『ジュピター』:2015、アメリカ&イギリス&オーストラリア

ジュピター・ジョーンズの父は天体物理学、母は応用数学を教えていた。父のマックスは英国外交官の息子で、母のアレクサと結婚した。アレクサが妊娠した時、マックスは子供の名前をジュピターに決めた。家に押し入った強盗団にマックスが銃殺されて以来、アレクサは妹のニノしか信じなくなった。彼女は大西洋上の船で、満月の夜に娘を出産した。成長したジュピターはシカゴでニノと暮らし、清掃員として働いているが、毎日の生活に辟易していた。
惑星ザリンタイアを訪れた妹のカリーク・アブラサクスと弟のタイタスが話していると、2人の兄であるバレムが現れた。タイタスは彼に、「母の日記を読みました。かつて母が収めていた美しい星の記述がありました」と語る。それは地球であり、バレムが受け継いでいた。タイタスが「母上の思い出として、譲ってもらえませんか」と言うと、カリークは諭すように「収穫量を知ってる?貴方の全財産を上回る価値よ」と告げた。
元スカイジャッカーのケイン・ワイズは地球に出現し、深夜の建物へ潜入したその姿を目撃した賞金稼ぎのラゾーとアイビス、ファルケは、獲物か同じだと確信した。バレムに雇われたラゾーたちは、カルテを匂ってキャサリン・ダンレビーという患者の情報を調べたケインを攻撃する。ケインが逃亡すると、バレムに報告しようとするラゾーにファルケが「俺に考えがある」と口にした。カリークは相談役のマリディクテスに、「慎重に進めないと。バレムもタイタスも気付いていない」と言う。「ハンターは信用できる?」と彼女が尋ねると、マリディクテスは「信用できるのは互いの利益のみ。望む物を与えます」と述べた。
バレムは側近のナイトから、「遺伝子が一致しましたが、密偵たちの噂ではタイタスに気付かれた様子です」と報告を受けた。殺し屋のグリーガンが「女の行った病院を番犬どもが付き止めました。名前はキャサリン・ダンレビー」と話すと、バレムは「女を殺せ」と命じた。キャサリンはジュピターの親友で、デートへ行く準備をしていた。突如として出現したミュータントたちにキャサリンがDNAを採取される様子を、ジュピターはスマホで撮影する。電話が鳴るとミュータントは姿を消し、キャサリンは何も覚えていなかった。
ジュピターは清掃会社の社長で親戚のヴァシリーに、給料の前借りを頼む。しかしヴァシリーに辛辣な言葉を浴びせられ、彼女は「もういいわ」と告げた。ジュピターが欲しがっていたのは望遠鏡で、ヴァシリーの長男であるヴラディーは「金が欲しいなら、卵子提供の仕事を受けろ」と持ち掛ける。ジュピターは断るが、仲介料を貰える彼は「医者が簡単な処置をするだけだ」と説得した。ジュピターは了承し、不妊治療センターへ赴いた。
ジュピターはキャサリンの名前で看護婦に呼ばれ、手術室に入った。すると医師たちは彼女を手術台に拘束し、DNAを確認すると殺害しようとする。そこへケインが乗り込んで攻撃すると、医者たちはミュータントの姿を現した。ケインはミュータントを一掃し、気絶したジュピターを連れ出した。タイタスは助手のファミュラスから、ケインが「女を確保した」と報告して来たことを知らされた。ジュピターが目を覚ますと、ケインは他の惑星にも知的生命体が住んでいること、自分は狼と人間の遺伝子を持つ交配種であることを説明した。病院のミュータントについてジュピターが訊くと、「番犬だ。ダイオライト星人。いわば偵察部隊だ」と答えた。
バレムはグリーガンから傭兵の妨害が入ったという報告を受け、「配備を倍にして、地球に近付く船は破壊しろ」と命じた。ケインは家に戻っても殺されるだけだとジュピターに説明し、光のエレベーターで宇宙へ向かう。しかし戦闘機部隊の攻撃を受けたため、ケインは自分の戦闘機で全滅させた。翌日、ケインは車を走らせながら、ジュピターに「宇宙を支配するアブラサクス家の内紛のせいだ」と言う。破壊された街についてジュピターが尋ねると、「夜には元通りだ」と実際に復旧している様子を見せた。「大勢が目撃してる」とジュピターが言うと、彼は「奴らは短い記憶なら簡単に消せる」と述べた。
