『ストローカー・エース』:1983、アメリカ

田舎町に住むシーグルは軽トラックを運転している途中、自転車が壊れて困っている息子のドックと彼の親友を見つけた。2人を乗せて車を走らせた彼は、自転車が壊れた理由を訊く。ドックが「ストローカーが水を飛ぼうとしてさ。無理だって言ったんだけど。ストローカーは覚えてるだろ」と言うと、シーグルは「ああ、女の先生を学校のトイレに閉じ込めた悪ガキだろ」と告げる。実はドクと一緒にいたのが、そのストローカー・エースだった。シーグルがスピードを上げたので、以前から彼を狙っていた刑事たちがパトカーで追い掛けた。だがシーグルは全く動じず、さらにスピードを上げた。
成長したストローカーはメカニックのラッグスを車に乗せ、レースが開催されるデイトナ・ビーチへ向かった。彼は荒っぽい運転で車を暴走させ、レーサー紹介にギリギリで間に合った。彼は腹を立てるチームオーナーのジム・キャティーを軽くあしらい、女性たちを口説く。「お前を雇ってるのは私だぞ」とキャティーが叱責しても、ストローカーは全く気にしなかった。フライドチキンのチェーン店を営むクライド・トークルは、チームのオーナーになりたがっていた。彼は会場でレーサーを勧誘し、ストローカーにも声を掛けた。
ストローカーはペンブルック・フィーニーという女性に目を付けてナンパしようとするが、トークルが執拗に粘ったので彼女の元に行くことが出来なかった。トークルが「私と組まないか」と誘うとストローカーは嘲笑し、「俺は人気者だが、アンタは憎まれてる」と断った。デイトナ500がスタートすると、トークルは宣伝部長として雇ったペンブルックに「一緒に酒を飲みに行かないか」と持ち掛ける。だが、ペンブルックは「日曜学校の先生なので。履歴書にも書きました」と言い、その誘いを断った。
ストローカーはトップを走るが、ずっとライバル視しているオーブリー・ジェームズが迫って来た。オーブリーは車をぶつけて来たので、ストローカーはリタイアを余儀なくされた。キャティーがレースカーを壊したことを厳しく非難すると、ストローカーは彼が乗っている車にコンクリートを流し込んだ。シーズンが開幕したばかりでスポンサーを失ったストローカーだが、ラッグスから「一度でも自分以外の人間について考えたことがあるのか」と注意されても全く耳を貸さなかった。
ストローカーがバーにいるとオーブリーが現れ、ミス・デイトナと踊り始めた。ミス・デイトナと関係を持ったことがあるストローカーは、オーブリーに気付かれないよう誘い出そうとする。彼はミス・デイトナに断られるが、弱々しい様子を見せて同情心を誘った。まんまと作戦に落ちたミス・デイトナは、ストローカーの後を追い掛けた。翌日、ストローカーはラッグスと共にトークルの元へ行き、彼が用意したレーシングカーを確認する。ラッグスはトークルと組むことに不満だったが、ストローカーは3年間の契約に前向きだった。大量の書類を渡されたストローカーは、ろくに内容も読まずに署名した。
レース当日になって、ストローカーはレーシングカーには店の宣伝文句が大きく印刷されていることを知る。嘲笑を浴びた彼は腹を立てるが、抗議されたトークルは「契約書に書いている」と指摘した。ストローカーは優勝を飾り、トークルはペンブルックを抱き上げて喜んだ。ストローカーがホテルの部屋で女と一戦交えた後、ペンブルックが仕事でやって来た。女は部屋を去り、ストローカーはペンブルックを口説こうとした。
