官は、「もう森へは近付くな。また施設へ戻ることになるぞ」と冷淡な態度で告げた。トリステンが5時間分の記憶を失っていると知り、スティーヴンはジェフに「テープを調べられないか?」と訊く。ジェフは「家には編集機材が揃っているし、きっと何が起きたのか分かるはずだ」と告げた。
ジェフは4人を車に乗せ、ブラック・ヒルズの森にある工場跡へ案内する。そこが彼の住まいだった。ジェフは泥棒除けのアラームや防犯カメラを住居に取り付けていた。大量の撮影機器が保管されているからだ。グッズ・ショップで扱っている商品の数々も置いてある。寝室で休ませてもらったトリステンは、スティーヴンに「病院でブラック・バイブルの挿絵にあった女の子を見た。溺れ死んだっていうアイリーン・トリークルよ」と不安そうに語る。さらに彼女は、「キャンプしてる時、赤ちゃんを殺す夢を見た」と明かした。
ジェフ、キム、エリカの3人がテープを再生すると、廃墟の木が細くなっていた。キムの右肩は赤く腫れていたが、「重い荷物を担いだから腫れただけ。痛みも無い」と軽く言う。別のテープを再生すると、コフィン・ロックが一瞬だけ写し出された。スティーヴンは少女の声を聞き、外に出た。すると少女が「魔女を連れて来たのよ」と言い、スッと姿を消した。トリステンは彼に、「恐ろしい夢を見た。私が大勢の女の子を皆殺しにした」と話した。
ジェフたちがテープの再生を続けていると、途中で何か奇妙な物体が写った。その正体を確認しようとした3人は、再生時間が飛んでいることに気付いた。まだ全員が就寝していた深夜の時間である。映像を停止させてみると、写っていたのは裸の女だった。コーヒーを取りに行ったエリカは、一人で佇んでいるスティーヴンを見つける。エリカがスティーヴンを誘惑し、鋭い爪で襲い掛かった。だが、それは2人が同時に見ていた幻覚だった。
エリカとスティーヴンが編集室へ行くと、ジェフとキムが「さっきの女の正体が分かった」と言う。テープの解像度を上げると、それは全裸のエリカだった。しかしエリカは全く身に覚えが無かった。ジェフたちに責められたエリカは、「何も知らないわよ」と声を荒らげてリビングへ去る。キムが行くと、彼女は「森から魔女を連れて来たのよ」と怯えた様子で言い、腹部に刻まれた古代文字を見せた。彼女は「どんどん大きくなってる。これは魔女に触れられた印なの。次に殺されるって印よ。何かがここにいるのよ」と話す。キムの右肩にも、古代文字が刻まれていた。
キムは酒を買うため、ジェフの車を借りて外出する。商店に行くと、買い物中の婦人は「アンタ、魔女だろ」と攻撃的な姿勢を示した。女主人のペギーはキムを冷たく一瞥しただけで、レジを打とうとしなかった。ペギーが追い払おうとするので、キムは酒を袋に詰めて金を投げ付けた。キムが車で帰路に就くと、不良3人組が投石して来た。激怒してスピードを上げたキムは子供たちの幻覚を見て運転を誤り、道路脇の木に車をぶつけてしまった。
工場跡に戻ったキムは、袋に入っていたペギーの爪ヤスリで指を切ってしまった。キムは編集室へ行き、ジェフに「古い服を着た7人の子供たちを見た。変なことを言うけど、あれはラスティン・パーに殺された子供だよ」と話す。すると振り向いたのは処刑されているラスティン・パーだった。だが、それも幻覚で、実際に座っていたのはジェフだった。翌朝、スティーヴンはトリステンと一緒に帰宅するため、荷物をまとめる。運転を引き受けてくれたエリカを呼ぼうとすると、彼女はいなくなっていた。
スティーヴンが住居の外に目をやると、ジェフの車は何者かに壊されていた。そこへやって来たトリステンは、「子供たちは血で印を付けるのよ。夢で見た。ジェフの体にも印がある」と言う。ジェフが腹部を確認すると、血の印が刻まれていた。4人はエリカを捜すが、服とペンダントを残して蒸発していた。外へ出ればアラームが鳴るので、家の中で消えたことになる。ジェフはキムがエリカと共謀して何かを企んでいるのではないかと考え、彼女に詰め寄った。キムは潔白を主張し、ジェフに反発した。
4人はエリカが実家に連絡したのではないかと考え、電話を掛けてみる。しかしエリカから聞いていた父親の家に電話を掛けると、娘はいないことが分かった。ジェフたちが改めてテープを確認した、機材を破壊する何者かの腕が写っていた。ジェフは「やっぱりツアーの連中が戻って来たんだ」と確信する。そこへクレイヴンスから電話が入り、ジェフは「すぐにテレビを見ろ」と促される。彼がテレビを付けると、「ブレア・ウィッチ・ウォーク」の5名が内臓を抜かれた惨殺死体で発見されたことが報じられていた…。