「なぜ私なの?」というジュピターの質問に、ケインは「タイタスに訊いたが、分からないと」と答え、バレムが殺そうとしていることを話す。バレムは不妊治療センターの映像を確認し、ジュピターの姿を見ると、まるで相手が母親であるかのように語り掛けた。ケインは旧友であるスティンガーの元へジュピターを案内し、「イージスの軍人だ。いわば警察だ」と言う。スティンガーはケインを怒鳴り付け、何度もパンチを浴びせる。蜂の群れがジュピターに懐く様子を見ると、彼は女王だと確信して「陛下」と跪いた。
スティンガーはジュピターに、自分とケインが軍法会議で人工翼を奪われたことを教えた。王家と手を組んだことをスティンガーから皮肉られたケインは、「アンタの翼も地位も元に戻すと約束された」と告げた。ヴラディーはジュピターからの電話で卵子提供しなかったことを告げられ、「もう金は使っちまった」と焦った。バレムが戒厳令を出して援軍が来なくなったことを知ったスティンガーは、「彼女が女王なら、イージス軍が封印を解いて迎えに来る」とケインに話す。「明日には船が来る」と彼が言うと、ケインは「戦いは避けられない。武器が必要だ」と告げる。
スティンガーはジュピターに、ケインが王家の人間を襲撃したこと、上司だった自分が責任を取って死刑は免れたことを話した。首の後ろにある印にジュピターが気付くと、彼は「設計者の印だ」と述べた。賞金稼ぎと番犬たちが襲って来たので、ケインとスティンガーは戦う。ジュピターは逃走するが、ファルケの攻撃を受けて気絶する。そこへラゾーとイビスが来てファルケを倒し、ジュピターを小型機に乗せる。ケインは密かに小型機へ飛び乗り、宇宙へ飛び立った。
バレムはナイトに「この施設をフル稼働させ、早期収穫の計画と見積もりを出せ」と命じ、「品質は最高級で、今の市場なら競合相手にも大きくリードできます」と聞かされる。彼はナイトに、「明日、地球の収穫を実行する。妹に出し抜かれる前に」と述べた。ラゾーとイビスはカリークの住まいであるアルカザールへ到着し、ジュピターの身柄を引き渡した。カリークはジュピターに瓜二つの石像を見せ、「亡き母に再会できた」と告げた。
カリークが「DNAが宇宙の鍵を握っている。全く同じ配列のDNAが再び現れる。輪廻転生よ」と言うので、ジュピターは「私は生まれ変わり?お母様は地球の人?」と尋ねる。カリークは「母は遥か昔に生まれた。貴方と同じ人間よ。でも私たちには知識と技術がある。私は1万4千4歳よ。母は9万1千歳で殺され、犯人は分かっていない」と語る。彼女は不思議な水に浸かって若返り、ジュピターに「細胞には寿命があり、老化してしまう。その細胞の入れ替え方法を誰かが発見した。新しい細胞を栽培するの。宇宙で最も価値があるのは時間よ」と話した。さらに彼女は、「地球はバレムの物だけど、即位すれば貴方の所有になる」と告げる。
侵入したケインはジュピターを見つけ、カリークに銃を向ける。しかしカリークは泰然と対応し、ジュピターは「彼女は味方よ」とケインに告げる。イージス軍が軌道に入ったと知らせを受けたカリークは、「手間が省けた。後は彼らがやってくれる」と口にした。イージス軍の戦艦に乗り込んだケインとジュピターは、艦長のディオミカや生き延びていたスティンガーと対面した。一方、バレムはグリーガンにジュピターを連れて来るよう命じた。
戦艦がオーロスの連邦本部に到着すると、ジュピターは即位手続きに入った。彼女は役所の各課をたらい回しにされ、紋章を手首に焼き付けて必要なファイルを渡された。正式な手続きが終わり、ケインは彼女に「陛下の人生は望み通りに変わる」と告げた。そこへ金のために寝返ったスティンガーとタイタスの手下たちが現れ、2人に銃を突き付けた。ジュピターはタイタスの元へ連行され、ケインは牢に監禁された。既に宇宙規約を読んでいたジュピターは、タイタスに家へ帰らせるよう命じた。
タイタスはジュピターの指示を了承した後、カリークが使っていた命の水について「人間から造る。1本に百人の人間が必要だ。地球は農場だ」と語る。ジュピターが動揺していると、「母は晩年、考えが変わった。事業を中止しようとして殺された。母の遺志を継げば、僕も同じ目に遭う。相続人になってくれないか」と告げてプロポーズする。しかしタイタスの本当の目的は、結婚後にジュピターを殺害して地球を手に入れることだった…。

