『ウソツキは結婚のはじまり』:2011、アメリカ
1988年、ロングアイランド。結婚直前のヴェルーカは、デカっ鼻の持ち主である花婿のダニー・マカビーや彼の妹をブライズメイドの前で馬鹿にした。さらに彼女は、他の男と浮気していることも楽しそうに話した。ダニーは彼女たちの会話を耳にしてしまい、強いショックを受けた。ダニーは嫌なことを忘れるためのに飲みに出掛け、バーで結婚指輪を見つめて落ち込んでいた。するとジョアンナというセクシーな女性が隣に座り、結婚相手について質問された。負け犬だと思われたくないダニーは、結婚6年だと嘘をついた。さらにダニーは酷い妻と結婚した哀れな男を演じ、同情心を抱いたジョアンナから誘いを受けた。
ダニーは心臓外科医から美容外科医に転向して鼻を整形し、結婚指輪を武器にして女を口説くようになった。彼は既婚者を装い、多くの女性と遊びの関係を楽しむようになった。2011年。ダニーは美容クリニックを開業し、シングルマザーである助手のキャサリンと共に患者を診ている。ある日、彼は友人のエイドンからパーティーに誘われ、従弟のエディーと共に出席した。顔の整形を繰り返しているエイドンは、皮膚が突っ張って表情が不自然になっていた。
アリエルという少年が階段から転落したと聞き、ダニーは治療を買って出た。指輪を外して部分麻酔を注射したダニーに、アリエルは美女に見とれて転倒したと説明した。治療を終えたダニーの前に、その美女が現れた。小学校教師をしているパーマーという女性だ。すぐに2人は意気投合し、浜辺で一夜を過ごした。しかし翌朝、パーマーはダニーの結婚指輪を発見し、「既婚者なの?」と詰問する。ダニーは慌てて「僕のじゃない」と言うが、説明を求められても上手い言葉が出て来なかった。パーマーは激怒し、その場を去った。
翌日、ダニーはパーマーの働く小学校へ行き、「妻とは冷え切った関係だ。会話も無いし、2日後には別れることになっている。彼女に男がいた」と嘘をつく。妻の名前を問われたダニーは、キャサリンが大学時代の天敵だと言っていたデヴリンの名前を拝借した。パーマーが妻に会うことを要求したので、ダニーは了承した。ダニーはキャサリンに、妻のデヴリンを演じるよう頼んだ。ダニーは強欲で身勝手な妻を装ってもらうため、キャサリンに着せる高価な服を購入して髪やメイクも整えさせた。
キャサリンはパーマーの前で、ダニーも戸惑うほどの芝居を見せた。ダニーとキャサリンは互いに嫌味っぽい言葉をぶつけ合い、パーマーを騙し切った。キャサリンは車で去ろうとするが、息子のマイケルから電話が掛かって来た。マイケルや長女のマギーと話すキャサリンの言葉を聞いたパーマーは、「子供がいるの?」と尋ねる。キャサリンは車で逃げ出し、置き去りにされたダニーは困り果てた。しかしパーマーは「子供は大好きなの」と言い、むしろ好意的な態度を示した。
ダニーは「僕も子供好きだ」と話を合わせ、子供たちの名前を訊かれて咄嗟に「キキ・ディーとバートだ」と答えた。子供たちに会わせてほしいとパーマーに求められ、ダニーは「いいよ」と即答した。ダニーはキャサリンに内緒でマギーとマイケルにピザを御馳走し、1日だけ自分の子供のフリをしてほしいと頼んだ。マギーとマイケルから報酬を要求されたダニーは、交渉して取り引きを成立させた。
事後報告を受けたキャサリンから責められたダニーは、「そもそもの責任は君の電話だ」と言い返す。ダニーは彼女が事務係のブライアンとデートすると知り、冷やかすような態度を取った。キャサリンは子供たちを使う芝居を渋々ながら承諾し、同席することにした。4人はアミューズメント施設へ行き、パーマーと会う。マギーが過剰な演技を見せたので、ダニーは動揺した。マイケルはパーマーに、ハワイでイルカと泳がせてくれるってパパは約束したのに、旅行をキャンセルした」と告げて泣き出した。ダニーは慌てて、「誤解だよ。みんなで行くことにしたんだ」と釈明した。
