『最終絶叫計画4』:2006、アメリカ
元プロバスケットボール選手のシャキール・オニールが目を覚ますと左足が鎖で繋がれ、薄暗い部屋に監禁されていた。どこからか声が聞こえて明かりが付くと、そこは廃墟のトイレだった。トイレには心理学者のフィル・マグローもいて、気が付くと監禁されていたと話す。モニターが付くと人形が喋り始め、ゲームをするよう2人に要求した。シャキールとフィルは金切ノコギリを手に入れるが、鎖を切断することは出来なかった。フィルは「鎖じゃない、足を切って逃げろってことだ」と言うが、繋がれているのとは反対側の足を切断してしまった。シャキールに指摘された彼は、気を失って倒れ込んだ。
トム・ローガンがアパートで目を覚ますと、ベッドには3人の金髪美女がいた。美女たちからベッドに来るよう誘われた彼は、困惑した顔になった。心霊写真を見た彼が自殺しようとしていると、シンディー・キャンベルが訪ねて来た。シンディーは仕事を紹介してくれたトムに礼を言い、コーディーをミリタリー・スクールに入れたことを話した。シンディーが辛い体験を経て看護師になりたいと思ったことを語っていると、トムはマンションから落下して死亡した。
港でクレーン操作の仕事をしているたトム・ライアンは、過度の残業を続けていた。彼は作業中に居眠りをしてコンテナをぶつけ、大量の猿が逃げ出した。彼は監督に辞めると告げ、その場を後にした。馴染みのパーへ久々に立ち寄ったライアンは、友人のCJと一緒にいる元仕事仲間のマハリクに声を掛けられた。マハリクから家族のことを問われたライアンは、妻のマリリンに捨てられて生きる意欲を失っていることを話した。
約束を思い出したライアンは慌てて車を飛ばし、自宅に戻った。すると再婚したマリリンが待っており、「また遅刻よ」と冷たく告げた。マリリンは息子のロビーと娘のレイチェルをライアンに預け、「人生をやり直すなら、まず子供と向き合って」と厳しい口調で告げた。ホーム・ヘルス・サービスではノリスという老女の家にヘルパーを派遣していたが、「モリス家は呪われている」という噂があった。前任のヘルパーが異常な姿に変貌してしまい、ノリスは新たなヘルパーを派遣するよう要求してきた。いい稼ぎになる顧客なので何とかしようと考えた社長のコージは、トムの紹介で来たばかりのシンディーを行かせることにした。
コージはシンディーをノリス邸へ連れて行き、怪奇現象が起きているのに気付くと慌てて隠した。シンディーが窓から隣の家を見ると、庭にライアンがいた。彼女はノリス邸に不気味さを感じつつも、仕事を引き受けることにした。ライアンは子供たちと仲良くしようとするが、冷たく拒絶された。彼は誤ってシンディーにボールをぶつけてしまい、慌てて駆け寄った。ライアンはシンディーと会話を交わし、彼女に強く惹かれた。
その夜、シンディーがシャワーを浴びていると、背後に悪霊が現れた。シャワーを終えた彼女の前にも、悪霊が出現した。不気味な音を耳にしたシンディーは屋根裏を調べ、悪霊と遭遇した。翌朝、シンディーはライアンと話し、かつて自分のせいで夫のジョージを死なせてしまったことを打ち明けた。ライアンは彼女を励まし、2人はキスを交わす。その時、強風が吹いて空が暗くなり、不気味な雲が出現して雷を落とした。ライアンがロビーの捜索に出ると、地割れが起きて巨大エイリアンのトライポッドが出現した。トライポッドが人々を襲い始めたため、ライアンは慌てて逃げ出した。
シンディーはノリスの家に戻り、少年の悪霊を見て話しかけた。すると少年は、かつて殺されてノリス家に憑依したことを明かす。少年はエイリアンの倒し方を知っていると言い、「父の心臓の中の血を辿れ」と教えて姿を消した。すると壁に地図が浮かび上がり、シンディーは慌てて書き写した。ライアンは家に戻り、子供たちに荷物をまとめるよう指示した。彼が子供たちを連れて家を出ると、シンディーと遭遇した。シンディーは「この惨劇を阻止できる人物がいる。手伝って」と頼むが、ライアンは「子供たちを守らないと」と告げて断った。ライアンは子供たちを車に乗せ、その場から避難した。
