『RV』:2006、アメリカ&イギリス&ドイツ

ボブ・マンローは娘キャシーが5歳だった頃、「私は結婚しない、ずっとパパと一緒にいたいから」と告げられた。そんな娘に、ボブは 「大きくなったら素敵な人と出会って結婚するけど、パパとお前はずっと親友だ」と告げ、おでこにキスをした。ところが現在、ボブと 15歳になったキャシーは、顔を合わせれば言い争いになる。キャシーだけでなく、弟カールもボブを疎んじている。
ある日、ボブは妻ジェイミー、キャシー、カール、それにキャシーの親友グレッチェンを車に乗せて、社長トッドの主催のするパーティー へ出掛けた。それはアルパイン・ソーダ社との合併を祝うパーティーだ。会場にはボブの同僚フランクとマーティー、それにハーバードの MBAを取得した新人社員レアードも出席している。ボブはキャシーに、「20ドルやるからトッドに挨拶してこい」と指示した。キャシー と一緒に挨拶に出向いたグレッチェンは、「ソーダの自販機を公立学校に置いて大勢の子供たちに害を与えた」とトッドを批判し、手に 持っていた液体脂肪を浴びせた。
ボブが帰宅すると、相変わらずキャシーとカールは彼を無視した。ジェイミーは「今度のハワイ旅行をきっかけに習慣を変えましょう。 ノートパソコンも携帯電話も無しにして楽しみましょう」とボブに言う。旅行が終わったら、しばらく子供たちとは会えなくなる。カール はサマーキャンプに行くし、キャシーも旅行の翌日から夏期講習に参加することが決まっているからだ。
ところが、出社したボブはトッドから、ハワイ旅行を中止するよう要請された。ソーダ会社との合併で、兄弟社長ラリーとギャリーの内、 ラリーが躊躇し始めたというのだ。そのため、コロラド州ボールダーで金曜日に改めてプレゼンが行われることになり、渉外担当者である ボブに企画書を書いて出席してもらいたいのだという。何とか断ろうとするボブだが、断りきれなかった。
ボブは、フランクとマーティーがRVを使った旅行の話をしているのを聞き、アーブという男が社長を務めるレンタルRV会社でRVを 借りた。ボブはRVに乗って帰宅し、家族に「ハワイは冬に行くところだ。特別な所へ連れて行ってやる。湖でキャンプをしよう」と言う。 仕事のことは内緒にして、ハワイ旅行をボールダー行きに変更しようと考えたのだ。
キャシーとカールは冷たく拒絶し、ジェイミーも「みんな人付き合いが苦手なのに。それに、毎日9時間も一緒にいる子供たちから解放 されたい」と言って反対する。ボブは「料理もマッサージも子供の世話も全て僕がやる」とジェイミーを説得した。いざ車に乗り込むと、 ボブのシートベルトが引っ掛かった。ボブは車を発進させるが、縁石に乗り上げ、庭の置物に衝突して破壊した。
カーナビには右折の指示が出るが、ジェイミーは「渋滞に巻き込まれるから真っ直ぐ行って」と要求する。選択を迫られたボブが迷って いると、信号が赤に変わった。慌ててボブがハンドルを右に切ると、キャビネットから食器が落ちてキャシーを直撃した。パーキングで 休憩しようとすると、RVが勝手にバックを始めた。アーヴに電話を掛けると、パーキングギアのインターロックとサイドブレーキが故障 したのだろうという回答だった。そのため、今後は車を停める度に車止めを使わなければならなくなった。
RVパークに車を停めたボブは、家族の機嫌を取るために映画を見せようとするが、電源の繋ぎ方が分からない。カールが排便しようと すると、トイレの排泄タンクが満タンになっていた。前に使った客の排便が、そのまま残っていたのだ。ボブはカールを連れて廃棄場所へ 行くが、合うホースが見つからない。そこへパーク利用者のハウイーやジョー・ジョーたちが集まってきた。ハウイーとジョー・ジョーは Y字の繋ぎ目でホースを繋ぐよう促すが、ウンコが漏れ出したので慌てて中止した。
ジョー・ジョーはホースを広げる道具を借りに行くが、大事になってきたのでボブは戸惑った。いつの間にか、近くでは大勢の利用者が 見物するようになっていた。ボブはハウイーたちの協力で廃棄を始めるが、繋ぎ目が外れてしまい、ウンコの噴水を浴びてしまう。そこへ トラヴィス・ゴーニキーというパーク利用者が現れ、長男アール、次男ビリーと共にボブと車をキレイにしてくれた。
ボブを呼びに来たキャシーを見たアールは、心を奪われた。アールはトラヴィスに、「ウチの夕食に招待したら?」と持ち掛けた。ボブは 「今夜は僕が作ることになっているんだ」と告げて遠慮した。だが、いざ作り始めると時間が掛かってしまい、ボブは家族をトラヴィスの バスへ連れて行くことにした。トラヴィス、妻メアリー・ジョー、アール、ビリー、娘のムーンは、彼らを歓迎した。ムーンを見たカール は、彼女に一目惚れした。トラヴィスたちは、バスでアメリカ中を旅してるのだという。
