『セックス・アンド・ザ・シティ2』:2010、アメリカ

キャリーのゲイ友達スタンフォードと、シャーロットのゲイ友達アンソニーが、同性愛結婚をすることになった。キャリー、サマンサ、 シャーロット、ミランダの4人は、コネティカットのプチ・ホテルで行われた結婚パーティーに出席した。もちろんキャリーの夫である ミスター・ビッグ、シャーロットの夫ハリー、娘のリリーとローズ、ミランダの夫スティーヴも一緒だ。ステージにはライザ・ミネリが 登場し、歌とダンスで場を盛り上げた。ミランダは弁護士事務所の上司からの連絡を受け、不愉快そうな表情になった。彼女は仲間たちに 、新しく来たシニア・パートナーに毛嫌いされていることを明かした。
翌日、サマンサが44錠もの薬を飲んでいると知ったキャリーとミランダは驚いた。サマンサは「アンタたちは将来、私に感謝するわよ。 更年期障害の撃退方法を私が先に学習してるの」と言う。そこへ娘たちを連れて、シャーロットがやって来た。ベビーシッターのエリンが 、娘たちを預かるために走って来た。ノーブラで巨乳のエリンを見て、サマンサは口をアングリさせる。シャーロットはサマンサの指摘を 受け、改めてエリンを見た。ハリーを含む男たちがエリンのバストに視線を向けており、シャーロットは急に不安を抱いた。
キャリーはビッグと共に帰宅し、外食に行こうと誘う。キャリーは全く自炊をしないので、食事は外で取る習慣が付いているのだ。しかし ビッグは「週末はずっと外だったから、今夜は出前でも取ろう」と言う。ミランダはシニア・パートナーが自分の案件を同僚に指示した ことに腹を立て、会社を辞めた。ハリーに報告すると、彼は喜んでくれた。シャーロットはハリーがエリンと浮気するのではないかと不安 を募らせ、キャリーに電話して相談する。リリーがヴィンテージのスカートを汚したので、彼女は思わず怒鳴ってしまった。
サマンサが会社にいると、元恋人のスミスから電話が掛かって来た。スミスは主演映画の撮影でアブダビを訪れており、「ニューヨークで 開かれるプレミアで、レッド・カーペットを一緒に歩いてほしい」とサマンサに頼んだ。キャリーは結婚記念日の夜、ビッグが作った料理 を食べて家で過ごした。キャリーが時計を贈ると、ビッグは液晶テレビをプレゼントとして用意していた。しかしアクセサリーを期待して いたキャリーはガッカリし、その気持ちを彼に告げた。
サマンサがプレミア用のドレスを買いに行くというので、キャリーは彼女に同行する。キャリーはサマンサに、「結婚生活のマンネリを 防ぐためにも、イベントが必要なのよ」と言う。映画のプレミアにはサマンサだけでなく、キャリーたちも出席した。ビッグは乗り気では なかったが、キャリーに誘われて同行した。上映会の後、サマンサはスミスと共に、映画プロデューサーのシークとVIPルームで会った 。サマンサは大物実業家のシークから、アブダビへ来て経営するホテルに泊まってほしいと誘われた。
キャリーはスタンフォードに、ビッグがソファーで寝転んでばかりいることを愚痴った。そのビッグがマドリード銀行のシニア・バイス・ プレジデントを務めるカーメンという女性と親しそうに話している様子を発見し、キャリーは苛立った。キャリーはビッグに声を掛け、 「そろそろ帰りましょう」と告げた。帰宅したビッグがテレビを見ていると、キャリーは不機嫌そうな態度を示した。ビッグが「なぜ 寝転がってテレビを見ただけで文句を言われなきゃならないんだ?」と尋ねると、キャリーは「たった2人だけの生活なのよ。残りの人生 、もっと輝かせないと」と告げた。
キャリーはコラムを仕上げるため、前のアパートで泊まり込むことにした。ビッグはキャリーから報告を受け、優しく「いいよ」と言う。 泊まり込みを始めた翌日、キャリーは仲間3人とランチに出掛けた。サマンサは、シークに誘われた1週間のアブダビ旅行について3人に 話す。飛行機はスーパーファーストクラスで、滞在中の費用は全て向こう持ちだという。サマンサはシークと話を付け、キャリーたちも 一緒に行くことを承諾してもらっていた。シャーロットだけは旅行に迷いを示すが、サマンサが半ば強引に説得した。
キャリーはコラムを仕上げ、アパートに戻った。するとビッグは、「1週間で2日だけ、別々に過ごしてはどうだろう」と提案してきた。 「僕も君のように部屋を借りて、寝転がってテレビを見たり、君の嫌なことをやる」と彼が語るので、キャリーは「みんなに何て言うの? 理解してもらえないわ」と反対する。ビッグが「他人は関係ない。僕らの結婚だ」と言うので、キャリーは「だったら臨時措置として、私 のアパートを使って」と告げた。
キャリー、サマンサ、シャーロット、ミランダは超豪華な飛行機に乗り、アブダビへ向かった。空港に到着すると、サマンサは持参した 更年期用の薬を全て没収されてしまった。アブダビでは違法な薬だったからだ。サマンサは口を尖らせるが、1人ずつに用意されている 高級車の迎えを見て、すぐに機嫌は直った。キャリーたちはゴージャスなホテルに到着し、支配人サフィアの歓迎を受けた。
キャリーとミランダがバザールに出掛けようとすると、執事のガウラフが「闇商品を売る男たちがいますから、話し掛けられたら注意して ください」と告げた。キャリーはスパイスを見に行くというミランダと別れ、靴を購入した。その時、キャリーは買い付けの仕事に来て いた元恋人のエイダンを発見した。2人は久々の再会を喜んだ。エイダンは「良かったら明日の夜、食事でも」と彼女を誘った。キャリー は「ミランダが色々とプランを立てているから、分からないわ」と言い、その場では明確な返答をしなかった。
キャリーたちはラクダで砂漠を移動し、ランチを取った。サマンサはリカルドという男と知り合い、目を付けた。その夜、再びリカルドと 出会った彼女は、翌日にディナーをする約束を交わした。翌朝、アメリカから送られてきた雑誌『ニューヨーカー』を見たキャリーは、 バッシング記事を見て激しい苛立ちを覚えた。火遊びしたい気分になった彼女は、エイダンから誘われたディナーに赴いた。食事の後、 彼女はエイダンとキスを交わすが、すぐに後悔した。
キャリーはサマンサたちを集めて事情を説明し、ビッグに打ち明ける意思を告げる。3人からは「内緒にしておいた方がいい」と反対 されるが、キャリーは「秘密を持ちたくない」と言い、ビッグに電話を掛けた。彼女はエイダンとキスしたことを打ち明け、必死に釈明 した。しかしビッグは「仕事中だから」と告げ、電話を切ってしまった。ショックを受けているキャリーの元に、サマンサから電話が 入った。ビーチでリカルドとキスをしていたら目撃者に通報され、警察に連行されたのだという。シークの助けによって、サマンサは釈放 された。しかしシークが費用の支払いを中止したため、キャリーたちは急いで荷物をまとめてホテルを出た…。