小学校の授業を見学していたハリス大統領は、補佐官のジェイミソンからエイリアンの襲撃を知らされた。ジェイミソンは状況の深刻さを説明し、ホワイトハウスに戻るよう促した。シンディーは飛行機の墜落現場で親友のブレンダと再会し、彼女がレポーターをやっていると知る。「エイリアンの攻撃で街は全滅。人類は終わりよ」とブレンダが漏らすと、シンディーは「まだ望みはある。この人が見つかれば事態を解決できるかもしれない」と地図を書き写したノートを見せた。2人は車を調達し、その場から移動した。
ライアンは車を奪われ、徒歩で非難せざるを得なくなった。次の朝、シンディーとブレンダが地図に記されていた場所へ辿り着くと、そこには不可思議な集落があった。2人は住人の服を奪って集落に紛れ込み、少年の父であるヘンリー・ライルを発見した。しかし彼女たちは見つかって捕まり、裁判に掛けられた。ブレンダに誘惑された住人のジェレマイアは、2人を擁護した。長老たちと話し合ったヘンリーは2人を許すが、「ここの住人になったら二度と出られない」と条件を付けた。
各国首脳が緊急会合で国連に集結する中、ハリスが壇上に立ってスピーチした。彼はエイリアンに同じ攻撃を仕掛ける武器を披露するが、それは完全なる欠陥品だった。ライアンたちは軍がトライポッドと戦っている現場に遭遇し、ロビーは「俺も参加させてくれ」と走り出す。ライアンがレイチェルを連れて避難しようとすると、オリヴァーという男が「こっちだ。俺に続け」と呼び掛けた。一方、ヘンリーはエゼキエルにナイフで刺されるとシンディーとブレンダを呼び、家族に関する真実を告白する…。監督はデヴィッド・ザッカー、キャラクター創作はショーン・ウェイアンズ&マーロン・ウェイアンズ&バディー・ジョンソン&フィル・ボーマン&ジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァー、原案はクレイグ・メイジン、脚本はクレイグ・メイジン&ジム・エイブラハムズ&パット・プロフト、製作はロバート・K・ワイス&クレイグ・メイジン、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン、共同製作はグレース・ギルロイ、製作協力はフィル・ドーンフェルド&ニコレット・オーランドウ、撮影はトーマス・E・アッカーマン、美術はホルガー・グロス、編集はクレイグ・P・ヘリング、衣装はキャロル・ラムジー、音楽はジェームズ・L・ヴェナブル。
出演はアンナ・ファリス、レジーナ・ホール、クレイグ・ビアーコ、ビル・プルマン、アンソニー・アンダーソン、レスリー・ニールセン、モリー・シャノン、マイケル・マドセン、クリス・エリオット、カルメン・エレクトラ、シャキール・オニール、クロリス・リーチマン、コンチータ・キャンベル、ボー・マーショフ、ケヴィン・ハート、デレイ・デイヴィス、サイモン・レックス、ブライアン・カレン、アロンゾ・ボデン、デイヴ・アテル、ホリー・マディソン、ブリジェット・マルクワルト、ケンドラ・ウィルキンソン、ドリュー・ミクスカ、チンギー、ファボロウス、リル・ジョン他。
『最終絶叫計画』『最‘新’絶叫計画』『最‘狂’絶叫計画』に続く“Scary Movie”シリーズの第4作。
監督は前作に続いてデヴィッド・ザッカーが担当。
脚本は『ロケットマン』『最‘狂’絶叫計画』のクレイグ・メイジン、『裸の銃を持つ男』『ホット・ショット』のジム・エイブラハムズ、『裸の銃を持つ逃亡者』『最‘狂’絶叫計画』のパット・プロフトによる共同。
シンディー役のアンナ・ファリスとブレンダ役のレジーナ・ホールは、1作目からのレギュラー。マハリク役のアンソニー・アンダーソン、ハリス役のレスリー・ニールセン、CJ役のケヴィン・ハートは、前作からの続投。
ライアンをクレイグ・ビアーコ、ヘンリーをビル・プルマン、マリリンをモリー・シャノン、オリヴァーをマイケル・マドセンが演じている。このシリーズは原題だと、『Scary Movie』の後ろに2作目なら『Scary Movie2』といった具合で数字を付けるだけになっている。しかし邦題になると、1作目は『最終絶叫計画』だが2作目は『最終絶叫計画2』じゃなくて『最'新'絶叫計画』、3作目は『最'狂'絶叫計画』になっていた。
しかし今回の邦題は、ただ1作目の邦題に数字を付けただけの『最終絶叫計画4』になっている。
それは手抜き作業だわ。