嘘を事実にする必要があるため、ダニーは4人を連れてハワイへ行く羽目になった。5人がロサンゼルス空港で飛行機を待っていると、エディーがブライアンとして現れた。キャサリンは彼と2人きりになり、さっさと帰るよう要求した。しかしエディーは元カノの恋人との間でトラブルを抱えていることを明かし、「帰ったら殴られる」と言う。ダニーはチケット代も持たずに同行しようとするエディーに腹を立てながらも、金を出さざるを得なかった。
ハワイに到着したダニーはヒルトンホテルに泊まろうとするが、予約していなかったので高額のスイートしか空いていなかった。エディーの態度に我慢できなくなったキャサリンは、ダニーと2人きりになると「もう帰るわ」と言い出す。2人が言い争っていると、ある女性が話し掛けて来た。それは本物のデヴリンだった。大嫌いなデヴリンとの再会に顔を歪めたキャサリンだが、彼女が笑顔でハグを求めるので、大親友として応対した。
デヴリンはキャサリンに、夫のイアンを紹介した。ブルジョアな生活を満喫している様子のデヴリンは、キャサリンの神経を逆撫でする態度を取った。「結婚してるの?」と質問されたキャサリンは、ダニーを夫として紹介した。キャサリンはハワイに留まる代償として、話を合わせるようダニーに要求した。キャサリンはデヴリンに対抗し、ダニーのことを「彼は外科医よ。雑誌にも掲載されたことがあるの」と自慢した。さらに彼女は、子供がいて夫婦仲もアツアツであることをアピールした。
翌朝、ダニーたちはパーマーの提案で冒険ツアーに出掛ける。夕方になってホテルに戻ったダニーは、パーマーに「子供たちをデヴリンとドルフに預けて2人で出掛けよう」と告げる。しかしデヴリンは、「昨日も預けたわ。今日は私たちが子守をする番よ」と言う。「2人でゆっくりしたい?」と問われたエディーが「したい」と即答したので、ダニーはパーマーと一緒に子守をすることを承諾した。辛かった出来事を言い合うカードゲームに興じていた時、順番が来たマイケルは「パパが会ってくれない」と泣き出した。もちろん本当のパパのことを言っているのだが、パーマーはダニーに腹を立てて部屋を去った。ダニーは子供たちをベッドに寝かせ、「大きく後退した」と声を荒らげた。
ダニーは子供たちに、「本土に戻るまで我慢しろ。あと2日だ。そしたら列車事故で消えてもらう」と説き、それまでは笑顔で親子として振る舞うよう要求した。そこへパーマーが来て、「キャサリンと話したの。明日は彼女と2人でスパに行くから、パパと過ごせるわよ」と子供たちに笑顔で告げた。翌日、ダニーは子供たちを連れて出掛け、楽しそうな写真を撮ってパーマーを納得させる作戦を進めようとする。ゴルフ場で楽しんでいる写真を撮り始めたダニーだが、すぐに子供たちは「パパと遊んだことが無いし」と退屈そうな態度を取った。ダニーは泳げないマイケルに「ママがスパから帰るまでに泳げるようにしてやる」と持ち掛け、写真撮影を承諾させた。
ダニーは子供たちを連れてプールへ行き、エディーと協力してマイケルを特訓した。一方、パーマーはキャサリンに、ダニーの誕生日プレゼントの相談を持ち掛ける。キャサリンがダニーの趣味嗜好に詳しいので、パーマーは「なんでも知ってるのね」と言う。プールに戻って来たキャサリンとパーマーは、浮き輪を付けずに泳ぐマイケルの姿を見て大喜びした。そこへデヴリンが現れたので、キャサリンは慌てて取り繕う。パーマーが「どっちもデヴリン?」などと首をかしげていると、エディーが冗談を装って彼女をプールに突き落とした。デヴリンから夕食に誘われ、キャサリンは仕方なく承諾した。
