『狼たちの街』:1996、アメリカ
マックス・フーバーはロス市警の特別捜査班のリーダー。仲間は他にエラリー・クーリッジ、エディー・ホール、アーサー・レルイーの3人。彼らはロスから犯罪を一掃するため、時には行き過ぎた暴力を使ってでも悪党を退治している。
ある時、工事現場で若い女が殺された。女の顔を見たフーバーは驚く。それはマックスが半年前から通い詰めていた不倫相手アリソン・ポンドだったのだ。捜査を開始したフーバーの元に、1本のフィルムが送られてくる。
それはアリソンの部屋を盗撮したテープで、アリソンが男と情交している場面が映っていた。フィルムを撮影したジミー・フィールズと会ったフーバーは、残り2本のフィルムが盗まれたことを聞かされる。そこにはフーバーの姿が映っているはずだ。
フーバーはフィールズから、フィルムに映っていた男が原子力委員会の委員長トーマス・ティムズ将軍だと知らされる。捜査のために仲間と共に軍の立ち入り禁止区域に侵入したフーバーだが、ティムズの部下フィッツジェラルド大佐に見つかってしまう。
ティムズと会ったフーバーだが、ティムズは事件当時はワシントンにいたとアリバイを主張。さらにFBIのマキャファティー特別捜査官が圧力を掛けてくる。そんな中、フーバーの家に彼とアリソンの情交現場が撮影されたフィルムが送りつけられ、彼の妻キャサリンがそれを見てしまう…。監督はリー・タマホリ、原案はピート・デクスター&フロイド・マトラックス、脚本はピート・デクスター、製作はリチャード・D・ザナック&リリー・フィニー・ザナック、製作総指揮はマリオ・イスコヴィッチ、撮影はハスケル・ウェクスラー、編集はサリー・メンケ、美術はリチャード・シルバート、衣装はエレン・ミロジニック、音楽はデイヴ・グルーシン。
出演はニック・ノルティー、メラニー・グリフィス、ジョン・マルコヴィッチ、チャズ・パルミンテリ、マイケル・マドセン、クリス・ペン、トリート・ウィリアムス、ジェニファー・コネリー、ダニエル・ボールドウィン、アンドリュー・マッカーシー、カイル・チャンドラー、エド・ローター、ラリー・ギャリソン、チェルシー・ハリントン、ジョナ・ジョンソン、リック・ジョンソン、ブリット・バー、メリンダ・クラーク、アーニー・ライヴリー、リチャード・シルバート他。
1950年代のロサンゼルスを舞台に、実在したといわれる特別捜査班“ハット・スクワッド”を描く作品。
美術と衣装、音楽はイイ。出演している俳優には、渋い面々が揃っている。ジェニファー・コネリーのパイオツはデカい。
で、それ以外はショボい。原題にある「マルホランド滝」とは、フーバー達が犯罪者を突き落とす崖のことである。冒頭でそのシーンがあるのだが、突き落とされる男がどれほどの悪党なのかということが説明されないので、単にメチャクチャな行為としか思えない。
特別捜査班の4人は暴力的で荒っぽい行動が多く、刑事というよりもマフィアである。フーバーに至ってはブラックジャックを常備している。やり過ぎと思えるぐらい暴力に訴える。困った時にはすぐ暴力。
どうやらオツムの方は悪いらしい。せっかく4人組のチームなのに、ホールとレルイーは全く目立たない。別にいてもいなくても同じだな、と思ったぐらい。演じたマイケル・マドセンとクリス・ペンがかわいそうに思えてしまった。
もっと4人の熱い友情ドラマが展開するかと思ったのに。事件の概要が不自然だし、どうにも物語がフラフラしている。例えば終盤、飛行機の中で操縦士が撃たれるのも不自然だし、そんな展開が特に必要だとも思えない。
まとまりは無く、何が主軸なのか分からないまま映画は進んでいく。事件解決の後でクーリッジが死んでしまうのも違う。死ぬとしたら、事件が解決する前に死ぬべきだった。エンドを夫婦関係の修復で締めるのも違うなあ。
そもそも、この話に夫婦愛のドラマは要らなかったんじゃないのかなあ。結局、巨大な悪と戦う話に見せかけてはいるけれど、実はフーバー個人の問題を解決しようしてるだけなんだよな、これって。
不倫して、妻にバレて、ショックを受ける。そんで「フィルムは妻だけには見られたくなかった」と怒って犯人をブチ殺す。
小さい人間ってことですな。
第17回ゴールデン・ラズベリー賞
受賞:最低助演女優賞[メラニー・グリフィス]
第19回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:【最悪の助演女優】部門[メラニー・グリフィス]
<*『狼たちの街』『あなたに逢いたくて』の2作でのノミネート>