面倒になったのかもしれないけど、そこは頑張って頭を使おうぜ。「最‘低’」でも「最‘悪’」でも、何でもいいじゃんか。シリーズ1作目は『スクリーム』と『スクリーム2』がベースで、そこに数々のネタを散りばめていた。
2作目は『ホーンティング』がベース、3作目は『サイン』と『ザ・リング』がベースだった。
この4作目は、『THE JUON/呪怨』と『宇宙戦争』がベースとなっている。そこに『ソウ』や『ヴィレッ『ミリオンダラー・ベイビー』や『華氏911』などのパロディーが盛り込まれている。
今回もホラー映画だけではなく、他のジャンルのネタも使われる。そもそも、ベースからして『宇宙戦争』が入っているしね。冒頭、シャキール・オニールとフィル・マグロー(アメリカではテレビ番組のホストも務める有名な心理学者)が監禁されているシーンは、もちろん『ソウ』のパロディー。
トイレには神経ガスが注入され、2分以内に解毒剤を飲まなければ死ぬとジグソー人形が説明する。
トイレには仕掛けがあって、バスケットゴールに大きな石を入れれば金切ノコギリが落ちるようになっている。
ここでシャックが2度も連続で失敗するのは、現役時代の彼がフリースローを苦手にしていたことを茶化すネタ。タイトル明けに登場するのは、アンクレジットだが前作に続いての参加となるトム役のチャーリー・シーン。
このシリーズって全く話の繋がりが無いように見えて、意外にキッチリした形で「前作の続き」になっているのよね。
だからシンディーとトムの関係性や交わす会話の内容は、前作を見ていないと何のこっちゃサッパリ分からない。
簡単に解説しておくと、前作でシンディーはトムの弟のジョージと恋仲になっている。彼女が口にするコーディーってのは、息子じゃなくて面倒を見ていた甥のこと。トムはカミソリで手首を切って自殺しようとするが、訪ねて来たシンディーが何も知らずに抱き付く。その衝撃で、カミソリはトムの胸に突き刺さる。
トムは薬を大量に摂取して自殺しようとするが、間違えてバイアグラを飲んだので勃起する。
巨大なペニスを勃起を何とかしようとするトムだが、猫が飛び付いてくる。トムは猫をテーブルに叩き付け、ベランダの外へ投げ捨てる。
バランスを崩した彼は地上に転落し、ペニスが突き刺さって死亡する。トム・ローガンのエピソードが終わると、次に登場するのがトム・ライアン。
同じ「トム」で被るので違うファースト・ネームにしてもいいんじゃないかと思うが、彼は『宇宙戦争』のパロディーで中心になるキャラなので、本家の主演を務めたトム・クルーズから取っているのかもしれない。
じゃあライアンは何なのかと問われたら、それは分からないけど。
で、そんなライアンにマハリクとCJは「釣りに行こうと」と誘うと、マハリクの回想に入る。テントで寝転んでいたマハリクとCJが歌い始め、服を脱いで性交渉に及ぶ。このシーンは『ブロークバック・マウンテン』のパロディーだ。シンディーがノリス邸へ行くと、『THE JUON/呪怨』のパロディーが始まる。
シンディーは床に寝ているノリスを起こそうとして、彼女の頭を何度も棚に激突させる。彼女は扇風機の近くにノリスの頭を移動させ、頭頂部の髪がカットされてしまう。
コージは天井から伸びる長い黒髪を見つけると慌てて隠し、シンディーが目を向けると自分の禿げ頭に被せる。
浴槽から少年の悪霊が出現すると頭を押さえ付けるなどして始末し、シンディーが目を向けると入浴しているように装う。シャワーを終えたシンディーが浴室を出ると、『THE JUON/呪怨』の俊雄のような悪霊が階段の踊り場に現れる。悪霊は人間離れした動きで階段を下りようとするが、足が絡まって転げ落ちてしまう。
シンディーはノリスの体を拭くが、余所見をしていたせいでタオルを水ではなくノリスの排尿で濡らしてしまう。気付いた彼女はホースの水を浴びせるが、勢いが強すぎてノリスは弾き飛ばされる。
シンディーはホースを放り出し、それがノリスの顔面に叩き付けられる。屋根裏を調べたシンディーは、少年の悪霊と遭遇する。
少年の悪霊は絶叫するが、それはシンディーが持っているライターの火が自分の手に当たったから。シンディーがライアンに結婚歴があることを話すと、回想シーンに入る。