脚本&監督はザ・ウォシャウスキーズ、製作はグラント・ヒル&ラナ・ウォシャウスキー&アンディー・ウォシャウスキー、製作総指揮はロベルト・マレルバ&スティーヴン・ムニューチン&ブルース・バーマン、共同製作はテリー・ニーダム、撮影はジョン・トール、美術はヒュー・ベイトアップ、編集はアレクサンダー・バーナー、衣装はキム・バレット、視覚効果監修はダン・グラス、音楽はマイケル・ジアッキノ。
出演はチャニング・テイタム、ミラ・クニス、ショーン・ビーン、エディー・レッドメイン、ダグラス・ブース、エドワード・ホッグ、マリア・ドイル・ケネディー、タペンス・ミドルトン、ニキ・アムカ=バード、ヴァネッサ・カービー、ジェレミー・スウィフト、クリスティーナ・コール、ペ・ドゥナ、ジェームズ・ダーシー、キック・ガリー、ティム・ピゴット=スミス、ググ・バサ=ロー、ラモン・ティカラム、ニコラス・A・ニューマン、アリヨン・バカレ、フロッグ・ストーン、ダヴィド・アジャラ他。


『スピード・レーサー』『クラウド アトラス』のザ・ウォシャウスキーズが脚本&監督&製作を務めた作品。
ケインをチャニング・テイタム、ジュピターをミラ・クニス、スティンガーをショーン・ビーン、バレムをエディー・レッドメイン、タイタスをダグラス・ブース、ナイトをエドワード・ホッグ、アレクサをマリア・ドイル・ケネディー、カリークをタペンス・ミドルトンが演じている。他に、紋章印課の職員役で、映画監督のテリー・ギリアムが出演している。
ちなみにザ・ウォシャウスキーズは、この映画が公開された当時は「姉弟」だったが、弟のアンディーもラナに続いて性転換手術を済ませ、「リリー」になった。

ザ・ウォシャウスキーズは『マトリックス』3部作で終わった姉妹であり、言ってみりゃ一発屋だ(その前に『暗殺者』と『バウンド』の脚本は書いているが)。
その後に監督を務めた『スピード・レーサー』も『クラウド アトラス』も、酷評を浴びて興行的にも失敗している。
「3作連続で駄作を作った人は、才能が枯渇したか、そもそも才能が無いかのどちらか」ってのが私の持論である。
つまり、この映画が駄作だったので、ザ・ウォシャウスキーズは完全に「終わった姉妹」となったわけだ。

冒頭、ジュピターのモノローグによって、両親のことが語られる。そこから自己紹介に入るわけではなく、あくまでも「父と母が出会って結婚し、ジュピターが誕生するまで」の経緯である。
そこを冒頭で詳しく説明し、わざわざ両親の映像まで入れているぐらいだから、後の展開に深く関わって来るんだろうと思っていた。
しかし実際のところ、まるで繋がらないのである。そこをザックリと排除しても、ほぼ支障が無いのである。
だったら、むしろ「ジュピターが退屈な生活にウンザリしている」という部分をアピールした方が、よっぽど有益だったんじゃないかと。

ジュピターによる両親の紹介シーンが終わると、すぐに地球とは異なる惑星が登場する。だから早い段階で「SF」としての印象を与えることは出来ているが、同時に「なんかチープだなあ」という印象も植え付ける結果になっている。
なぜなら、アブラサクス兄弟がいるのはザリンタイアという惑星だが、この3人以外に誰もいないからだ。
これが「荒野の惑星」とか「廃墟の町」ってことなら、分からんでもない。
しかし、彼らの背後には、綺麗な都市が見えているのだ。

