『嵐の中で輝いて』:1992、アメリカ

1940年、アメリカのニューヨーク。父親がユダヤ人のリンダ・フォスはドイツ語会話の能力を買われ、エド・リーランドの弁護士事務所で彼の秘書として働くことになった。リンダとエドは、互いに惹かれ合うようになっていった。
第2次世界大戦が勃発し、アメリカも戦争に参加した。エドは陸軍大佐としてドイツの情報収集の指揮を取っていたが、ドイツ将校ドレッシャーの屋敷に潜入させていたドレッシャーが殺されたため、新たなスパイを送り込む必要に迫られていた。
リンダはドイツに住む叔母ハンナの家族を救おうと考え、スパイの仕事を志願する。リンダの強い気持ちに負けて、エドは彼女をドイツに送り込む。リンダは老スパイのサンフラワーとスイスで合流し、ドイツへと入った。
ドイツでサンフラワーの姪マルグリットと出会ったリンダは、ドレッシャー家に料理人として入り込むが、失敗を繰り返してクビになる。しかし、客人として訪れていたディートリッヒに気に入られ、彼の家で子供達の乳母として働くことになる。
リンダは叔母の家族が身を潜めているという情報を得て、キンダー通りの家に向かった。しかし、そこに叔母の家族の姿は無かった。ディートリッヒ家の地下室で重要書類の写真を撮影したリンダは追われる立場となり、身を隠すためにマルグリットの元へ向かう。だが、実はドイツのスパイだったマルグリットに、命を狙われる…。

監督&脚本はデヴィッド・セルツァー、原作はスーザン・アイザックス、製作はハワード・ローゼンマン&キャロル・バウム、共同製作はナイジェル・ウール、製作総指揮はサンディ・ガリン&デヴィッド・セルツァー、撮影はヤン・デ・ボン、編集はクレイグ・マッケイ、美術はアンソニー・プラット、衣装はマリット・アレン、音楽はマイケル・ケイメン。
出演はマイケル・ダグラス、メラニー・グリフィス、リーアム・ニーソン、ジョエリー・リチャードソン、ジョン・ギールグッド、フランシス・ガイナン、パトリック・ウィンチュウスキー、アンソニー・ウォルターズ、ヴィクトリア・シャレット、シーラ・アレン、スタンリー・ベアード、シルヴィア・シムズ、ロナルド・ニーチュケ他。


第2次世界大戦時にスパイ活動に身を投じた女性が、年老いてからテレビ番組で当時を回想するという形で始まる映画。
エドをマイケル・ダグラス、リンダをメラニー・グリフィス、ディートリッヒをリーアム・ニーソン、マルグレットをジョエリー・リチャードソン、サンフラワーをジョン・ギールグッドが演じている。

スパイとしての訓練を全く受けていないド素人のリンダが、なぜか重要な任務のためにスパイとして送り込まれる。そんなコメディーのような展開で、大マジに素人スパイが誕生する。
度胸だけでスパイになれるのなら、誰だってなれるだろうに。

勇気があるというより、無謀すぎるリンダは、やっぱり色々とやらかしてくれる。
ドイツ国内に入ったリンダだが、普通に英語で喋っている(彼女だけでなく、なぜかドイツ国内なのに英語を普通に喋る奴が多いこと)。
警戒心というものが無いらしい。

連絡店の魚屋とコンタクトを取ろうとしたリンダは、何度も繰り返して暗記したにも関わらず、短くて簡単な暗号を忘れてしまう。
その上、スパイ道具であるカバンの二重底を、ドイツ将校の前で開いてしまうというドジっぷりも披露する。

リンダはドレッシャー家に料理人として潜入したのに、料理が全く出来ないという有り様。鳩の肉を生で出すわ、スープは客にこぼすわで、そりゃクビになって当たり前。
で、勝手にディートリッヒ家の仕事を引き受け、エドと連絡を断つ始末。

リンダは連絡店の魚屋と会う時に、ディートリッヒの子供達を連れていく。叔母一家の隠れ家に向かう時も、子供達を連れて行く。
子供達がディートリッヒに喋ることで、自分が怪しまれるはずだという危機感が、彼女には全く無いらしい。
そうそう、ちなみに彼女、叔母の家族を救うのが目的でしたが、救出できてません。

リンダのドジっぷりばかり見せられるので、スリルなんてありゃしない。
彼女が緊急手配されてからも、全く緊張感は漂って来ない。
スパイ活動ではなく、スパイごっこだ。
しかし、決してコメディーではない。少なくとも、監督はマジに作っている。

序盤、出会ったばかりのエドと、チャッカマンのように急激に恋を燃え上がらせたリンダだが、ドイツに入ると、エドの存在はすっかり消えてしまう。
スパイ活動の中で淋しさを感じたリンダが、エドのことを思うようなことも無い。

クレジットでは最初に来るマイケル・ダグラスだが、存在感の薄いこと。
でも、さすがにマイケル・ダグラスなので、おいしいトコでは登場する。終盤になると、重傷を負ったリンダを抱いてエドがドイツ国境を抜けようとするシーンがある。
ところが、エドは敵国の情報収集を仕事にしているスパイなのに、語学が全くダメという設定。その時点でメチャクチャなのだが、何しろエドはドイツ語が喋れないので、それでドイツ将校に怪しまれてピンチになるという、恐ろしくショボショボな展開。

その辺りがクライマックスなのだが、ずっと主役だったはずのリンダは、その時だけはグッタリしているだけで何もしていない。
そこはマイケル・ダグラスに見せ場を譲らざるを得なかったのだろう。
バランスよりも、大物役者への配慮を選んだということか。

で、ドイツ語が喋れないエドは、いきなり発砲するという荒っぽい方法に出る。
で、当然のことながら、ドイツ将校に撃ち返される。
で、銃弾を浴びて、どう考えても死ぬべきなのに、なぜか生き延びてやがる。
なんて締まりの悪いエンディング。


第13回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低作品賞
受賞:最低監督賞[デヴィッド・セルツァー]
受賞:最低脚本賞受賞
受賞:最低主演女優賞[メラニー・グリフィス]
<*『嵐の中で輝いて』『刑事エデン/追跡者』の2作でのノミネート>

ノミネート:最低主演男優賞[マイケル・ダグラス]
<*『氷の微笑』『嵐の中で輝いて』の2作でのノミネート>


第15回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:最悪作品賞

 

*ポンコツ映画愛護協会