『上海サプライズ』:1986、イギリス

1937年、日本が上海に侵攻した年。阿片王ウォルター・ファラデイは新聞記者のウィリー・タトルと共に、大量の阿片を持って上海を脱出しようとした。だが、情婦のチャイナ・ドールを迎えに行ったファラデイは、警官メイ・ガンの一派に取り囲まれる。
メイ・ガンはファラデイに、彼の子分ウー・チェン・シェイが裏切って情報をタレ込んだこと、チャイナ・ドールはウーがかくまっていることを告げる。爆弾が仕込まれたマネー・ベルトが爆発した隙に、ファラデイはタトルと共に逃亡した。メイ・ガンは、爆発によって両手を失った。ファラデイは湖に飛び込むが、そのまま沈んでしまった。
1年後、伝道士のバーンズと助手のグロリア・タトロックは、金が払えず船に乗れなかったグレンドン・ウェイジーと出会う。バーンズは中国語が話せるウェイジーに、船の切符と引き換えに、負傷兵の父ウー・チェン・シェイを探す仕事を手伝って欲しいと依頼した。
ジャスティン・クロンクという男がウェイジーとグロリアに接触し、ウーの居場所を知る人物に会わせると告げて来た。ウェイジーとグロリアはクロンクに連れられ、チョンという男に会った。2人はチョンに金を払うが、彼はウーの居場所など知らなかった。
ウェイジーはクロンクから、ウーに息子などいなかったことを聞かされる。詰め寄るウェイジーに、グロリアは本当のことを話した。野戦病院でモルヒネが不足しているため、バーンズはファラデイの隠した大量の阿片を手に入れようとしているらしい。
レストランでタトルと会ったグロリアは、ウェイジーがチャイナ・ドールの愛した男に瓜二つだから、興味を持つだろうと言われる。そこでグロリアは、ウェイジーをチャイナ・ドールの元に向かわせ、阿片の隠し場所を聞き出させようとする。
ウェイジーはチャイナ・ドールと一夜を共にした翌日、メイ・ガンの一味に捕まってしまう。ウェイジーはメイ・ガンに脅迫され、ファラデイの阿片を探していることを明かす。ようやく解放されたウェイジーは、グロリアへの協力をやめようとする。
グロリアはウェイジーに協力させるため、彼を誘惑した。ベッドを共にした後、ウェイジーはグロリアに、チャイナ・ドールから聞いた情報を教える。ウーは、ジョー・ゴーという男に阿片を売ったらしい。ウェイジーとグロリアは、ジョー・ゴーに会いに行く。だが、ジョー・ゴーは2人に、阿片は取り引きの途中で何者かに盗まれたと告げる…。

監督はジム・ゴッダード、原作はトニー・ケンリック、脚本はジョン・コーン&ロバート・ベントリー、製作はジョン・コーン、製作協力はサラ・ロミリー、製作総指揮はジョージ・ハリソン&デニス・オブライエン、撮影はアーニー・ヴィンチェ、編集はラルフ・シェルドン、美術はピーター・ムリンズ、衣装はジュディ・ムーアクロフト、音楽はジョージ・ハリソン&マイケル・ケイメン、主題歌はジョージ・ハリソン。
出演はショーン・ペン、マドンナ、ポール・フリーマン、リチャード・グリフィス、フィリップ・セイヤー、クライド・クサツ、カイ・トン・リム、プロフェッサー・トール・タナカ、ヴィクター・ウォン、ソンセライ・リー、マイケル・アルドリッジ、サラ・リム、ジョージ・シー、ウォン・ガム・ボー、トー・チー・カン、デヴィッド・リー、キース・ボナード、クレア・ラター、パメラ・ヤン他。


元ビートルズのジョージ・ハリソンが製作総指揮と音楽に携わった作品。
ウェイジーをショーン・ペン、グロリアをマドンナ、ファラデイをポール・フリーマン、タトルをリチャード・グリフィス、クロンクをフィリップ・セイヤー、ジョー・ゴーをクライド・クサツが演じている。また、ジョージ・ハリソンが、ナイトクラブの歌手役で顔を見せている。

たぶん、ショーン・ペンとマドンナの夫婦共演が、最大の売りなんだろう。
あと、クライド・クサツやプロフェッサー・トール・タナカ、ヴィクター・ウォンなど、分かる人には分かるマニアックなアジア系俳優が多く出演している所を楽しむという、かなりマニアックな観賞方法もあるかもしれない。
まあ、そんなことに着目して今作品を見る人はいないだろうが。

いやあ、確かにサプライズだよ、この映画。
何より、こんな作品が公開されちゃったことがサプライズ。
阿片を探す話であり、そのためにウェイジーとグロリアは行動しているはずなのだが、そのことを忘れそうになってしまうという、とてもサプライズな映画だ。

スピード感の全く無い、ふざけているだけなのかと思ってしまうようなアクションシーン(だからと言ってギャグになっているわけでもない)。
まるでピントの外れた演出によるギャグシーン。
コメディにしたいのかもしれないが、ダラダラしているだけにしか思えない。
サスペンスにしたいのかもしれないが、ダラダラしているだけにしか思えない。

伸び切ってしまったゴムのようなダルダルの展開。
ブチブチと流れを切りまくる展開(というか最初から流れなんて無いけど)。
ツギハギだらけの(ツギハギも出来ていないかも)シナリオ。
何のために出て来たのか良く分からない登場人物を、色々と取り揃えている。

中国語が堪能な設定なのに、中国人と英語で喋る、設定台無しのウェイジー。
どれほどの重要性があるのか分からないが、ウェイジーとチャイナ・ドールがイチャついて、それをグロリアが待っているシーンに長く時間を割く演出。
どこをどうやったら互いに惹かれ合うようになっていくのかサッパリ分からない、ウェイジーとグロリアの恋愛劇。

もしかしたらギャグのつもりかもしれないが、突飛な展開にしか思えないシーンのオンパレード。ウェイジーが唐突にナックルボールを投げてジョー・ゴーとの取り引きを成立させるシーンなど、どう反応していいものやら、困り果ててしまった。

何かヒントを1つ示すと、すぐに解決しないと気が済まないらしい。
それを伏線にして、後になって謎解きをするようなことは基本的にはやらない。
せっかちなのね。話はダラダラしてるのに。
いや、伏線は、あることはあるみたいよ。分かりづらいけど。
というか、もう話がメチャクチャで、伏線がどうとか、それ以前の問題だから。

話が破綻していても、ハッタリがすごかったり、勢いがあったりすれば、それなりに誤魔化せる場合もあるのだが、そういうのも無いからね。
ひっょとすると、オリエンタルなムードにドップリと浸かって完全に溺れてしまい、監督の思考能力がゼロの状態だったのかと思ってしまう。

探す対象は、途中で阿片から宝石に変わっちゃう。
で、終盤になって「宝石は偽物だったよ」ということで目的が失われる。
悪党のファラデイをそのまま逃がしてしまい、最終的には恋愛劇として締めくくる。
腰砕けというか、脱力感が満点というか、もうグダグダよ。


第7回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低最低主演女優賞[マドンナ]

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ジム・ゴッダード]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演男優賞[ショーン・ペン]
ノミネート:最低オリジナル歌曲賞「Shanghai Surprise」


第9回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:最悪作品賞

 

*ポンコツ映画愛護協会