『バトルフィールド・アース』:2000、アメリカ

西暦3000年の地球。人間は荒廃した土地で、原始的な生活を送っていた。食料難で両親を失った青年ジョニーは、怪物がいるという言い伝えのある禁断の地へ向かうことにした。ジョニーは周囲の反対を押し切り、恋人クリッシーを残して旅立った。
ジョニーは神を見たことがあるという男達に出会い、廃墟の街へ案内してもらう。そこでジョニー達は光線銃を持った連中に襲撃され、捕まってしまう。人間処理センターに送られたジョニーは逃亡を図るが、失敗に終わる。彼を捕まえたのは、地球を支配するサイクロ人だった。地球の司令隊長を務めているのは、タールという男だった。
タールは愚かな補佐官カーと共に地球で勤務していたが、一刻も早く異動したいと考えていた。アカデミーを主席で卒業したタールにとって、地球での任務は納得のいかないものだった。しかし統治官ズートはタールに対し、任務期間の延長を指示した。
タールはカーが金の鉱脈を発見したことを知り、ズートには知らせずに金塊を自分の物にしようと企む。しかし鉱脈のガスは、サイクロ人にとっては有害だ。そこでタールは、人間に機械の操作方法を教え込み、鉱脈を採掘させようと考えた。
ジョニーは再び逃亡を図るが、またも失敗に終わった。そこでタールはジョニーを仲間と共に山へ逃がし、好きな食べ物を調べて弱みを握ろうとする。調査を終えたタールはジョニーを捕まえ、学習マシーンでサイクロ人の言葉を学ばせる。
ジョニーはサイクロ人の知識を学んで反乱を起こそうとするが失敗し、タールによって人間の図書館に連れて行かれる。そしてジョニーはタールから、サイクロ人が9分で地球を滅ぼしたことを聞かされる。ジョニーは図書館で本を読み、地球に関する知識を得た。
タールは人間達に襲撃され、ジョニーに銃を奪われる。しかしジョニーは反乱のためには学習が不充分だと考え、銃をタールに返却した。そこへカーが現れるが、彼はジョニーを追って来たクリッシーを捕虜にしていた。タールはクリッシーを人質にして、ジョニーを従わせようとする。しかしジョニーは仲間と共に、蜂起するチャンスを覗う…。

監督はロジャー・クリスチャン、原作はL・ロン・ハバード、脚本はコリー・マンデル&J・デヴィッド・シャピロ、製作はエリー・サマハ&ジョナサン・D・クレイン&ジョン・トラヴォルタ、共同製作はトレイシー・スタンリー&ジェームズ・A・ホルト、製作協力はアンソン・ダウンズ&リンダ・ファヴィラ、製作総指揮はアンドリュー・スティーヴンス&アショク・アムリトラジ&ドン・カモーディー、撮影はジャイルズ・ナットジェンズ、編集はロビン・ラッセル、美術&衣装&クリーチャー創作はパトリック・タトポロス、視覚効果監修はエリック・ヘンリー、音楽はエリア・クミラル。
出演はジョン・トラヴォルタ、バリー・ペッパー、フォレスト・ウィテカー、キム・コーツ、リチャード・タイソン、サビーヌ・カーセンティー、マイケル・マクレー、マイケル・バーン、ショーン・ヒューイット、ミッチェル・ペロン、ショーン・オースティン=オルセン、
ケリー・プレストン、クリスチャン・テシエ、ジェイソン・キャヴァリエ、アール・パツコ、ラッセル・ユエン他。


カルト宗教団体サイエントロジー創始者L・ロン・ハバードのSF小説を基にした作品。
原作はベストセラーだが、それは面白いからではなく、信者が買ったからである。
で、熱烈な信者であるジョン・トラヴォルタが製作に携わり、主演している。本当はジョニー役を演じたかったらしいが、年齢的に無理ということでタールを演じている。
他に、ジョニーをバリー・ペッパー、カーをフォレスト・ウィテカー、カーロをキム・コーツ、クリッシーをサビーヌ・カーセンティー、ジートをマイケル・マクレーが演じている。また、タールの愛人役で、ケリー・プレストンがチラッと姿を見せる。ちなみにケリー・プレストンは夫のトラヴォルタと同じく、サイエントロジーの熱烈な信者である。