脚本&製作&監督はマイケル・パトリック・キング、キャラクター原案はキャンディス・ブシュネル、 TVシリーズ創作はダーレン・スター、製作はラ・ジェシカ・パーカー&ダーレン・スター&ジョン・ メルフィー、共同製作はエリック・サイファーズ、製作協力はティファニー・ヘイズレット・パーカー&メリンダ・レリア、製作総指揮はトビー・エメリッヒ&リチャード・ブレナー&マーカス・ヴィシディー、 撮影はジョン・トーマス 編集はマイケル・バーレンバウム、美術はジェレミー・コンウェイ、衣装はパトリシア・フィールド、音楽は アーロン・ジグマン、音楽製作総指揮はサラーム・レミ、音楽監修はジュリア・ミシェルズ。
出演はサラ・ジェシカ・パーカー、キム・キャトラル、クリスティン・デイヴィス、シンシア・ニクソン、ジョン・コーベット、クリス・ ノース、デヴィッド・エイゲンバーグ、エヴァン・ハンドラー、ジェイソン・ルイス、ウィリー・ガーソン、マリオ・カントーネ、ライザ ・ミネリ、リン・コーエン、アリス・イヴ、マックス・ライアン、オミッド・ジャリリ、アート・マリク、ラザ・ジャフリー、 ペネロペ・クルス、マイリー・サイラス、ティム・ガン、アレクサンドラ・フォング、パーカー・フォング、ダーフィル・ラブディニ、 ロン・ワイト、ニール・ブレッドソー、コンドーラ・ラシャド他。


