『SEXテープ』:2014、アメリカ

かつてアニーとジェイは、時間と場所を選ばずセックスに夢中だった。ジェイはアニーが近付くだけで勃起するほど性欲が旺盛で、2人は頻繁にセックスしていた。やがてアニーは妊娠し、父のウォルトと母のリンダに結婚すると宣言した。両親は不安を吐露するが、ジェイが真剣な思いを訴えると祝福した。ウォルトの「さらばセックス」という言葉が気になったアニーとジェイだが、自分たちなら絶対に乗り越えられると信じた。
アニーの妊娠中も、彼女とジェイはセックスを続けた。しかしアニーが息子のハワードを出産して以降、それは難しくなった。セックスを始めようとしても、ハワードが泣く度に中断せざるを得ないからだ。やがて娘のネルも誕生し、ますます夫婦はセックスから遠ざかるようになった。2人ともセックスしようという意識は持っているものの、なかなかチャンスは訪れなかった。アニーは夫婦生活の問題について、包み隠さずブログに綴った。
アニーは老舗玩具メーカーのパイパー・ブラザーズから連絡を受け、商談のために会社へ赴いた。パイパー・ブラザーズの幹部たちは彼女のブログに注目し、宣伝活動への協力を要請した。CEOのハンクはアニーのブログを絶賛するが、会社の仕事では下ネタを避けるよう要請した。アニーはジェイに電話を掛け、契約が決まったことを知らせた。ジェイは喜び、お祝いしようと告げる。アニーは子供たちを母のリンダに明日まで預かってもらい、夫婦だけの時間を楽しむことにした。
ジェイが帰宅すると、アニーはセクシーな格好で待っていた。ジェイとアニーはセックスしようとするが、次々に問題が起きて集中できず、その度に仕切り直しを余儀なくされる。ついにジェイは勃起しなくなり、アニーは「年のせいかもしれない」と漏らす。ジェイが買った新しいiPadを見つけたアニーは、自分たちのセックスを撮影しないかと提案した。ジェイは賛成し、2人はテキーラを飲んで盛り上がる。夫婦は以前に購入したセックス指南本を持ち出し、そこに書かれている全ての体位を試した。セックス撮影を終えたアニーは満足し、動画を消去するようジェイに頼んで眠りに落ちた。
しばらく経って、クライヴが小学4年生を終えた記念のパーティーをアニーとジェイは自宅で開いた。友人夫婦のロビー&テスや、息子で小学5年生のハワードも参加した。パーティーの後、ジェイのスマホに「動画を楽しんだよ」というメールが届いた。何のことか見当が付かないジェイが尋ねると、相手は「君たちのSEXテープだ」と返信してきた。すぐに何のことか気付いき、ジェイは焦った。彼は夫婦の動画を消去せず、保存していた。彼は古いiPadを周囲の人々にプレゼントしており、同期させていたので動画が広まったのだ。
アニーはジェイの様子に不審を抱き、何があったのか尋ねた。ジェイが動画を消していなかったこと、iPadを同期させていたことを話すと、アニーは自分のデータが入ったiPadをハンクに渡したことを思い出す。アニーが焦りを見せると、ジェイが動画を見た何者かのメールが届いたことを喋ってしまった。アニーはジェイに、メッセージを発信した相手に電話を掛けるよう指示した。留守電になっていたので、ジェイはメッセージを残した。
アニーは「すぐにiPadを取り戻さなきゃ」と言い、iPadをプレゼントした母親のリンダに電話を入れた。彼女は「子供たちを見てほしい。iPadを持ってきてほしい」と頼み、電話を切った。彼女が「他にiPadを渡した相手は?」と尋ねると、ジェイはロビーと郵便配達員だと告げる。クライヴにも渡したことを思い出したロビーは慌てて回収し、アニーが窓からiPadを投げ捨てた。リンダが来るとロビーはiPadを渡してもらい、動画を消去してから返却した。
アニーとジェイはリンダに子供たちの世話を頼み、ロビーとテス夫婦の元へ車で向かう。その途中、犯人から馬鹿にするメッセージが届き、アニーはテスの仕業だろうと推測する。まず探りを入れることにした2人は、ロビー&テス夫婦の家へ赴いた。応対に出たロビーは、ジェイが「何してた?」と訊くと「結婚記念日だから、ハワードを預けてテスと一緒に色々と見てた」と答えた。そこへテスが来て挨拶し、アニーとジェイを招き入れようとする。「何を見てた?」とジェイが尋ねると、ロビーは「恥ずかしい」と言う。それでもジェイが答えを求めると、ロビーは『ブレイキング・バッド』のシーズン1だと打ち明けた。
ジェイはロビーに、iPadを返してほしいと告げる。ロビーは冗談めかして「セックス動画でも入ってるのか」と言うと、ジェイは慌てて「見たのか」と口にする。そのせいでロビーとテスに気付かれたため、アニーとジェイは事情を説明した。テスは面白がり、「妹が花屋で働いていて、得意先にハンクがいるから住所が分かる」と言う。すぐにハンクの住所は判明し、ロビーとテスはアニー&ジェイに同行すると言い出した。ロビーはジェイにiPadを返すよう要求し、渋る彼から回収した。
ハンクの家に到着すると、ロビーとテスは「手伝わせて」と積極的に関与しようとする。しかしアニーとジェイは2人を車で待機させ、自分たちで何とかしようとする。アニーはジェイに、「私が彼と話すから、トイレを借りるフリをしてiPadを探して」と指示した。彼女はハンクが出て来ると、「腎臓に問題がある子供のチャリティーで近所を回っていた」と作り話をする。アニーが寄付を求めるとハンクは快諾し、夫婦を家に招き入れた。
ハンクが「小切手帳を持って来る」と言うと、アニーは「ジェイが下痢なのでトイレを貸してほしい」と頼む。ハンクはアニーに、「妻子が出掛けたのでスコッチを飲んで羽を伸ばしていた」と話す。ジェイは邸内を調べるが、ジャーマン・シェパードに追われて必死で逃げ回る。ハンクはアニーに、「妻と子供がいない時、コカインを良く吸ってる。一緒にやらないか」と勧める。アニーは遠慮するが、ハンクが「ジェイの様子を見てこよう」と言い出したので慌てて「コカイン、やるわ」と告げた。
アニーがハンクと一緒にコカインを吸ってハイになっていると、ロビーとテスがやって来た。2人は別の街の市長夫婦だと偽り、ロビーに「青少年育成の寄付で回っている」と適当な嘘をつく。テスが「本当に求めているのは中古のiPad」と口にすると、アニーは「それはいい。絶対に役立つ」と調子を合わせた。ロビーは玄関のすぐ近くに置いてあったiPadを手に取り、アニーに「まだ君のデータを見ていないけど」と告げる。アニーが「それは別にいいから」と言うので、ハンクはテスにiPadを渡した。ロビーとテスは早々に立ち去り、ジェイはシェパードに追われて2階から傷だらけで転落した…。

