『スパイキッズ3−D:ゲームオーバー』:2003、アメリカ

OSS(戦略事務局)のスパイ・キッズだったジュニ・コルテスは、組織を離れて私立探偵となっていた。そんなある日、OSSのトップから大統領に就任したデヴリンが、ジュニに連絡してきた。ジュニの姉カルメンが姿を消したというのだ。OSS本部に出向いたジュニは、研究員のダナゴンと彼の妻チェスカから詳しい話を聞かされる。
カルメンは、トイメイカーが作った新しいオンライン・ゲーム「ゲームオーバー」を止める任務を担当していた。トイメイカーはゲームの世界に子供達を誘い込み、その心を支配しようと企んでいたのだ。ゲームの世界に飛び込んだカルメンは、トイメイカーに囚われてしまった。ジュニは、12時間以内にカルメンを救出し、ゲームを止めるよう任務を請け負った。
ゲームの世界に飛び込んだジュニは、ベータ版のテスターとして参加している3人の少年アーノルド、レッズ、フランシスに会った。彼らの妨害を受けたジュニは、助っ人として祖父を呼び寄せた。だが、祖父は蝶を追い掛けて姿を消してしまう。アリーナに迷い込んだジュニは、ロボコンでディアドラという少女と戦わされるが、逆転で勝利を収めた。
専用のボディスーツをプレゼントされたジュニは、アーノルドたちと再会する。ジュニは専用スーツを着用していたことで、ゲーマーを勝利に導く存在「ザ・ガイ」と勘違いされる。それを確認するためのメガレースを挑まれたジュニは、戻ってきた祖父の助けを得て勝利した。ジュニはディアドラの持っていた攻略マップを使用し、アーノルドたちと共に先へと進む…。

監督&脚本&撮影&編集はロバート・ロドリゲス、製作はロバート・ロドリゲス&エリザベス・アヴェラン、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン、衣装はニーナ・プロクター、音楽はレベッカ・ロドリゲス&ロバート・ロドリゲス。
出演はアントニオ・バンデラス、カーラ・グギーノ、アレクサ・ヴェガ、ダリル・サバラ、リカルド・モンタルバン、ホランド・テイラー、シルヴェスター・スタローン、マイク・ジャッジ、サルマ・ハエック、マット・オリアリー、エミリー・オスメント、ライアン・ジェームズ・ピンクストン、ロベルト・ヴィトー、ボビー・エドナー、コートニー・ジンズ他。


シリーズ第3作にして最終作。
カルメン役のアレクサ・ヴェガ、ジュニ役のダリル・サバラ、祖父役のリカルド・モンタルバン、ダナゴン役のマイク・ジャッジは、前作から引き続いての出演。
新しく登場するのは、チェスカ役のサルマ・ハエック、ディミトラ役のコートニー・ジンズ、ザ・ガイ役のイライジャ・ウッドなど。
シルヴェスター・スタローンは、トイメイカー役で出演。珍しく悪役を演じている。トイメイカーとしての姿だけでなく、ゲーム発売を知らせるアナウンサーとしてメガネ&スーツ姿になったり、トイメイカーが作り出したヴァーチャルな指南役3名として仙人っぽい姿、中世の軍人っぽい姿、博士っぽい姿になったりしている。

今回は、前2作の主要キャストが総登場する。祖父役のリカルド・モンタルバンと、ダナゴン役のマイク・ジャッジは、その中では出番が多い方だ。ダナゴンの娘ガーティー役のエミリー・オスメントには前半と後半、2度の出番がある。だが、それ以外の大半の面々は、終盤の同一シーンに「単なる顔見世」という程度でチラッと出てくる程度の扱い(デヴリン役のジョージ・クルーニーは序盤の1回)。
まあシリーズのファンに向けたサービスって感じかな。
顔見世サービスの面々を列挙すると、ジュニの両親役のアントニオ・バンデラスとカーラ・グギーノ、祖母役のホランド・テイラー、ダナゴンの息子役のマット・オリアリー、ジュニ達の警護担当フェリックス役のチーチ・マリン、叔父マチェッティー役のダニー・トレホ、1作目の悪役フループ役のアラン・カミングとミニオン役のトニー・シャローブ、2作目で変な動物を作っていたロメロ役のスティーヴ・ブシェーミ、テーマパーク経営者ディンキー役のビル・パクストンといった顔触れ。