1998年から2004年にかけてアメリカのケーブルテレビ局HBOで放送された全6シーズンの連続テレビドラマの映画版第2作。
キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、サマンサ役のキム・キャトラル、シャーロット役のクリスティン・デイヴィス、ミランダ役のシンシア・ ニクソン、ビッグ役のクリス・ノース、スティーヴ役のデヴィッド・エイゲンバーグ、ハリー役のエヴァン・ハンドラー、スミス役の ジェイソン・ルイス、スタンフォード役のウィリー・ガーソン、アンソニー役のマリオ・カントーネ、ミランドのメイドのマグダ役のリン ・コーエンはTV版の出演者で、劇場版第1作からの続投。
今回はTV版の出演者だったエイダン役のジョン・コーベットが再登場している。他に、エリンをアリス・イヴ、リカルドをマックス・ ライアン、サフィアをオミッド・ジャリリ、シークをアート・マリク、ガウラフをラザ・ジャフリーが演じている。
また、歌手のライザ・ミネリ、歌手で女優のマイリー・サイラス、ファッション・コンサルタントのティム・ガンが本人役、ペネロペ・ クルスがカーメン役で、それぞれ登場している。

映画の1作目は、完全にTVシリーズのファンに向けて作られた作品だった。
だから当然のことながら、この2作目もファンにターゲットを絞った映画になっているべきだ。2作目になってから、急にファン以外の 観客を取り込もうとしても、それは難しいだろう。
前作では「キャリーの結婚」という大きなイベントが用意されており、TVシリーズで積み残したことを処理する内容となっていた。それ によって、とりあえず4人が全て幸せになっている。サマンサは結婚して幸せになるタイプでもないしね。
だから、「TVシリーズで解決しないまま積み残された問題」というのは、もう無いはずだ(そりゃ細かいことを言い出せば色々と あるんだろうけど)。

とは言っても、「だから続編を作る意味なんて無い」というわけではない。
生活をしていれば新たな問題も色々と生じるだろうし、「その後のキャリーたちの生活模様」を描けば、きっとTVシリーズのファンは喜ぶはずだ。
ところが本作品は、「ホントにファンの方を向いているのか」と疑いたくなるような内容になっている。
だからと言って、TVシリーズのファン以外の観客を取り込もうという内容になっているのかというと、そうでもない。

とにかく何がダメかって、そりゃアブダビ旅行へ出掛けてしまうことだ。
当初はドバイでのロケを希望していたらしいが、場所がドバイかアブダビかってのは問題じゃない。
そうじゃなくて、「どうして簡単にニューヨークから離れてしまうのか」ってことだ。
『セックス・アンド・ザ・シティ』の「シティ」って、ニューヨークという意味もあるんじゃないのか。
ニューヨークで生活する女4人がゴージャスな生活を送りながらも色々と問題を抱えて悩んだり迷ったりするところに、多くの女性たちは 魅力を感じたんじゃないのか。
観光旅行で出掛けたアブダビを舞台にしちゃうってのは、どんな物語が描かれようと、その時点で間違っているんじゃないかと。

