『ウォール街』:1987、アメリカ

若き証券マンのバド・フォックスは、顧客獲得のための電話勧誘に励んでいる。彼は同僚のマーヴィンや先輩のルーと違って、大きな目標のために行動を起こしている。それは、大物の個人投資家ゴードン・ゲッコーへの熱心なアプローチだ。
アポ無しでゲッコーのオフィスを訪れたバドは、何とか面会のチャンスを得た。バドは様々な株を薦めるが、全てゴミ扱いされてしまう。そこでバドは、ブルースター航空の情報を伝える。それは、組合長を務める父カールから聞いた内部情報だった。会社に戻ったバドの元に、ゲッコーからブルースター航空の株を買うよう電話が入った。
ようやくゲッコーとの繋がりを得たバドは、彼から不正行為を要求される。取引を続けるために、バドは承諾した。バドは大物投資家ワイルドマンの動きを調査し、情報を得たゲッコーはアナコット製鉄の株を買い占めて大儲けした。
バドはゲッコーの指示で不正な取引を続け、多額の金を稼ぎ出した。不正を隠すため、バドは友人の弁護士ロジャーの口座を借りた。やがてバドは、ゲッコーの知り合いであるダリアンとの同棲生活を始めた。実は、ダリアンはゲッコーの愛人で、彼女とバドを結び付けたのはゲッコーだった。だが、そのことをバドは全く知らなかった。
バドはブルースター航空の経営立て直しのため、株を買い占めるようゲッコーに薦めた。バドは、自分が社長になって経営を改善するプランを出し、組合員を納得させる。だが、カールだけは「ゲッコーに利用されているだけだ」と反対した。
バドは父に反発するが、カールの言葉は真実だった。実際、ゲッコーはブルースター航空を乗っ取った後、解体して売却するつもりだった。ようやく自分が利用されていただけだと気付いたバドは、ゲッコーを騙してブルースター航空を救おうとする…。

監督はオリヴァー・ストーン、脚本はスタンリー・ワイザー&オリヴァー・ストーン、製作はエドワード・R・プレスマン、共同製作はA・キットマ・ホー、製作協力はマイケル・フリン、撮影はロバート・リチャードソン、編集はクレア・シンプソン、美術はスティーヴン・ヘンドリクソン、衣装はエレン・ミロジニック、音楽はスチュワート・コープランド。
出演はマイケル・ダグラス、チャーリー・シーン、ダリル・ハンナ、マーティン・シーン、テレンス・スタンプ、ハル・ホルブルック、ショーン・ヤング、ジョン・C・マッギンリー、ソウル・ルビネック、シルヴィア・マイルズ、ジェームズ・スペイダー、フランクリン・コーヴァー、ジェームズ・カレン、ジョシュ・モステル、ミリー・パーキンス、リチャード・ダイサート、レスリー・ライルズ他。


マイケル・ダグラスがアカデミー賞で主演男優賞を受賞した作品。
ゲッコーをマイケル・ダグラス、バドをチャーリー・シーンが演じている。
最初にクレジットされるのはマイケル・ダグラスだが、主人公はチャーリー・シーンが演じるバドだ。
他に、ダリアンをダリル・ハンナ、カールをマーティン・シーン、ワイルドマンをテレンス・スタンプ、ルーをハル・ホルブルック、ゲッコーの妻ケイトをショーン・ヤング、マーヴィンをジョン・C・マッギンリー、ロジャーをジェームズ・スペイダーが演じている。

マイケル・ダグラスは、こういうイヤな男か、女に困らされる役か、どっちかが似合う。
チャーリー・シーンは、この時は実際に若僧だが、年を取っても若僧っぽい。
良くも悪くも、貫禄の無い甘チャンな匂いのする役者だ。
ダリル・ハンナは、ただの飾り。

「主人公が大物と親しくなり、彼の影響を強く受けて成り上がるが、彼が実は思っていたのとは違うイヤな人物で、裏切られて突き落とされる」というのは、映画界では1つのパターンとして存在する。
似たような骨格を持った話としては、1984年の『フラミンゴ・キッド』なんてのがあった。
あれも昔気質の頑固な父親との対立があった。

分かりやすく言うと、これは証券業界を舞台にした銭ゲバの話だ。
天才的な投資家に憧れる主人公が、彼の色に染まって行くが、裏切りに遭ってしまうとう流れだ。
ようするに、凡人が天才(それが悪の天才だとしても)のマネをしようとしても、そりゃムリってことだ。

「ゲッコーのような男になりたい」と思っていたバドは、彼と一緒に仕事をすることで、近付いたように思い込む。
しかし、そうじゃない。巧妙に利用されているだけだ。
まあ、「イヤな奴になった」という部分では、確かに近付いているのだが。

仕事が上手く行っても、大金が手に入っても、それは本人の実力ではない。
天才の仕掛けるインチキの片棒をかつがされているだけ。
しかし、まるで自分が成功者になったかのように勘違いする。
勘違いに気付かない奴は、利口ぶってケガをする。

劇中、ワイルドマンがゲッコーに対して、「金のためなら母親でも売る奴」と告げるシーンがある。
ひどい奴だと思うかもしれないが、本気で大金を稼ぎたいのなら、それぐらいの商魂が必要ってことだ。
金儲けへの飽くなき欲望は、ゲッコー曰く「善」なのだ。

そう、金儲けのために行動するのは正しいことだと、オリヴァー・ストーン監督は承知している。
だから彼は、社会を切り取るようなテーマを映画にする。
社会的メッセージを発することが目的ではなく、社会を煽れば興業収益がアップするということが大切なのだ。

ゲッコーという人物に、腹が立つかもしれない。
しかし、彼のやり方が正しいことを、観客は証明してしまっている。
観客はバドと同じように、儲け主義のハリウッドを代表する監督の1人であるオリヴァー・ストーンによって、気付かない内に取り込まれ、搾取されているのだ。

(観賞日:2004年3月28日)


第8回ゴールデン・ラズベリー賞(1987年)

受賞:最低助演女優賞[ダリル・ハンナ]

 

*ポンコツ映画愛護協会