陽気なトラヴィスとメアリー・ジョーは饒舌にお喋りをするが、ボブもジェイミーも引きつった愛想笑いを浮かべるだけだった。アールに 「彼氏はいるの?」と訊かれたキャシーは、クールな態度で「ええ、婚約してるの」と答えた。トラヴィスの仲間の男は、肉が苦手だと いうキャシーのためにシチューを用意した。それが内臓のシチューだと知らされ、キャシーは吐き気に襲われた。
ジェイミーが「そろそろ帰りましょうか」と言い出し、ボブたちも同意した。そこへ音楽が流れてくると、トラヴィスは「ちょっと待って 、これは我々のテーマ曲なんだ」と言い出した。彼はバンジョーを演奏し、子供たちは振り付け付きで歌を披露した。ボブたちは愛想笑い で退散した。深夜、ボブは密かに持って来たノートパソコンを抱えて公衆トイレに行き、企画書を作成した。そこへビリーが現れ、「5歳 から眠っていない」と言うと、すぐに去った。ボブは企画書をメールで送ろうとするが、何度やっても失敗した。
ボブがRVに戻った途端、目覚ましが鳴り響いた。ゴーニキー家の面々に見つからない内に出発するため、ジェイミーは目覚ましを5時半 にセットしていたのだ。メアリー・ジョーが近付いてくるのが見えたため、ボブは日除けがぶつかって壊れるのも構わず、大急ぎで車を 発進させた。ノロノロ運転の車に前を塞がれたボブは、キャシーから追い越すよう要求されて対向車線にはみ出すが、向こうから来た トラックと衝突しそうになる。だが、改めて挑戦し、今度はギリギリで前の車を追い抜いた。
ガス欠になったため、ボブはガソリンスタンドに入った。彼は隙を見てノートパソコンを取り出し、トイレに駆け込んだ。だが、すぐに カールが「RVが動き出した」と言いに来たため、トイレのタンク裏にパソコンを隠して外に出た。すると、トラヴィスがボブのRVに 車止めを付けてくれているところだった。偶然、このガソリンスタンドに入ったのだという。
トラヴィスとメアリー・ジョーが喋り出したので、ボブは後をジェイミーに任せてトイレに戻る。すると、ノートパソコンが消えていた。 ギターを持った若者が、パソコンを盗んで逃走したのだ。トラヴィスから朝食に誘われたボブは、「席を取っておいてくれ」と頼み、彼ら をダイナーに行かせた。その間にボブたちはRVに乗り込み、急いでガソリンスタンドから逃亡した。
後から出発したトラヴィスは「彼らは俺たちを見捨てた」といぶかるが、メアリー・ジョーは「何か悪い知らせがあって出発したのよ」と ボブたちを擁護した。彼らはヒッチハイクしているギターの若者を見つけ、車に同乗させた。だが、ビリーはバッグから覗くパソコンに 気付いた。トラヴィスたちはパソコンを取り返し、男を追い出した。メアリー・ジョーは「朝食にボブたちが来なかったのは、パソコンを 失くして、大慌てで探しに行ったからよ」と言う。トラヴィスは「早とちりで無礼だと決め付けてしまった」と反省した。
マンロー家の面々はユタ州に入り、ボブが食事の用意を使用とする。オーブンを開けたジェイミーは、そこに隠れていたアライグマを発見 した。家族は慌ててRVから飛び出し、ボブにアライグマを追い出すよう要求した。ボブは傘を手にしてアライグマに挑むが、激しい格闘 を繰り広げても追い出せない。匂い爆弾を使って何とか追い出したが、その臭気が消えるまでに6時間が必要だった。
臭気が消えるのを外で待っていると、夜になって大雨が振り出した。周囲の様子を見ようとしたカールは足を踏み外し、坂に出来た雨水の 川を滑り落ちた。駆け寄ろうとしたボブたちも、次々に滑り落ちる。泥だらけになったマンロー家の面々は、顔を見合わせて笑った。4人 はバーへ行って空腹を満たし、RVに戻った。深夜、皆が寝静まったのを確認したボブは、携帯電話で企画書を作成した。だが、メールで での送信は、またも失敗の繰り返しだ。RVの屋根に上がって、ようやく送信に成功した。
翌朝、ボブがRVを走らせていると、ゴーニキー家のバスが現れた。彼らはパソコンを返そうとしたのだが、ボブたちは気付かないフリを して別の道へと逃げた。ボブはワトソン山キャンプ場に到着すると、腹痛を装って「みんなは湖を見に行ってくれ」と告げる。家族と 離れたボブはRVを走らせ、アルパイン社へ辿り着いた。プレゼンを終えたボブはキャンプ場に戻ろうとするが、大渋滞に巻き込まれる。 悪魔の砦へとハンドルを切ったボブは、悪戦苦闘の末、何とか家族にバレずにキャンプ場へ戻った…。