ペンブルックが店について説明を始めようとすると、ラッグスがやって来た。ペンブルックが宣伝活動で旅に同行するすることを話すと、ストローカーは浮かれて「じゃあ同じ部屋に泊まるわけだ」と言う。ペンブルックは否定し、ストローカーは彼女に質問して処女だと知る。ペンブルックは新しい店舗のオープン・セレモニーでテープ・カットをしてもらうため、車でストローカーを送る。すると店には客が1人も来ておらず、ストローカーは呆れ果てた。
幾つものオープン・セレモニーだけでなく他にも様々な宣伝活動に駆り出され、ストローカーはストレスを募らせていく。彼は何とかするようラッグスに訴えるが、「契約を守らないと、どこの国でもレースは出来ない。複数の弁護士に相談しても、クビになる以外に救われる道は無いと言われた」と告げられる。ニワトリのキグルミ姿でテレビCMに出演する仕事まで要求されたストローカーは憤慨し、わざとトークルを怒らせてクビになろうと目論んだ。彼はニワトリの格好でサーキットに登場するが、作戦を見抜いたトークルは「気に入ったよ、もっとやってくれ」と告げた。ストローカーはキグルミ姿のままで車を運転するが、エンジントラブルでリタイアした。
次のレースではオーブリーが優勝し、ストローカーは2着に甘んじた。ペンブルックはストローカーがレース仲間から馬鹿にされていると知り、責任を感じて「私から社長に言うわ」と告げた。バーで仲間から嘲笑されたストローカーとラッグスは殴り掛かり、他の連中も暴れ出して乱闘になった。オーブリーは騒ぎに乗じてストローカーを殴ろうと企むが、気付かれて返り討ちに遭った。ペンブルックはトークルの部屋へ行き、そろそろストローカーを契約から解放してあげてはどうかと訴える。トークルはペンブルックの肉体を狙うが、股間に蹴りを浴びて逃げられた。トークルがペンブルックをクビにすると、ストローカーが個人的に雇用した。
ストーローカーはトークルの車を撒いてクビにさせようとするが、あえなく失敗に終わった。新店舗のオープン・セレモニーに参加した彼は、駆け出しの俳優になっているドックとシーグルに再会した。ストローカーはペンブルックを騙してシャンパンを飲ませ、口説き落とす。ペンブルックから「貴方が欲しい」と言われてストローカーは浮かれるが、酒のせいで彼女は眠り込んだ。ストローカーはドックに電話を掛け、協力を要請した。
ストローカーはドックに大手ビール会社の首脳陣を詐称させ、トークルに会ってもらう。ドックは店を買収したいと提案し、希望金額をトークルに提示した。彼は「社内でも反対意見があるので口外しないでほしい」「宣伝業務を引き継ぎたいので評判の悪いストローカーは追い出してほしい」と言い、トークルの承諾を得た。ただしストローカーを追い出す期限について最終的な返事を出す期日は、最終レースのゴール時間である23日の16時を指定した。最終レースの当日、ストローカーはトークルから「このレースに負けたら契約は破棄するが、勝ったら会社は手放さない」と通告される…。