公開直後からボロクソに酷評され、見事なぐらいコケてしまった作品だが、そもそも低予算のC級SF映画でやるべき内容を、ビッグ・バジェットでやってしまったら、そりゃあ失敗するに決まっている。美術、衣装、クリーチャー創作の3役を同一人物がこなしている辺りなんて、いかにも低予算のC級SF映画の世界である。
まあ脚本も撮影も編集もボロボロで、ある意味ではアンディー・シダリスの映画よりも悲惨だ。アンディー・シダリスの映画なら、内容はチープだが、「バカバカしい」と笑えるだけの余裕はある。しかし、この映画は単純に退屈で、見ているのが苦痛なのだ。ワケの分からないタイミングでエコーを掛けたりスローを使ったりするが、疎ましいだけだ。

話は『猿の惑星』を思わせる世界観から始まり、ジョニーはサイクロ人に捕まる。サイクロ人は少しだけ宇宙語で喋ってた後、面倒になったらしく英語に変わる。しかし、どうやらそれはサイクロ語らしく、だから人間のジョニー達には分からないという設定だ。
分かりやすくしたいんだか、分かりにくくしているんだか、それは良く分からない。

タールは酒場でバーテンダーと会い、「お前が情報を流せば命は助けてやるぜ。でもオレは異動するから、お前は用済みだな」みたいな、まるで悪徳刑事と情報屋みたいな会話を交わす。しかし残念ながら、タールは任務延長を命じられ、酒場でクダをまく。その姿は、まるで出世が上手く行かないサラリーマンのようでもある。
しかし普通に考えれば、捕まったジョニーの様子を描いて行くべきなのだ。それなのに、なぜかタールの描写の方が圧倒的に多くなっている。やはりトラボルタの主導で製作されている映画だけに、彼を大きく扱わなければならないということだろう。

さて、一方のジョニーは、まず人間処理センターで逃亡を図ってタールに捕まる。次に移動させられる途中、サイクロ人の飛行機が塔にぶつかり、レンガが落ちて来るという有り得ないラッキーが起こるので、レンガで鎖を外して逃亡を図るが、また捕まる。
さらにジョニーは、サイクロ人の愚行から逃亡のチャンスを得るが、また捕まる。タールによって一旦は逃がされるが、また捕まる。タールから銃を奪うチャンスがあるが、自ら銃を返して捕まる。というわけで、こいつは「逃げて捕まって」を延々と繰り返すだけ。

どう考えてもアホなジョニーだが、学習マシーンを使うと驚異的なスピードで知識を吸収していく。そして、かなり難しい数学の知識を仲間達にも教える。良く分からないが、サイクロ人の牢から脱出するには、たぶん高等な数学の知識が必要なんだろう。

タールは「アカデミーを主席で卒業したのに、なぜ出世できない」と怒っているが、映画を見ていれば彼が出世しない理由は一目瞭然。なぜなら、こいつは途方も無いバカだからだ。まず序盤、部下がジョニーに銃で撃たれて死亡したのに、「そんなバカなことがあるかよ」と笑ってジョニーに銃を渡し、また別の部下が撃たれている。
ジョニーの反抗的な態度を見たタールは、なぜか彼を始末しようとはせず、「弱みを握って支配しよう」と考える。まあ、そこまではいいとしよう。しかし、なぜか「好きな食べ物を知れば、弱みを握ることになる」という、不可解な考えに至っている。

さて、普通に人間処理センターに置いたままでも好物を知ることは出来そうな気がするが、なぜかタールはジョニーを山へ逃がし、「そこで好物を食べるのを確認する」と言い出す。その山にジョニーの好物があるかどうかなんて、分からないのだが。
で、空腹に耐えかねたジョニーがネズミを食べると、タール「ネズミが好物なのだ。これで奴らを手懐けることが出来る」とニヤリとする。で、その情報を使って、どうやってジョニー達を手懐けようとするのかと思ったら、何も無かったかのように使われずに終わる。