ダニーはキャサリンから食事の約束を聞かされ、「無理だ。彼女と2人きりになりたい」と言う。キャサリンは「今夜だけ付き合って。私の顔を立ててよ」と頼み、「パーマーには私が話す」と提案した。彼女はエディーに、パーマーをホテルから遠い場所へ連れ出すよう依頼した。ディナーに誘われたパーマーは困惑するが、意見を求められたダニーは「仕方が無い」と告げた。ダニーとキャサリンはレストランへ赴き、デヴリンとアインの4人で夕食を取る。デヴリンはイアンとのアツアツぶりを見せ付け、キャサリンにも「試してみたら?」と持ち掛ける。一度は断ったキャサリンだが、「凡人には無理よ」という挑発に乗って「やりましょう」と言う…。監督はデニス・デューガン、オリジナル版脚本はI・A・L・ダイアモンド、戯曲はエイブ・バロウズ、オリジナル戯曲はバリエ&グレディー、脚本はアラン・ローブ&ティモシー・ダウリング、製作はアダム・サンドラー&ジャック・ジャラプト&ヘザー・パリー、共同製作はケヴィン・グラディー、製作総指揮はバリー・ベルナルディー&アレン・コヴァート&ティム・ハーリヒー&スティーヴ・コーレン、撮影はテオ・ヴァン・デ・サンデ、編集はトム・コステイン、美術はペリー・アンデリン・ブレイク、衣装はエレン・ラッター、音楽はルパート・グレッグソン=ウィリアムズ、音楽監修はマイケル・ディルベック&ブルックス・アーサー&ケヴィン・グラディー。
出演はアダム・サンドラー、ジェニファー・アニストン、ニコール・キッドマン、ニック・スウォードソン、ブルックリン・デッカー、デイヴ・マシューズ、ベイリー・マディソン、ケヴィン・ニーロン、グリフィン・グラック、レイチェル・ドラッチ、アレン・コヴァート、ダン・パトリック、ミンカ・ケリー、ジャッキー・サンドラー、ラケフェット・アバーゲル、ダナ・ミン・グッドマン、ジュリア・ウォロフ、コルビー・クライン、ジャナ・サンドラー、ジョナサン・ローラン、ピーター・ダンテ、マイケル・ラスキン、キャロル・アン・スシ他。
舞台劇を基にした1969年の映画『サボテンの花』のリメイク。
脚本は『僕が結婚を決めたワケ』『ウォール・ストリート』のアラン・ローブと『ぼくたちの奉仕活動』のティモシー・ダウリング。
監督は『俺は飛ばし屋/プロゴルファー・ギル』からアダム・サンドラーとは6作目のタッグになるデニス・デューガン。
ダニーをアダム・サンドラー、キャサリンをジェニファー・アニストン、デヴリンをニコール・キッドマン、エディーをニック・スウォードソン、パーマーをブルックリン・デッカー、イアンをデイヴ・マシューズ、マギーをベイリー・マディソン、エイドンをケヴィン・ニーロン、マイケルをグリフィン・グラックが演じている。まず「ジョアンナに負け犬だと思われたくないので、結婚6年目だと嘘をつく」という段階で、かなりの無理を感じる。
妻の裏切りを知った直後で傷心モードなのに、そこで「出会ったばかりのセクシーな女に負け犬扱いされたくない」という心情が芽生えるものかなあと思ってしまうのだ。そこで「負け犬に思われたくない」と考えて即座に嘘をつける余裕があるなら、そんなに心の傷は深くないだろ、と言いたくなってしまうのだ。
それと、さらにダニーが「酷い妻と結婚した哀れな夫」としての嘘を並べ立る時点で、もう彼は「女の同情心を誘う」という作戦に入っているように見える。
だけど、それだと「直前に妻の裏切りを知って強いショックを受けた傷心の男」という設定が完全に死んでしまうのだ。
そんなに簡単に嘘を並べ、哀れな男を演じて女の同情心を誘うことの出来る口八丁の男なら、最初から「いつもその手で女を口説いているプレイボーイ」というキャラで登場させればいい。あと、『シラノ・ド・ベルジュラック』みたいに鼻がデカいという設定も全く意味が無い。どうせ、すぐに整形しちゃうんだから。
冒頭でヴェルーカから鼻のデカさをバカにされているが、そんなの無くても「ヴェルーカがダニーの悪口を言う」という描写は成立させられる。
「ジョアンナが同情心を抱いて誘って来る」という部分においても、ダニーの鼻がデカいという設定は何ら有効に機能していない。むしろ、「かつてのダニーは鼻デカで、そのことでヴェルーカが陰口を叩いていたと知った」という設定を冒頭で見せていることが、後の展開でダニーに対する好感度を下げることに繋がっている。
クリニックのシーンで、整形手術の失敗で左右の眉毛の位置が大きくズレた女性患者が来た時、ダニーとキャサリンは笑うのだ。