監督はジョー・バーリンジャー、脚本はディック・ビーブ&ジョー・バーリンジャー、製作はビル・カラッロ、製作協力はケヴィン・フォックス、製作総指揮はダニエル・マイリック&エドゥアルド・サンチェス、撮影はナンシー・シュライバー、編集はサラ・フラック、美術はヴィンス・ペラニオ、衣装はメリッサ・トス、音楽はカーター・バーウェル、音楽監修はエド・ジェラード。
出演はキム・ディレクター、ジェフリー・ドノヴァン、エリカ・リーセン、トリステン・スカイラー、スティーヴン・バーカー・ターナー、レイナー・シェイン、ピート・バーリス、エド・サラ、ロバート・M・ケリー、ケネン・シスコ、ブリトン・グリーン、エリック・ジェンセン、ペギー・K・チャン、トニー・ツァン、アンジャ・バロン、ブリレーン・ボウマン、タイラー・ツァイスロフト、リチャード・カークウッド、ジャスティン・フェア、ローレン・ハルシー他。


1999年の映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の続編。
前作で脚本&監督&製作を務めたダニエル・マイリックとエドゥアルド・サンチェスは、今回は製作総指揮として関与しているだけ。
監督のジョー・バーリンジャーは主にドキュメンタリー作品を撮ってきた人で、娯楽映画のメガホンは初めて。
キムをキム・ディレクター、ジェフをジェフリー・ドノヴァン、エリカをエリカ・リーセン、トリステンをトリステン・スカイラー、スティーヴンをスティーヴン・バーカー・ターナーが演じている。

『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が超低予算でありながら爆発的なヒットを記録した要因は、前作の批評でも書いたように、その巧みなプロモーション戦略にあった。
呪いの伝説を創作し、Webサイトやテレビ番組、雑誌などを利用して、本作品がドキュメンタリーであるかのように偽装した。
そこで大勢の人々が「劇中の恐ろしい出来事は全て実際に起きた出来事だ」と信じ込み、映画館に足を運んだわけだ。
ようするに、映画そのものが良く出来ていたとか、面白かったとか、そういうわけではないのだ。

まあ「巧みなプロモーション戦略」と書いたものの、個人的にはそう思わないんだけけどね。
そんなモンで簡単に「ドキュメンタリー」と信じちゃうのってどうなのよ、と思う。
前作の批評でも書いた通り、ネットやテレビ番組で実話として宣伝したところで、フィクションだったことは簡単に分かりそうなものだと感じるんだよね。
「魔女の呪いが実際にあった」「学生たちが魔女に襲われた」って、そんなの有り得ないでしょ。
まだ宇宙人に遭遇したとか、悪霊に襲われたとか、そっちの方が何とかなりそうだわ。

続編で同じ手口を使おうとしても、それは難しい。っていうか無理だ。
もはや観客は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』がフェイク・ドキュメンタリーであることを知っている。
ってことは、その続編をドキュメンタリーに見せ掛けても、すぐにフェイクだということはバレてしまう。