監督はジェイク・カスダン、原案はケイト・アンジェロ、脚本はケイト・アンジェロ&ジェイソン・シーゲル&ニコラス・ストーラー、製作はトッド・ブラック&ジェイソン・ブルメンタル&スティーヴ・ティッシュ、製作総指揮はデヴィッド・ハウスホルター&ジェイソン・シーゲル&ジェイク・カスダン&デヴィッド・ブルームフィールド&ベン・ウェイスブレン、共同製作はメルヴィン・マー、撮影はティム・サーステッド、美術はジェファーソン・セイジ、編集はタラ・ティムポーン&スティーヴ・エドワーズ、衣装はデブラ・マクガイア、音楽はマイケル・アンドリュース、音楽監修はマニシュ・ラヴァル&トム・ウルフ。
出演はキャメロン・ディアス、ジェイソン・シーゲル、ロブ・コードリー、エリー・ケンパー、ロブ・ロウ、ナット・ファクソン、ナンシー・レネハン、ジゼル・アイゼンバーグ、ハリソン・ホルツァー、セバスチャン・ヘッジス・トーマス、ティモシー・ブレネン、クリスティーナ・コルタイ、ランドール・パーク、ジョー・ステイプルトン、ジェームズ・ウィルコックス、メリッサ・パウロ、エリン・ブレーム、クマイル・ナンジアニ、アルテミス・ペブダニ、ジョリーン・ブラロック、メルヴィン・ブラウン、オスマニ・ロドリゲス、サミル・バッテンフェルド、デイヴ・グルーバー・アレン、セレステ・オリヴァ他。


『オレンジカウンティ』『バッド・ティーチャー』のジェイク・カスダンが監督を務めた作品。
脚本は『カレには言えない私のケイカク』のケイト・アンジェロと、『寝取られ男のラブ♂バカンス』『ザ・マペッツ』のジェイソン・シーゲル&ニコラス・ストーラーによる共同。
アニーをキャメロン・ディアス、ジェイをジェイソン・シーゲル、ロビーをロブ・コードリー、テスをエリー・ケンパー、ハンクをロブ・ロウ、マックスをナット・ファクソン、リンダをナンシー・レネハン、ネルをジゼル・アイゼンバーグ、ハワードをハリソン・ホルツァー、クライヴをセバスチャン・ヘッジス・トーマスが演じている。
アンクレジットだが、YouPornのオーナー役でジャック・ブラックが出演している。