この「なんかチープ」という印象は、そこだけに留まらず最後まで付きまとう。
アブラサクス家は宇宙を支配する一族という設定なのだが、そういう印象を全く受けない。宇宙を支配しているにしては、ちっともスケールの大きさを見せてくれない。兄弟それぞれが部下に指示を出す様子は何度も写るけど、その時に出て来る人数が少ないのだ。
そりゃあ周囲には側近や幹部しか置かないから、少数ってのは理解できなくもない。
だけど、それだけで済ませずに、「大勢の軍団が指示で動く」とか、「大勢の国民が崇拝している」とか、そういった描写を入れてもいいんじゃないかと。大勢の軍団とか、宇宙船団とか、そういうのを見せた方がいいんじゃないかと。

アブラサクス兄弟を登場させた後、またジュピターのターンになる。朝早くからニノに起こされた彼女が「こんな生活、もう嫌」と漏らし、仕事をする様子が描かれる。
でも、冒頭で彼女が清掃員として働く様子は描かれているし、その表情だけでも「こんな生活、もう嫌」と感じていることは何となく伝わって来る。だから、そこで改めて「こんな生活、もう嫌」と言わせるのは、二度手間でしかない。
おまけに、彼女の生活風景をダイジェスト処理した後、また「こんな人生、もう嫌」と言わせるが、もういいっての。
そういうのは1つのシーンで片付けておけばいい。つまり冒頭シーンで処理するか、そこを無くしてアブラサクス兄弟を登場させた後に処理するか、どちらかにした方がいいってことだ。

説明不足が甚だしくて、無駄に分かりにくいってのは本作品の大きな欠点だ。
例えば、ケインが建物に侵入する時点で、そこが何なのか全く分からない。後の展開で不妊治療センターだったことは分かるけど、それは最初の時点でハッキリさせた方が間違いなく得策だ。
また、そこでケインはキャサリンと書かれたカルテを確認しているが、それがジュピターってことも、彼女が訪れるシーンまで分からない。これまた、無駄に分かりにくくしていると感じる。ジュピターがキャサリンの名で呼ばれるまで、その事実を隠したまま引っ張ることのメリットが見えない。
そんなトコのミステリーなんて、まるで要らないでしょ。欲張り過ぎだわ。

キャサリンの部屋に出現したミュータントたちは、DNAを採取している。で、ジュピターが不妊治療センターを訪れた時に、DNAを採取して「一致した」ってことで殺害しようとする。
なんで一致するのか、ワケが分からない。
こいつらが前日に採取したのはキャサリンのDNAであって、だったら一致するはずが無いでしょ。「ママのDNAとの照合」ってことなら、「キャサリンのDNAがママのDNAと一致しなかった」という説明は入れるべきだし。
あと、キャサリンがDNAを採取される様子をジュピターはスマホで撮影したのに、後の展開には全く関わらないのね。

説明が足りない一方、「そこの詳しい説明はホントに必要なのか」と思う箇所もある。
スティンガーがジュピターに、「人類誕生の地は地球ではない。クナブルム系のオーロスという星だ。10億年以上前、大冒険期と呼ばれる時代に地球は発見された。当時はザウルサピエンスの亜種が住んでいた。凶悪な肉食のサーゴンだ。植民地化と資源開発の前に、対策が必要だった。そこで支配種である恐竜の絶滅が実行された」と語るシーンがある。
だけど、今回の話に必要な情報なのかと。
その後には「記録によると、この星は10万年前にアブラクサス産業が作付けした。人間のDNAと固有種を掛け合わせ、人類は爆発的に数を増やした。地球が維持できる人口を超えた時が、収穫の季節だ」と語っている。
だけど、「収穫」という部分は今回の話に関係あるものの、無駄にゴチャゴチャさせる説明だと感じるのよね。

ジュピターが即位手続きに入ると、役所の各課をたらい回しにされる様子が描かれる。ここはコメディーとして演出されているけど、その手の緩和が邪魔でしかない。
「そこまでの密度が濃くて、そろそろ頭が疲れて来たから休憩が必要」ってことなら、そのタイミングで緩和を入れるのも悪くないと思うのよ。
でも、確かに情報量は多かったけど、決して「充実した内容だった」とは言えないわけで。
ようするに、適切な取捨選択が出来ていないってことなんだろう。。

