『サハラ』:1983、イギリス

デイルは新車を開発した父ゴードンのテストでドライバーを務め、チェイスから資金投資を受ける協力をした。しかしチェイスは荒れ地でも性能を発揮するかを確かめるため、サハラ・ワールド・ラリーに参加して勝利してほしいと要求する。
だが、ゴードンは車の修理中に事故に遭い、死亡してしまう。デイルは父の意思を受け継ぎ、ドライバーとしてレースに参加することを決める。サハラ・ワールド・ラリーは女子禁制であったが、デイルは男装して参加することに成功した。
ちょうどサハラでは、シャンブラ族とハマンチャ族の部族紛争が勃発していた。デイルは治安責任者の迂回コースを進むべきだという忠告を無視し、直線コースを選んだ。しかし彼女はシャンブラ族のラソールに捕まり、彼の奴隷として集落へ連れて行かれる。
ラソールの甥で族長のジャファールはデイルに惹かれ、自分の妻にしようとする。結婚を承諾して肉体関係を持ったデイルだが、集落を抜け出してレースに復帰しようとすル。しかし、彼女はハマンチャ族の族長ベッグに捕まってしまう…。

監督はアンドリュー・V・マクラグレン、脚本はジェームズ・R・シルケ、製作はメナハム・ゴーラン&ヨーラム・グローバス、製作協力はロニー・ヤコヴ、製作総指揮はテリー・シールズ、撮影はデヴィッド・ガーフィンケル、編集はマイケル・ジョン・ベイトマン&マイケル・J・デューシー、美術はルシアーノ・スパドーニ、衣装はマリオ・カルリーニ、音楽はエンニオ・モリコーネ。
出演はブルック・シールズ、ランベール・ウィルソン、ジョン・リス=デイヴィス、ホルスト・ブッフホルツ、ロナルド・レイシー、サー・ジョン・ミルズ、スティーブ・フォレスト、クリフ・ポッツ、ペリー・ラング、ヤーコヴ・ベン=シーラ、ジョン・ミルズ、トゥヴィア・タヴィ、スティーヴ・フォレスト、テレンス・ハーディマン、シャハー・コーエン他。


主人公がラリーに参加するということでカーレースの醍醐味を期待するかもしれないが、レースの場面はほとんど無い。サハラを舞台にしたアドベンチャー・ロマンを期待する人もいるかもしれないが、アドベンチャーもロマンも無い。

いきなりゴードンが修理中の事故というマヌケな形で死亡し、この作品の行く末を暗示する。他に死なせ方なら幾らでもあったろうに。父の意思を継いだデイルは女子禁制のレースに男装で参加するが、ただヒゲを付けて帽子を被ってるだけ。

デイルが女だということはバレバレだと思うのだが、なぜか他のレース関係者は全く気付かない。レースの参加者はゴードンと知り合いだったりするのに、「彼に息子なんかいたかなあ?」などと疑問を抱くことも全く無い。

せっかく男装したデイルだが、スタート直後にヒゲを取って帽子を脱ぎ、女だと明かしてしまう。部族紛争が勃発していると忠告されているのに、わざわざ自分が女だと明かし、しかも危険な直線コースを進む。かなりオツムは弱いらしい。

で、やっぱり捕まったデイルは、なぜか簡単に集落を逃げ出し、そしてすぐに再び捕まる。その逃亡シーンが何のためにあるのか分かりゃしない。このデイルさん、愚かな上に、やたら生意気で偉そうで、全く可愛げが無い。

シリアスな展開になるのかと思ったら、ハマンチャ族の族長ベッグがコミカルなキャラクターとして登場し、ノンビリとしたムードを漂わせてくれる。しかし完全にコミカルというわけでもなく、シリアスなワルとしての役目も与えられている。大変だ。

デイルはシャンブラ族とハマンチャ族に捕まってるだけで、ストーリーの中心にいるわけではない。あくまでも部族紛争の駒の1つに過ぎない。しかも彼女が現れたために、部族紛争が女を巡る争いというチープなものに成り下がる。

で、デイルを巡って本格的に部族紛争が激しくなると、彼女は必死に戦ってるジャファール達を残してレースに復帰する。
あれだけ紛争が起きてるのに、レースは中止になっていないわけだ。
しかし、今さらレースとか言われても。

重要なことは、「若きブルック・シールズが主演している作品に、果たして観客は何を望むべきなのだろうか、どこまでを望むべきなのだろうか」ということである。
答えは簡単、「ブルック・シールズが主演していること」、それだけである。
それ以上のものを望むのは、贅沢というものであろう。


第5回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低助演男優賞[口ヒゲを付けたブルック・シールズ]

ノミネート:最低主演女優賞[ブルック・シールズ]

 

*ポンコツ映画愛護協会