『絶叫屋敷へいらっしゃい!』:1991、アメリカ

マンハッタンで株式投資のコンサルタントをしているクリス・ソーンは、同じマンションに引っ越した弁護士のダイアン・ライトソンに好意を抱いた。翌日、クリスはダイアンに他の稀、アトランティック・シティーのサンツ社へ彼女を送っていくことになった。ところが旅行と勘違いしたブラジル人のファウストとレナルダ兄妹が、同行することになってしまった。
クリスはファウストとレナルダにせがまれ、高速道路を降りた。ヴァルカンヴァニアという田舎町を通ったクリス達は、交通違反で保安官デニスとパーダーに捕まり、治安判事アルヴィン・ヴァルカンハイザーの屋敷に連行される。
アルヴィンはクリスの職業を知り、4人を地下室に監禁した。彼は、町を産業廃棄物置場にした銀行家や投資家に恨みを抱いているのだ。アルヴィンは夕食に4人を招くが、ファウストとレナルダは屋敷を脱出し、外で待ち構えていたデニスを買収して逃亡した。クリスとダイアンも逃げようとするが、アルヴィンの孫娘エルドナに捕まってしまう。
屋根裏に閉じ込められたクリスとダイアンは、多くの行方不明者の新聞記事と、彼らの身分証を発見する。どうやら、この屋敷では今までに大勢の人々が殺されているようだ。2人は屋敷に仕掛けてある滑り台で逃げようとするが、別々になってしまう。
庭に出たダイアンは、ボーボーとリルデブルという奇妙な人間型生物と出会う。一方、屋敷内に残ったクリスは、アルヴィンからエルドナとの結婚を強要される。何とか逃亡したクリスだが、ダイアンが人質に取られ、殺されそうになってしまう…。

監督&脚本はダン・エイクロイド、原案はピーター・エイクロイド、製作はロバート・K・ワイス、製作協力はジョン・D・スコフィールド、撮影はディーン・カンディー、編集はマルコム・キャンベル&ジェームズ・サイモンズ、美術はウィリアム・サンデル、衣装はデボラ・ナドゥールマン、音楽はマイケル・ケイメン。
出演はチェヴィー・チェイス、ダン・エイクロイド、ジョン・キャンディー、デミ・ムーア、ヴァルリ・ブロムフィールド、テイラー・ネグロン、バーティラ・ダマス、レイモンド・J・バリー、ブライアン・ドイル・マーレイ、ジョン・ウェズリー、ピーター・エイクロイド、ダニエル・ボールドウィン、ジェームズ・スタスケル、デボラ・リー・ジョンソン、カーラ・タムバレッリ他。


ダン・エイクロイドが初監督を務めた作品。
クリスをチェヴィー・チェイス、アルヴィンとボーボーをダン・エイクロイド、デニスとエルドナをジョン・キャンディー、ダイアンをデミ・ムーアが演じている。
他に、ヒップホップ・グループ“デジタル・アンダーグラウンド”のメンバーとして、トゥーパック・シャクールやチョップマスターJらが出演している。

タイトルロールが、甘いジャズの調べに乗せてマンハッタンの夜景を映すだけというフツーすぎるモノで、クリスが登場してもギャグの1つも無い。
そのタイトルロールが終わった時点で、少しだけイヤな予感はしたのだが、予想以上(以下と言うべきか)に散々な出来映えだった。

チンタラしているのに行き当たりバッタリという、どうにも手に負えない作品だ。
この話、絶叫屋敷を舞台にしたテーマパーク映画になるべき作品のはず。
それ以外、生きる道は無いはずだ。
ところが、そういう風になっていないのだから、生きる道は無い。

絶叫屋敷に行くまでの道のりは、クリスやダイアンのキャラクター描写をするというのなら、それなりに時間を費やすことも必要だろう。
しかし、そうではなく、無駄に長いカーチェイスを入れたりする。
特にオチがあるわけでもないのに。

ファウストとレナルダがトラブルメイカーとして笑いを振り撒くのかと思ったら、ただトラブルを招いただけ。しかも、屋敷に入ったら、すぐに逃げてしまう。
だったら、この2人って要らないでしょ。
ヴァルカンヴァニアで交通違反をさせるためだけに出てきたようなものだが、そんなの、この2人がいなくても、どうとでも出来ることだし。

