『素顔のままで』:1996、アメリカ

エリン・グラントは夫ダレルがヤク中で泥棒だったために、FBIの秘書の仕事を失った。その上、ダレルが警察の風紀係の情報屋をしていたことから、娘アンジェラの親権を争う裁判で負けてしまう。エリンは裁判費用を稼ぐためにストリッパーになった。
エリンの出演するストリップバーに、下院議員のデヴィッド・ディルベックがお忍びでやって来た。ディルベックはエリンの踊る姿を見て、夢中になってしまう。酔っ払った男がエリンに抱き付いたのを見た彼は、舞台に上がって男を殴り倒した。
エリンにはジェリー・キリアンという熱烈なファンがいた。彼はエリンに、自分ならアンジェラを取り返してあげられると告げる。彼はストリップバーに来ていたことをネタにディルベックを脅迫し、判事に圧力を掛けるよう迫る。だが、ジェリーは遺体で発見される…。

監督&脚本はアンドリュー・バーグマン、原作はカール・ハイアセン、製作はマイク・ロベル、製作協力はダネーン・ラグロン・コンロイ、製作総指揮はジョゼフ・ハートウィック、撮影はスティーヴン・ゴールドブラット、編集はアン・V・コーツ、美術はメル・ボーン、衣装はアルバート・ウォルスキー、美術はメル・ボーン、音楽はハワード・ショア、音楽製作総指揮はジョエル・シル。
主演はデミ・ムーア、共演はバート・レイノルズ、アーマンド・アサンテ、ヴィング・レイムズ、ロバート・パトリック、ポール・ギルフォイル、ジェリー・グレイソン、ロバート・スタントン、スチュアート・パンキン、ルーマー・ウィリス、ゲイリー・バサラーダ、シオバン・ファロン、キンバリー・フリン、パンドラ・ピークス、レナ・リフェル、ディナ・スパイビー、パショーン・ウィルソン、バーバラ・アリン・ウッズ他。


デミ・ムーアが主演したコメディー・タッチのサスペンス。邦題は『素顔のままで』だが、どこがどのように「素顔のまま」なのかは不明。
ディルベックをバート・レイノルズ、ガルシア刑事をアーマンド・アサンテ、用心棒シャドをヴィング・レイムズ、ダレルをロバート・パトリックが演じている。

エリンの娘アンジェラを演じているのは、デミ・ムーアとブルース・ウィリスの間に生まれた実の娘、ルーマー・ウィリスだ。
劇中、エリンのストリップを見たアンジェラが「きれいだった」と言うシーンがある。普通の娘ならヘンかもしれないが、何しろデミ・ムーアの娘なので、当然の反応なのだろう。

FBIの秘書だった女がストリッパーになるという設定の時点で、既にバカだ。
ということは、たぶん原作がバカなんだろう。
ストリップ通いを見られたからという理由で、殺人を犯すのもバカだ。中途半端にコメディタッチなのも、笑えるというよりはバカっぽいとしか感じない。

出てくる男は、みんなバカだ。
ディルベックは注意されても女遊びを止められず、色気に誘われてバカを見る。ダレルはヤク中のラリパッパ状態で、マトモな判断能力がゼロ。店の用心棒シャドはヨーグルトにゴキブリを仕込んで、ファストフードの店から金を脅し取ろうとする。

全てがバカに染まる中で、デミ・ムーアだけが燦然と輝いている。ボンクラな男達に比べて、彼女は偉大で強烈だ。それまで全く状況が変化しなかった物語も、終盤になって彼女が銃による脅迫や色気による誘惑を行うことで、一気に解決へと持っていく。

デミ・ムーアという女性は、自分をどのようにアピールすればいいのかということを非常に良く分かっている。それは裸になるということだ。つまらないシナリオよりも自分の裸の方が、遥かに観客を呼び寄せる力があることを、彼女は知っているのだ。

ヌードモデルだった彼女にとって、裸になることは自己表現のためのベストな方法だ。今作品で彼女は、大金を掛けて改造した肉体を見せ付ける。
デミ・ムーアは、裸になることで男に媚びるのではなく、「どうだい、私の裸を見てごらんよ」と、挑戦状を叩き付けているのである。

彼女は鍛え上げた肉体から、サディスティックなオーラを発している。そのオーラには、軟弱な男達を一瞬にして下僕にしてしまうほどのパワーがある。
こんなクズ映画でも堂々とした態度を崩さない、ゴージャスでストロングでダイナミックなデミ・ムーアには、潔く降参するしかない。


第17回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低作品賞
受賞:最低監督賞[アンドリュー・バーグマン]
受賞:最低脚本賞
受賞:最低主演女優賞[デミ・ムーア]
<*『陪審員』『素顔のままで』の2作での受賞>
受賞:最低スクリーン・カップル賞[デミ・ムーア&バート・レイノルズ]
受賞:最低オリジナル歌曲賞「Pussy, Pussy, Pussy (Whose Kitty Cat Are You?)」

ノミネート:最低助演男優賞[バート・レイノルズ]

第20回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:1990年代最低作品賞


第19回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の作品】部門

ノミネート:【最悪の主演女優】部門[デミ・ムーア]
<*『陪審員』『素顔のままで』の2作でのノミネート>
ノミネート:【最悪の助演男優】部門[バート・レイノルズ]

 

*ポンコツ映画愛護協会