『キャデラック・カウボーイ』:1988、アメリカ

1929年、映画俳優トム・ミックスはプロデューサーのアルフィー・アルペリンに依頼され、ワイアット・アープ役を演じることになった。テクニカル・アドバイザーとしてワイアット・アープ本人も映画撮影に参加することになり、ハリウッドへやって来た。トムとワイアットはすぐに親しくなる。
ワイアットはアルフィーの妻クリスティーナから屋敷に招かれる。2人はかつて恋人関係にあったのだ。ワイアットはクリスティーナに力を貸して欲しいと言われる。息子マイケルが売春婦を殴り、売春の斡旋をしているキャンディから非難を受けているというのだ。
シェリルという女バーテンダーのいるバーに出掛けたトムとワイアットは、アルフィーの妹ヴィクトリアがシカゴのギャングであるダッチ・キーファーと一緒にいる姿を目撃する。トムとワイアットはキャンディの家に向かうが、そこで彼女の死体と泥酔したマイケルを発見する。
駆け付けたシェリルに口止めをして、トムとワイアットはマイケルを連れて現場から逃げる。トムは恋人ナンシーにマイケルを預かってもらう。翌日、撮影現場にブラックワース警部がやって来た。トムとワイアットは何も知らないフリをするが、マイケルは逮捕されてしまう。
アルフィーの指示を受けたヴィクトリアが、トムにレイプされたと訴えた。逮捕されたトムはマイケルに会い、クリスティーナが重体で入院していると聞かされる。一方、キャンディの手紙を入手したワイアットは、アルフィーが最初の妻を殺す現場を彼女が目撃していたことを知る…。

監督&脚本はブレイク・エドワーズ、原案はロドニー・アマチュー、製作はトニー・アダムス、製作協力はトリッシュ・キャロセリ、撮影はアンソニー・B・リッチモンド、編集はロバート・パーガモント、美術はロジャー・モース、衣装はパトリシア・ノリス、音楽はヘンリー・マンシーニ。
出演はブルース・ウィリス、ジェームズ・ガーナー、マルコム・マクドウェル、マリエル・ヘミングウェイ、キャスリーン・クインラン、ジェニファー・エドワーズ、パトリシア・ホッジ、リチャード・ブラッドフォード、M・エメット・ウォルシュ、ジョー・ダレッサンドロ、アンドレアス・カツラス、ダーモット・マルロニー、ダン・フロレック、ビル・マーカス、マイケル・C・グウィン、ミランダ・ギャリソン、リズ・トーレス他。


1920年代のハリウッドを舞台に、架空の設定と実在の人物を組み合わせた作品。ブルース・ウィリスがトム・ミックス、ジェームズ・ガーナーがワイアット・アープ、マルコム・マクドウェルがアルフィー、マリエル・ヘミングウェイがシェリル、ダーモット・マルロニーがマイケルを演じている。

この邦題を付けた担当者のセンスに、別の意味で感服する。殺害現場から走り去った車がキャデラックなのだが、そのことが物語に深く関わってくることは全く無い。別に主人公がキャデラックを乗り回してるわけでもない。
何をどう見れば“キャデラック・カウボーイ”なのかが、全く不明。

何しろ、その名も高きブレイク・エドワーズ様が監督だ。
さすがブレイク・エドワーズ、クスリとも笑えないコメディを作らせたら、天下一品の腕を持っている。サスペンス・コメディから、サスペンスの緊張とコメディの緩和を除外して、ダラダラしたストーリーとダルダルになったノリの悪さを詰め込むと、この作品が完成する。

トムとワイアットが殺人現場からマイケルを連れて逃亡するが、意味が分からない。そんなことをすれば、ますますマイケルは怪しまれるだけなんだし。で、トムとワイアットが協力して事件を調査するのかと思ったら、示し合わせることも無く、それぞれが勝手な行動に出てしまう。

セリフの掛け合いのテンポ、キャラが行動を起こすタイミング、エピソードの繋ぎ方など、全てが悪い。笑いに関しては、ギャグを外してしまっているというレベルではない。そもそも、どこで笑わせようとしているのか、そのポイントさえも分からないぐらいだ。

トムとワイアットが事件の真相に迫って行くような流れは無く、いきなり飛び込んで来た手紙によって急に核心に迫る。誰が何のために何をしようとしているのかは、ハッキリさせたくないらしい。人物の相関関係も、ハッキリさせたくないらしい。基本的にはモッチャリとした作風にしたいらしい。

せっかくトムとワイアットというコンビが存在するのに、2人で協力して活躍するようなシーンはほとんど無い。コンビネーションの面白さを生かそうという気は全く無いらしい。
愉快なバディ・ムービーを作れる可能性を持った素材を使いながら、思いっきり間違った方法で調理してみせる辺りは、さすがブレイク・エドワーズと言うしかない。


第9回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低監督賞[ブレイク・エドワーズ]

ノミネート:最低主演女優賞[マリエル・ヘミングウェイ]

 

*ポンコツ映画愛護協会