『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』:2002、アメリカ
独立した地方自治を主張する分離派が通商連合と手を組んで勢力を拡大し、銀河共和国は危機を迎えていた。事態を危惧した元老院の最高議長パルパティーンは、ジェダイ騎士団より強い力を持つ共和国軍の創設を考えていた。惑星ナブーの女王を退位して元老院議員となったパドメ・アミダラは、共和国軍の創設に反対していた。
銀河共和国の首都惑星コルサントに降り立ったパドメは、何者かに命を狙われた。パドメを狙う黒幕として、分離派を主導する元ジェダイ騎士のドゥークー伯爵の名前が挙がった。だが、マスター・ウインドゥは元ジェダイ騎士の犯行を否定する。ジェダイの騎士オビ=ワン・ケノービと弟子のアナキン・スカイウォーカーは、パルパティーンからパドメの護衛を命じられた。
パドメと10年ぶりの再会を果たしたアナキンは、彼女を狙った女傭兵ザム・ウェセルを倒そうとする。だが、ウェセルは別の暗殺者によって、口封じのために殺された。評議会はパドメの安全を確保するため、アナキンを護衛に付けてナブーへ帰すことにした。オビ=ワンはウェセルの暗殺に使用された毒矢を調べるが、製造地のカミーノはジェダイ公文書館の記録に掲載されていなかった。
マスター・ヨーダの生徒達は、データが改変されている可能性を示唆した。データの改変は、ジェダイの騎士でなければ不可能だ。カミーノへ向かったオビ=ワンは首相のラマ・スーに会い、彼が10年前に死んだジェダイ騎士サイフォ・ディアスの依頼を受け、共和国のためのクローン兵士を製造していることを知る。
クローン兵士のモデルとなったのは、賞金稼ぎジャンゴ・フェットだった。彼はモデルになる条件として自分用のクローンを製造させ、誕生したボバ・フェットを息子として育てていた。オビ=ワンはウェセル暗殺がジャンゴの仕業だと確信し、彼を追って惑星ジオノーシスへ向かう。そこには分離派の地下工場があり、バトルドロイドが生産されていた。評議会に連絡しようとしたオビ=ワンはドゥークー伯爵に捕まり、監禁されてしまった。
一方、今は女王ジャミラが統治するナブーに到着したアナキンは、パドメへの恋心を露にする。しかしジェダイ騎士にとって恋愛が御法度だと知っているパドメは、自分の立場もあって戸惑いを覚える。母シミが危険な目に遭う悪夢を見たアナキンは、故郷タトゥイーンへ向かうことにした。パドメは、アナキンに同行することにした。
タトゥイーンに到着したアナキンは、ジャンク屋のワトーからシミがラーズ家に身請けされたことを聞く。ラーズ家に出向いたアナキンは、C−3PO、ラーズ家の主人クリーグ、息子オーウェン、その恋人ベルーらと会った。クリーグ達によれば、シミはタスケン・レイダーによって連れ去られたらしい。
アナキンはタスケン・レイダーのキャンプへ向かうが、瀕死の状態となっていたシミは彼の目の前で息を引き取った。怒りに燃えたアナキンは、タスケン・レイダー達を皆殺しにした。アナキンはオビ=ワンからの連絡を知り、評議会に伝えた。アナキンはタトゥイーンで待機するよう命じられるが、パドメがオビ=ワン救出に向かうと言い出したため、ジオノーシスへ同行する。
評議会では、パドメの代理ジャー・ジャー・ビンクスがパルパティーンに全権委任を呼びかける演説を行った。満場一致で全権を委任されたパルパティーンは、共和国軍の創設を決定する。メイス・ウィンドゥらジェダイ騎士団はジオノーシスへ向かい、ヨーダはクローン軍団を調査するためカミーノへと向かった…。監督&原案&製作総指揮はジョージ・ルーカス、脚本はジョージ・ルーカス&ジョナサン・ヘイルズ、製作はリック・マッカラム、撮影はデヴィッド・タッターサル、編集はベン・バート、美術はギャヴィン・ボクエット、衣装はトリーシャ・ビッガー、音楽はジョン・ウィリアムズ。
出演はユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、ヘイデン・クリステンセン、クリストファー・リー、サミュエル・L・ジャクソン、イアン・マクダーミッド、ペルニラ・アウグスト、テムエラ・モリソン、ダニエル・ローガン、ジミー・スミッツ、ジャック・トンプソン、リーアナ・ウォルスマン、ローズ・バーン、オリヴァー・フォード・デイヴィス他。
“スター・ウォーズ”シリーズのクラシック3部作(『スター・ウォーズ』『帝国の逆襲』『ジェダイの復讐』)に繋がる3部作の2作目。前作『ファントム・メナス』からは10年後の世界が舞台となっている。
成長したアナキン役にはレオナルド・ディカプリオやライアン・フィリップ、ジョナサン・ブランディスらが候補となったが、ヘイデン・クリステンセンが抜擢された。
オビ=ワン役のユアン・マクレガー、パドメ役のナタリー・ポートマン、メイス・ウィンドゥ役のサミュエル・L・ジャクソン、パルパティーン役のイアン・マクダーミッド、シミ役のペルニラ・アウグストといった面々は、前作から引き続いての出演。
他に、ドゥークーをクリストファー・リー、ジャンゴをテムエラ・モリソン、ウェセルをリーアナ・ウォルスマン、元老院議員ベイル・オーガナをジミー・スミッツ、ジャミラをアイーシャー・ダルカールが演じている。クラシック3部作を観賞している人なら、この作品を見て「あのキャラが登場する」という楽しみ方が出来るだろう。
オーウェン・ラーズとベルーは、後にルーク・スカイウォーカーの育ての親となる。
ボバ・フェットは成長して賞金稼ぎとなり、ルーク達と関わることになる。