患者は気にしていないが、それは明らかに失礼な態度だ。昔のダニーはデカい鼻を嘲笑されて傷付いたのに、同じことをやっているのだ。
ついでに書くと、そこでキャサリンがプッと吹き出しちゃうと、彼女の好感度も下がるだろうに。美容外科のスタッフなのに、患者が直してほしがっている箇所を笑うって、サイテーだろ。この映画が序盤で露呈する大きな問題点は、「ダニーが嘘をつく必要性は全く無いので、彼に共感できない」ってことだ。
そもそもモテるために「奥さんがいる」という嘘をついている時点で人間的に問題はあるのだが、そこはコメディーとして上手く表現しておけばクリアできる問題だ。
むしろ、そこは「結婚直前に花嫁の本性を知ってショックを受け、それがきっかけで云々」という風に、ダニーを擁護して正当性を主張するような過去設定を用意しているのは不格好だ。
そこには、中途半端なモラルなんて必要ない。そうではなく、むしろ必要なのは「セコい手を使って女を騙すプレイボーイだけど、笑って済ますことが出来る」という見せ方だ。で、そんな風に妻帯者を装っていたダニーがパーマーを本気で好きになってしまうわけだが、その段階で嘘をつく必要性は無くなるはずだ。
「結婚指輪をどう説明するのか」という問題に関しては、例えば「かつて惚れた相手がいて、まだ心の傷が完全に癒えていなかった」とか、何とでも嘘がつけるはず。
「妻帯者を装ってパーマーとの交際を開始したが、途中で本気になった」ということなら、今さら「結婚しているのは嘘だった」と白状して嫌われるのを避けるため、「妻とは離婚直前で云々」という風に嘘を重ねるのは腑に落ちる。
しかしダニーは既婚者を装ってパーマーと付き合い始めたわけじゃないんだから、まだ充分に修正できる段階なのだ。「ダニーは結婚していないと言ったのにパーマーが信じてくれず、妻との関係は冷え切っていて離婚間際だという嘘をつく」とう展開も、あまりにも無理がありすぎる。
本来なら、そこは「結婚していないという“真実”は信用してもらえず、妻とは離婚間際だという“嘘”は信用される」という皮肉があるわけだ。
しかし、そういう意味合いでの面白さが伝わって来るわけでもない。
そうなると、ますますダニーが結婚しているという嘘をつく必要性が無い。結婚指輪を外している時にパーマーと出会ったダニーは、いかにも慣れた態度で彼女を口説き落とす。
ダニーは自分が結婚指輪という武器を持っていないことにさえ、全く気付いていない。っていうか、そこへの意識が全く無い。
それは上手くない。彼は「結婚指輪を武器にして女を口説く」という方法を何年も続けていたのだから、「女を口説く時には結婚指輪が必要だ」という意識が強く植え付けられているべきだろう。
そこで指輪無しでも女を自然に口説き落とせるなら、「じゃあ最初から指輪なんて要らないじゃん」ってことになる。
後半に入ってから、「ダニーに結婚指輪という武器など必要ない」という展開になるのは別にいいのよ。だけど、そのことが序盤で明らかになるような構成はダメでしょ。しかも、指輪を見つけたパーマーから「既婚者なの?」と問われた時に、ダニーは咄嗟に美味い嘘が出て来なくて怒りを買っている。
なので、冒頭で「花嫁の裏切りを知った直後に出会ったジョアンナの前では次々に巧みな嘘が出て来た」というシーンと整合性が取れなくなる。
しかもダニーは、それ以降も嘘で数々の女を口説き落としてきた男のはずなのに、なぜパーマーに詰問された時だけはアタフタして嘘が出て来ないのか。
あえて理由を探すなら「今回だけは本気だったから」ってことぐらいだが、それは上手い説明じゃない。そもそも、パーマーに対して真剣な気持ちであり、結婚したいと思っているのなら、「妻とは冷え切っていて2日後に離婚する」という言い訳がどれだけ愚かなのかは、ちょっと考えりゃ分かるはず。
「詰問された直後、咄嗟についてしまった嘘」ということなら仕方の無い部分もあるだろうが、翌日になって、落ち着いて思考を巡らせ、会いに行った上で発した嘘なのだ。