2度目の結婚に関する回想シーンでは、シンディーがボクサーとしてリングに上がっている。
対戦相手はティファニー・ストーンというムキムキのオネエで、ここは『ミリオンダラー・ベイビー』のパロディー。
ティファニーがレフェリーの耳を噛み千切るのは、1997年にタイトルマッチでイベンダー・ホリフィールドと戦ったマイク・タイソンを茶化したネタ。空に異変が起きて落雷が始まると、ライアンはシンディーを連れて屋内に避難する。ライアンは窓を施錠し、レイチェルが庭に置き去りにされたのに全く気付かない。
レイチェルは落雷を浴び、ライアンが「同じ場所に二度も雷は落ちない」とフラグを立てると再び落雷がある。
帰宅したライアンは全身が誇りまみれになっていて、それを払い落とすと近くにいたレイチェルが全て浴びる。
ライアンは子供たちを車に見せるが、ドアを荒っぽく閉める時にレイチェルの足が挟まる。ハリスは小学校で授業を見学している時、ジェイミソンからエイリアンの襲撃を知らされる。しかし彼は全く深刻に捉えず、少女が読んでいる教科書の続きばかり気にしている。
これは、第43代アメリカ合衆国大統領だったジョージ・W・ブッシュを茶化すネタだ。
世界貿易センタービルの自爆テロが起きた時、彼はマスコミの前で小学生と本を朗読していた。事件を知らされた時、彼は数分間に渡って、呆然としたまま固まってしまったのだ。
ここは『華氏911』のパロディーという捉え方でもいいかな。シンディーと再会したブレンダは、取材した映像を見せる、「これが普段のデトロイト」「これが襲撃後のデトロイト」と説明するが、エイリアンが出現する前から街は荒れまくっていて何も変化していない。
下水工事の仕事をしていたマハリクとCJが地上に出ると、街が崩壊して生気の無い大勢の市民が徒歩で移動している。
エイリアンの襲撃を知らない彼らはゾンビだと思い込み、殴り付けたりスタンガンを押し当てたりする。
祖母を見つけたマハリクは、歩み寄る彼女をゾンビだと思い込んで下水溝に投げ込む。国連の会議でハリスは装置を披露し、水を飲んだコップを何気なく置く。すると装置が作動し、彼は素っ裸になってしまう。
各国首脳が騒ぎ出すが、自分が全裸だと気付いていないハリスは「皆さん、落ち着いて」と呼び掛ける。彼は装置を試すと言って触り始め、各国首脳が全裸になってしまう。
軍がトライポッドと戦っているのを見たロビーは興奮して「俺も入れてくれ」と言い、ライアンに「入れば奨学金が貰える」と告げる。
ライアンがレイチェルを捜すと、マイケル・ジャクソン(もちろんニセモノ)が子供たちを集めて「一緒においで」と誘っている。順番が逆になったが、シンディーとブレンダがライリーたちの住む集落に辿り着くと、『ヴィレッジ』のパロディーが始まる。
その集落の住人として、シリーズ第2作『最‘新’絶叫計画』のクリス・エリオット、第1作『最終絶叫計画』のカルメン・エレクトラが出演する。クリス・エリオットは頭が弱いエゼキエル役、エレクトラは盲目で下品なホリー役だ。
で、シンディーやライアンたちが宇宙船に捕まると拷問装置が取り付けられ、『ソウ』のゲームが始まる。少年の実父がゲームの主催者で、トライポッドを使って人類を襲わせていたという設定だ。
まるで統一感の無い複数の映画を1つにまとめて結末に到達しなきゃいけないので、当然のことながら強引極まりないデタラメな展開になっている。ちなみに、2006年は本作品の他に『最‘愛’絶叫計画』や『最凶赤ちゃん計画』も公開され、いずれもラジー賞にノミネートされた。
なぜかパロディー映画が豊作の年だったわけだ。
なお、『最‘愛’絶叫計画』を手掛けたジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァーも、『最凶赤ちゃん計画』を手掛けたウェイアンズ兄弟も、かつては『最終絶叫計画』シリーズを作っていた面々だ。
そこから離脱しても、やってることは相変わらずってわけだ。(観賞日:2020年7月19日)
第27回ゴールデン・ラズベリー賞(2006年)
受賞:最低助演女優賞[カーメン・エレクトラ]
<*『最‘愛'絶叫計画』『最終絶叫計画4』の2作での受賞>
第29回スティンカーズ最悪映画賞(2006年)
ノミネート:【最悪の続編】部門