デニスがクリスやダイアン釈放しようとするのは、中途半端。
彼は完全にアルヴィンの忠実な下僕にしておいた方がいい。
そうしないから、「エキセントリックで危ない奴らに、クリス&ダイアンが振り回されて大変な目に遭う」という図式も中途半端になってしまう。

クリスがアルヴィンに生意気な口を叩き、ダイアンとケンカになるというのも無駄。
2人とも素直に従おうとしたのに、アルヴィンに監禁されるという形の方がいい。
「クリスが反抗的だから監禁された」という、余計な可能性は完全排除すべき。
そうすることで、アルヴィンのメチャクチャな性格や行動が強調されるはずだし。

クリス達が監禁された後、ドラッグを所持した4人組が連行されるのも無駄。
たぶん白骨ジェットコースターで処刑される場面を見せたかったのだろうが、それを見せたければ、クリス達の前でデモンストレーションとしてコースターを動かせばいい。

アトラクションってのは、客のリアクションの大きさで面白く見えるという所がある。
そういう意味では、スカし芸を得意とするチェヴィー・チェイスのようなタイプの喜劇俳優をクリス役に据えたのは、ミスキャストだろう。
サタデー・ナイト・ライヴ出身のメンツで考えてみると、例えばスティーヴ・マーティンとか、マーティン・ショートとか、その辺りの方が向いていたと思う。

前半、チェヴィー・チェイスは何があっても涼しい顔。
相棒が激しいリアクションを見せれば対比で笑わせるってのも可能だろうが、残念ながら、デミ・ムーアにそれを求めるのは酷だろう。
食事シーンなんかも、一応は笑わせようとしているのだろうが、ユルすぎる。
大きく反応したり、ツッコミを入れたりすれば、かなり印象も変わるだろうが。

前半は涼しい顔だったクリスも、後半に入って仕掛けに遭遇すると、さすがに驚いたり怖がったりするリアクションを見せる。
でも、チェヴィー・チェイスのリアクションって、普通なのよね。
いわゆるリアクション芸ってのは、彼には期待できないってコト。
だから仕掛けに引っ掛かる場面では、見せ方で笑いに持って行かないといけない。
でも、それも普通。
例えば、「滑り台で滑り落ちて白骨の山に頭から突っ込みました」というのは、そのことを、そのまんま見せたところで普通でしょ。
それを笑いの場面として作りたいのなら、1つテンポをズラすとか、もう1つハプニングを重ねるとか、何か工夫しなきゃいけない。

この映画、仕掛けを用意して、そのまんま見せているだけなのよね。
それだと、普通に安いアトラクションを見せてるだけ。
しかも、1つ仕掛けを見せたら、たっぷりと休む。
だから、勢いが出ない。
というか、そもそも仕掛けで引っ張ろうとしていない。

で、仕掛けの代わりに、ボーボーとリルデブルという奇妙な生物を登場させる。
そんでもって、ダイアンとトランプ遊びをさせる。
ヒップホップ集団を連行させて、演奏させたりもする。
でも、前者はまだしも、後者は明らかに要らないでしょ。
演奏シーンも、大して面白くないし。

クリスとダイアンは、とにかくノロノロしすぎ。
余計なお喋りで立ち止まっている暇があったら、とにかく行動してくれ。
行動しないと、ハプニングもトラブルも起きない。
あと、行動しても、それを笑いに変換しようとする強い意識が感じられない。

屋敷から脱出しようとして、色々な仕掛けに遭遇してアタフタするというドタバタ劇をテンポ良く進めれば、単純ではあっても、そこそこ面白いジェットコースター・コメディーになる可能性はあったと思うのだ。
でも、どうやらコースターは故障していたようだ。


第12回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低助演男優賞[ダン・エイクロイド]

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低監督賞[ダン・エイクロイド]
ノミネート:最低脚本賞
ノミネート:最低主演女優賞[デミ・ムーア]
<*『夢の降る街』『絶叫屋敷へいらっしゃい!』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低助演女優賞[女装したジョン・キャンディー]


第14回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:最悪作品賞

 

*ポンコツ映画愛護協会