監督はバリー・ソネンフェルド、脚本はジェフ・ロドキー、製作はルーシー・フィッシャー&ダグラス・ウィック、共同製作はグレアム・ プライス、製作協力はウォーレン・カー&クリス・ソルド、製作総指揮はボビー・コーエン&ライアン・カヴァナー、撮影はフレッド・ マーフィー、編集はケヴィン・テント、美術はマイケル・S・ボルトン、衣装はメアリー・E・ヴォイト、音楽はジェームズ・ニュートン ・ハワード。
出演はロビン・ウィリアムズ、シェリル・ハインズ、ジョアンナ・“ジョジョ”・レヴェスク、ジョシュ・ハッチャーソン、ジェフ・ ダニエルズ、クリスティン・チェノウェス、ハンター・パリッシュ、クロエ・ソネンフェルド、アレックス・フェリス、ウィル・ アーネット、トニー・ヘイル、ブライアン・ホウ、リチャード・コックス、エリカ=シャイ・ガイア他。


『ワイルド・ワイルド・ウエスト』『メン・イン・ブラック2』のバリー・ソネンフェルドが監督した コメディー映画。
ボブをロビン・ウィリアムズ、ジェイミーをシェリル・ハインズ、ジョアンナ・“ジョジョ”・レヴェスク(シンガーソングライターの ジョジョ)、カールをジョシュ・ハッチャーソン、トラヴィスをジェフ・ダニエルズが演じている。
他に、メアリー・ジョーをクリスティン・チェノウェス、アールをハンター・パリッシュ、ムーンを監督の娘クロエ・ソネンフェルド、 ビリーをアレックス・フェリス、トッドをウィル・アーネット、フランクをトニー・ヘイル、マーティーをブライアン・ホウ、レアードを リチャード・コックスが演じている。
なお、RVに描かれているレンタルRV会社の社長アーブの写真は、バリー・ソネンフェルド。
『ロビン・ウィリアムズのRV』というタイトルでTV放送されたこともある。

ボブはシートベルトが出て来なくて困った後、RVを出発させるが、縁石に乗り上げたり物を壊したりする。
それは運転が下手なのか、RVに問題があるのか、それが分かりにくい。
後のシーンでジェイミーがキャシーに「パパをけしかけないで、運転が下手なんだから」と言っているので、どうやらボブの運転技術 に問題があったようだ。
だけど、RVで家に帰ってくる時は何ともなかったのに、なぜ旅行に出掛けようとした時だけ、急に下手になっているのか。

