『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』:1999、アメリカ

遠い昔、銀河共和国では辺境の星系との交易ルートへの課税問題を巡り、混乱が発生していた。通商連合は武装艦隊によって、惑星ナブーを武力閉鎖してしまう。しかしナブーの若き女王アミダラは、連合の不当な要求を拒否した。
元老院最高議長パローラムは交渉のため、ジェダイの騎士クワイ=ガン・ジンと弟子のオビ=ワン・ケノービを派遣した。だが通商連合の支配者ダース・シディアスは、総督ヌート・ガンレイにクワイ=ガン・ジンとオビ=ワン・ケノービの抹殺を命令する。
攻撃を逃れてナブーに着陸したクワイ=ガン・ジンとオビ=ワン・ケノービは、グンガン族のジャー・ジャー・ビンクスを助けた。グンガン族を追放されていたジャー・ジャー・ビンクスと共に首都シードに向かった2人は、女王アミダラと廷臣達を救出する。
アミダラは共和国元老院に訴え出るため、クワイ=ガン・ジン達と共に銀河共和国の首都コルサントに向かうことにした。通商連合の攻撃によって宇宙船が損傷したため、一行は辺境の惑星タトゥイーンのモス・エスパという町に着陸する。
アナキン・スカイウォーカーという少年と出会ったクワイ=ガン・ジンは、彼がフォースの力を持っていることに気付く。ポッドレーサーによる賭けレースで優勝したアナキンは奴隷の身から解放され、クワイ=ガン・ジン達と共に旅立つことにした。
シスの暗黒卿ダース・モールに襲撃された一行は、脱出してコルサントへ到着する。バローラムの不信任投票が行われ、元老院議員パルパティーンが新しい議長となった。グンガン族のボス・ナスと同盟を結んだ一行は、通商連合との戦いに挑む…。

監督&脚本&製作総指揮はジョージ・ルーカス、製作はリック・マッカラム、撮影はデヴィッド・タッターソル、編集はポール・マーティン・スミス&ベン・バート、美術はギャヴィン・ボケット、衣装はトリシャ・ビガー、視覚効果監修はジョン・ノール&デニス・ミューレン&スコット・スクワイアーズ、アニメーション監督はロブ・コールマン、音楽はジョン・ウィリアムズ。
出演はリーアム・ニーソン、ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、ジェイク・ロイド、ペルニラ・アウグスト、フランク・オズ、テレンス・スタンプ、イアン・マクダーミド、オリヴァー・フォード・デイヴィス、ヒュー・クオーシー、アーメッド・ベスト、アンソニー・ダニエルズ、ケニー・ベイカー、ブライアン・ブレッスド、アンドリュー・セコンブ、レイ・パーク、サミュエル・L・ジャクソン他。


“スター・ウォーズ”シリーズのクラシック3部作(『スター・ウォーズ』『帝国の逆襲』『ジェダイの復讐』)に繋がる3部作の1作目。
クワイ=ガン・ジンをリーアム・ニーソン、オビ=ワン・ケノービをユアン・マクレガー、アミダラをナタリー・ポートマンが演じている。

このエピソード1がクラシック3部作に繋がっていくことは、言うまでも無い事実だ。
ということは、観客は作品の展開について、予想することが容易である。
例えば「オビ=ワンがアナキンを育てる」ということを観客は知っているので、だからクワイ=ガン・ジンが死ぬのだろうということは、簡単に予想できるわけだ。

どうせ物語の道筋の大半はネタバレしているようなモノなのだ。
だから、無理に予想外の展開を見せる必要性など無い。
そういうことを考えて、例えば元老院議員パルパティーンが後の皇帝であることも、変に隠そうとせず、わざと分かりやすい状態にしている。
侍女バドメの正体がアミダラだということはバレバレだが、それを重要なポイントにしている辺りからも、いかに物語にウェイトを置いていないかが分かるというものだ。
どうせ3部作の1作目なのだし、それほどドラマを盛り上げる必要は無いのだ。

アナキンにフォースの力があることを、クワイ=ガン・ジンは知る。
だが、観客にはアナキンの特殊能力が見えてこない。
ストーリーの中で、アナキンの特殊な能力を垣間見せることは可能なはずだ。
だが、そういった配慮は全く行われない。

しかし、クワイ=ガン・ジンがアナキンを連れて行かないことには、クラシック3部作との辻褄が合わなくなってくる。それは非常に困った問題である。
辻褄を合わせるために、物語は犠牲にされないければいけない。
というか、辻褄合わせだけで精一杯で、物語を面白くする余裕など無い。

クライマックスもキャラクターが分散してしまうこともあって、盛り上がりに欠ける。
ライトセイバーによるチャンバラの迫力も感じない。
ダース・モールも大して活躍しない内に退治されてしまう。
やはり、シナリオには大きなマイナスがある。

だからこそ、この作品は物語のマイナスを、たっぷりのCGと、そしてジャー・ジャー・ビンクスのドタバタぶりによってカバーしようと試みている。
ジャー・ジャー・ビンクスを目立たせたのは、そういう意味があるのだろう。
つまり、作品が失敗した場合の責任を、彼に押し付けるための作戦なのだろう。

この作品は、中途半端に物語に彩りを加えようとはしない。
最初から物語の厚みを放棄して、CGで勝負しているのだ。
例えば、必然性に乏しいポッド・レースのシーンに長い時間を割いている。
これは、CGによるアクションを見せるための演出なのだ。
しかし肝心のCGにしても、「1999年としては高水準の技術力を見せたのかもしれないが、心が沸き立つようなシロモノではない」という印象になる。
既に他の幾つかの作品において、ハイレベルなCG技術は使われている。
よって、初めての衝撃は無いのである。

ただし、クラシック3部作に登場したキャラクターを見つけて、どういった形で登場するのか、どういう過去があったのかを楽しむという観賞方法はあるだろう。
つまり、これはクラシック3部作を観賞した多くの人々に対して向けられた、ある意味ではサービスのようなフィルムだと思えばいいのだ。
「スター・ウォーズだから」ということを強く意識すれば、きっと楽しめることだろう。


第20回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低助演男優賞[ジャー・ジャー・ビンクス(声優はアーメッド・ベスト)]

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ジョージ・ルーカス]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低助演男優賞[ジェイク・ロイド]
ノミネート:最低助演女優賞[ソフィア・コッポラ]
ノミネート:最低最低スクリーンカップル賞[ジェイク・ロイド&ナタリー・ポートマン]
ノミネート:1990年代最低新人賞[ジャー・ジャー・ビンクス(声優はアーメッド・ベスト)]


第22回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の助演男優】部門[アーメッド・ベストが演じたジャー・ジャー・ビンクス]
受賞:【最悪の子役】部門[ジェイク・ロイド]
受賞:【最も無様なコメディ・リリーフ】部門[苛立たしい仲間(アーメッド・ベストが演じたジャー・ジャー・ビンクス)]
受賞:【最悪のデヴュー】部門[アーメッド・ベストが演じたジャー・ジャー・ビンクス]

ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門
ノミネート:【最悪の続編・前編】部門
ノミネート:【最大の期待外れ(誇大な宣伝に応えない作品)】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会