ベイル・オーガナは、後にパドメの娘レイアを養女にする人物だ。ルーカスは、そもそもエピソード2でメインキャラに据えようとしていたジャー・ジャー・ビンクスがエピソード1で大不評を買ったことを逆手に取って、彼に「戦争を引き起こすきっかけを作った大馬鹿者」としての役目を負わせている。
既に嫌われ者なので、ついでに罪を被せてもいいだろうってことか。
出番が少ないのにウザいって、すげえなジャー・ジャー・ビンクス。ジェダイの騎士は恋愛を禁じられているはずなのに、アナキンの心には全くストッパーが掛かっていない(勝手な解釈で「恋愛は奨励されている」と言い張る)。
あまりに直情的で短絡的で、それが「純真な若者」ではなく「阿呆で浅薄なガキ」に映る。反対して引き裂こうとする周囲の動きも、全く見られない。
何しろアナキンが単なる自分勝手でバカな甘ちゃんにしか見えないので、共感することは難しい。
これからダース・ベイダーになることを考えれば、共感できないのは構わないのかもしれない(ホントはダメだと思うけど)。
ただ、偉大で聡明な騎士が苦悩や葛藤の末に暗黒面に支配されて悪の帝王ダース・ベイダーになるというよりも、浅はかで自信過剰なガキンチョが、薄っぺらいガキのままチンピラの親分になっちゃうような気がしてならないが。私はジョージ・ルーカスを、「優秀なプロデューサーではあるが、優秀な演出家&脚本家ではない」と確信している(それにしたって旧3部作より劣化している気がするが)。
この映画でも、アナキンが後に悪に走るという筋書きに説得力を持たせるためにはカスケン・レイダー皆殺しのシーンは丹念に描写すべきなのに、そこをバッサリとカットしてしまうような人だ。
だからロマンスが陳腐になっていても、ガッカリはしない。
恋愛劇があると知った段階で、「無理なことに手を出すなよルーカス」と思っていたので、あらかじめ予想していたことが現実になったというだけである。
ただ、オビ=ワンと別れた後のアナキンとパドメの物語を活劇主体にして、その中で恋愛の要素を絡めて行くという形にしておけば良かったのに、完全に恋愛劇に特化してしまったのが大きな失敗だったとは思うけれど。どうやら旧3部作との辻褄合わせに神経を使いすぎたようで、この作品単体の中での整合性には全く無頓着になっている。
だから、多くの登場人物が不可思議な行動を取っている。
聡明なはずのオビ=ワンは、子供達に言われるまで公文書館のデータ改変の可能性を全く思い付かない。
カスケン・レイダーは、シミを連れ去ったのに奴隷にするわけでもなく、抹殺するわけでもなく、死ぬ寸前のギリギリの所で止めておく。何がしたかったんだか、目的は全く不明だ。パドメはアナキンとの恋愛への戸惑いを口にしている一方で、必要以上に露出度の高い衣装に着替えている。明らかにアナキンを誘っているとしか思えない。
パドメはアナキンの恋心に戸惑っていたはずなのに、その直後には彼に同行してタトゥイーンへ行く。でも、アナキンが母親探しに出掛けると、今度は付いて行かない。その行動は支離滅裂に見える。
一方のアナキンはパドメにゾッコンLOVEの状態だったはずが、終盤に彼女が船から落下した時にオビ=ワンから「感情よりも義務を選べ。パドメがお前の立場ならどうすると思う?」と言われて、簡単に説得されてしまうのはどうなのよ。あれだけパドメにゾッコンLOVE(しつこい)だったんだから、そこはオビ=ワンに反抗して助けに行くべきじゃないのか。アナキンはシミの死に直面し、「母を救えなかったのは、自分に全能の力が無かったからだ。天才の俺様が未だに全能の力を得られていないのは、オビ=ワンが自分を一人前と認めず抑え付けているからだ。だから母を救えなかったのは、全てオビ=ワンが悪い」という、ワケの分からない論理に辿り着いてしまう。
どういう思考回路だ、それは。
で、そんなムリな論理でオビ=ワンへの憎しみを語らせたぐらいだから、その後でアナキンが評議会からタトゥイーンでの待機を命令された時、オビ=ワン救出へ向かわないのは憎しみがあるせいだろうと考える。
ところがパドメが「私はオビ=ワン救出へ向かう。護衛なら付いて来るべき」と言うと、笑顔で応じるのである。
ワケが分からない。
支離滅裂だな、アナキンよ。次に繋げていくためには、どうしても人間ドラマを軸にしないとマズいので中心に据えているのだが、ルーカスは人間ドラマの演出でエモーションを喚起せずに活劇シーンでケレン味を発揮することに精力を注ぎ込んでいるので、バランスが悪い。
結局、この映画の最大の問題点は、旧3部作との辻褄合わせやエピソード3への繋ぎという役割を負わされたため、おバカなB級SF活劇に徹することが出来なかったということにあると思う。
CGヨーダのチャンバラとか、部分的にはバカっぽくて面白い要素が色々とあるんだが。
第23回ゴールデン・ラズベリー賞
受賞:最低脚本賞
受賞:最低助演男優賞[ヘイデン・クリステンセン]ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低リメイク・続編賞
ノミネート:最低監督賞[ジョージ・ルーカス]
ノミネート:最低助演女優賞[ナタリー・ポートマン]
ノミネート:最低スクリーンカップル賞[ヘイデン・クリステンセン&ナタリー・ポートマン]
第25回スティンカーズ最悪映画賞
受賞:【最悪の助演男優】部門[ヘイデン・クリステンセン]
ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門
ノミネート:【最も苛立たしい非人間キャラクター】部門[ジャー・ジャー・ビンクス]