監督はハル・ニーダム、原作はウィリアム・ニーリー&ロバート・K・オッタム、脚本はヒュー・ウィルソン&ハル・ニーダム、製作はハンク・ムーンジーン、撮影はニック・マクリーン、美術はポール・ピーターズ、編集はカール・クレス&ウィリアム・ゴーディーン、音楽はアル・キャップス、主題歌はザ・チャーリー・ダニエルズ・バンド。
主演はバート・レイノルズ、共演はネッド・ビーティー、ジム・ネイバーズ、パーカー・スティーヴンソン、ロニ・アンダーソン、ジョン・バイナー、フランク・O・ヒル、カサンドラ・ピーターソン、ババ・スミス、ウォーレン・スティーヴンス、アルフィー・ワイズ、ニール・ボネット、デイル・アーンハート、ハリー・ガント、テリー・ラボンテ、ベニー・パーソンズ、カイル・ペティー、ティム・リッチモンド、リッキー・ラッド、ケイル・ヤーボロー、ビル・コネル、ビル・ダラー、クリス・エコノマキ、デヴィッド・ホッブス、ケン・スクワイア他。


ウィリアム・ニーリー&ロバート・K・オッタムの小説を基にした作品。
監督は『トランザム7000』『グレートスタントマン』のハル・ニーダム。
脚本はTVドラマ『かっとび放送局WKRP』のヒュー・ウィルソンとハル・ニーダム監督による共同。
ストローカーをバート・レイノルズ、トークルをネッド・ビーティー、ラッグスをジム・ネイバーズ、オーブリーをパーカー・スティーヴンソン、ペンブルックをロニ・アンダーソン、ドックをジョン・バイナー、シーグルをフランク・O・ヒル、アーノルドをババ・スミス、キャティーをウォーレン・スティーヴンスが演じている。

オープニングではシーグルが息子と少年時代のストローカーを乗せてパトカーを振り切ろうとする様子が描かれ、現在のストローカーがラッグスを乗せて車を暴走させる様子に切り替わる。
その導入部の描写は変でしょ。
たぶん、「シーグルの影響でストローカーがレースを始めた」ってのを描きたかったんじゃないかとは思うのよ。ただ、そこから現在のシーンに切り替わったら、ドックはストローカーの近くにいないわけで。
後半になってから再登場するけど、その関係性で「少年時代のストローカーとドック」から話を始めるのは、見せ方として明らかに失敗でしょ。

何度かレースのシーンが用意されているが、そこに観客を引き付ける力など皆無だ。冒頭のレースシーンからして、「幾ら喜劇テイストで描くにしても、それは無いだろ」と言いたくなる。
オーブリーは明らかにクラッシュを狙って、ハンドルを急に切って車をぶつけている。つまり意図的にストローカーに接触事故を引き起こしたわけで、それは重大なペナルティーが与えられる妨害行為でしょ。
しかし、なぜか「誰も彼の卑劣な行為に気付いていない」という設定で、リポーターは「何が起きたんです?」としか訊かないし、キャティーも「車を壊した」とストローカーを批判するだけ。
ストローカーもラグスに「10番が妨害したんだ」とは言うものの、それ以降はオーブリーへの怒りを全く見せない。なので、オーブリーの卑劣さが隠れてしまう。

っていうかストローカーはリタイアしたけど、オーブリーは優勝しているんだよね。それが分かるのはストローカーがキャティーの車にコンクリートを流し込んでバーへ出掛けた後なのでタイミングが遅いけど、ひとまず置いておくとして。
彼はストローカーに勝ちたい思いを貯め込んでいたキャラなんでしょ。でも接触事故を起こしたら、自分だってリタイアに追い込まれるリスクは大きいわけで。リタイアしないにしても、車が大きなダメージを受ければ優勝の可能性は低くなるわけで。
なのに「最初から優勝するために車をぶつけた」みたいな描き方になっているけど、それは無理があるだろ。
それと、その後もオーブリーは憎まれ役として描かれているのに、なぜか最後の最後になって、急に「実はいい奴」みたいな形になっているのよね。それは無理があるだろ。
そこは「冷静に計算し、自信満々で棒を振り下ろしたら、思い切りケースが割れる」という風に見せた方が良かったんじゃないかな。

あと、バーでオーブリーと遭遇した時も、ストローカーはそんなに怒っていないのよね。
彼が腹を立てるのは、それよりもオーブリーがミス・デイトナと一緒にいることに対してだ。
レースに対する情熱ってのが、微塵も無い奴にしか思えないぞ。
もちろん喜劇としての描写なのは分かるんだけどさ、「それにしてもレースをの軽視が酷い」と感じるぐらい、ストローカーが何のためにレースをやっているのか良く分からない奴になっちゃってんのよね。

ストローカーのリタイアに対して、キャティーが「車を壊した」と非難するのは間違っていると思う。
でも「レンタカーは潰し、時間には遅れる」ということについては、ストローカーが責められるのは当然でしょ。
それに対して「コンクリートを車に流し込む」という行動に出るストローカーは、全面的に間違っている。
そういう「やり過ぎ」でしかない行動を「コメディーだから」ってことで甘受させようとしているんだけど、それは無理だなあ。