タールは出世の道を断たれ、「だったら金塊をポッケナイナイしてやる」と、地球を統治するボスにしてはセコいことを考える。サイクロ人は多くの惑星を支配するほど凄い連中のはずなんだが、金塊の独占で喜ぶとは、なかなか可愛いところもあるようだ。
タールは鉱脈を採掘させるため、ジョニーに学習マシーンを使ってサイクロ人の言葉や知識を覚えさせる。いや、それより、サイクロ人が人間の言葉を使って命令した方がいいと思うんだが。賢いんだから、人間の言葉ぐらい簡単に覚えられるでしょ。犯人分子に自分達の言葉や知識を教えるとは、なんて親切なんだろう、タールは。
そもそも、たかが鉱脈を掘らせるだけなので、そんなに知識は必要無いはずなのだ。しかし、なぜかタールは、飛行機の操縦までジョニーに教えている。いやいや、鉱脈までの移動は、サイクロ人がジョニー達を乗せて操縦すればいいだけのことでしょ。

タールの親切な振る舞いは、さらに続く。人間の図書館にジョニーを連れて行き、「好きなだけ本を読んでいいぞ」と言うのだ。そこでジョニーは人間に関する知識を得る。原始的な生活をしていたジョニーが、古い文字を読めるのかどうかは不明だが。
タールはジョニー達に鉱脈を掘らせるが、見張りも付けず、たまに偵察機が見回りにくる程度。そこでジョニーは銀行から金の延べ棒を運び、採掘したように見せ掛ける。金塊じゃなくて延べ棒なのだが、「サイクロ人には洗練された物がふさわしい」とジョニーが言うと、タールは簡単に納得。いや、延べ棒を作るような道具など無かったのだが。

ジョニーは古い武器工場に行くが、そこには米軍の戦闘機や装甲車が完璧に動く状態で残っている。1000年も経っているのに完璧とは、なんて丈夫なんだ。しかも、飛行機の操縦シミュレーターまである。そこで人間達は、シミュレーターで飛行機の操縦を学ぶ。原始的な生活をしていた連中が、数回の練習を積んだだけで操縦法をマスターする。
サイクロ星は放射能に弱いらしいのだが、なぜか地球を襲撃したサイクロ人は人間の核兵器を1000年も放置してきたらしい。そんなに呑気に構えていたもんだから、地球を9分で壊滅させたサイクロ人は、核兵器によって母星を一瞬で壊滅させられる。

映画のラスト、敵ボスであったはずのタールは、生き残ってジョニー達の捕虜になっている。なぜ後を引くような終わり方にしてあるかというと、続編を作るつもりだったからだ。この映画では、原作(全5巻)の半分ほどしか描かれていないのだ。

さて、結論だが、これはハードSFとしてダメな映画ではない。そもそもシナリオの段階で、どう頑張ったところでマトモなSF映画にならないのは明らかだ。
この作品はコメディーであり、バカ映画として、バカの徹底が全く出来ていないからダメなのだ。


第21回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低作品賞
受賞:最低監督賞[ロジャー・クリスチャン]
受賞:最低脚本賞
受賞:最低主演男優賞[ジョン・トラヴォルタ]
受賞:最低助演男優賞[バリー・ペッパー]
受賞:最低助演女優賞[ケリー・プレストン]
受賞:最低スクリーンカップル賞[ジョン・トラボルタ&彼と同じ場面に登場した俳優]

ノミネート:最低助演男優賞[フォレスト・ウィテカー]

第25回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:25周年最低ドラマ賞


第23回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の作品】部門
受賞:【最悪の演出センス】部門[ロジャー・クリスチャン]
受賞:【最悪の主演男優】部門[ジョン・トラヴォルタ]
<*『バトルフィールド・アース』『ラッキー・ナンバー』の2作での受賞>
受賞:【最も意図しない滑稽な映画】部門
受賞:【最悪のカップル】部門[ジョン・トラヴォルタ&全銀河系の誰でも!]
受賞:【最悪のグループ】部門[サイクロ人&原始人]
受賞:【最悪のヘアスタイル】部門[ジョン・トラヴォルタ&フォレスト・ウィテカー]

受賞:【チンケな“特別の”特殊効果】部門

ノミネート:【最悪の助演男優】部門[バリー・ペッパー]

 

*ポンコツ映画愛護協会