それなのに、「仮にパーマーと結婚したとしても、後から簡単にボロが出ることは確実」な嘘をつくってのは、ボンクラが過ぎるよ。
巧みな嘘で多くの女を口説きまくっていた男なのに、それは無いわ。前半の内に舞台がハワイへ移るのは、「ただ単にハワイへ行きたかっただけじゃねえのか」と言いたくなる。
場所をハワイへ移す必要性が全く見当たらないし、むしろ移動せずに進めた方がいい。
エディーの絡ませ方も強引だし、存在意義も薄い。
彼からディナーに誘われたパーマーが嫌悪感を抱いているにも関わらず承知するのも、相談されたダニーが「仕方が無い」とOKしたことにパーマーが腹を立てたり疑問を抱いたりしないのも無理がある。「デヴリン夫妻と遭遇する」という展開だって、ハワイへ行かなくても成立させられる。
しかも、デヴリンと遭遇してからは、彼女が絡む物語が展開していくのかと思いきや、しばらくは消えている。デヴリンって、別に登場しなくてもいいいぐらいの存在なのだ。
そんでデヴリンを使わない代わりなのかどうかは知らないが、後半に入るとダニーが子供たちと触れ合うシーンが用意されている。
しかし、この映画は最終的に「ダニーがパーマーとの結婚を選択せず、キャサリンへの恋心に気付いて彼女とカップルになる」というゴールへ到達するわけで。
それを考えると、キャサリンがいない場所で子供たちと触れ合うシーンに時間を割いても、それは恋愛劇に直結しないのだから、ポイントがズレていると言わざるを得ない。これが例えば「ダニーは子供が嫌いで結婚を避けていたが、マギー&マイケルと触れ合って考えが変化する」ということならともかく、そうじゃないのよね。
ゴールから逆算すると、むしろ子供たちなんて登場しなくてもいいぐらいだ。
登場させるのは別にいいとしても、もっとキャサリンとの関係性に厚みを持たせるべきだろう。
この映画を見ていても、ダニーとキャサリンが最終的に結ばれても、2人が互いに好意を抱く経緯が全く描かれていないため、まるでピンと来ないのだ。残り30分ぐらいでデヴリンの挑発に乗り、見つめ合って互いの長所を言い合うシーンがあるが、そこで「互いの良さに気付く」ということが描かれているのは理解できる。
ただし、そこまでの貯金がほとんど無いのだ。
キャサリンのダニーに対する好意は、スパでパーマーから誕生日プレゼントを相談されて「ダニーの趣味嗜好を何度も知っている」ってことが示されたり、マイケルに泳ぎを教えてくれたダニーに頼もしいと感じている視線を向けたりするけど、むしろ本作品で重要なのはキャサリンよりもダニーの気持ちだ。
キャサリンの方は極端に言ってしまえば、最後の最後で「ダニーの告白を受けてOKする」ってだけでも成立しちゃうのだ。そして、その肝心なダニーの気持ちは、前述した「互いの長所を言い合うゲーム」までは、1ミリたりともキャサリンに向いていない。
「パーマーとの間で揺れる」ってのが無いにしても、せめて「キャサリンの振る舞いに好感を抱く」とか「キャサリンと一緒にいる時に安らぎを感じる」とか、そういう描写ぐらいは必要だろう。
そういう手順が無いままでゲームのシーンに入るので、「残り時間が少なくなってから、帳尻を合わせるために慌てて恋愛劇を片付けている」という印象になってしまう。(観賞日:2014年12月13日)
第32回ゴールデン・ラズベリー賞(2011年)
受賞:最低主演男優賞[アダム・サンドラー]
<*『ジャックとジル』『ウソツキは結婚のはじまり』の2作での受賞>
受賞:最低監督賞[デニス・デューガン]
<*『ジャックとジル』『ウソツキは結婚のはじまり』の2作での受賞>ノミネート:最低助演男優賞[ニック・スウォードソン]
<*『ジャックとジル』『ウソツキは結婚のはじまり』の2作でのノミネート>
ノミネート:最低助演女優賞[ニコール・キッドマン]
ノミネート:最低スクリーン・カップル賞[アダム・サンドラー&ジェニファー・アニストンorブルックリン・デッカーのどちらか]