『愛と憎しみの伝説』:1981、アメリカ

ハリウッドの大女優ジョーン・クロフォードは子供が欲しいと思うが、体が弱いために出産は無理だった。彼女は養子を貰うことを考えるが、2度の離婚歴がある上に現在の配偶者もいなかったため、養子縁組は拒否されてしまう。
しかし恋人で弁護士のグレッグが女の赤ん坊を見つけてくれたため、ジョーンは養女を得ることが出来た。その養女クリスティーナが成長するに従い、ジョーンは競争社会で行きぬくためにと厳しいしつけを始めるようになった。
ある日、ジョーンはクリスティーナが反抗的な態度を取ったのに腹を立て、まだ幼い彼女を物置に閉じ込めてしまった。それは始まりに過ぎなかった。落ち目になってMGMとの契約を打ち切られたジョーンは、苛立ちをクリスティーナにぶつけるようになる…。

監督はフランク・ペリー、原作はクリスティーナ・クロフォード、脚本はフランク・ヤブランス&フランク・ペリー&ロバート・ゲッチェル&トレイシーホックナー、製作はフランク・ヤブランス、製作協力はニール・A・マッチリス、製作総指揮はデヴィッド・クーンツ&テレンス・オニール、撮影はポール・ローマン、編集はピーター・E・バーガー、美術はビル・モーリー、衣装はイレーヌ・シャラフ、音楽はヘンリー・マンシーニ。
主演はフェイ・ダナウェイ、共演はダイアナ・スカーウィッド、スティーヴ・フォレスト、ハワード・ダ・シルヴァ、マーラ・ホーベル、ルターニャ・アルバ、ハリー・ゴズ、マイケル・エドワーズ、ジョセリン・ブランド、プリシラ・ポインター、ジョー・アブダラー、ゲイリー・アレン、セルマ・アーチャード、エイドリアン・アーロン、ザンダー・バークレイ他。


ジョーン・クロフォードは、実際にハリウッドで活躍していた女優である。
彼女は自分の優しさをアピールする目的で養女を貰い、虐待を行っていた。
これは、虐待されていた養女クリスティーナの自叙伝を基にした作品である。

この作品には、ジョーン・クロフォードの虐待を悪いものとして告発する意図があるのだろうか。それとも、彼女を「かわいそうな人」として弁護しようとしているのだろうか。
ジョーンをどのような人物として描こうとしているのか、それが見えてこない。

実のところ、虐待シーンはそれほど頻繁にあるわけではない。
特にクリスティーナが成長してからは、彼女も無抵抗で苛められているだけではなく、「どうしてアタシを養女にしたの?」などと冷たい態度で詰め寄ったりする。

クリスティーナがジョーンを徹底的に憎んでいるのかというと、そういうわけでもない。
家を飛び出したりすることも無いし、「家を離れたくない」と言ったりもする。
母親に笑顔で対応することも多いし、感謝の言葉を述べたりもする。

さんざん苛められたりしたのに、終盤でクリスティーナはジョーンに対し、「愛してます」と涙を流して語る。ジョーンの死後、「彼女はどんな時でもあなたを愛してた」とメイドがクリスティーナに語り、クリスティーナは「母の愛を信じたい」と話す。
その辺りの展開を見ると、やはりジョーンを糾弾する意図は無いのかと思ってしまう。

しかし、その直後に、「ジョーン・クロフォードはクリスティーナのために遺産を全く残しませんでした」という、ジョーンを悪い印象で終わらせるオチが待っている。
う〜む、やっぱりジョーンをどういう人物として描きたいのか分からない。
ただ「クレイジーな女でした」という印象しか残らない。

いずれにせよ、とにかくシリアスな作品として作られていることは確かだろう。
しかし、シリアスに思えないことも確かである。
ジョーン・クロフォードを演じているフェイ・ダナウェイの、あまりにオーバーアクションのヤリ過ぎ芝居が、バカバカしくて笑えてしまうのだ。

ジョーンは針金ハンガーを使っていたことを異常に怒り、クリスティーナの服を次々と投げ捨て、ハンガーで彼女の背中を何度も叩く。キレイに掃除した部屋を「汚れてる」と言い出し、磨き粉を撒き散らして床をゴシゴシやり始める。
ホントなら怖いシーンなのだ。
が、顔が白塗りで真っ赤な口紅という状態で、見た目からして完全にギャグだ。

成長したクリスティーナは女優としての活動を始めるのだが、病気になって出演していたドラマを休むことになる。その代役を、なんとジョーンが務めるのだ。
28歳の役を演じるんだから、ほとんどギャグである。
それをOKした製作者もどうなんだろうか。

ジョーンはクリスティーナに罵声を浴びせ、髪を切り刻み、頬を叩き、馬乗りになって首を絞める。それは、普通に考えれば酷い虐待シーンである。
だが、そのような虐待シーンが描かれていても、ほとんどギャグのようになっている。
不快というより滑稽に感じられるのは、ある意味では今作品の救いかもしれない。

ナチュラルという言葉は、この映画には存在しない。
人間に喜怒哀楽という感情があることを、必要以上にアピールしようとする。
フェイ・ダナウェイは、やたらと「ウワーッ!」とか「ギャーッ!」とか叫びまくり、狂いまくる。
こうして、「いやあ、とにかく、ひたすらに、徹底的に、致命的に、フェイ・ダナウェイがバカでクレイジーだったなあ」という印象だけを残し、この映画は幕を閉じるのだ。


第2回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低作品賞
受賞:最低脚本賞
受賞:最低主演女優賞[フェイ・ダナウェイ]
受賞:最低助演男優賞[スティーヴ・フォレスト]
受賞:最低女優男優賞[ダイアナ・スカーウィッド]

ノミネート:最低監督賞[フランク・ペリー]
ノミネート:最低助演女優賞[ルターニャ・アルダ]
ノミネート:最低助演女優賞[マーラ・ホーベル]
ノミネート:最低新人賞[マーラ・ホーベル]

第10回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:1980年代最低作品賞

第25回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:25周年最低ドラマ賞

 

*ポンコツ映画愛護協会