ボブはマニュアルをちゃんと読んでいないので、キャビネットから物が落ちてくる。
パーキングギアのインターロックとサイドブレーキは、彼の運転ミスで起きている。
それはボブがボンクラなせいだけど、そうじゃなくて、ボブは家族を楽しませるためにキッチリやろうとするが、RVがポンコツだったり して予想外のトラブルに見舞われ、てんてこまいという形にした方がいいんじゃないの。

トイレのタンクを廃棄場へ捨てに行く時、ジェイミーとキャシーはボブに押し付けるのに、なぜカールだけは一緒に行きたがるのか。
その場面まではずっとボブに冷たく当たっていたのに、急に態度が変わる理由がサッパリ分からない。何か興味があることなら理解 できるが、そうじゃないからね。
普通なら嫌がりそうな作業に付いていくってのは、何の意味があるのか。
例えばカールを連れて行って、エピソードを描く時に彼を有効活用するのならまだしも、別に彼がいなくても何の支障も無いし。

ファミリー映画なのに排泄物が噴水になってボブがウンコまみれになるという展開には、「ホントにファミリー層に見せる気があるのか」 と疑いたくなってしまうが、それ以外の部分を見ると、お下品&お下劣コメディーってわけでもないし、それほど攻撃的なネタがあるわけ でもない。
例えばファレリー兄弟みたいに差別ネタをやるとか、良識派が嫌悪しそうな毒っぽいギャグをやるとか、そういう尖った姿勢は 全く無い。
ウンコのネタだけが、完全に別物なんだよな。
で、そこ以外は、何がどうダメなのかを指摘するのも面倒になるぐらい、全てにおいて「いかにもファミリー向け」といった感じの、 生温い作品として仕上がっている。

ゴーニキー家の面々にしても、誇張が足りないか、あるいは毒が無いので、「そんなに大慌てで逃げ出すような相手か?」と思って しまう。
ちょっと暑苦しい部分はあるかもしれないが、社交的で陽気で楽天的で親切な、いい家族でしかない。
他人の領域にズカズカと上がり込むような無神経さも無いし。
ボブたちが食事にやって来たから、それを迎え入れただけのことだ。トラヴィスたちがマンロー家のRVに勝手に押し掛けたわけでは ない。
だから「迷惑な連中」に成り切れていない。

むしろ、明らかにマンロー家に問題がある。
それを意図して描写しているならいいけど、違うでしょ。ゴーニキー家を「疎ましい奴ら」として描こうとしているよな。
そもそもマンロー家の面々が揃って人付き合いを苦手にしているという設定もアピール不足で、だからボブたちのゴーニキー家に対する 態度に乗っていけない。
例えそれがアピールされていたとしても、ボブたちって嫌な連中だよな。
それを笑えればいいんだろうけど、これっぽっちも笑えないよ。

ゴーニキー家の旅の方が、普通に楽しそうなんだよな。
楽しいだけではコメディーにならないが、マンロー家の様子を見せられるよりはマシだと思ってしまう。
例えば「陽気で善良なゴーニキー家のRVに、チンピラ的な小悪党が成り行きで乗ることになっての珍道中」という話の方が、ずっと 面白くなりそうだ。小悪党がゴーニキー家のペースに巻き込まれたり振り回されたりする、あるいは悪いことをやろうとするのに結果的に 善行になってしまうとか、そういう話の方が面白そうだ。

マンロー家の面々は、大雨が降る中、坂を滑り落ちて泥だらけになると、みんな顔を見合わせて笑う。
今まで険悪だったのが、その出来事でいきなり仲良くなるってのは強引すぎるだろ。
むしろ「パパのせいで、こんな目に遭って」と怒り出してもいいぐらいなのに。
その程度で仲良くなれるなら、とっくに仲良くやってるよ。
その後は、ボブが家族にバレないようプレゼンに出席してキャンプ場所に戻ったり、それがバレて険悪になったりという展開もあるが、 ともかくヌルいコメディーってことでファイナル・アンサー。

(観賞日:2012年3月16日)


第27回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:ファミリー映画というには申し訳程度の最低のシロモノ賞

ノミネート:最低助演女優賞[クリスティン・チェノウェス]
<*『ピンクパンサー』『RV』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会