序盤はアニーのモノローグで進行し(綴っているブログの内容が語られているという設定)、「出産の瞬間から全てが変わった」という語りが入る。出身シーンでは、ジェイがアニーのアソコから出て来る胎児の頭を見て衝撃を受けている様子が描かれる。
なので、「出産を見てショックを受けたジェイの性欲が一気に減退したせいでセックスレスになった」という形なのかと思いきや、「セックスしたい気持ちはあるが、子育てに多忙で時間が作れなくなる」という設定だった。
ところが、その一方でアニーは「ジェイの前で裸になる時も、色気もムードもゼロになった」ってことも語っている。
それだと、描き方がボヤけてしまうぞ。

どうやらアニーのブログは人気を得ているらしいが、それを観客に示すための描写は全く足りていない。
そのため、下ネタ満載のブログにパイパー・ブラザーズが目を付けてアニーと契約を交わすという展開にも、説得力が欠如してしまう。
説得力の欠如と言えば、「ジェイが同期で動画が拡散することに気付かなかった」という設定も引っ掛かる。
最新機器をすぐ購入するぐらいiPadに慣れ親しんでおり、しかもクラウドでプレイリストを共有していることは認識しているのに、なぜ「動画も共有される」ってことに気付かないのかと。
御都合主義の処理が下手なので、バカバカしい話に乗りにくいわ。

オープニングではアニーとジェイが時間と場所を選ばずにセックスしまくっていたことが描かれ、会話の中では下ネタがバンバンと飛び交っている。なので、そのまま下ネタ満載のお下劣コメディーとして進むのかと思いきや、アニーの出産によって変化が生じる。
しかし、その後には「アニーとジェイが子供を預けて久々にセックスを楽しもうとするが、次々に問題が起きて」という展開があり、ここで艶笑劇としての方向性を取り戻している。
ただし、それが面白いのかと問われると、「残念ながら」という答えになってしまう。幼稚な部分だけが悪目立ちしており、「セックスのための奮闘ぶりや失敗の数々を、もっと誇張して描いた方がいいんじゃないか」と思ってしまう。
それが仮に現実離れした荒唐無稽な行動だったとしても、振り切っていれば何の問題は無い。この映画の描写は弾けっぷりが足りず、おとなしくてヌルいのだ。
セックスに関するコメディーなのに描写がヌルいって、どういうつもりなのかと。

それでも、まだ「セックスしようとして云々」という様子を描いている間は、まだ「セックスをネタにしている」という部分だけは守っているのでマシだ。ひとまず「それが面白いか否か」という問題は置いておくとして、セックスをネタにして話を始めたのなら、それを最後まで貫くべきだろう。
ところが、「SEXテープが拡散されたので夫婦が慌てて回収しようとする」という展開に入った途端、セックスは何の意味も無い要素になってしまうのだ。
タイトルを「SEXテープ」にすることで過激な印象を持たせようとしているけど、実はSEXテープじゃなくても全く支障はない。そこはマクガフィンみたいな物であって、何だっていいのだ。
ようするに「外部に漏れたら困る大事な物を回収するため、夫婦が必死で奔走する」という話が成立すれば事足りるのであって、そのブツ自体はSEXテープじゃなくても構わないのだ。極端なことを言ってしまえば、中身か何なのか分からないまま奔走する話でも成立する。
「それがSEXテープである」という部分には、重要性が無いのだ。

さらに厄介なのは、「大事な物を回収するために夫婦が奔走する」という喜劇としても、ちっとも面白くないってことだ。
まずクライヴとリンダのiPadは、何の苦労もせず簡単に回収できる。続いてロビーとテスの所へ行くが、これまた正直に説明して簡単に解決する。
次にハンクの家へ行き、このシーンに多くの時間を使っている。ただ、アニーはコカインでハイになるだけで、そのせいでトラブルに発展することは無い。ジェイは猛犬に追われて逃げ回るが、そのネタだけで引っ張るのがダラダラしているようにしか感じない。
使う時間と比較して、笑いの分量が合っていない。

脅迫犯はハワードで、彼は「YouPornにアップした。消去できるのは自分だけだ」と言って2万5千ドルをジェイに要求する。ジェイとアニーはYouPornのオーナーに頼んで動画を消してもらい、ハワードは「クライヴを失いたくない」ってことでコピーを渡す。
これで全て解決した形になるけど、まるでスッキリしない。
まず、ハワードが金を諦めてコピーを渡すトコが簡単すぎて、いい解決法が無かったから雑に片付けたようにしか思えない。
もう1つの問題として、「こいつが何の罰も受けていない」ってことが挙げられる。ガキの些細な悪戯で済むような問題じゃないからね。立派な脅迫罪だからね。
両親に全く気付かれず「いい子」だと思われたままだし、痛い目を見ることも無いので、すんげえスッキリしないわ。

(観賞日:2018年11月4日)


第35回ゴールデン・ラズベリー賞(2014年)

受賞:最低主演女優賞[キャメロン・ディアス]
<*『ダメ男に復讐する方法』『SEXテープ』の2作での受賞>

ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低スクリーン・コンボ賞[キャメロン・ディアス&ジェイソン・シーゲル]

 

*ポンコツ映画愛護協会