何が無理って、ストローカーが好感の持てる魅力的なキャラになっていないのよ。
そういう過激な仕返しがちゃんとカタルシスに繋がるぐらい、ストローカーがキャティーから理不尽な目に遭っているなら分からんでもないよ。でも、そりゃあキャティーは口も態度も決して良いとは言えないけど、そこまで酷い奴ではないのよ。
「自分のために世界が動いていると思ってるのか。少しはクルーのことを考えろ」という説教は、その通りだと感じるし。
むしろ、レース会場にはギリギリで到着するわ、女癖は悪いわ、指示を全く聞かずに無視するわと、ストローカーの方がよっぽど問題のある男なわけでね。

ストローカーがトークルと契約して以降、レースのシーンはほとんど描かれない。ストローカーがレースに向けて調整する様子や、レースに勝とうとする意欲ってのも、ほとんど描かれない。
宣伝活動の様子、何とかクビになろうとする様子、ペンブルックを口説こうとする様子、そういったシーンが大半だ。
まるで無いわけじゃなくて何度かはレースのシーンもあるが、クライマックスでさえ盛り上がらない。
せっかく本物のNASCARドライバーが何人もゲスト出演しているのに、完全に無駄遣いとなっている。

ストローカーのクビになって契約から解消されようとする作戦の数々は、「それでクビになると、どうして思ったのか」と疑問を抱くモノばかりだ。
まず、ニワトリのキグルミ姿でサーキットに登場するのは、立派な宣伝活動になっている。トークルは「怒らせるつもりだから、わざと喜ぶ芝居をした」とアーノルドに言うけど、そもそも怒る理由なんて何も無いよ。
オープン・セレモニーに向かうストローカーがトークルの車を撒いて怒らせようと目論むのも、まるで意味が無いでしょ。ちゃんと店には向かっているんだから、後から追い付けば済むことだ。
だから、トークルがアーノルドに「追い付かないとクビだぞ」と言ってスピードを上げさせるのも意味不明。

ストローカーはドックと再会し、駆け出しの俳優だと聞く。だが、そこでは作戦を提案したりすることも無いまま別れ、ペンブルックを口説くシーンになる。ペンブルックは眠り込んでしまい、翌朝になってストローカーは彼女と話す。ドックに電話を掛けた彼は「協力してほしい」と言うが、ペンブルックの涙を見て誤解したラッグスがパンチを浴びせる。
こうやってザックリと流れを書いただけでも何となく分かるかもしれないが、明らかにゴチャゴチャしてるでしょ。
ストローカーが電話している時に誤解したラッグスが殴る手順なんて、全く要らない。そもそも、ドックと再会して俳優だと聞いた時点で、ストローカーが作戦を思い付いて協力を要請する流れにしちゃえばいい。
なぜペンブルックをモノにしようとした翌朝になってから電話で協力を要請するのか、タイミングとして変だし。

序盤でストローカーとの契約を打ち切ったキャティーは、その後は全く登場しない。ペンブルックは酒を飲んだことも無い純潔の女性という設定だが、そんな風には全く見えない。自分勝手な言動を繰り返していたストローカーは、それを反省したり態度を改めたりすることも無いままで「契約破棄の作戦は成功し、最終戦にも優勝する」というハッピーエンドが待ち受ける。
色んな設定が雑だったり、色んなことを放り出したりしているのだが、序盤から「繊細さや丁寧さなんて皆無だな」ってことを明確に感じさせる出来栄えだったので、ある意味では予想通りの結末だ。
なので、「期待外れ」とか「裏切られた」という落胆は無い。
「序盤で駄作だと予想していたら、その通りだった」というだけのことだ。

(観賞日:2021年3月5日)


第4回ゴールデン・ラズベリー賞(1983年)

受賞:最低助演男優賞[ジム・ネイバース]

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ハル・ニーダム]
ノミネート:最低主演女優賞[ロニ・アンダーソン]
ノミネート:最低新人賞[ロニ・アンダーソン]

 

*ポンコツ映画愛護協会