宣伝手法を除外すると、もはや前作には「映画を面白くするための要素」はカケラも残されていない。だから前作の何を引き継いだところで、もはや勝ち目は無い。
そこで本作の製作サイドがどんな手口を使ったのかというと、「ごく普通のドラマとして作る」というものだった。
いやいや、それは幾ら何でもダメだろ。
そりゃあ最初から何をやっても勝ち目の無い勝負だとは思うけど、だからって諦めが過ぎるだろ。それとも、そんな手法で勝てるとでも思っていたのか。
だとしたら、鈍感にも程があるぞ。
そもそもさ、前作が爆発的にヒットしたから続編を作りたくなるのは分かるが、作るべきではなかったのよ。
なんで作っちゃったかねえ。

まあ「ごく普通のドラマ」と書いちゃったけど、一応は仕掛けっぽいことも持ち込んでいるんだよね。
それは「前作の大ヒットを受けて起きた出来事を再現した映画」として描いているってことだ。
そのことは冒頭のテロップで説明され、「地元テレビ局が撮影した膨大な取材テープに基づいている」とナレーションでも語られる。
ジョー・バーリンジャーを監督に起用したのは、ドキュメンタリーの感覚で「再現ドラマ」を撮ってもらいたいということだったんじゃないかと推測される。

ただ、そういう仕掛けが映画の面白さに繋がっているわけではない。
幾ら「事実を基にしたドラマ」と銘打っても、もはや「それも含めて虚構」ってのはバレバレだし。
それと、「前作はフィクションだったけど、魔女伝説は実際にある」という体裁で作っているんだけど、そこは無茶だなあ。
前作がフィクションとバレちゃってる時点で、魔女伝説が架空の設定なのもバレてるでしょうに。
にも関わらず、「魔女の伝説は実在する」というトコロに頼って恐怖を喚起しようとしても、そりゃあ無理があるわ。

今回は「事実を基にしたフィクション」として作っているんだけど、そうなると前作がフェイク・ドキュメンタリーだったことがマイナスに作用してしまうんだよなあ。
どうしても前作と比較せざるを得ないのだが、その時に「今回の虚構としての有り様」が如実に感じられてしまう。
そういう「作り物」感が、恐怖を薄めてしまうんだよね。
最初から「架空の出来事」として作られていれば、その架空の物語や世界観の中でリアルな恐怖を感じる、というスタンスを取ることは出来るんだけど、なまじ前作がドキュメンタリーを装っていたせいで、「フィクションであること」が「リアリティーの無さ」という邪魔なフィルターになってしまうのだ。

ただし、そういう弊害を抜きにして、これだけを単独で見たとしても、つまんない作品だけどね。
5人が見る幻覚や、ジェフが見る施設での出来事のフラッシュバックなどを何度も挿入しており、それで怖がらせようとしているのは明らかだけど、それは「恐怖」ではなく「混乱」、もしくは「散乱」を招いているだけ。
本筋のドラマだけじゃ怖がらせることが出来ないから、そこで誤魔化そうとして誤魔化し切れていないって感じも受ける。
警察の取調室のシーンを何度も挿入している構成も、恐怖を煽ることには結び付いていない。

繰り返しになるが、どうやったところで、この続編に勝算なんか見出せないし、そもそも作るべきではなかったと思う。
しかし、それでもあえて何かしらの手を打つとすれば、それは「前作で投げっ放しのままにされていた複数の謎を解明する」というアプローチぐらいしか無いんじゃないかと思う。
そうすれば、前作にハマってくれた人なら、それなりに満足してくれる可能性もあったんじゃないかと。

(観賞日:2014年2月10日)


第21回ゴールデン・ラズベリー賞(2000年)

受賞:最低リメイク・続編賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ジョー・バーリンジャー]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低スクリーン・カップル賞[出演者の誰か2人]


第23回スティンカーズ最悪映画賞(2000年)

受賞:【最悪のリメイク・続編】部門
受賞:【誰も要求していなかったリメイク・続編】部門

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の演出センス】部門[ジョー・バーリンジャー]
ノミネート:【最も意図しない滑稽な映画】部門
ノミネート:【最悪のグループ】部門[観光客の連中]
ノミネート:【最もでしゃばりなメジャー映画の音楽】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会