『スター・トレック5/新たなる未知へ』:1989、アメリカ

宇宙歴8454.1。エンタープライズ号の修理の間、ジェームズ・T・カーク船長を始めとするクルー達は、それぞれ地球での休暇を自由に楽しんでいた。そこへ緊急連絡が入った。宇宙中立地帯である惑星ニンバス3で反乱が起こったというのだ。
惑星を管轄するニンバス3の代表タルボット、ロミュラ人の代表キャサリン、クリンゴン領事コードの3人が、反乱集団の捕虜となった。エンタープライズ号は事態の収拾のために発進した。ニンバス3に降り立ったカーク達だが、犯人集団に捕らえられてしまう。
反乱集団を指揮していたのは、ミスター・スポックの異母兄弟であるサイボックだった。彼の目的は、禁じられた知識を得るために宇宙船を手に入れることだったのだ。サイボックは他人の心を操る能力を使ってクルー達を味方に引き込み、禁断の惑星シャカリーへと向かうのだが…。

監督はウイリアム・シャトナー、創作&製作顧問はジーン・ロッデンベリー、原案はウイリアム・シャトナー&ハーブ・ベネット&デヴィッド・ローリー、脚本はデヴィッド・ローリー、製作はハーヴ・ベネット、製作総指揮はラルフ・ウィンター、撮影はアンドリュー・ラズロ、編集はピーター・バーガー、美術はハーマン・ジマーマン、衣装はニーロ・ローディス=ジャメロ、視覚効果はブラン・フェレン、視覚効果コーディネーターはエリック・エンジェルソン、特殊メイクアップはケニー・マイヤース、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
出演はウイリアム・シャトナー、レナード・ニモイ、デフォレスト・ケリー、ジェームズ・ドゥーハン、ウォルター・ケーニッグ、ニシェス・ニコルス、ジョージ・タケイ、デヴィッド・ワーナー、ローレンス・ラッキンビル、チャールス・クーパー、シンシア・グー、トッド・ブライアント、スパイス・ウィリアムス、レックス・ホルマン、ジョージ・マードック、ベヴァリー・ハート、スティーヴ・サスカインド、ハーヴ・ベネット、シンシア・ブライズ、ビル・クイン、メラニー・シャトナー他。


カークを演じるウィリアム・シャトナーが初監督に挑戦したシリーズ第5作。妙に宗教チックな雰囲気が漂う作品。シリーズ最終作となるはずだったが、実際は第6作目で完結することになった。
たぶん、この作品が散々な出来映えだったこととは無関係だと思う。

カーク&スポック&マッコイの絆、スポックとサイボックの関係、カークを狙うクリンゴン人クラー、神の存在など、多くの要素を詰め込もうとしたが、ポロポロとこぼれ落ちていってしまった。
それらの要素は絡み合うことも無く、また完全に消化されることも無い。

今回のエンタープライズ号は、転送装置が故障で使えず、エレベーターの扉はちゃんと開かず、スクリーンもまともに映らず、椅子はギシギシきしみ、記録装置も役立たず。いくら整備中だったとはいえ、あまりにボロボロすぎ。
しかも、そんなポンコツ宇宙船を、わざわざ事件現場に向かわせる連邦司令部の意図が不明。他に宇宙船はあっただろうに。今作品、登場人物が中身の見えない行動をするし、御都合主義の展開でストーリーを進めようとする。

開拓に失敗した不毛の惑星で、捕虜を取ってまで狙うサイボックの目的は何か。その理由は、「無限の知識を得るため」。テロ行為の理由付けとしては、あまりに弱すぎる。そもそも、何の前触れもなかったのに、いきなりスポックの兄弟を登場させるのは反則でしょ。

敵の注意を引くため、砂漠の真ん中でアラビアン・ダンスを披露するウフーラ。そんな行為でノコノコ近付いてくる敵も含めてバカ丸出し。監禁されたカーク達を救出したスコットが艦内に頭をぶつけて気絶するなど、TPOを考えないギャグの連続に失笑。

カーク達に攻撃されて「血は流したくなかったのに」と言うサイボック。テロ行為を始めておいて、血は流したくないってのは虫が良すぎる話だ。サイボックは他人の心を操る能力でエンタープライズ号のクルーを味方に引き入れていくが、なぜかスコットには使わない。
サイボックがマッコイやスポックを洗脳しようとする時に彼らが見る幻覚に、長々と無駄な時間を割いたりする。で、彼らはカークとの絆が強いために洗脳されないという展開があるが、3人の友情を描き出そうとする部分がどうにも浅い。

カークはサイボックに立ち向かうのが筋なのに、終盤ではサイボックの目指す禁断の惑星シャカリーに降りることを了承する。
で、サイボックはシャカリーで無限の知識を得たとして、それで何がどうなるんだろうか。彼が目的を達成した結果、どうなるのかが全く見えない。

終盤でカークが「宇宙はきっと心の中だ」と言う台詞があるが、だったらアンタ達が宇宙でさんざん繰り広げてきた冒険は無意味ってことになるぞ。スタートレックのシリーズ全体を否定するような発言じゃないのか、それって。

クライマックスの展開もポンコツ。サイボックが神様だと思っていたのは単なる悪党で、しかもあっさり退治されてしまう。忘れた頃になってカークを狙うクリンゴン人が登場するが、上官に怒られて何も攻撃できないままに謝ってしまう。
シオシオのパーですな。


第10回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低作品賞
受賞:最低監督賞[ウィリアム・シャトナー]
受賞:最低主演男優賞[ウィリアム・シャトナー]

ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低助演男優賞[デフォレスト・ケリー]

第10回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:1980年代最低作品賞

 

*ポンコツ映画愛護協会