今回はタイトルが示す通り、3D映画になっている。つまり、立体映像にしてあるってことだ。
3D映画というのは、とにかく飛び出す映像作りばかりに囚われてしまい、ストーリーが二の次になって失敗するパターンに陥りがちだ。
『13日の金曜日PART3』しかり、『ジョーズ3』しかり。
それにしても、パート3だから3Dという安易なアイデアを、2003年にもなって使うとは思わなかった。

で、この作品も、3D映像を見せることだけで満足してしまったのか、それだけで精一杯だったのか、話はものすげえ薄い。そのマイナスを、前述したオールスター総出演によって補おうとしている感じ。
しかし、その懐かしい面々には見せ場が用意されているわけじゃなくて、ホントに「ただ出てくるだけ」の扱いなのよね。それだけではキツいだろう。
そして、オールスター総登場をやらかしたことで、この作品の大きな問題点が露呈してしまう。
それは、今回の悪党であるトイメイカーに、全く魅力が無いということだ。
ハッキリ言って、このシリーズは1作目のフループ&ミニオンのコンビがダントツの存在感を示していた。2作目、3作目と、悪役の魅力は比較にならないほど落ちている。

『スパイ・キッズ』シリーズのはずだが、スパイ・グッズを駆使して活躍するという面白さは全く無い。ジュニがゲームの世界にスパイ・グッズを持ち込むことは無いからだ。
そもそも、ゲーム世界に入り込む話にしたことで、スパイという設定の必要性が無くなってしまった。主人公がスパイでなくても、この話なら余裕で成立してしまうんじゃないか。
前作からキッズ・ムーヴィーとしての方向性は示されていたが、今回はさらに顕著になっている。両親は前作以上に出番が減っているし、かなり大人っぽく成長したからという判断なのか、カルメンでさえ脇に追いやられている。ジュニを主人公に据え、その周囲も少年少女で固めて、完全なるキッズ・アクションに仕立て上げている。
ファミリーの物語としての色合いは、すっかり薄まっている。

ジュニがゲームの世界に入る際、ダナゴンから専用メガネを掛けるよう指示されている。それは、この映画の観客が3D映像を見るために着用する立体メガネに似ている。観客もジュニと同じようにゲーム世界に入り込む、と感じさせるのが狙いだろう。
つまり、これは完全にアミューズメント・パークの3Dアトラクションと同じなのだ。
そんな風に最初から割り切って観賞すれば、充分に楽しむことが出来るかもしれない。
保証はしないし、私は間違いなく無理だけどさ。

さて、完全に「ゲームをステージごとにクリアしていくアトラクション」として進んでいく映画は、主役のはずのジュニがほとんど活躍しないまま、最後になって「勝ち負けは問題ではない」ということで、悪党との対決は完全に腰砕けで終わる。
子供向けだからという配慮なのかもしれないが、それは「みんな一緒にゴールさせて順位を付けない運動会」と同じぐらい間違ってると思うぞ。


第24回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低助演男優賞[シルヴェスター・スタローン(5役を演じて全てダメ!)]


第26回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の助演男優】部門[シルヴェスター・スタローン]

ノミネート:【最悪の続編】部門
ノミネート:【最悪のグループ】部門[シルヴェター・スタローン&彼の多重人格]

ノミネート:【ザ・スペンサー・ブレスリン・アワード(子役の最悪な芝居)】部門[ダリル・サバラ]
ノミネート:【チンケな“特別の”特殊効果】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会