ジュピターがタイトルになっているぐらいなんだから、とにかく「宇宙のボスであるバレムが彼女を殺そうとしていて、それを阻止しようとするケインがいて」という図式を何よりも重視し、他の要素は「それを充分に消化した上で付け加える」という形を取れば良かったのだ。
ところが、色々と盛り込みたい要素が多かったらしく、ケインだけでも「遺伝子操作による狼と人間の交配種」「人口翼があったけど奪われている」「王家の人間の喉元に噛み付いて軍法会議に掛けられた」といった要素が持ち込まれている。
まだケインは主人公なので、それぐらいの肉付けは構わない。しかし、他にも色々と欲張っており、まるで捌き切れていない。
っていうか、問題は「持ち込んだ要素が多い」ってことじゃなくて、「それを上手く捌き切れていない」ってことなのよ。
ちゃんと捌いていれば、もちろん何の問題も無かったわけで。
だけど、どうやら1作だけで終わらせずに続編も見越して作ったようで、だから「1作に詰め込むボリュームじゃねえだろ」ってことになったんだろう。

冒頭の会話シーンからすると、地球を巡る兄弟の争いがあるのかと思わせる。しかし、すぐに「ジュピターを殺そうとするバレムと、身柄を確保しようとするカリークやタイタス」という争いの構図が描かれる。そこで「ジュピターが兄弟の母のDNAを持つ王位継承者」というトンデモ設定が明らかにされ、そこに説得力を持たせる作業を放棄したまま強引に話を進める。
そんな中で「若返りの水」という道具が登場し、「それを造るには人間が必要」という事実が判明する。
まあ前半からバレムやスティンガーが「収穫」とか言っていたので、人間を何かの餌や道具として利用する目的があることは何となく見えていた。
ただ、そっちと「ジュピターの争奪戦」という要素が、全く連携していないのだ。
完全にバラバラのままなので、だったら片方に絞り込んでおいた方がいいのに、と思うわけよ。

欲張って両方の要素を持ち込んだせいで、「ただの清掃員が宇宙を支配する一族の王位継承者」というインパクトに「人間を収穫する」という設定のインパクトが潰されちゃってる。
そもそも、どっちの要素も「どこかで見たような」という既視感に溢れているし。
ジュピターは「王位継承者」というトンデモ度数の高い話も、若返りの水や人間を収穫している話も、それを聞いた時には驚いたり動揺したりするけど、あっさりと受け入れてしまう。

宇宙は広いはずなんだけど、あっという間にワープして、あちこちを移動してしまう。
宇宙を支配する一族が地球やジュピターを狙っている話だが、ようするに「単なる兄弟の遺産相続争い」に過ぎない。
小型の戦闘機によるアクションシーンはあるけど、艦隊による大規模戦闘は最後まで訪れない。そういう小ぢんまりとした描写の1つ1つが、この映画からスケール感を失わせている。
ウォシャウスキーズはアクションやガジェットの映像表現に力を入れているんだろうけど、そこの魅力も感じないし。

ジュピターの行動が浅はかで短絡的すぎて、ちっとも魅力的に思えないってのも厳しい。
最初は軽薄でもいいけど、様々な人々と会ったり色んな経験をしたりする中で成長すべきでしょ。
だけど彼女は、ずっとボンクラのままなのよね。何度もピンチやトラブルを招き、ケインと仲間たちの助けを得て何とか脱出するという形になっているのよね。
ただし、ボンクラなのは彼女だけじゃなくて、アブラサクス家の面々と手下たちも総じてバカなんだけどね。
だから、この話って「バカだらけの争い」ってことになるのよね。

(観賞日:2016年9月25日)


第36回ゴールデン・ラズベリー賞(2015年)

受賞:最低助演男優賞[エディー・レッドメイン]

ノミネート:最低作品賞
ノミネート:最低主演男優賞[チャニング・テイタム]
ノミネート:最低主演女優賞[ミラ・クニス]
ノミネート:最低監督賞[ザ・ウォシャウスキーズ(アンディー&ラナ)]
ノミネート:最低脚本賞

 

*ポンコツ映画愛護協会