この映画は前半、キャリーたちが抱えるそれぞれの問題を提示している。
キャリーはビッグとの結婚生活に対する不満を抱き、サマンサは更年期障害と戦っており、シャーロットは夫の不倫に怯えたり育児 ストレスを抱えたりして、ミランダは会社を辞めて失職している。
だったら、4人が問題と向き合い、それを解決しようと奮闘する様子を描いて行くべきなんじゃないのか。
それなのに本作品は、そういった問題を全て放り出して、アブダビでの珍道中へと移っていく。
で、旅から戻ると、全ての問題は簡単に解決されているのだ。

ビッグとの結婚生活に不満を漏らすキャリーが、ただの身勝手な女にしか見えないというのも厳しい。
彼女は「残りの人生を輝かせたい」と言うが、それは「自分の人生を輝かせたい」という願望でしかない。
「私が輝くために、貴方は私に合わせて」という主張だ。
自分が幸せになりたいだけであって、ビッグの幸せについては全く考慮していない。
ビッグは家でノンビリと平穏に過ごしたがっているのだが、それを尊重しようという意識は皆無だ。

キャリーの中には、「ビッグのために料理を覚えよう」とか、「彼の生活リズムに合わせよう」とか、そういう気持ちは全く無い。常に 自分本位の考えで行動している。
テレビをプレゼントされた時も、平気で不満を口にする。
自分は仕事のために2日も前のアパートで泊まり込むが、ビッグが「1週間に2日間だけ別行動を取らないか」と提案すると大反対する。
それは「一緒にいたいから」ということだったはずなのに、自分は平気で1週間のアブダビ旅行へ繰り出す。
ホント、調子のいい女だ。

で、「キャリーが自分の考えは間違っていると気付き、改善する」という流れになっていくのなら、前半で身勝手な言動が目立っても、 それはそれでOKだろう。
しかし残念ながら、そういう流れは構築されていない。
一応、終盤に「キャリーが少し考え方を変えて、ビッグがソファーでテレビを見るのに付き合ったりするようになる」という展開は用意 されている。
しかし、それは「アブダビ旅行でエイダンとキスして、それをビッグが許してくれて」という結果としての変化であって、前半の内容と 上手く繋がっていない。

そのエイダンとのキスから告白という流れにしても、やはりキャリーに対して「身勝手だなあ」という印象を抱いてしまう。
彼女は「秘密を持ちたくない。言うのが早ければ早いほどダメージは少ない」と口にするが、それは完全にエゴイズムだ。
自分が黙っていることに耐えられないから、早く打ち明けて罪悪感から解放されたいということなのだ。打ち明けられる相手への気遣いは 、全く無い。
だけど、優しいビッグが全てを受け入れてくれるという、とても都合のいい展開が待ち受けている。
「罰として黒ダイヤの付いた指輪をプレゼントする」って、なんちゅうバカバカしさだろうか。

アブダビでの道中に関しては、サマンサへの不快感も相当に感じる。
彼女はアブダビという国の伝統や風習に従おうとせず、そのせいでトラブルになったのに、文句ばかり言っている。
しかも、終盤には4人を助けるアブダビの女性を登場させ、「みんなアメリカの女性のような生き方を望んでいる」という描写を用意する ことで、そういった「郷に入れては郷に従え」とは正反対の傍若無人な行動を全面的に肯定してしまうのだ。
2010年にもなって、まだ「アメリカこそ正義」みたいな主張を放つとは、すげえな。
もはや「厚顔無恥」という言葉しか思い付かんわ。

(観賞日:2012年5月23日)


第31回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低主演女優賞[“女友達”4人衆(サラ・ジェシカ・パーカー、キム・キャトラル、 クリスティン・デイヴィス&シンシア・ニクソン)]
受賞:最低スクリーン・カップル&スクリーン・アンサンブル賞[『セックス・アンド・ザ・シティ2』の全キャスト]
受賞:最低リメイク・盗作・続編賞

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低助演女優賞[ライザ・ミネリ]
ノミネート:最低監督賞[マイケル・パトリック・キング]
ノミネート:最低脚本賞

 

*ポンコツ映画愛護協会